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主人公じゃない!  作者: ウスバー
第七部 偽りの仮面
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第百七十八話 人間ポータル

ようやくネコミミ取れたので深夜に更新です!!

まあまだハンドキャノンと無限ナイフが取れてないんですが、ネコミミあったら残りは簡単なのでもうクリアしたも同然ですね!(慢心)


 八月一日、深夜。

 アインの弟、レリックが発見されたという報告を水の都で受け取った俺たちは、籠城用の食料などをかき集め、移動までの暇を潰していた。


 というのも……。



「――本当、なんですか? 一瞬で王都まで行く手段があるなんて」



 俺が思いついた王都への最速の移動方法は、海路でも陸路でもなく、「転移」だったから。


「ああ。正確に言うと、これで飛べるのはフリーレアだから、王都まで一瞬って訳にはいかないけどな」


 ただ、フリーレアから王都までは、アリの巣……例の〈大空洞〉を使えば割と簡単に移動出来るため、実質的には水の都から王都まで、一晩で移動出来ることは間違いない。


「っと、そろそろ時間だな」


 時計の針が頂点を示すと同時に、俺の胸から黒い靄が飛び出してきて、襲いかかってくる。

 うなりをあげる闇が、俺にぶつかる直前、



「――〈瞬身〉!」



 俺は〈剣聖〉の回避技を発動し、



「――レクス、さま?」



 こちらを目を丸くして見つめるロゼの前に、瞬間移動したのだった。



 ※ ※ ※



「――お久しぶりです、レクス様! また(・・)あの方法で来られたんですね!」


 そう言って微笑むロゼは、見た目は深窓の令嬢といった風情だが、その正体は吸血鬼。

 人の血を吸ったり、杭を心臓に刺されないと死ななかったり、鏡に姿が映らなかったりするフィクション御用達の存在で、しかもそんな吸血鬼の中でも最強の王である〈肆の魔王〉だ。


 とはいえ、その力と記憶はいまだに未覚醒。

 それは、俺が彼女の魔王としての自分を蘇らせる鍵である「呪いの標」を代わりに受けたのが原因だが、



「――実はさっきの移動は、その『呪いの標』を使ったものなんだよ」



 この「呪いの標」というのは、かつて〈魔王〉だった頃のロゼが、自分を完全体にするために刻んだ術。


 毎晩、深夜の零時になると黒い靄が飛び出して、少しずつ「吸血鬼としての自分」を取り戻させるという「呪い」だ。


 まあ吸血鬼じゃない俺にとっては「吸血鬼としての自分」を取り戻させるも何もないので無害だったのだが、それはそれとして、これは「呪い」であり、「攻撃」だった。


「で、俺が覚えている〈剣聖〉の回避技〈瞬身〉は『攻撃を食らった瞬間にその相手の背後に瞬間移動する技』だから……」

「まさか、『呪いの標』に〈瞬身〉を使うと、一瞬でロゼさんのところまでワープする、と?」

「ああ、便利だろ?」


 俺があっさりとうなずくと、レシリアは額を押さえて黙り込んだ。

 流石に国をまたいだ大移動には、レシリアも驚きを隠せなかったらしい。


「私も初めてレクス様が〈瞬身〉で訪ねてこられた時は驚きました。その、そういう事情も知らず、ちょうど寝ようとしていた時だったので……」


 ロゼが少しほおを染めてそう言うと、レシリアの俺を見る目が一気に冷たくなった。


「兄さん……?」

「い、いや待った! い、一応、ちゃんと事前に本人の了承は取ってあったんだぞ!」


 雲行きの怪しい事態に、俺は慌てて口をはさんだ。

「本当ですか?」と言わんばかりの視線を向けるレシリアに、急いで弁解する。


「ほ、ほら、レシリアも聞いてただろ。吸血鬼騒動が全部収まった時、『だから、これからも会いに来てもいいか?』って俺が尋ねたら、ロゼも『喜んで!』って返してくれて……」


