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五話 まどろみのち、ロンダドール!

セレスの健やかな成長のために、セレスとアリスの関係を、年子の姉妹から双子に変更しています。内容には変化はありませんので、続きから読んでいただいて大丈夫です。


ん?これは…?


『…アリス?歴史を変えるのは容易なことではないわ』


逆光に、話す相手の顔が霞む。


『わたしたちは、いくつもの別々の世界にいて、それでいて、一つの現実に相互にリンクしているの…だから、どれか一つを改変しても、分岐点(ターニングポイント)に押し戻されてしまうわ』


少し成長した、わたしが頷いている。


これは…夢?あなたは誰?


『…ここまで繰り返したけれど、どうやっても、どう長らえても十四歳のアリスとともに皆……しまう。だから…この方法は最後の手段…』


『…わたしは、受け入れるわ…』


『そう…長い時間(とき)の流れの中で、もしも忘れていなければ、あの鍵言(スペル・トリガー)を唱えなさい……これから禁術を実行した…その後に、あなたが存在(そんざい)している可能性はとても低い…それでも貴女は、やっぱりその道を選ぶと思っていたけれど』


『それは買い被りだわ、ミス…』


肝心の彼女の名前が聞こえない。でも、心から信じられる誰か。


『せめて収納(・・)は、そのままに保存してあるから…もしも戻れたなら、必ず中身を確かめるのよ?アリス…どうか消えないで…』


顔は見えないが、確かに優しく微笑んだように

思えた。


起きる直前の夢は鮮明なものだけれど、目覚めに向かう過程で、この時の夢は薄らいでしまっていた。 



どこからだろう…ジュピタルの香る隙間風が入ってきた…


朝のまどろみは、肌寒さを感じて一気に覚醒へと向かう。


「…ん?…」


今日は座学も武技教室もお休みで、久しぶりに雑木林というか、里山に向かう予定だった。


「セレス?あれ?誰か、確かに…うーん…夢か…」


なんだかボヤッとする頭をフリフリして、軽くセレスの肩を「おきて」と揺さぶる。あ、訓練で手のひらが赤くなってるなあ…


「う…ん?ふぁ…あれ?アリス?おはよう…あ、そっか、きのうはいっしょに寝てたんだった」


「おはよう、そうだね…ふあぁ…今朝は寒いね。…セレス?今日は標石柱の手前まで行こっか?」


夕べは寒かったから、二人でひっついて寝てたのだ。ほんと子供のころはよく一緒に寝てたなあ。


今日の「やんちゃ」は冬の支度もあるので、少し奥深いところまで入り込むつもりでいるのだけれど、標石柱の向こう側まで行きさえしなければ、子供でも比較的安全なのだ。


その標石柱というのは、わたしの背丈ぐらいの結界の要になる石柱で、幅50㎝×奥行き30㎝ほどの多孔質のグレーの石である。


里山より、さらに森の奥にあって、魔獣と人の支配域を分かつように、半里ごとに等間隔に並んでいる。


周囲が暗くなると、森のところどころに、青く薄ぼんやりと光っているのが見える。


魔法王国時代の遺物で、二千年近く経過した現在も稼働している、今では再現の難しいオーパーツの一つなのだ。


セレスはすごく眠そう。

「…ふあぁ、寒いね…やっぱり森のけっかいの近くまでいくの?」


寒いとはいっても、グルーヴ領は南島(サウス・アイランド)の北部に位置しているので、ちょうど母潮(暖流)が湾内に入り込むこともあり、どんなに雪が降っても大人の膝程度にしか積もらない。


ただ、その関係かはわからないけど、冬の天候はころころと変わり、貴重なたんぱく質の源であるブレイド・フィッシュも、漁はほとんどお休みになるのだけれど。


「うん。シロップの採取かごも取り替えしときたいしね…あ、こらセレス?毛布ひっぱらないで?」


「あ!?あの甘いやつ?かえったらガレットだね!もうふは…わたさないよお?クスクスっ」


セレスはそば粉と小麦粉ミックスのガレットに優しい甘味のメープルシロップをかけて食べるのが最近のお気に入りになっている。


そういうわたしも、甘味に飢えていたらしく、未来(・・)の記憶をたどって、森の奥に群生していたサトウカエデ?を再び発見した時は狂喜乱舞したものだ。


本来のサトウカエデなら秋は時期外れで樹液の濃度は薄いのだけど、こっちの種は秋もいけるみたいだし、このメープルシロップは、採取量が期待できる。


特産品にはもってこいだね。


後はお楽しみの楽器作りの材料、()の採取もある。


工夫は必要だけれど、ほぼ片手でも吹ける笛が、愛子の世界には存在していたことに思い至ったのだ!


