第百五十話 新たな門出
ドーモ。読者=サン。
得意技はニンジャカラテガタと更新日詐欺ジツ、ウス・バーです!
ま、まあ例によって余計なことしてて更新遅れたんですが、それはあとで書くのでとりあえず本編どうぞ!
「……なんだかんだ、ここには長いこと世話になっちまったな」
誰に言うとでもなくつぶやくと、長く過ごした宿をあとにする。
遺跡最深部での光の女神との対話は、神々の名前が奪われてしまっているという驚愕()の情報と、このブレブレ世界を完全なハッピーエンドで攻略する糸口。
そして、メスダルニャシアのポーズとは一体なんなのかという大きな謎を残して終わりを告げた。
目標も定まったし、これで王都で出来ることは一段落。
そろそろ拠点を移してもいい頃だろう。
「師匠!」
俺が感傷に浸っていると、横から声がかけられた。
「……フィン。見送りにきてくれたのか?」
振り向いた先にいたのは、フィン。
不安そうにこちらを見る彼女の姿は、初期の誰にでも噛みつく狂犬のような姿とは微塵も結びつかない。
(そういえば、こいつとも色々あったなぁ)
最初は遺跡攻略者にして謎の「主人公」候補、それがなぜかいきなりアイン王子に辻斬りよろしく襲いかかってきて、それから俺が鍛えて〈魂の試練〉を受けさせて大幅強化したと思ったら、今度は「主人公」じゃないどころか実は名前も性別も偽っていたと告白されて……。
この一ヶ月ほどで起こった出来事だとは思えないほどに濃密だ。
だが、そのおかげで彼女とはずいぶんと打ち解けられたように思う。
それを示すように、俺を見るフィンの瞳は潤んでいた。
「……本当に、行ってしまうんですね」
今回の遠征ではフィンは留守番。
いまだに継続して「主人公」や第二王子たちを捜しているリリーの手伝いに誰か残しておきたかったというのもあるが、その一番の理由はアイン王子の護衛だ。
(暗殺イベントは流石にまだ先……のはずだが、何が起こるか分からないからな)
ここまで散々イレギュラーな事態に踊らされてきた。
万が一に備えることは必要だろう。
ほぼバグ技に近い方法で鍛えた今のフィンは、ゲーム最強キャラの一角である〈剣聖ニルヴァ〉にも匹敵するほどのステータスを誇る。
アインからスカウトされたくらいだし、ある程度は気心も知れている。
護衛には最適だろう。
それに加えて、俺たちがほかの街にいる間に二人でレベル上げをして、アインのレベルを原作ゲームよりも上にしてくれれば、今後は少し安心出来る。
最初から最後までイレギュラーの塊のような存在のフィンなら単独でゲームのイベントを破壊してくれそうな可能性すら感じるが、唯一の懸念があるとすれば、ゲーム本来のフィン関連イベントだろうか。
(たぶん、ゲームだと王子につくのが正規ルートって感じがするんだよな)
フィンはアインから受けたスカウトをあっさりと断っていたが、それは俺がいたからだ。
最初に会った時のフィンは強くなる手段を求めていたし、俺がいなければ〈魂の試練〉で大幅にパワーアップすることもなかった。
俺というイレギュラーがなければフィンはアイン王子に挑んで敗北して、それからなんだかんだで王子の下についていたんじゃないかという気がするのだ。
(でもまあ、フィンの強さは絶対にゲームの想定レベル以上にはなっているからなぁ)
そんなイベントが起きても、今のフィンなら自力で切り抜けられるんじゃないか、というのが俺の見立てだ。
それに……。
「まあ、心配するな。何かあったらどっからでも駆けつけるさ」
そこで俺は、耳元に光る小さな宝石のついたイヤリングを示した。
これは、俺たちが王都を出発すると話した時、アインから渡された特別な魔道具だ。
《――『通信』の魔道具だよ。ただし、受信専用のね》
気障ったらしく片目をつぶったアインの言葉が、俺の耳によみがえる。
《本当は、自由に通信が出来る魔道具を渡せたらよかったんだけど、あれは設置型でね。王宮と冒険者ギルド支部に一つずつ置いてあるけれど、持ち出しは出来ないんだ》
ゲームでは明言されていなかったと思うが、アリの襲撃の時、ヴェルテランはほかの支部とリアルタイムで連絡を取っていたようだった。
おそらくそれを可能にしていたのが、件の通信装置とやらなんだろう。
一方で、このイヤリングはその通信装置の子機のようなもので、自力での発信や返答こそ出来ないものの、その装置の通信先に選べば声を受け取ることが出来るらしい。
ゲームでも出てこなかったような代物だ。
貴重なものだと思ったのだが、俺がそれを指摘しても奴はいつもの笑みを浮かべるだけだった。
《はは、レクス以上にこれを持つにふさわしい人間なんていないさ。もしこっちで何か起こったら、王宮かギルド経由で君に連絡するよ》
