14.ハードルが高いです
こちらに来て三日目。私にとっては七日目。
今日もカールさんの講義を聞いている。
家庭教師の方々は明日から来てくれるんだって。
カールさん曰く。
聖女召喚は200年毎に行っている。
次回の召喚国は30年前に神託が下りるそうで、その国はそれから天災など起こらず穏やかな日々と豊作が約束されるという。
聖女には特に突出した能力がある訳ではなく、一般人が多いらしい。
異世界から喚ぶため、聖女の保護と生活の保証は召喚国の義務になっている。
聖女に権力はないが、貴き人と人々に認識されている。
ふむふむ。
別枠って感じですね。
過去の聖女達はどうやって過ごしたかを聞いてみた。
殆どの人が王族、もしくは高位貴族に嫁いでいるらしい。
そして自分の知識を利用して、様々な事を行っていたそうだ。
内政やら、料理やら、魔道具作りやら。
それらは聖女ブランドとして扱われ、聖女が生きている間に発生した売上の七割が聖女の所得となる。残りの三割は国と作り手とで分けるらしい。それは全世界共通なので、売れれば大金が手に入るそうな。
なるほど。
しかし……それって、どんどんハードルが上がってるって事だよね?
私に売れるものなんて思いつかないけど。
……詰んでる?
だって働く事も、何かを手伝う事すら私には出来そうにない。
料理だって出来なくはないけど、今まで出てきた料理を見るに十分美味しかった。自炊するのも面倒だったから、最近では買ってばかりいたし、料理が好きな訳でもない。キッチンに入った所で、邪魔になるだけだろう。
飲食店でバイトをした事はあるけど、このサイズでは何の役にも立たない。
はぁ。
ホント、私って……。
「それで文字の方は如何ですか? 何か分からない所はございますか?」
「そうですね……とりあえず、全部覚えました。まだ書くのは出来ないけど、読めるようにはなりました」
「それは凄いです! アリス様は記憶力が良いのですね」
「いえっ!! 努力です!」
そこは食い気味に否定させていただきますよ。
私は決して頭が良い訳ではない。
夜がっ!
暇なんですーっ!!
勉強するしか、する事がないんですぅ。
私にとっては一日中夜で、テレビもネットもなく、誰も訪れず、部屋に篭りきり(体育館並みに広いけどさー)。お城を探検してみたいけど、護衛さんに迷惑をかける訳にもいかないし。
そんな訳で勉強に勤しんだ結果、文字はバッチリです。
まだ書けないけど。
◇
午後からルーシャス様が、王都で流行っているというお菓子を持って来てくれた。
ほほぅ。
甘いものは大好きです。
「良かったら庭に出て、お茶でもしませんか?」
今日は天気も良いし、気持ち良さそうですね〜。
「はい、嬉しいです」
それを聞いたルーシャス様は満足そうに微笑んで、徐にしゃがみ両手を広げた。
ん?
それは……アレですか?
抱っこして連れて行ってくれるカンジでしょうか。
とてててと小走りに近付き、両手を上げて抱っこして貰いました。
わぁ〜良い匂い。
私は、決めたのです。
全力でっ!
ルーシャス様に甘えるのです!
そして可愛がってもらうのです!!
それしか生きる道がなさそうなんだもん。
しかし、この時の私はまだ分かっていなかった。
満面のルーシャス様の笑みを見た城仕えの人々が次々と倒れる中、花々が咲き誇る庭にある四阿に連れていかれる事。
持って来てくれたお菓子がマカロンで、バーガーサイズだった事。
そしてそれを優雅に切り分けるルーシャス様に抱っこされながら、嬉しそうに食べさせられるという事を。




