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六話 英雄のお仕事

「あれ?アリスの出番は?」

「セレスも出てない…」

と、姉妹がショボくれているようですが、今回は何時も影の薄いおとうさまの出番です。


男爵領の裏事情の回になります。

「ユリーナ?君も避難するんだよ」


繕いの無い箇所を探すほうが難しいその幼い少女の服は、元々は裕福な身分の者が着るワンピースの形をしていた。


アリス達と同年代ぐらいだろうか。


少女の横には、兄らしき少年が一人。彼の服も綺麗にはしてあるが、やはり繕いだらけだ。


ユリーナと呼ばれた少女は()()()()をするように、少し俯いたまま、首を横に振る。


「約束するよ、イアハートは帰ってくる。家の前で待っていなくても必ず、だ」


領主であるエルフォード・グルーヴは馬の手綱を手にしたまま、しゃがんで少女と目線をあわす。


「行こうユリーナ?ここは危ないから」


「リクスにいさま…」


ユリーナの視線は、兄であるリクスとエルフォードの顔の間をいったりきたりしていたが…


彼女は両の手に力を入れて、小さな拳をぎゅっと握った。


「もう、おいていったりしない?」


消え入るように呟く少女が、上目遣いにエルフォードを見上げた。


「ああ、大丈夫だよ。私もついてる」


兄は、エルフォードの言葉を引き取り、ユリーナに言葉を紡ぐ。


「そうだよ、ユリーナ。ご領主…英雄エルフォード様がいるなら、イアハート叔父さんは大丈夫」


「ほんとにかえってくる?」


「ああ、必ず帰ってくる!だから僕らが避難しないと、叔父さんもご領主様も存分に力を出せないからね。さあ行こう?」 


少女は震える手で、兄であるリクスの差し出した手をとり、避難場所である村の貯蔵倉庫の地下に向かって歩きだした。


魔獣の襲来。


降ってわいた緊急事態に、男衆は出払い、残された村人たちは混乱のただ中に避難をすすめていた。



男爵の屋敷のある中央村から東南の方向に約三里ほど、海岸線からニブカル河沿いに遡り、その足下の悪い道を、さらに支流との合流点から上流側へたどると隣村であるノミア開拓村へ出る。


この村は最初のエラキドの侵略時に家族を失った子供や、その防衛戦において重傷を負ったために除隊された傷痍騎士たち、あるいは北島ノース・アイランドの平定戦により難民化した人々が多く暮らす村である。


その貯蔵倉庫の一階部分、入り口の格子戸を挟んで、何人かの少年たち

 - 下は八歳から上は十四歳ほどの顔に煤をつけたような男の子 -

と、エルフォードは向きあっていた。年長であるリクスもそのグループに居た。


「リクス?もしも貯蔵倉庫を魔獣が取り囲んだら、その鐘を打ち鳴らすんだ。

 この貯蔵倉庫の地下は私が基礎を固めたものだから、ちょっとやそっとじゃ壊されない。だから安心して救助が来るまで待つんだ。皆もいいね?」


「はい、ご領主様。ここに居る人たち…妹たちも僕が護ります」


「ああ、頼んだよ」


エルフォードは地下砦シェルターを護る、小さな戦士たちに見送られながら、馬の鐙を蹴った。



アウォーエナル山脈の麓に広がる魔の森からの害獣の襲来。


その災禍は前触れなくやってくる。そのため、エルフォードがこの領地に封じられて最初に行ったのが、各村の地下砦シェルターの建造だった。


領内の各村へ地下砦シェルターを設置し、開拓村には家を立て、最初の冬越しの支度の段階で陛下から賜った公の準備資金は底をついた。


戦友でもあり、かつてのパーティーメンバーでもあった辺境伯からも、内密の資金(ポケットマネー)提供があったが、それとて北部全体が度重なる戦により疲弊している中にあっては、限度というものがある。


そのなけなしの資金も最初のエラキド侵攻をまたいで20年間行われている北島ノース・アイランドの土着の民、ザガ族平定のための戦によって、再び増えた難民に対応することでついえた。


