圭子の回想
しばらくして、医師が来た。
「おはようございます」と圭子は、元気な声で言った。
「おはよう。患者さんの容態は?」
「足首を捻挫しているようで、かなり腫れています。今、冷やしてますので」
「よし、わかった。後は僕がやるから。圭子ちゃんは受付の準備をしてていいよ」
「はい」と圭子は、受付の窓口に座り、準備を始めた。
今日は患者の出足が遅いようだ。たぶん、雨の為だろう。雨の日は、だいたいそうだ。
ここの看護婦は、先生の奥さんと圭子のふたりである。
だから、忙しすぎる日もあるが、圭子は別に苦にはならない。大きな病院のような人間関係に悩まされないので、働きやすい。
それに、ここの先生は患者とのコミュニケーションを大切にしている。先生は話すことによって、患者の心を和らげようとしている。
これは長期間治療を要する患者には、効果的ではないかと圭子は思う。だから、圭子はこの診療所が気に入っている。
圭子は受付の準備をしながら、健太と出逢った日のことを思い出していた。
あれは三年ぐらい前だったろうか。暑い夏の日であった。健太を初めて見たのは、〝ロコ〟というライブハウスだった。
七月の終わり、圭子は純子から兄がライブハウスで演奏するから一緒に見に行こうと誘われた。純子とは幼なじみで、純子の兄とも面識があったので、喜んで誘いを受けた。
ヒロシはベースをやっていて、県内でもアマチュア・ミュージシャンの間では有名人だっだ。
とにかく、テクニックはプロ顔負けである。そこいらのプロよりもうまいんじゃないか、と圭子は思っている。
その当日、〝ロコ〟に18時頃入った。ここのライブハウスは変わっていて、中央に席はない。中央はダンシング・スペースになっている。
そして、ステージの両サイドにカウンターがあり、その後にボックス席がある。
ここは平日の月曜から木曜までは、レギュラーのバンドがオールディーズを演奏しているが、金曜と土曜はアマチュア・ミュージシャンのライブをやっている。
今では、圭子たちも2ヵ月に1回の割合でやらせてもらっている。
圭子と純子は後の方の席に座った。この店は後のほうがベスト・ポジションだ。
その夜は5組のバンドが出演していた。圭子は渡されたプログラムを見て、おやっと思った。プログラムには演奏するタイトルの下に作曲者と作詞者が書かれていた。
ヒロシのバンドの曲はすべてオリジナルで、曲はヒロシだが詞は谷川健太となっていた。ふつうヒロシは曲も詞も自分で書いて、人にまかせることはほとんどない。
よほど、谷川健太という人の詞が気に入ったんだろうと思った。
そのことを純子に言おうとしたら、当の純子は目が点になっていた。
そして、プログラムを見ながら純子はいきなり言ったのである。
「この人、うちの会社の人だわ!それも同じ課の先輩よ!」
純子が言っていたのは、健太のことだった。
ライブは七時頃から始まり、ヒロシのバンドはラストだった。
圭子はそれぞれのバンド演奏を聴きながら、〝なかなか高レベルだな〟と思った。オリジナルのみのバンドはヒロシ達だけだった。
他のバンドは洋楽系のコピー・バンドだったが、単に〝まね〟しているのではなく、自分たち流にアレンジしていて、個性を出していた。
そして、ヒロシのバンドが登場した。圭子は楽器のセッティングをしている時はヒロシに注目していたのだが、演奏が始まるとボーカルの健太から目が離せなくなっていた。
健太はTシャツにジーンズというラフな格好で、遠くを見つめて、語りかけるように歌っていた。
曲風はすべてバラードからミディアム調で、落ち着いた雰囲気をだしていた。
