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主人公じゃない!  作者: ウスバー
第五部 力と代償
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第九十八話 天才

※お願い※

書籍版を買ってくれるのも感想書いてもらえるのも嬉しいんですが、本編の感想欄は書籍を買っていない人も読む可能性がありますので、書籍版の感想は本編ではなく活動報告の方にお願いします




すみません、昨日はちょっと体調崩してダウンしてました

まっ、そんなのもう関係ないですけどね!(フラグ)


「――お待ちください、殿下」


 今にも戦いを始めそうな俺とアインを制したのは、その場に居合わせたセルゲン将軍だった。

 頼りがいのある壮年の将軍の介入に、俺はホッと息をついた。


(ま、まあ普通に考えりゃそりゃ止めるよな)


 なんとなく流されそうになってしまったが、「実力が分からない? じゃあ試合やって見せつけよう」なんて戦闘狂の発想だ。

 少なくとも、その試合の相手をわざわざ王子であるアインが務める必要もない。


(助かった……)


 アインは究極のチートキャラだ。

 ゲーム序盤の今は多少レベルは低めになっているが、それでも今の俺が敵うような相手じゃない。


 割って入ったセルゲン将軍に、アインは不満そうに口をとがらせるが、


「セルゲン。止めないでくれ、これは……」

「いえ、止める訳ではございません。ただ、立ち合いをするのであれば、〈決闘の間〉をお使いくだされば、と」


 セルゲン将軍は、恭しくそう言って訓練場の隅を指さした。


(……あれ?)


 話の展開が不穏な流れになってきた、と思う間もなく、


「……なるほど。それもそうだね。じゃあ、移動しようか」


 あれよあれよという間に俺は、〈決闘の間〉とやらまでドナドナされていったのだった。



 ※ ※ ※



(どうしてこうなった……)


 移動した〈決闘の間〉の舞台の前で、俺はガックリとうなだれていた。


 この〈決闘の間〉というのは騎士団の訓練によく使われる場所で、「魔法と消費アイテムとインベントリが使用不可能」で、「出場者が一撃でも身体に攻撃を受けると場外に飛ばされる」という要するに闘技場の簡易版のようなものらしかった。


 確かにまあ、これなら怪我をすることもないし、純粋に剣技の優劣をつけることも出来るかもしれない。

 ただ……。


(なんなんだよ、この完全アウェー感!!)


 その〈決闘の間〉の舞台の周りには、鋭い眼光の騎士たちが、しわぶき一つ立てずに立ち合いの始まりを待っている。

 どうやらセルゲン将軍が声をかけて、今来れる騎士たちを総動員しているらしい。


 余計なことしやがって、と思うが、善意からの行動では怒るに怒れない。

 ちなみに今こうして待機しているのも、集まってくる騎士たちを待っているからだ。


「……レクス」


 俺が内心で頭を抱えていると、横合いから声をかけられた。

 振り返ると、特徴的な尖った耳に、何を考えているか全く読めない表情に乏しい顔が、俺を正面から見つめていた。


「プラナ、か。どうしたんだ?」

「抜け出してきた」


 俺の同行者も〈決闘の間〉の脇に座っていたはずだが、どうやら一人だけでこっそりこっちに来たらしい。

 単にいつもの気まぐれで様子を見に来ただけかと思ったが、プラナは何か言いたいことがあるのか、しばらくじっと俺の顔を見て、動かない。


「……プラナ?」


 不思議に思った俺が名前を呼ぶと、彼女はぽつりとつぶやいた。



「――レクスには、昔の記憶がないって本当?」



 想像もしなかった問いかけに、思わず肩が震えた。

 背中から、ぶわっと汗が噴き出したのが分かる。


「まさかあの話、お前たちのところまで聞こえてたのか?」


 レシリアは意図して声量を抑えていたが、途中から興奮して少し声が大きくなっていたような気がする。


(まずいな。ラッドたちにも話が聞こえていたなら、ややこしいことになりそうだ)


