興味
だっせぇー単車に追い付くことが出来ずに見失った日から数日が経った。
「母ちゃん。腹減った。なんか食うもんってある?」と、寝癖のついた頭を掻きむしりながらパンツ一枚で隆弘が降りて来た。
「あんた。昨日も馬鹿みたいに夜中まで遊んで朝帰りなんだろ?学校に行かない。仕事もしない。うちには、そんな馬鹿に食わせる物なんてない。」と母親が怒鳴る
「だるぅー。クソババァ!腹減ってんだ。なんかんだろ?」と隆弘が言い返すと…
母親は扉に当たるかのように閉めて仕事に出かけた。その後、隆弘はボリボリと頭をかきながら台所にあったカップ麺に湯を注ぎテレビの前に座った
テレビをつけ、目の中に飛び込んできたCM。ドスの効いた音楽をバックに映し出される映像に釘付けになった。
遠くを見据える眼光の先に写る物…。砂漠を砂埃たてて走るバイク。小高い砂漠の上で砂をかぶったヘルメットを横に、今…まさに隆弘が食べようとしているカップ麺のCM。
…バイクってアスファルトの上を、サーキットみたいに走るもんじゃないのか?
隆弘にとって、バイクが砂地を走るなんて事は想像した事すらなかった。ただ見覚えがあるのは、この前…コンビニで追い付くことが出来なかった耕運機みたいな音を出して走るだせぇーバイク。カップ麺に湯を注いだ事も忘れて、リモコンでチャンネルを変えて、あのCMを探したが、見つからずにカップ麺に湯を注いだ事を思い出し蓋を開けると麺は伸びきっていた
カップ麺を買い終わり再びベッドに横になり天井を見上げた。頭の中は、あの日に出会っただせぇーバイクと、砂漠を砂埃を立てて疾走する映像が頭を離れなかった…すると、外から隆弘の名を呼ぶ声が聞こえた
「隆弘!隆弘!」と、いつもつるんでいる信之が部屋の窓を下から眺めるように隆弘を呼んでいた。窓を開け隆弘は信之に
「うるせぇーな。あんまりデケェ声で呼ぶな。恥ずかしいやんけ」
信之はキョトンとした表情で
「隆弘。お前が朝の10時に来いって言ったんだろ?で…かずくんとこに、この前こけた単車を取りに行くから載せてけ!と言ったんだろ?怒鳴るなら帰る」と不服そうに答えた
「あっ。ごめんごめん。急いで用意するから待ってて」と、笑いながら答えた。