 これで、レシリアも納得してくれるはず。

 そう俺は思っていたのだが、


「兄さん……」


 なぜか、レシリアの顔から呆れが抜けないばかりか、何か哀れな生き物を見るような、なんとも言えないものになった。


「と、とにかく、だ!」


 場をリセットするように、俺は大声を出して話を戻す。


「ここからなら、いつでも王都に行ける。これで次の手を打つことが出来るな」

「次の手? すぐに保護しに行くんじゃないんですか?」


 レシリアは首を傾げるが、そこは段取りがある。


「いや、レリックに話をするのは、明日の夜の方がいい。そうすればまたここに転移が出来るから、途中の足取りを掴ませずにレリックたちを保護出来るだろ?」

「なる、ほど?」


 うなずきはしたものの、レシリアの反応は思わしくない。


「ですが、転移で移動するなら保護対象に〈パーティリード〉をつける必要があるはずです。大丈夫、なんですか?」

「それは……」


〈パーティリード〉は、登録すれば転移をしても一緒に連れてくることが便利なアイテムだが、見た目に難がある。

 何しろ〈パーティリード〉という名の通り、このアイテムの外観はまるっきりペット用のリード。


 犬の散歩とかをする時に飼い主が持っている紐と首輪、それが〈パーティリード〉の見た目なのだ!


 しかもこのアイテムは、「本人の同意」がないと付けられないアイテム。

 これを使って一緒に転移するためには、レリックとサナに自分からこの首輪をつけてもらわないとならないが……。


「大丈夫だ。俺にいい考えがある」

「いい考え?」


 疑うような目で俺を見るレシリアに向かって、俺は自信満々で答えた。



「――暗殺者ギルドの誘拐イベントを、俺たちで『乗っ取る』んだよ」




 ※ ※ ※



 俺の計画とは、あえて「暗殺者ギルドがレリックを誘拐した」状況を再現して、レリックたちを保護すること。


 この世界では、ゲームであったイベントは可能な限り再現されるように出来ている。

 だからそれを逆手に取るのだ。


 そもそも、暗殺者ギルドのイベントで「レリックが強くなる」ことと、「レリックとサナがスラム以外の場所で生活を始める」こと自体は悪いことではないというか、歓迎出来る事態。


 困るのは「レリックがアイン王子を敵だと思い込まされる」ことと、「人体に有害な薬を使われた」ことだから、それを抜きにして誘拐イベントを俺たちで再構築してやればいい。


 そこで考えた手順は、次の通りだ。


 まず、俺は暗殺者ギルドの最高幹部である〈フェイスレス〉に扮してレリックを保護。

 これなら保護の成功率も上がるし、誘拐の罪を暗殺者ギルドに押しつけて、騎士団を動かすことも出来る。


 それから〈薔薇の館〉に潜伏して、リリーと口裏を合わせて四日後に初めて俺たちが帰ってきたことにすれば、暗殺者ギルドの奴らもまさか俺たちがレリックを保護しているなんて思わないだろう。


 そのあとは、夜はフェイスレスに扮してレリックに会って彼を鍛え、昼間は暗殺者ギルドの捜索をするという二重生活をすればいい。


 寝不足が懸念されるのと、レシリアに俺から離れてレリックの護衛をするように頼むのが大変だったが、作戦は俺の計画通りに決行された。



 結果は……大成功。



 レリックの保護はゲームの誘拐をまるっきりなぞるように、こっちがびっくりするほどすんなり行ったし、それからのレリックの特訓も順調そのもの。


 ゲームとは違って危険な薬物なんて使っていないのに、俺やレシリアの指導と、前に作った「神の装備」、あとはレリックの訳分からんくらいに高い素質値と「格上を倒すと莫大な経験値がもらえる」というエリートの化身みたいな特性のおかげで、そのレベルはたったの二ヶ月で四十オーバー。


