第百七十三話 レリック
やっとバイオ〇ザードRe4一周目クリアしました!
とても出来がよくて終始楽しめたんですが、個人的に一番面白かったのは射的にアシュリー連れて行くといちいち大げさに褒めてくれて完全に接待射的と化してたことですかね!
正直めちゃくちゃ楽しかったです!!!!
――〈光の王子アイン〉の弟が見つかった。
そんな衝撃的な報告を持ってきた幼女巫女のハアトは、「とにかくギルドの通信機まで来て! 連絡しておくから!」と言い残すと、また慌てて駆け出していってしまった。
こうなれば、俺たちも観光なんて言っていられない。
駆け出していったハアトを追って、ギルドの方に向かう。
「レ、レクスさん! アイン様の弟って、あの……!」
小走りで俺の横にやってきたマナが、興奮した様子で話しかけてきた。
マナが転生者であると分かってから、お互いの知識のすり合わせを行った。
残念ながらマナが持っている知識はそれほど多くはなかったが、俺が手帳にまとめた内容を読んだおかげで、マナもイベントの流れなどは大まかに掴んでいる。
だからこそ、この情報の価値が分かったのだろう。
俺はマナの横を歩きながら、真剣な表情でうなずいた。
「――ああ。悲劇の王子〈レリック・ブライティス〉。兄を殺すかもしれないキャラクターだ」
※ ※ ※
ゲームソフトのパッケージを飾るイメージキャラであり、ある意味では「もう一人の主人公」とすら言える重要キャラ〈光の王子アイン〉。
チート四天王に数えられるほどに恵まれた能力値を持ち、数いるブレブレのNPCの中でももっとも重要な立ち位置にいる彼も、過酷なブレブレ世界にあっては安泰とは言えない。
少し関連イベントの調整をミスしてしまうだけで、たちまちのうちに命を落としてしまう。
――以前にこなした〈魂の試練〉と並んで、いや、それ以上にその危険性が高いのが、「光の王子アインの暗殺」イベントだ。
これは二年目のアインの誕生日に確定発生するもので、パレードをする王子の下に仮面をつけた怪しげな集団が襲いかかってくる。
アインと護衛の騎士は暗殺者たちと互角の戦いを繰り広げるものの、戦闘の途中で敵の暗殺者が仮面を外し、その顔にアインが驚いて動きが止まったところを刺され、殺されてしまう。
……というのがイベントの内容だ。
これは普通にやっていると回避策はないのだが、誕生日の当日に主人公が王都にいた時はイベントに介入することが可能で、その場合は仮面の下を見て動きの止まったアインを庇って暗殺者と戦うことが出来る。
この戦闘に勝つと、アインは生存。
ただし、その場合は暗殺者ギルドとの全面戦争に突入することになり、暗殺者である仮面の少年は当然死亡する。
そして、暗殺者ギルドとの戦いの中で、暗殺者の少年がアインの弟であったこと。
自らの出自を知らずにスラムで暮らしていたところ、暗殺者ギルドに騙され、暗殺者としての訓練を受けさせられたこと。
兄弟でありながらあまりにも境遇の違う兄への憎悪を植えつけられ、暗殺の駒にされたことなどが明かされる、というのがイベントの全貌だが……。
(でも、それが分かってもな)
暗殺を防がなければ兄であるアイン王子が死ぬし、暗殺を防げば弟であるレリックが死ぬ。
どのような選択をしても必ず犠牲の出る、後味の悪いイベントだった。
リメイク版でもそこに調整が入ったという情報はないらしいので、この世界の基になったブレブレGPにおいてもそれは同じなんだろうが……。
(――今ならまだ、間に合うかもしれない!!)