税をもって立ち直ろうにも、まともに税を納められる人は僅か。


しかし海岸砂丘がその3分の2ほどを占めるとはいえ、面積だけは広く、支えるべき封地は辺境伯領に肉薄する領地…


それがグルーヴ男爵領の実態である。


エラキドにより蹂躙され、ないないづくしの中で井戸も足りず、ほぼ難民の彼らを迎え入れるため、エルフォードは「人外」と言われる魔力にものをいわせて、自らを酷使し出来る限り魔法を使って掘削した。


竹の導管による上水の確保は、こうした中で生まれた工夫と技術を利用したものだ。


正直、このような領地…エルフォード達でなければ初手で詰んでいただろう。


「貴族と言う生き方は、つまり呪いのようなものである」とは、誰の名言だったか。


アウォーエナル山脈を挟んで、古くからの南の貴族たちは、穀倉地帯から得られる潤沢な資金にものを言わせて派閥を形成していた。


国の重要なポストは、様様な利権を生む。そうした「甘い汁」を一滴もこぼさんと南部派閥は古くから結束してきた。


陛下の覚えの良い英雄エルフォードと、彼と親交の厚い新たな勢力でもあるレナード辺境伯家の力を削ぐために、南部派閥の貴族たちは裏で策謀をめぐらせて、実に巧妙に 表向きは褒美に見えるように、問題だらけの封地を用意させたのだ。


そして現在…


ノミア村の奥 - 開拓地は、何時にはない怒号であふれかえっていた。ここは標石柱の結界防衛線に極めて近い最奥である。


時刻は五の刻をまわり、陽はだいぶ傾いている。


「グルーヴの旦那はまだか!」


「まだだ!もうちょっと耐えてくれ」


中型の狼に似た縦縞の魔獣ストリッシェが、口内の牙を剥き出しにして、群れで彼らに襲いかかっていた。


ストリッシェは単体では、それほど強い魔獣ではない。しかし、群れになるとその驚異度は格段に跳ね上がる。


剣や弓矢、水破弾(ウォーターボム)風破弾ウィンドボム礫弾ストーンバレットで各個に応戦するも、数に圧されて彼らはいささか不利な状況にあった。


ガルルルル…


「こんな壊れた奴らや老いぼれが、何人集まったって何の役にもたちやしねえって!」


ダッダッダッダッ…ガウッ!