その名は「ロンダドール」掠れた音がすごく素朴な味わいで、コンドルが飛んでいきそうな音が素敵だ。


一つの笛に単音を割り当てて、それを必要な音階順に横一列に並べて演奏する奏法は、ハーモニカに近い民族楽器なのだ。


調律を多少犠牲にすれば、竹さえあれば再現できるのだから、楽器作成の難易度はすごく低いはず。


考えついた日から、わたしはずっとワクワクが止まらない。


ああ!?

うっとりワクワクしてる間に、毛布完全に巻き取られた。


うーさぶぃよお。


セレスがミノムシみたいになってる。


「あー、ふーん?セレスはそんなことするんだ?おかえしだっ!」


「あははははは…やめてーっアリス、あははははは」


こういう時はこちょぐりの刑だ!と、ひとしきり右手でこちょぐり倒していると、ミランダがやって来た。


「はい、失礼しますよ小さな淑女様(リトルレイディ)たち?朝からお元気なのは結構ですが、本日の支度をさせていただいても?」


「「はぁい」」


返事とともに寝間着のまま寝台を滑り降りて、てててと二人で窓脇の壁にかけてある、羊毛で厚く織った少し大きめの上着を着込みに向かう。


「奥様が下でお待ちですよ。顔を洗って、お口をすすいだら、またお部屋にいらしてくださいませ」


言いながら、ミランダは毛布と、寝台にかけてあったシーツをひっぺがした。


「ありがとうミランダ」


いつも毛布から、お日様の匂いがするのは彼女のおかげだし。


ミランダは皺の入った目元を弛めて、片眉を少しつり上げるという非常に器用でかっちょいい表情を見せた。「ありがとう」が嬉しかったらしい。


「慌てずにいってらっしゃい。このミランダが小さな淑女様(リトルレイディ)たちの野歩きに合わせたお召し物をご用意しておきましょう」


少し芝居がかっている感じで階下に送り出される。


おとうさまは冬の支度のために、既に隣村に出発した後らしかった。


「「おかあさま、おはようございます!」」


双子だからか、よくハモるね。


冬に風邪が流行り出す前のこの時期は、おかあさまは錬金工房(ワークスペース)にこもって、咳止めや解熱剤をポーション瓶に詰める作業をしているのだけれど、さすがに朝のこの時間帯は厨房にいてパンを焼きあげていた。