 俺の境遇については、そこまで積極的に隠すような理由はない。

 ただ、記憶喪失で押すにしろ、転生したことを話すにしろ、そのまま話して信じてもらえるかどうか……。


 しかし、悩み始めた俺を前に、プラナは首を振った。


「たぶん、聞いたのは私だけ。私はラッドたちより耳がいい、から」


 尖った耳をなでながら話すプラナに、彼女がエルフだったと今さらながらに思い出す。

 さしものレシリアも、エルフの聴覚の鋭さまでは勘案していなかったようだ。


「そうか。なんというか、あー、流石、だな」

「別に。ちゃんと耳を澄ませば、レクスにだって出来る」


 いや、絶対無理だよ、と思ったが、今語るべきはそんなことではないと俺にも分かっていた。


 何よりプラナの真剣な瞳が「答えるまで逃がさない」と語っている。

 その目から逃れきれず、俺は観念してうなずいた。


「……俺に、昔の記憶がないのは本当だ」


 本当はレクス本人ですらないが、そこまでは口にする勇気がなかった。


「いつから?」


 続けざまに放たれる質問に、俺はわずかに答えるのをためらった。

 話の整合性を取るには、脚色した方がいいのかもしれないが、


「お前たちと会う、少し前、からだ」


 結局は、素直にそう答える。


「…………そう」


 プラナは何か、深く思いつめたような、そんな顔をして俯いた。


「プラナ。何か……」


 しかし心配した俺が声をかけようとすると、プラナはあっさりと顔を上げて先回りするように口を開いた。


「大丈夫、ただ気になっただけ。ラッドたちにも秘密にする」

「それは、助かる……が」


 一瞬見せた思いつめた表情は、俺の思い過ごしだったのだろうか。

 わずかに引っかかるような思いはあったものの、当のプラナはもはや俺の記憶のことなどどうでもいいとばかりに、スッパリと話を切り上げた。


「私の用事は、終わり。……それより、レクスはいいの?」

「いい、ってのは?」


 急な話題の転換についていけずにそう返すと、プラナは〈決闘の間〉に視線を送り、今も忙しなく騎士たちが動いているのを冷淡に見つめて、一言、


「こんな戦い、レクスがする必要ないと思う」


 あまりにもあんまりな言葉を口にする。

 あいかわらずの物言いに、俺は苦笑した。


「仕方ないさ。実力を示すのは必要だし、ここまで来てやめます、じゃ格好がつかないだろ」


 それに、冷静に考えるならそう悪い話でもないのだ。


 この〈決闘の間〉なら、仮に負けても怪我をすることも、死ぬこともない。

 極論負けたって特に失うものもないし、勝ち負けにかかわらず〈マニュアルアーツ〉の有用性を示せば目的は達せられる。


「……それに、このルールならあいつに勝てるかもしれないしな」


 俺がぼそりとこぼすと、驚いたようにプラナが尋ねた。


「王子は、そんなに強いの?」

「そりゃまあ、な」


 どうやら騎士が集まりきるまでには、まだ時間があるようだ。

 俺は現状把握と暇潰しを兼ねて、プラナに愚痴ってやることにした。


「せっかくだからプラナにも説明してやるよ。あいつがどれだけ規格外な存在(チートキャラ)なのかってことをな」



 ※ ※ ※



「まず、素の能力について言えば、あいつはぶっちぎりだ。はっきり言うが、同じレベルで張り合ってあいつに勝てる人類はいない」

「そこ、まで?」

「ああ。そこまで、だ」


 手帳を取り出すと、俺はそこに能力値を書きつけていく。



――――――

プラナ


LV 34

HP 430

MP 197


筋力 280(B)

生命 166(C)

魔力 148(C)

精神 136(C-)

敏捷 284(B)

集中 440(A-)