魔獣はひっきりなしに唸り、噛みつき、そして開拓村の男衆の周りを取り囲こもうと走りまわる。


「おあっ!いてえ!!ちくしょう!」


「せいっ!…なあ最近多くねえか標石柱が崩れるのって」


「それもそうだがよ、問題なのは魔獣が多いってことだよ…なんだよこれ!」


「いやそんなこと言っても俺たちにはどうしようもねえ」


「そこの新入りども!口はいいから手ぇ動かせ!」


新入りと呼ばれた弓士たちは、膝や下肢をやられた者たちが多く、咄嗟の動きにはどうしても弱い。


「おいディザンダード、右のやつだ!頼む!」


ディザンダードと呼ばれた片手の騎士は、細身の剣を手に魔獣に器用に突き立てるように、前後に素早く動くものの、やはり群れには囲まれかけた。


片手では凪ぎ払いの力は弱く、少しづつの後退は免れない。


「おいおいイアハート、この数は無理だっての!うあ、こっちくんな!」


そう返されたイアハートは、顔の左半分を、眼帯を大きくしたような革のマスクで被っていた。


「無理も無茶も承知の上だあ!ここが抜かれたら雪崩こんできやがる!チビどもも居るんだ、やるしかねえ!」


開拓地には傷痍騎士たちが多く集まるが、今はこの場にいる村人よりも魔獣の方が多い。


村は段階的に森に向かって土地を広げていく関係で、どうしても獣や魔獣たちとの遭遇が多い場所になる。結界は優秀だが完璧ではない。


畑を拡張するために開墾した、今は開けてしまった里山の見通しの良さが恨めしい。


そこに早馬の蹄の音が近づいてくる。


「おーい!グルーヴの旦那が到着したぞ!」


「助かったあ!」

「旦那こっちです!」


エルフォード・グルーヴ到着の知らせに、戦線のいたるところから安堵の声が上がる。


「すまん!遅くなった」


栗毛の賢い馬も魔獣相手では怯えてしまう。


エルフォードは(あぶみ)から片足を蹴りあげながら、ザッと馬の背から飛び降りた。


彼が口笛を短く「ピッ」と吹くと、馬は勝手に後方に避難していく。


「ダンロック村長!怪我人を下がらせてくれ!」


指示を出したエルフォードは、ダンロック達と対峙していた魔獣の群れにすかさず水破弾ウォーターボムを撃ち込む。


範囲攻撃の威力では、炎系統にやや劣る水系統の魔法ではあるが、秋の森林地帯で炎系統の攻撃はご法度なので仕方ない。


呼ばれた村長は、戦斧を振り回して、牙をむく魔獣7匹ほどと対峙していた最中だった。


「旦那!了解でさ!」


水破弾ウォーターボムで、魔獣が怯んだ隙に彼らは素早く後退してくる。


村長は背は低いが横幅のある筋肉質の体躯を揺らせながら、背中に怪我人を庇い、エルフォードの後ろまで下がった。


そこら中に爪による引っ掻き傷があり、噛まれた所から出血もしている。


しかし、そんなやられっぷりであっても、滲み出る安定感はさすが村長といったところ。


たぶんダンロックは、何代か前の先祖にきっとドワーフがいる。


「ディザン!近くにいる連中を下がらせてくれ!今から防壁を作る!」


エルフォードは叫び終わるや、脳内で待機させていた鍵言スペル・トリガーを次々と発動させる。


エルフォードを英雄たらしめた彼の固有ギフト「並行詠唱」がいかんなく発揮され、いくつもの小爆発が前線に弾幕を形成した。


ウオオォン…キャンキャン


その破壊の領域内は、水蒸気爆発のような激しい衝撃に見舞われ、数多くの魔獣が頭蓋骨を砕かれて息絶えていく。


それでも魔獣は次々と森から溢れてくる。目は赤く血走り明らかにまともな状態ではない。


今日は愛娘のアリシティアから指摘のあった黒魔石マジックカーボンの鉱床を本来確認に来る予定で、対魔獣用の装備は多くは持っていなかった。


その貴重な装備である魔獣避けの土団子も、女子供の避難している開拓村の貯蔵倉庫のまわりに撒いていてすでにない。


この状態での最適解と言えば、いつ途切れるかわからぬ群れの殲滅ではなく、まだ稼働している結界石の間を、何らかの物理的な防壁でつなぎ、領民をいち早く護ることであろう。


そして、エルフォードにはそれを成せる力がある。


「エルフォードの名において『ウィスラノート』に我が魔力を捧ぐ。大地の力を持ってに触れし土のたましいを呼び起こし、護りの壁を築かん…岩壁ロックウォール


軽い地鳴りの後、山の土が命をもったように盛り上がりせり上がり、厚みのあったそれは徐々に圧縮し、そこに硬質な岩壁をなした。


この「目」を鍵言スペルトリガーに組み込んで指定した場合、魔法は見渡せる範囲に影響が及ぶ。


ざっと300メートルほどと、規格外にも甚だしい規模の岩壁ができたが、それでもまだ足りていない。


「ディザン達は分断したこちら側の魔獣を掃討してくれ、ダンロック達は村へ退避、イアハートたちは後からついてこい!」


掛け声とともに、まだ防壁のない左側へ走り出す。


高さのある岩壁さえ設置できれば、希に飛び込んでくる魔獣を屠りながら、時間をかけた対策をうてる。


魔獣は肉も喰らうが、特に上質の魔力を持つ個体を好んで喰らう。


獣達からしたら、エルフォードから漏れる魔力は、抗い難いごちそうの匂いに感じられるのだ。


集団の狩りの本能により強く支配されたストリッシェの群れは、さらに狂乱状態となって、愚直にもエルフォードを追いかけようとした。


「獣ども、ついてくるがいい!」


魔力弾マジックバレット」と呼ばれる、純粋な魔力の塊をエサとして軽く数発ほど打ち出しながら、身体強化の上にさらに「俊敏クイック」の魔法を重ねがけ、エルフォードは森へ幾分寄った位置を走る。