ミトンをはずし、

「セレスもアリスも、はい…おはよう。ビショップにも里山行きは伝えてあるから、今日は採取を沢山頑張ってね」


と、わたしたちの寝癖をねかし付けるように、しゃがみこんで、両手でそれぞれの頭をなでなでしてくれた。


野歩き用の身支度を済ませている間に、温め終っていたスープと、サラダとパンの簡単な朝食を、サッと食べたあと、番小屋に二人で向かう。


「ビショップ?準備はできていて?」


「はい、姫さま。斧を置いてまいります」


ビショップは既に小屋で朝食を済ませ、野歩きの格好で、番小屋の横手で薪を割っていた。


冬場の暖房に使う「黒魔石(マジックカーボン)」が尽きた時用の、予備の燃料となる薪だ。


それにしても…


なんというか、ビショップの薪割り姿はワイルドである。


年頃の娘さんならきっと、キュンとしてしまうぐらいに。捲ったその袖からのぞく上腕は筋肉祭りなのだから。


あいにく、わたしは五歳のアリスに融合した影響からか、精神が幼女の肉体にひっぱられて「すごーい」とは思うけれど、全く一ミリもキュンともしない。


寂しいものである。

まあ、愛子の時にも浮いた話しの一つもなかったのたけれど。


筋肉祭りはおいといて…


その愛子の知識として改めて検証するに「黒魔石(マジックカーボン)」は元々は石炭ではないかと思うのだ。


地層の中で魔力が染み込んだものが石炭から変質した、というところではないだろうか。


薪に比べて少ない量で長持ちし、放熱量も多いので、おとうさまが隣村の山奥で発見して以来よく採取してきている。


これがたくさん採れるのなら、メープルシロップと共に、この貧乏男爵領を上向かせる一助となるはず。近々隣村への同行をおねだりしてみようかな。


ビショップが背負子を背に、ナタがわりの無骨な片手剣を手にして現れた。


「ではまいりましょうか」


乗馬服に似た服の上にポンチョという、勇ましい出で立ちのわたしたちは、大根を簾のように軒先に干した番小屋を後にした。


背景とのミスマッチがはんぱない。



里山へのつづら折りの道を歩いていく。


山土の匂いが混じる風が揺れて吹くたびに、何匹もの腹の赤いトンボが、ふぃっふぃっと唐突に飛翔の軌道を変える様が見える。


屋敷のある中央村を、右に左にと眼下に見ながらしばらく歩いたころ、しきりにセレスが私の革袋を気にしはじめていた。


「アリス?それ、おべんとうちゃんと入ってる?わすれてきてない?」


「大丈夫だよ、セレス。ほら」


そう言って、袋から竹かごに収まったお弁当を出す。実際は袋の中で収納(・・)から取り出してるんだけど。


おかあさまが最近焼きだした柔らかパンに、ピパリスを効かせたバターを塗ってマリネをサンドしたものが入っている。

それを再びしまう。


セレスは左隣を歩いていたのに、狭い山道をぐるんと革袋のある右側まで、目にもとまらない速さで回り込んで覗きこんできた。


すぐ後ろを歩いていた

ビショップが、うっかりセレスを踏みかけたぐらいだ。


「これ…どうなってるの?」


セレスは頭の上に?マークをいくつも浮かべて首をひねっている。


まあ…すぐバレないように、確かにダミーに空の竹かごは入れている。


ただ、幼女が持てる程度の革袋に、三人分も入るわけがない。


収納(・・)に入れずに、ビショップに持ってもらえば良いのだけど、雑菌蔓延るこの世界で、衛生上のことを考えたら、涼しくなったとはいえ、長時間、そのまま袋に入れておきたくはなかった。


「ねえねえアリス?なにかおねえさまにかくしてない?」


ずっと覗きこんでくるので、視線と共につぃーっと顔もそらしてみた。


するとセレスも顔を合わせたまま、しゅた!っと追従してくる。


あ、なんか面白い。


「はくじょうしなさい!」


今度は反対を向いたら、しゅた!っとセレスもまた反対側に。


三回目に、さすがにビショップが「…姫さま」と呟いたので、ここまでにする。ったらする。


うーん…


ごくごく稀に、生まれながらにギフトを解放してしまっている子供もいるので、言っても大丈夫と言えば大丈夫なんだけど、ほんと…どうしようかな…


ともかく山歩き中に、後ろ向きで進むのはいろいろ危ないので、立ち止まって、セレスの野歩き用の上着である、ポンチョのポケットに右手をつっこんだ。


「え?なに?」


セレスのポンチョの左側のポケットには、もともと何も入っていない。


「じゃーーん!」


と、効果音を口で放って、ポケットから手を出すと、わたしの右手には小さな水筒が握られていた。


「え?えぇぇぇ!!」


絶賛大混乱のセレスである。


再び水筒をセレスのポケットにしまったふりをしてみたらポンチョをぽんっと脱いで「え?おかしーな」と言いつつ、ばさばさ逆さにふるので、悪いと思いながらも大爆笑してしまった。


ごめんよセレス。



結局セレスには、今日のお昼ご飯で「気がついたらすでにギフトが解放済み(・・・)だった」と話すことにした。


ギリギリ嘘ではないよ?