圭子は健太の歌を聞きながら、心が震えてくるのを感じた。健太の歌は耳から入ってくるのではなく、いきなり心に響いてくる。上手、下手のレベルじゃなく、ボーカリストが心を込めて歌っているのがよくわかるのである。そして、ヒロシのベースは健太の歌に寄り添うように、心地良く響いていた。
ヒロシのベースは完璧だった。ただ、ボーカルとベース以外の楽器がずれている感じがするのが、圭子は残念だなと思った。
別にコードがおかしいとかリズム感がないとかいうのではなく、ボーカルの雰囲気に合っていない感じがしていた。
でも、圭子はこういうボーカリストの歌を聴けただけでも、今夜来て良かったと思った。
ライブは9時頃に終わった。
圭子と純子は行きつけのパブにいた。ふたりとも、かなりアルコールが入っており、話に夢中だった。今、話題になっているのは健太のことだった。
「ほんと、今夜はびっくりしたわ!まさか、会社の先輩と兄貴がバンド組んでるなんて思わなかったわ。兄貴もひとこと言えばいいのに!」と純子が少々興奮気味で言った。
「きっと純子をびっくりさせようと思ったのよ」と言って圭子はバーボンを飲んだ。
圭子も純子もバーボンを飲んでいた。ふたりが飲んでいるバーボンはフォア・ローゼスで、男が飲むようなバーボンである。
ふつう女同士といったら、ビールとかカクテルが定番だ。だがこのふたり、かなりアルコールが強いらしく、顔にも全然出ていなかった。
「でも、今夜の谷川さん、ちょっぴり素敵だったな。見直しちゃった」
「会社ではどんな感じなの?」
「まあひとことで言えば、まっすぐな人ね。課長から何か言われても、ごまかすってことはまずしないわね。言い訳もしないし、要するにばか正直なの。だから、課長からはあまりよく見られてないけど、お得意さんからは気に入られているの。言い訳しないところが逆にいいんじゃないかな。私も、社内では一番話しやすいの」
「じゃあ、音楽の話なんかするんじゃないの?」
「するわよ。谷川さん、詳しいのよね。ジャンルなんてあまり気にせず聴いているらしいから、話が幅ひろいの。でもね、兄貴がバンド組んでるって話しても、何も言わなかったのよぉ。きっと兄貴とつるんでたのよ。そうそう、兄貴の会社はうちのお得意さんで、その担当が谷川さんなの」
「なるほど。そういうことだったのね。でも、ヒロシらしいわ。子供の頃からヒロシは純子を驚かすことが好きだったもんね」
それから、圭子と純子は子供の頃の話に夢中になった。
ふいに頭の上から声がした。
「よぉ。やっぱりここだったんだな」
「兄貴!打ち上げ終わったの?」
「まあな。圭子、久しぶりだな。今夜はサンキュー、見に来てくれて」
「どういたしまして。ヒロシ、相変わらずベースうまいわね」と、圭子はヒロシを見た。
ヒロシの横には健太が立っていた。
「そうそう、紹介しとくな。純子は知ってるな。谷川健太君だ。うちのバンドのボーカリストでもあり、仕事上の相棒でもある。こちらは、神田圭子さん。妹の純子と幼なじみだ」
「谷川です。初めまして」
「神田です。歌、素敵でしたよ」
「あ、ありがとうございます」と健太は照れたようにして言った。
「谷川さん、座ったら」と純子が健太を睨むようにして言った。
健太は圭子の横に、ヒロシは純子の横にそれぞれ座った。
「純ちゃん、びっくりした?」と健太が笑いながら言った。
「まあまあ、よくもふたりで驚かせてくれたわねぇ」
「俺は言っといたほうがいいんじゃないかって、ヒロシに言ったんだよ。でも、こういうことは不意打ちが面白いって、言うもんだから・・・」
「いつまでたっても兄貴は子供みたいなんだから、もう!」
「ハハハ・・・びっくりしたろ。ステージから見たおまえの顔ったらなかったぜ。信じられないって顔してたもんな」とヒロシは愉快そうに言った。
「プログラムを見た時の顔なんか、まだ見物だったわよ」と圭子も追い打ちをかけるように言った。
