第百四十二話 嗤う悪魔
もはや勝手に宣伝マンと化してるので作品名伏せずに言いますが、あのDlsi〇eで大好評発売中(現在24時間売上一位!)のあとらそふとさんの新作「ダンジョンイクサ」を、ついに最高難易度の神(敵のステ五倍 頭おかしい)でクリアしました!
たぶんプレイした人にしか伝わらないと思いますが、MVPは素早さを350(すごく速い)までドーピングした「戦場の水精」!
初期ステはクソ雑魚ナメクジなものの、飛天族の種族スキルで毎ターン確定で速度バフを累積させて敵の攻撃をガンガン避けながら、物理ダメージ78%×4回(物防デバフつき)とかいうぶっ壊れ技をAP50で繰り出すキリングマシーンで、特に速攻クリアの障害となるイラ&タスカなどには水属性物理がよく刺さることもあってほんとに環境キャラという感じでした
とはいえ、これはあくまで自己流の攻略での話
自由度の高いゲームですし、上手い人がやればきっともっと素晴らしい、もしくはお気に入りのモンスターを見つけられるかと思います!
つまり……みんなも「ダンジョンイクサ」、やろう!!!!
〈ムーンライトセイバー〉がその身を犠牲にして生み出した蒼い光が収まった時、悪魔の姿はどこにもなくなっていた。
「……ふぅ。〈霧の悪魔〉は強敵だったな」
長く苦しい戦いだった、と俺が激闘の余韻に浸っていると、慌てた様子でライサが駆け寄ってくる。
「ま、待ってくれ! い、今の技は……」
「ああ、今のは〈ファイナルブレイク〉。武器を壊す代わりに武器に応じた極大ダメージを与えるスキルだ」
発見直後の状態の〈ムーンライトセイバー〉は悪魔の術によって封じられていて、魔力の刃が出せない。
だが、〈ファイナルブレイク〉のダメージは武器の属性に依存するため、魔力の刃が出せない状態でも相手に魔力ダメージをぶつけられる、という仕組みだ。
「え? いや、え? し、しかし、あの剣の能力をあんなに目を輝かせて語っていたじゃないか! そ、それなのに、壊してしまうなんて……」
「あー。いや、まあロマン武器だし、使ってみたいと思ってたのは本当なんだが……」
しかし残念ながら、あの〈ムーンライトセイバー〉には大きな欠点がある。
それは……。
(あの剣の封印解除イベント、クッッッッッッッッソ面倒なんだよなぁ)
あの悪魔が語っていた通り、封印解除には世界各地の秘境に隠された〈沈む月の欠片〉というアイテムを集めなければならないのだが、欠片の場所は散らばっているため集めるのに最低でも数ヶ月単位の時間がかかるし、地図を見ながらでも分かりにくい場所にあったり、〈霧の悪魔〉以上の強敵が守っていたりで、一つ一つの捜索難易度も高い。
はっきり言ってゲームクリアより難しい、一つのやり込み要素なのだ。
(ぶっちゃけ、脱出だけならあの剣を使う必要ないしなぁ)
初見でこのイベントに放り込まれた場合は大抵が〈霧の悪魔〉に直行して死ぬが、その前に〈博物館〉に寄ってアイテムを揃えれば、運ゲーにはなるが悪魔をやり過ごして脱出出来るし、おそらくはそれが想定ルートだろう。
もちろんこれが単なるゲームだったら、欠片を先回りして集めてドヤ顔をするのもありだが、もはやこの世界はゲームじゃない。
たったそれだけのために、無用なリスクは冒せないというのが俺の結論だった。
「だが、本当によかったのか? レクスは私と違って、自分の意思でここまで来たのだろう? それなのに、わざわざ地下まで下りてきて、何の成果もなかったことに……」
申し訳なさそうに言うライサに、俺は笑った。
「何を言ってんだよ。俺が一番欲しかったものは、もうここにあるだろ」