竹林に先に寄って、ロンダドールの製作に使う材料の細身の竹と、器として樹液を溜める大きめの竹も何本か切ってから、サトウカエデ(地球のものと似ているけれど同種かは不明)の樹液を採取に向かう予定なのだ。


セレスが竹林との境界に生えていたロケットキノコと格闘している間に、大きめの竹をビショップにザクザクと切ってもらい、ぎゅうぎゅうに収納(・・)に詰め込んだ。


「ビショップ?この竹の節から上がほしいのだけど」


「わかりました。ただ、アリス姫さま?よろしければ一度ご自身で竹の採取を試してみられませんか?


今日身につけてきた採取用の鉄のナイフでも、少しは魔力が通せますので…姫さまなら、このような細い竹など、すんなり切れるはずです。上部は私が持っておきますので」


あ、なるほど!そうね。指先に魔力を集める延長にナイフを置けばいいのだし。一回で成功するかはわからないけど。


「うまくできるかしら?」


「何事も挑戦ですよ姫さま」


「わかったわ。では試してみましょう」


ひゅっと息を吸って集中。「壱ノ型!」と呟いてみた。


そんな型は存在しないし、誰もつっこんでくれない。


こっちにくる前に日本で流行っていた鬼をぶっころ…げふん、げふん…


ノリだよ、ノリ。

これ大切。うむ。


輝石板(タブレット)に短杖をペンがわりにして書き込む要領で、刃先に魔力を纏わせる。


かなり抵抗がかかるけど、ビショップの言うとおり、うっすらと刃先に魔力を通すことが出来た。


そっと竹の根本にあてがってみる。


スルリと刃が通り、目当ての竹は根本から自由になった。


おお、すごいすごい!


楽しくなって、次々に刃をあてていく。

まるで、バターを切るみたい!


嬉々として素材を刈り尽くしていると、セレスが、

「こんなにいっぱい…このタケをどうするのアリス?」

と、じとりと半眼で見られた。


うぁっ?


振り返るとそこには、とてもわたしたちでは運びきれない量の竹がこんもりと山をつくっていて…


あ…


ビショップは涼しい顔を

している。訓練も兼ねていたから止めなかった…のかな?


臣下の鏡、優しさ満点だね。


「親方様から、導管の取り替えに、ちょうど材料の竹を言われておりましたので助かります」


あ、うん、知ってた。

ビショップは無駄が嫌いだ。



ざざ、ざざざ…

ビショップが細い竹の小山を、蔦で縛りあげて、引き摺ってる音を後ろに聞きながら帰路につく。

結局、竹の運搬はビショップにお願いした。ほんとは護衛の手を塞いでは駄目なんだけど仕方ないのだ。


柿(そのまま柿だった)やクメの実、それからキノコにセージに似たハーブ、甘い樹液を採取した竹筒は収納(・・)にしまい、行きに仕掛けた罠にかかったワイルドボア…はビショップの背負子の上に括られている。