ゲームでは、暗殺イベントが発生する前にレリックを見つけることは出来なかった。
どれだけ王都を捜してもマップ上にレリックが存在しなかったのだから、どうしようもない。
だからレリックが暗殺者ギルドにさらわれるのを阻止することは出来ないし、洗脳されるのを防ぐのは不可能だったのだ。
けれど、ゲームが現実になった今、そんな縛りは意味をなさない。
彼が王都のどこかで生活している以上、捜せば必ず見つかるはずなのだ。
(ここまで時間はかかったけど、リリーに頼んで正解だったな)
レリックが暗殺者ギルドにさらわれた時期ははっきりとは明言されていないが、レリックの日記の記述から逆算するとそろそろのはず。
ギリギリではあったけれど、かろうじて間に合ったと考えるべきだろう。
「おにいちゃーん、連絡取れたよ! はやくはやくー!」
「悪い。今行く!」
ハアトに急かされ、俺たちはギルドに入り、通信機へ。
「リリーか!?」
「あっ、レクスさん!」
呼びかけると、聞き覚えのある声が通信機から聞こえてきた。
(う……。この声を聞くと、やっぱりちょっとだけ、身構えちまうな)
リリーは無印版ブレブレにおいては最悪の女装キャラだったが、あまりにも不評すぎてリメイク版で本物の女性になった(正確に言うと、無印版だと死んでいた姉と入れ替わりになった)という複雑な背景を持つキャラクターだ。
ゲームでは俺もトラウマを植えつけられたクチなので苦手意識があるが、それは今のリリーには関係がない。
むしろ、俺が思い込みから女装を疑っても笑顔で許してくれた聖人だ。
「アインの弟を見つけてくれたんだって? 助かったよ」
「あ、ありがとうございますっ!」
俺が出来る限りの気持ちを込めて労いの言葉をかけると、リリーが言葉を弾ませたのが分かった。
「詳しい話を、教えてくれるか?」
「はい。実は……」
何でも、難航していた弟捜しが進行したのは、暗殺者ギルドに動きがあったかららしい。
「その、前よりも頻繁に、スラムで怪しい人影を見るようになったんです。それで、暗殺者ギルドもレリック様を捜している可能性がある、と聞いていたので……」
そこでなんとリリーは、ギルドの動きが活発な方面に捜索範囲を絞ったらしい。
暗殺者ギルドは将来的にレリックを見つけるのが確定しているのだから、暗殺者ギルドが探している場所に必ずレリックはいる。
その危険ではあるけれど有効な一手は、今回はいい方向へと転がった。
範囲を絞って捜索したところ、そこでレリックという名前の少年と、彼と一緒に暮らしているサナという妹分の少女を見つけたそうだ。
サナというのは、暗殺者ギルドがレリックを引き入れるために半ば人質として利用した少女の名前と一致する。
これはもう、確定と言っていいだろう。
「じゃあ、まだ暗殺者ギルドは二人を見つけてはいないんだな?」
「そう、だと思います。ただ、今のままでは見つかるのも時間の問題かと」
やはり、タイミングとしてはギリギリか。
時間に余裕があれば色々と仕掛けてみたいんだが、こうなれば仕方がない。
「とりあえず、アインに話を通しておくか。暗殺者ギルドは強敵だけど、アインとフィンなら……」
「いえ、それが……」
ちょうど間の悪いことに、アイン王子は遠征に出ていて、あと二週間ほどは戻らないらしい。
連絡すればもしかすると早くなるかもしれないが、それでも一週間はかかるだろう、ということ。
「アイン様を待たずに、わたしたちだけで保護しますか?」
「……いや」
暗殺者ギルドのイベントは二年目限定。
そのため、敵として出てくる一般暗殺者でさえかなりのレベルを誇っている。
正直王都に残った戦力だけでは不安だし、レリックは保護したけどリリーは死んでしまいました、なんてことになったら困る。
「とにかく、急いでそっちに向かう。それまで、出来るだけ暗殺者ギルドを刺激しないように監視だけしておいてくれ」
「で、でも……」
協力者であるリリーにも、暗殺者ギルドがレリックを使ってアインを殺す計画があることは伝えてある。
ことがことだけに、不安なのだろう。
「大丈夫、俺がすぐに行く。それまで、くれぐれも早まったことはしないでくれよ」
不安そうなリリーを安心させるように、俺は自信のある声でそう締めくくって、通信を切った。
そのまま、少しの間だけ考えを巡らす。
「では、今から船旅ですか?」
「……そう、だな」
話を聞いていたらしいレシリアがそう確認してくるが、なぜだか俺はすぐにうなずけなかった。
(……間に合う、よな?)
このゲームにおいて、陸路を馬車で進むより、海路で移動した方が早い。
ここから王都まで馬車なら三週間以上かかるが、船を使えば十日もかからずに到着することが可能だ。
(それに……)
仮にレリックがさらわれ、ゲーム通りに洗脳されてしまったとしても、アインを取り巻く状況はゲームとは異なっている。
〈マニュアルアーツ〉のおかげでアイン本人の戦力は上がっているし、何よりアインの護衛として最強の仲間であるフィンを残してきた。
DLC追加キャラとして「主人公」並みの素質を持ち、さらに俺が〈魂の試練〉で力を分け与えたフィンは、スペックだけならあの〈剣聖ニルヴァ〉さえ上回るほど。
よっぽどの相手が出てこなければ、後れを取るはずがない。
暗殺者ギルドの幹部だろうと洗脳されたレリックだろうと、今の戦力なら余裕で撃退出来る……はずだ。
――お前なら大丈夫だよな、アイン。
王都の方を見やって、俺は遠く離れた友人を想う。
ただ、なぜだろう。
いくら楽観の材料を重ねても、胸中に浮かんだ黒い不安はその存在をいや増すばかりだった。
不穏の影!
もちろん次回更新も明日!!
精一杯頑張るつもりですが、このまま最後まで走り抜けられるように、感想やら評価やらで応援しといてください!
あ、でもこっちの感想欄ではネタバレには出来れば配慮お願いしますね!