幾つかの小さな群れは、魔力弾マジックバレットの誘導にはかからず、ディザンダードの隊が受け持つこととなったが、大半はエルフォードに追従していく。


「よしっ!」


森との境界は整地などされておらず、走り出せば樹木の根や大人の背丈ほどある岩、窪地やちょっとした尾根のような地形がランダムにあらわれる。


速度を落とさずに、そのままの勢いでエルフォードは疾走する。


「はっ!」


姿がぶれるほどの動きで回避し、飛び越え、樹の幹を蹴り、空中をも駆けるように走り抜けていく。


もはやパルクールが可愛らしく見える人間離れした身体操作である。


本能に突き動かされたストリッシェ達は「ハッハッハッ」と舌とよだれを出しながら我先にと彼の後を追う。


走りながら、岩壁ロックウォールを継ぎ足していき、魔獣の進路を制限しながら、微かに水の音がする方向を全力で目指す。


空から見れば、まるで大蛇がのたうつように、岩壁ロックウォールが後を追いかけ長城を築いていく様が見えたはずだ。


玉のような汗を置き去りに、破裂しそうな自らの心臓に、しっかり動けと念を送りながらエルフォードは必死に走り抜けた。


視界に飛び込む枝は剣で素早く凪ぎ払う。それでも避けきれず、野営用のマントにかぎ裂きを幾つもつくっていく。


微かだった水音が…しかし滝壺に叩きこまれる大量の水の「ドドドドォ」という唸りに似た音に変わってきこえてきた。


と、唐突に視界が開ける。

彼が待ち望んだ光景が訪れた。


彼は滝の上部の岩棚にまろびでていた。その滝とはアウォーエナル山脈に水源を持つニブカル河の本流の瀑布である。


最狭部のその幅、約30メートル。

しかし、エルフォードに躊躇いはない。


一瞬、その身を沈みこませたかと思うと、思い切りその足を蹴り出した。


足下の岩が耐えきれずに、クモの巣のような亀裂と共に弾けるほどの全力の踏み切りのエネルギーは、エルフォードの身体を、まるでサーカスのブランコ乗りのような綺麗な弧を描かせて空中に打ち上げた。


反対岸の滝の上部に鬱蒼と繁る蔦の先端に手が届くほどに。


愚かにも魔獣は、その後を次々と追って飛び、空中に足場を求め足をばたつかせた後、滝壺へまっ逆さまに墜落し…


ド、ド、ドドトドボンッ!