実に大漁である。


「ふーん、アリスはいいなあ…すっごいべんりだよ、それ」


「うん、そうだね…これ食べ物もすぐには腐ったりしないんだよ」


「へー、すごーい。いろいろはいるみたいだし、いいね。おもくはないんでしょ?」


「うん、全然重たくないよ」


「ごはんのおかずがいっぱい!」


うっとりとした顔で、両手で頬を挟んでくねくねしてるセレスは、十分食いしん坊だよ。


「わたしも、なにかギフトをたまわれるかな…」


「内神様のお心に添うのなら、ね」


『内神様のお心に添う』と言う言い回しは『良い子にしてたらね』とか、大人なら『徳を積んでおけば』なんて意味になるんだけど、たぶん今世もセレスはギフトを賜るはず。


「そっかあ、がんばる!」


ポンチョを吹き飛ばす勢いで、セレスは幼い拳を振り上げた。


ほどなく五の刻の鐘を聴くころには番小屋につき、早速外の水場でビショップはワイルドボアの血抜きにかかる。


楽器の材料でもある細い竹は、番小屋の二階に置いてきた。


うふふふ…


このスペースは、「秘密基地」にすべく、少しずつ片付けを進めていたのだ。


まあ…番小屋の管理人であるビショップと、両親が知っている時点で秘密でも何でもないんだけど、そこは言ってはいけない公然の秘密ということで…


しーっ!だ。


わたしは竹で編んだ籠二つに収穫物を移しかえて、セレスと一緒に厨房を目指す。


「セレスお嬢様も、アリスお嬢様もお帰りなさいませ…まあ!こんなにたくさん!?」


ミランダがその分量に驚いていた。


「えっと、アリスがねしゅ…もがもが」


いきなりセレスがネタばらしに走ったから、慌てたよ。唇を親指と人差し指とで摘まんだら、なんか面白い顔…


「もが…アリスはさいきん、おねえちゃんのあつかいが()()だとおもう!かいぜんをようきゅうします!」


え?あ、どこで覚えたの難しい言葉?


「アリスお嬢様?セレスお嬢様のお口に泥がついてしまいますよ。お二人とも手を洗ってくださいまし」


「「はーい」」


さあ、水場に移動というところで「おかえしだっ」と言ってセレスに高速膝かっくんを食らう。


油断していたので、わたしは膝から崩れ落ちたし。


やっぱりセレスのギフトの兆候は、このころから出てたんだな、とちょっと納得した。



わたしも早速ロンダドールを作りたいところだけど、少し乾燥させないと、竹の()を取る時に炙る炎の熱で()()()ことになるので、あとちょっとがまんだ。


おかあさまの錬金工房(ワークスペース)に、メープルシロップの基になる樹液の入った竹筒を一つと、帰りに見つけた薬草をもっていく。


セレスは厨房でミランダと一緒だ。メープルシロップたっぷりのガレットをおやつにすべく奮闘している。


「おかあさま、樹液と薬草を採ってまいりました」


わたしたちを迎えるために開けてあった工房の扉から、そのまま収穫物を持っていく。


片手では持てないので、薬草は根っこを縛って、左手に引っかけてある。


「お帰りなさい。あら?樹液は、いっぱい採れるものね…」


えーと、おかあさま?この五倍は持って帰りましたよ?


「これならポーションに調合すると子供も飲みやすいと思っていっぱい採取してきたの」


「アリスも飲みやすくなるものね?」


中身は三十路かも知れないが、わたしの舌はおこちゃまなのだ。

わたしはニンマリ頷く。


おかあさまは、そんなわたしの頭をなでなでしてくれる。


「そう言えばアリスが培養?していたクメの実の青い液が、とても濃くなっているみたいだから、また手入れをしておいたほうが良いわね」


「はい、おかあさま。おやつの後にまた肥料に調合してみたいです」


「あれは…本当に効き目が凄いわね…せっかくだし、この次の調合はアリス一人でやってみましょうか?おかあさまが横についていてあげるから」


わたしはこくりと頷いた。


「セレスは興味が無いみたいだけれど、魔法学院の実技の予習にも役立つし、アリスには調合道具も用意したほうがよいかしらね」


ありがたいのだけど、ついさっき前のアリス生で創った道具を収納に入れ直したところである。


でも「もう持ってます」とは言えない。


なら、器具を作れる職人を紹介してもらおう。楽器は細かい細工がいるし、これからを考えるならツテを持っておきたいしね。


「ありがとう存じます、おかあさま。それなら、道具を作れる職人を教えてくださいますか?」


「少し先になるけれど、辺境伯様の領都にポーションを卸しにいくから、アリスもその時でもいい?」


「はい、おかあさま」


やった!野望に近づいた!

心の中でガッツポーズ。


そして、その後の領都訪問でわたしは運命の出会いをすることを、この時はまだ知るよしもないのだけど…どこが分岐点(ターニングポイント)だったか?と自分自身に問えば、おそらくは「ここだ」と言ってもいい瞬間が間近に迫っていた。

世の中がなんだか元気がない。そんな中でも「私にもできること」を、と前へ前へとタイプを進めています。


拙い文章ではありますが、皆様に少しでもほっこりしていただければ幸いです。


これからも誰もが忘れてしまう風景を、異世界に重ねてノスタルジックに描写していければと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

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