能力合計:1454

ランク合計:58

――――――



「まず、プラナの今の能力はこんな感じだ」


 プラナの能力は、前にアリの巣に突入した時から変わっていない。

 あの巣には格下の敵しかいなかったため十分に経験値が稼げなかったし、〈魔王〉については戦闘に参加しなかったために経験値がもらえなかったからだ。


 それでも、ラッドたち〈ブレイブ・ブレイド〉の中で、一番攻撃に特化しているのがプラナだ。

 ユニークキャラでもないのに、レベル三十四時点で主要能力である〈集中〉が評価A-に至っているというのはすさまじい。


 俺がそう褒めると、


「全部、レクスのおかげ」


 と何のてらいも気負いもなく、ストレートにそんな言葉をぶつけてくる。


「そ、そう、か?」

「そう」


 そんな不意打ちに動揺し、俺は誤魔化すように次のステータスを手帳に書き記す。


「そ、それで、これが今の俺のステータスだ」


 ラッドたちにステータスを見せるのは今までためらっていたが、これもいい機会だろう。

 俺は直前に計っておいたステータスを、プラナに見せる。



―――――――

レクス


LV 52

HP 542

MP 281


筋力 209(C+)

生命 204(C+)

魔力 214(C+)

精神 204(C+)

敏捷 210(C+)

集中 212(C+)


能力合計:1253

ランク合計:54

―――――――



 あの〈魔王〉戦を経て、俺のレベルは二つ上がった。


 その時のクラスは、熟練度上げのために転職していた〈トリックスター〉。

 図らずも、今のプラナと同じ職業だ

 能力上昇の面では最適解とは言えないが、それなりに悪くないクラスだったのではないかと思う。



 ――しかしそのレベルアップを鑑みてもなお、プラナのステータスと比べると見劣りがする。



 ステータスの合計値だけで言えば、俺とプラナは千二百と千四百で、実はそれほどの差はない。

 だが、その戦闘力にははっきり言って天と地の開きがあるのだ。


 戦闘スタイルが違うので単純比較は出来ないものの、攻撃力に一番関わる能力値が、プラナが四百四十に対して、俺は二百九しかない。

 めちゃくちゃ大雑把に言えば、俺の攻撃力はプラナの半分にも届かないことになる。


「これがステータス均等振りの弱みってとこだな。状況にもよるが、基本的には特化型には敵わない」

「つまり、王子は特化型だから、レクスじゃ勝てない?」


 先回りにしたプラナの言葉に、俺は首を横に振った。


「それだったらまだよかったんだけどな」


 俺はため息をついて、向かいに立ってこちらを笑顔で見つめるアインを〈看破〉した。

 その、結果は……。



―――――――

アイン


LV 45

HP 1320

MP 660


筋力 600(S-)

生命 600(S-)

魔力 600(S-)

精神 600(S-)

敏捷 600(S-)

集中 600(S-)


能力合計:3600

ランク合計:96

―――――――



「……は?」


 初めて聞くかもしれない、プラナの間の抜けた声。

 それが引き出せたことに昏い喜びを覚えながら、俺は半分自棄になってアインの能力値を見やる。


 レベルはいまだ四十五でありながら、その能力値はレベル五十時点のレクスのきっかり三倍。

 究極のバランス型にして、究極のバランスブレイカー。



「――あいつはな。全ての能力値で特化型を凌駕する、とびっきりのチート野郎なんだよ」



これが格差社会!



アインのステータス公開したので次回更新は未定です!

と言いたいところですが次書けてるので明日の21時になります!

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― 新着の感想 ―
[一言] 最悪の相手じゃん! 敵じゃないだけマシだけど。 お前が魔王と戦えよ!?
[気になる点] プラナがレクスの記憶を気にしてるの、以前感想で見かけた予想の補強してて……。 [一言] この段階このレベルにしては強いんだろうけど、剣聖を見たあとだとあまり驚きがないな。
[一言] これは変な声出る それはそうとして数値的にはきり良すぎて適当というか雑。大丈夫だレクスお前の方が開発に愛されて・・・(初期値を思い出した)いやなんでもない。
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