「なによ、圭子まで。どうせ、私は変な顔ですよ」と純子はぷりぷりしながら言った。
純子の名誉のために言っておくが、彼女はなかなか魅力的で、怒った時の顔なんか、チャーミングである。まあ、気の強いところは多少あるが・・・。
「おまえら、だいぶ飲んだろ」とヒロシが圭子と純子の顔を見て言った。
「そうね。この店では四杯目かな」と圭子が言った。
「あいかわらず、よく飲むなぁ。圭子、おまえ看護婦だろ。飲み過ぎは良くないんじゃないのか」
「たまにはいいの。ときたま飲むのは逆に体にいいのよ」
「ほんとかよ。まあいいや。それじゃ俺もバーボンにするか。健太、それでいいか?」
「ああ。いいよ。もう、ビールははいりそうもないし」
バーボンがきて、4人はあらためて乾杯した。
「谷川さん、ヒロシとはいつからバンド組んでるんですか?」と圭子が聞いた。
「3ヵ月ぐらい前からです。初めはあまり乗り気じゃなかったけどやり始めたら、けっこうはまっちゃって。ハハハ・・・」
「じゃあ、バンドは初めてなの?」
「ボーカルとしては初めてです。バンドは以前やってたけど、ピアノだったから」
「へぇ~、ピアノも弾けるんだ」
「ピアノもなかなかのもんだぜ」とヒロシが割り込んできた。
「谷川さん、なんで私には言ってくれなかったのよ!」と純子はまだむくれている。
「まあまあ純子、そう怒るなよ」とヒロシが純子をなだめた。
「純子は知ってると思うけど、健太とは仕事の関係で知り合った。最初は仕事の上でしかつきあいがなかったけど、そのうち音楽の趣味が合うってことがわかったんで、プライベートでもつきあうようになったんだよ」
「ふたりで音楽の話をするときりがないんだよ。で、ヒロシが一度俺のバンドの演奏を聞きにこないか言ったんで、見学しに行ったのが運のつきだったわけだ」と健太は笑いながら言った。
「ほんと、運のつきだったな。最初、バンドの練習を健太は見てただけだったんだけど、冗談で俺が一曲歌ってみるかって言ったんだだよ。そしたら、こいつほんとうに歌いやがったんだ」
圭子と純子は身を乗り出すようにして聞いている。
「ヒロシたちの演奏を聞いてたら、バンドやってた頃思いだして、その気になっちまった」
「たしか、〝素顔のままで〟だったな」
「それ、ビリー・ジョエルでしょ?」と圭子が聞いた。
「そう。俺がビリーの曲のなかでは一番好きな曲なんです」
「バラードが好きなんですね」
「好きというよりも、ピアノで弾き語りすると、どうしてもバラードになるんです。でも、〝素顔のまで〟は特別です。最初バンドで演奏した曲だから、想いが深いんです」
「しかし、歌う時これほど変わる奴もめずらしいぜ。俺、健太の歌を初めて聞いた時、間のとり方がうまいなと思った。完全に曲の世界に浸りきってるもんな。だから、バックでやってても気持ちよく演奏できるんだ」
「谷川さんは詞も書くんですね。どんな時に書くんですか?」と圭子が尋ねた。
健太はすこし照れ笑いしながら言った。
「景色が思い浮かぶんです」
「景色?」
「そうです。いろんな景色があって、そこからストーリーができるって感じかな」
「じゃあ、今夜の最初の曲はどんな景色が浮かんだんですか?」
「あれはスコールがあがった後の青空といった感じですね。その青空を見ながら、別れた女のことを想っていると、せつなくなって、やけに青空が眩しく感じられる。そういったことを表現したかったんです。最後の曲なんかは、夜明けをイメージして書いたんです。夜明けっていうのは神秘的ですよね。あれこそ、自然の美しさだと思うんです。その自然の神秘さと、それを一緒に感動できる人との出逢いの不思議さを対比してみたんです」