うつむくライサの胸元を「トン」と叩いて言うと、彼女にもその意図は伝わったらしい。
ハッと顔を上げる。
「ま、まさか、レクスが本当に欲しかったのは、わ、わた……」
頬を赤らめ、もじもじと自分の胸元を押さえるライサの推測を肯定するべく、俺ははっきりとうなずいた。
「――ああ! 俺たちに刻まれたこの〈魔避けの紋〉だよ!」
※ ※ ※
あまりにも特異な戦闘スタイルのため、ゲームでは実現出来なかった「純魔スタイル」。
能力値の全てを魔力に全振りしたストロングスタイルだが、素の防御力も魔法防御力もゼロという関係上、〈バリアリング〉をつけていてもやはり防御にいささかの不安が残る。
――その防御面を支える最後のパーツが、この〈魔避けの紋〉だ。
ゲームにおいて、装備画面の欄外に表示されるこの〈魔避けの紋〉は、「防具」として考えると最高の一品と言える。
何しろ装備枠を使わず、自動で魔法攻撃の全てを防いでくれる訳で、対魔法性能は間違いなく最強。
その代わり、「アーツや魔法のコマンドが使えなくなる」ことと、「味方の回復・補助魔法が効かなくなる」というデメリットはあるが、もともと魔法が使えず、HPがゴミ過ぎて味方に回復魔法をかけてもらう必要のない「純魔スタイル」とはこの点でも最高に相性がいい。
ただし、ゲームでもノーソンの村で騙される以外に入手の手段がなく、〈霧の悪魔〉に勘づかれると紋を彫ってもらえなくなるため、イベントの流れに全面的に乗っかる必要があるのが難点と言えるだろうか。
「その点、今回は完璧。いや、完璧以上だったな」
あれから、〈魔避けの紋〉を消す薬と村のことをライサに押し付けて、俺は一足先に王都まで戻った。
村人の罠には自ら嵌まり込んだのでノーソンの村の住人に恨みはないし、〈霧の悪魔〉が死んだ以上、彼らにもう〈魔避けの紋〉は作れない。
とはいえ流石に放置する訳にもいかないので、何かで恩を返したいと言ってくれたライサに任せた形だ。
おかげで俺は予定を大幅に繰り上げて、出発した翌日の昼前にはもう、王都に帰還することが出来ていた。
(まさか地下に先客がいたのは予想外だったが、結果オーライって奴だ)
あとは何食わぬ顔をして宿屋に戻れば、俺が遠出をしていたこと自体、誰も気付きすらしないだろう。
俺はニヤニヤとほくそ笑みながら宿に戻って、入口に見知った顔があるのを見つけた。
「フィン?」
もしかして、俺を待っていてくれたのだろうか。
声をかけると、彼女は弾かれたように顔を上げた。
「師匠!」
こちらを見た彼女の瞳は、今にも泣きそうなほどに潤んでいた。
〈霧の迷宮〉に挑んでいた俺を、ずっと心配してくれていたのかもしれない。
俺は可愛い弟子を安心させるため、わざと何でもないような顔をして近付いた。
「なんて顔してんだよ。いくらわざと悪魔の罠にかかるって言っても、ちゃんと勝算はあるって行く前に……」
言いかけた言葉が、止まる。
近付いてみて、分かった。
フィンが怯えているのは、俺に対してじゃない。
彼女はずっと、自分の隣を、こちらから死角になる宿の内側を、気にしていて……。
「ぁ……」
なぜだろう。
身体の震えが、止まらない。
それでも本能を振り切るように、おそるおそる振り向いた、その先には、
「――その話、詳しく聞かせてもらえますよね、兄さん?」
凄みのある笑顔を浮かべたレシリアが、仁王立ちで立っていたのだった。
このあとめちゃくちゃ怒られた
これにて「霧の迷宮」編完結!
ほんとはこのまま連載続けるつもりだったんですが、ちょっと三巻作業で予想外の事態が起こったので少しそっちに時間を取ります!
あ、ただにじゅゆの方はほんのちょっと書き溜めがあるのでその間に更新するかも?





