第九十四話 王都への旅路
毎度の更新詐欺ですみません!
地名とかそれぞれの街の位置とか地形周りの設定詰めてたら遅くなっちゃいました!
思ったより短くなっちゃいましたが、今年最後の滑り込み更新です!
〈ブレイブ&ブレイド〉の世界は、複数の「地域」に分かれている。
それぞれの「地域」には大抵フリーレアやニーバーのように中心となる大きな街が一つあり、そこから離れた場所に一つか二つほどの町や村、複数のダンジョンが配置されている。
問題は、それぞれの「地域」の間の距離は大きく離れているため、街から街へ移動するには時間がかかってしまうということだ。
ブレブレには二年というタイムリミットがあるが、別の地域に行こうと思えば最低でも一週間程度かかる。
それを劇的に短縮出来る要素として、DLC第四弾の〈スペシャルセーフハウス〉のワープ機能があるが、残念ながらこれはまだ使えない。
あの家を買うための100億ウェンは流石にこの段階ではまだ用意は出来ないし、あれだって買っただけでどこにでも行けるようになる訳じゃない。
初期から解放されているワープ場所は一箇所だけ。
それ以外は、ワープ機能をオンにしてから自力で一度辿りつく必要があるのだ。
(とはいえ、今回は無視出来ないからな)
ニーバーの遺跡を攻略した「何者か」が旅立ったとしたら、その最初の行き先は、このフリーレアか王都の二択。
そして、その二択なら王都の方が可能性が高い。
王都は当然「地域」を代表する街であり、その場所は大陸の真ん中。
そういう意味で、王都である〈ブライトシティ〉はまさにこの世界の中心なのだ。
当然、それだけに有用な施設やダンジョンが多いため、俺もいつかは訪れてみたいと思ってはいた。
いい機会だと考えるべきだろう。
遺跡を攻略した剣士がニーバーを立ったのがもし五日前だとすると、あまり時間の猶予はない。
一刻も早く出発したいところだったが、思いついてすぐ出発、という訳には流石にいかない。
フリーレアとブライトシティを移動するには、馬車で十日ほどかかる。
ギルド側に対して抱えている仕事などもあるし、宿のキャンセルなどやっておかなくてはいけないことも多い。
その日は旅を前に、街を奔走することになったのだった。
※ ※ ※
そうして昼過ぎ。
アリの巣への遠征によって、関連の業務が止まっていたのがむしろ功を奏した。
ギルドのあれこれをどうにかこうにか調整して、訓練場にやってきた俺を待っていたのは、明らかに普段と違う様子のラッドたちだった。
ラッドは背中に大きな荷物を背負って潰されそうになっているし、ニュークはなぜか本をたくさん持って眼鏡をキランと光らせているし、マナはマナで「旅のこころえ」と書かれた付箋まみれの本を確認しては何やらふんふんとうなずいている。
普段通りなのは、今日も今日とて変わらない軽装のプラナくらいだろうか。
「……で、なんなんだそれ」
俺が尋ねると、鼻息も荒くラッドが答えた。
「食料だよ! アリの巣からの帰り、準備不足で散々な目に遭ったからな! ちゃんと用意したんだ!」
「あー……」
女王討伐の時、ラッドたちは長旅の準備をせずに突撃し、帰りの馬車では困ったこともあったらしい。
俺はなんとなくゲームの時のくせでインベントリに無駄に消耗品を買い込んでいたため特に問題はなかったが、その反省を生かした、ということか。
インベントリは非常に便利だが、「ゲームでアイテムとして存在していたものしか入れられない」という欠点がある。
アイテムではない食料ばかりを用意すれば、あのくらいの荷物にはなるだろうか。
続いてちらりと横に視線を巡らすと、ニュークが少し照れ臭そうに言った。
「その、僕も前回の馬車では暇な時間が多かったので、道中に読む本があればな、と」
それにしてはその量は異常では、と思ったが、まあ十日の馬車旅ならそのくらいの量にはなるだろうか。
そのさらに横では、マナが『旅のこころえ』を抱きしめるようにしてこちらを見ていた。
「わ、わたしも! 本格的な旅は初めてなので、ご迷惑にならないように、と思って……!」
その心意気は買うし、えらいなぁとは思う。
ただ……。
「あー。その、悪いな」
俺は何だか申し訳なくなって、頭をかいた。
「――王都へは、馬車を使わずに歩いて向かう予定なんだ」
「……へ?」
※ ※ ※
「……よし。ここだ」
荷物を少し片づけてもらったあと、俺たちは〈王都ブライトシティ〉を目指し、ギルドを出発した。
最初の目的地は当然、フリーレアの門……ではなく、
「え? ここって……」
アリの襲撃の直前、ギルドに手を回して購入してもらった廃屋だ。
「な、なあおっさん! 王都に行くんじゃなかったのかよ! ほかに用事があるなら……」
困惑し、そんなことを言い出すラッドを手で制す。
「あのなぁ。俺が何のためにこの家を押さえたと思う?」
「え?」
ポカンとするラッドの前で、俺は廃屋に入ると床にあった大きな蓋を押し開く。
蓋が大きくズレると、そこから地下へと続く穴が姿を現した。
それが何なのかは、ここにいるメンバーにはもう、説明の必要はないだろう。
「ま、まさか……」
顔をひきつらせるラッドに、俺はうなずいた。
「そのまさか、だ。旅の出発点はここ。王都にはこのアリの巣を使っていく!」
良いお年を!
次回更新は明日、一月一日です!