 ゲームにあった日記の通りの、いや、それ以上に凄まじいステータスに育ちやが……育ってくれた。


 一点だけ誤算があったのは、騎士団による捜索では暗殺者ギルドの構成員を一人も捕捉することが出来ず、拠点の制圧が出来なかったこと。

 ただこれも、最終的にはあまり問題にならなかった。


 十月十日、アイン王子襲撃の事件がゲーム通りに発生して、そこにゲーム時代とは真逆の陣営になったレリックが参戦。

 無双ゲーみたいな活躍をして、暗殺者ギルドの構成員を捕縛していったのだ。


 当然、手に入れた鍵から暗殺者ギルドに乗り込むことが出来、ギルドの隠れ家も無事に制圧。

 事件は一件落着となったのだった。



 ※ ※ ※



 その後、サナはそのままロゼに引き取られ、〈薔薇の館〉で過ごすことになった。


 ルビーとして接していた時からサナはロゼに懐いていたし、ロゼも広い屋敷に一人でいたのは寂しそうだったので、どちらにとっても最良な形に落ち着いたんじゃないかと思う。


 そして、レリックは……。


「おにいちゃん、気をつけてね!」

「ああ、サナも!」


 王族ではなく冒険者として、自らの道を歩む決断をした。


(ずっと、冒険者になるのが夢だって、言ってたもんな)


 弟子の旅立ちを見守るのはなんとなくこそばゆい想いがあるけれど、心配はしていない。

 何しろあいつは、俺を嫉妬……じゃなかった、感心させるほどの才能と、王子という立場を迷わず捨てられるほどの、目標があるのだから。


 ……ただ、隣に立っている俺の共犯者は、そうじゃなかったようだ。


「何だ。ずいぶんと心配そうだな、サファイア」


 俺が冗談混じりにそう呼びかけると、サファイアことレシリアはとても嫌そうな顔をした。


「やめてください。そもそも、心配、という訳じゃないです。……ただまた一人、被害者が増えたな、と」

「被害者?」


 こいつはたまに、よく分からない言い回しをする。

 不可解な言動に首を傾げていると、


「――レクス様! レシリアさん!」


 妹との別れを終えたレリックが、律儀にこちらにもあいさつに来た。

 ここは期間限定の師匠として、激励の言葉をかけてやろうと口を開いて、


「レクス様! レクス様に、折り入ってお願いがあるんです!」


 キラキラと、まるで憧れのアイドルを、いや、まるで神様でも見るような視線を送ってくるレリックに、なんとなく嫌な予感を覚える。


 その不安を裏付けるように、レリックは深々と、これ以上ないほどに深々と、俺に頭を下げて……。




「――どうか僕を、レクス様の手駒に加えてください!!」




 その日、なぜか俺に、王族の手下が出来たのだった。

やったねレクス、手下が増えたよ!






ということで、これで第七部は終了です!

やろうと思えばもう少しボリュームも出せたんですが、あんまり捜索パートとかレリックパート長くしても面白くならないよなーと思ったので、こんな形になりました!


これでまた「主人公じゃない!」は一休みして、ミリしらの更新に戻ります!

いや、にじゅゆとかも書きたいんですけど、ミリしら今めちゃくちゃいいところなんですよね!


一応気力が続けばまだ毎日更新を続けていくつもりなので、気が向いたら覗いてやってください!

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ちょっとした記入ミスで、登場人物も、世界観も、ゲームシステムも、それどころかジャンルすら分からないゲームのキャラに転生してしまったら……?
ミリしら転生ゲーマー」始まります!!




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― 新着の感想 ―
続き待ってるよー!
幼い頃のレシリアとレクス(本物)の話とかもいつか見てみたいです。
更新が無くても面白くて読み返してしまう もう何回ここまで読み返しただろう…またいつか更新来るのを待ってますね
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