「変わってますね。ふつう詞のなかにでてくる景色っていうのは脇役って感じがするけど、谷川さんの場合は主役なんですね。どうして、そんな景色が浮かぶんですか?私には考えられないな」
「どうしてって言われても困るけど、たぶん子供の頃自然のなかで育ったからじゃないかな」
「どこに住んでたんですか?」
「鹿児島の吹上浜の近く」
「えっ、鹿児島出身なんですか!それにしては訛りがないですね」
「もうこっちに来て5年くらいたつから。吹上浜ってところはサーフィンのメッカなんですよ。夏になるとサーファーがたくさんやって来て、サーフィン天国って感じ。夜は夜でテントを張ってバーベキューなんかしてるしね。そこで、子供の頃から泳いだり、サーフフィンもすこしかじったかな。一番思い出深いのは吹上浜の夜明けですね。沖縄ほど海はきれいじゃないけど、中学の頃早起きしていつも見てたなぁ。水平線から太陽の光がすこしずつもれていくってのは、ほんとに神秘的ですよ」
「うらやましいなぁ。海の夜明けってのを毎日見られるなんて」
「だけど、海ばかりでなにもない生活でしたよ。ただ、毎年くるサーファーの人に音楽の事をいろいろ教えてもらってから、世界が変わりましたね。ビーチ・ボーイズに始まって、ウエスト・コーストのミュージシャンのことをいろいろ教えてもらいましたよ。俺って洋楽から入って邦楽を聞いたんですよ。詞に興味をもち始めたのは邦楽を聞き始めてからなんです。洋楽の詞というのはあまりにも奥が深すぎて、参考にならないんです。それからというもの邦楽系の曲を聞きまくり、詞を書き始めました。書き始めて、いつも頭に浮かぶのがあの吹上浜で見た夜明けなんですよ。よほどあの夜明けが強烈な印象だったんでしょうね。だから、詞を書こうとすると、景色がまずでてくるんです」と健太は懐かしむように言った。
圭子は健太の話を聞いて、育った環境というのは、生きていくうえでいかに大事かというのをあらためて感じた。
「だから、健太と組んだんだよ。俺も詞を書くけど、健太は発想からして違うからおもしろいなあと思ったんだ。だけど、ほかのメンバーは違うんだ。あまりにもロマンチックすぎるし、曲調もおとなしいって言うんだ。健太の詞に合わせて曲を作ろうとすると、どうしてもバラード系になっちゃうんだ。でも、俺は満足している」とヒロシが真面目な顔で言った。
「兄貴、バンドうまくいってないの?今夜の演奏もちょっとアンバランスかなとは思ったけど・・・」と純子が心配そうに尋ねた。
「さすが純子は耳が肥えてるな。そうなんだ。実は演奏が終わった後で、ほかのメンバーがボーカルを変えてくれなんて言いだしやがった。俺は健太以外のボーカルは考えられないと言った。音楽観のの違いというやつかな。で、解散さ」
「音楽観の違いもあるかもしれないけど、すこしレベルが違うようにも感じとれたわ。バラードっていうのはごまかしがきかないし、プレイヤーの演奏テクニックがあからさまになると思うの。私から見て、兄貴と谷川さんはお互い同レベルとまでいかなくても、結構いい線いってると思う。だから谷川さん、自信もっていいわよ。私が保証するわ」
「そうね。私は演奏のレベルというのはわからなかったけど、バンドとしてのまとまりが欠けていたかなと思ったわ。ボーカルとベースはいいんだけど、それ以外の楽器がなにかずれてるような感じを受けたの」と圭子は言ってバーボンを飲んだ。
健太は圭子と純子の話を静かに聞いていた。
別に健太はバンドのメンバーから、ボーカルを変えてくれといわれて落ち込みはしなかった。たしかにすくなからずショックは受けたが、自分には自分のスタイルがあるし、それを他のメンバーが気に入らないなら、やめるつもりでいた。だが、ヒロシはボーカルを変えるつもりはないと言った。その言葉が健太は嬉しかったし、ヒロシがその気ならヒロシと組んでやっていこうと思っていたのである。