「グェル…ゲェア…キャン」断末魔を残して、激流に飲まれていった。ここは落差があり、一度滝壺に飲まれては、死体となるまで浮かび上がることはない。


エルフォードの飛び移りによって突然負荷のかかったその蔦は、バキバキと引き裂かれるような音をたてながら彼を振り子のようにスイングして滝の横の急斜面に放り出した。


「うおおぉっ!」


そのままの勢いで転がり込んだエルフォードは、幾つもの灌木をへし折りながらバウンドして転がり…


「…いてっ!あがっ、いだだだっ、ぐっ!…だっ!がっ…いたあ!」


…そして大きめの樹の根元でガッと止まった。


天地が回る感覚にしばらくは動けず、頭をふりながら何とか四つん這いになり、大木の幹を支えに立ち上がろうと試みる。


「うう…強化しても痛いもんは痛い…」


自分が飛び出した滝の上部を眺めながら、ウィンディアと共に探索者をしていたころを思い出していた。


「…旦那あ!大丈夫ですかい!」


「ああ、大丈夫だ問題ない!」


エルフォードを心配する声は、記憶にある可憐なウィンディアのものではなく、むくつけき男どもの野太い声だったが。


すぐさま領主の顔に戻したエルフォードは、あちこちぶつけた痛みと、魔力が枯渇寸前でふらつく足に鞭うって、イアハートの投げたロープにつかまった。


一刻ほどの間続いた攻防の結末は、こんな激しくもあっけないものだったのだ。



残敵を掃討し、素材として使えそうな魔獣の毛皮や、魔獣の核たる魂魄結晶こんぱくけっしょうを回収し、戦士たちは村にある仮住まいまで帰っていく。


エルフォードが屋敷に引き上げるまでの僅かな時間で、貯蔵倉庫に集まり情報の共有がなされていた。


この村は、行き場を無くした人々の受け皿であると同時に、男爵領の軍事拠点でもある。


ダンロックは頭をかきながら、エルフォードに切り出した。


「旦那面目ねえ…こりゃ俺達だけで何とかしなきゃいけないところだ」


「何を言ってるダンロック?これでも腐っても領主だ気にしないでいい…それで、これで何本目だ、この村の標石柱が壊れたのは?」


「昨年の始生祭から数えて二本目、この五年の間なら五本でさあ」


「そうか…いよいよ危ういな。この面積だけはだだっ広い貧乏領が、少ない兵力でもなんとかやってこられたのは、この標石柱の結界のおかげだったんだが…」


「旦那…いや、ご領主のおかげで防壁が出来たから、しばらくは大丈夫でしょうが、問題は他にもありやす」


「…冬越しの食料か?」


「へえ、その通りで。北島ノース・アイランドから避難してきた新入りの分だけ、まるっと足りやせん…ストリッシェはやっぱり食えませんかい?」


「ストリッシェ…あれはなあ、何故か死ぬと、肉が尿の臭いに染まるんだ。たいがい食べた翌日には食中毒に……冬越しの食料のことはわかった。…何とかしよう」


エルフォードの遠くを見る目を見て、ダンロックは心の中で「あ、旦那は以前食べたんだな、あれを…」と、勇者の尊い犠牲に合掌した。


「あとは、咳が止まらず寝込んでいるものが何人かおりやす。旦那?ウィンディア奥さまにポーションをお願いできやすか?」


「わかった、そちらも手配しよう」


そこで、今まで腕を組んで静かに話を聞いていたイアハートが口を開いた。 


「エルフォードの旦那…ユリーナ達の事なんだが…」


北島ノース・アイランドで大変な目にあったと聞いていたが…確か兄君の?」


「へ…はい。古参の子達と馴染めてないっていうか…壁をつくっちまってて…そこんとこ、もっと細かく見てやりてぇ、けども自分ではどうしてやればいいかわからねぇんで…」


「…同年代の女の子は少なかったな…わかった、次に来る時にセレスとアリスを連れてこよう。根本的な解決には遠いだろうが、まずは話せる相手が必要だろう」


「だんなあ…ありがとうございます」


エルフォードの対応に、心が温かくなる。


仲の良かった兄夫婦の遺した子供たちである。イアハートも、何とかしてやりたい気持ちがあり、ユリーナ達も外から見れば彼に懐いていたが、いかんせんお互いに不器用にすぎた。


予備的な話しに移ったと見て、ディザンダードも口を開く。


「旦那?例の異国の方はよろしいんですかい?船が打ち寄せられたと…ここに匿うなら準備もしねえと…」


「ディザン、お前あの従者のねーちゃん狙いか?」


ダンロックがやじを飛ばす。

いい感じの雰囲気が、見事にぶち壊しである。


「難破船に乗っていた異国の民は…辺境伯様預りとなった。次の辺境伯領都への船便で移動だ。それまでは網元の家だな。残念だったなディザン」


「ダンロック!何てこと言いやがる。エルフォードの旦那も勘弁してくださいよ」


がはははは、と豪快な笑い声でハーブ茶片手の情報共有の場は幕となった。


この開拓村の人たちには詳細こそ伝えてはいないが、その船には二人の人間が乗っていた。


その従者がつかえていたのは、耳の形ではまだヒューマンと区別のつかない、エルフの少女だったのだ。


その存在が、この国にもたらす()()を、彼らはまだ知らない。




アリスの領都行きは、エルフの少女と一緒の船便になりそうです。


セレス?次は出番あるみたいよ?

「わかったあ!」


よろしければ☆の応援もお待ちしております。



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