そして別れ際、《あ、でも一個しかないものだから、くれぐれもなくしたりしないでくれよ》としれっとプレッシャーをかけてから王子様ウォークで去っていったのだ。
本当に一個しかないなら各支部に一つずつ置かれている通信装置の本体より貴重なのでは、と一瞬思ってしまったが、実際問題としてありがたい。
「ま、何かあったらアインに言ってくれ。あいつから連絡してもらえたら、可能な限り早く飛んでくるさ」
「師匠……」
潤んでいたフィンの瞳が、はっきりと輝きを増す。
悲しみだけをたたえていた彼女の表情は、いつのまにか違う色も帯びていた。
お互いなんとなく言葉を口にしないまま、見つめ合って……。
「――あの、別れがたいのは分かりましたがさっさと出発しませんか? もう全員準備が出来ているんですが」
それをさえぎったのは、平常運転のレシリアだった。
綺麗な碧色の瞳には、呆れの色が浮かんでいる。
「レ、レシリア。来てたのか」
「兄さんがいつまで経っても約束の場所に来ないので、みんなで捜しに来たんですよ」
そんな言葉に視線を向けると、確かにレシリアの後ろにはラッドたちの姿があり、ゆっくりとこちらに歩いてくるのが見えた。
「し、ししょう~」
それでもあきらめきれないのか、泣きそうな顔で俺に追いすがるフィン。
ルインとして姿を見せた時とはかけ離れた姿ではあるが、素直に自分の感情を表に出せるようになったのはいいことだろう。
とはいえ、困った。
俺がどうなだめようかと頭をひねっていると、
「そう心配しなくても、早ければ三週間程度で戻ってこれるはずです。そのくらい、近場の迷宮を巡っていたらあっという間ですよ」
めずらしく、諭すような優しい口調でレシリアがフィンに語りかける。
「……そ、そう、ですよね。わたしも、ちゃんと自分の役目を果たさないと」
その意外性に頭が冷えたのか、フィンはゴシゴシと目元をぬぐって、少しだけ無理をして笑顔を作った。
その様子を、レシリアはまるでお姉さん然として見守っているが……。
――ただ、俺は知っている。
実は、俺がアインの護衛を頼んだ相手はフィンだけじゃない。
予想外のイベントが起こる可能性を考えて、俺はレシリアにもここに残ってくれないか頼んでみたのだ。
それを、
「さ、三週間!? あ、ありえません! 一日くらいならまだしも、三週間は二十一日もあるんですよ!? そんなに長い間兄さんから目を離せる訳ないじゃないですか!!」
と、大人気なく一蹴したのを、俺は知っているのだ。
「レシリア……」
日頃の意趣返しも兼ねてレシリアにしらっとした視線を送ると、流石にばつが悪くなったのか、
「じ、時間が押しています。出発しましょうか」
と言って俺の背中を押すと、無理矢理宿の前から引っ張っていこうとする。
「分かった分かった。行くから押すなって」
何ともしまらない出発だが、こんなものだろう。
妹に背中を押されながら、今日の目的地に向かう。
だが、それを見咎めたのはラッドだった。
「あ、あれ? おっさん、まだどこか寄り道すんのか? 街の出口はそっちじゃなかったと思うんだけど」
それを聞いた俺たちは、顔を見合わせ、
「ラッドは一体、何を聞いてたのさ」
「ん。駄犬に道理を説いても無駄。どうせ街のことだけ聞いて、あとは聞き流してた」
ニュークは呆れ顔をして、プラナはしれっと毒を吐く。
「な、なんだよ! いくらオレだって、いつも使ってる街の門くらいは……」
顔を赤くして反論するラッドだが、残念ながらそれがすでに的外れだ。
「次の目的地に行くには、馬車じゃ時間がかかりすぎる。だから今回は門は使わない」
「え? でも、馬車じゃないんだったらどうやって……」
ぽかんと口を開けるラッドに見えるように、俺は大きく腕を持ち上げる。
そして王都の傍を流れる大きな川の方向に指を向けて、言った。
「――言ったろ。次の目的地は〈水の都〉。だから、船に乗って行くんだよ」
いざ、新天地へ!
ええと、何で更新がこんなに遅れたかという話ですが、以前まえがきで言ってた奴ですね
つまり……
「ありふれたせかいせいふく」という曲について、作曲者は? 歌詞の解釈は? タイトルはどういう意味? 調べてみました!
ボカロ曲歌詞解釈部(https://ncode.syosetu.com/n1091hr/)
いかがでしたか?
……とまあ一度やりたかったクソまとめネタはおいといて、割と真面目に歌詞の解釈やったらもはや活動報告に書くようなもんじゃなくなったのでエッセイとして投稿したんですよ!
でも実際投稿するとなると色々手間がかかったので、せめてもの供養にちょっと覗いてってくれると作者も安心して成仏出来ます
ということで次回更新は、成仏してなければ明日!
いえ、まあ歌詞解釈終わったし短くなりそうなのでおそらくほんとに明日です