「やっぱり、俺の判断は正しかったな。純子と圭子からそう言われれば、百人力だぜ。そこでだ、ふたりに頼みがあるんだ」とヒロシは一転してニコニコしながらふたりを見た。
「なんかイヤな予感・・・」とふたり同時に言った。
「バンドは解散した。だけど、俺も健太もバンドはやっていこうと思っている。早速メンバーを探さなきゃならない。今度のバンドはキーボードをふたりにしようと思っているんだ。そのふたりはもう決まっている。分るな?」
「ひょっとして、それ私と圭子のこと?」と純子は心外といった表情をした。
一方の圭子は〝ああ、やっぱり・・・〟といった表情だった。
圭子と純子はユニットを組んで、スタジオなんかで練習している。
圭子はピアノをやっていて、純子はシンセサイザーが得意だ。特に純子はパソコンに詳しく、ピアノ以外のパートは純子がすべて作っている。
「無理よ。だって、私と圭子はふたりで組んでやっているのよ。やっと軌道にのってきたってところなのに・・・」と純子はまた口をとんがらせた。
「そこをなんとか・・・ほら、健太もなんとか言えよ」
「なんとか言えたって、言いようがないよ。俺はふたりの演奏を聞いたことがないし、ふたりが俺のスタイルに合ってるかどうかわからないし・・・」と健太は真面目な顔をして言った。
「バカ!このふたりなら大丈夫だって言ったろ。そんなこと言ったら、まとまる話もまとまらないだろうが!」とヒロシは健太をたしなめた。
しばらく、沈黙があった。この店も客がずいぶん減ってきたようである。
ふいに圭子が言った。
「さすがだわ。谷川さんの言葉、気に入った。そうよ、聞いたこともないのにメンバーになってくれっていうのがおかしいわ。それに自分のスタイルがあるってところがいいわね。私は今夜の谷川さんの歌は気に入ったし、今度は私たちの演奏を聞いてもらう番よ。聞いてもらって、谷川さんが気に入ってもらえたなら、私は考えてみてもいいわ」
「ちょっと圭子、裏切る気!これからやっとおもしろくなるってとこなのに・・・ショックだわ」
「私は谷川さんの歌を聞いて、この人のバックならやってもいいなと思ったの。谷川さんは自分の世界もってるようだし、何よりヒロシのベースと相性がいいように感じられたわ。純子、いちど私たちの演奏を聞いてもらおうよ。いい機会じゃない。それで谷川さんが気に入ったのなら、一緒に演奏してみようよ。それから決めてもいいんじゃない?」と圭子は純子を諭した。
純子はグラスをじっと見て、ふぅとため息をついた。
「圭子はうまいわねぇ、人を説得するのが。圭子に言われると、それも一理あるなと思っちゃう。分った、とにかく演奏を聞いてもらうわ」
それから、事はトントン拍子に進んだ。純子と圭子の演奏を健太はおおいに気に入った。そして、健太とヒロシが加わり一緒にやっていちばん喜んでいたのは、なんと純子だった。
純子は演奏が終わった後、こう言った。
「バンドっていいわね。人数が増えるとこんなにも楽しいなんて、夢にも思わなかった!」
「ちょっと純子、それって都合がよすぎるんじゃない?人を裏切り者扱いしたくせに」と圭子が笑いながら言っていた。
たしかに都合がいいと言われればそれまでではあるが、こればかりは仕方がないことではないだろうか。やはり、ふたりでやるよりは3人、3人でやるよりは4人である。バンドはやった者にしかわからないのである。
圭子は受付の窓口で思い出し笑いをしていた。医師が呼んでるのも気づかずに。
「圭子ちゃん、いないのかい!」
圭子はハッとした。
「はーい。すいませーん!」
圭子は慌てて、診察室へ入っていった。