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7.勇者が復活するんだが

 ここはわざと負けるというのもありかもしれないな。でも拷問はな.....


 そう考えている内に、闘技場の中心に到着した。武器を選ぶ時間だ。

 勇者は剣か杖かを迷っていたが、剣に決めた。

 両刃の大剣だ。


 普通なら振り回す事もできない代物だが、勇者になって強化された身体能力だと余裕で使えるのだろう。


 俺は障壁を強化する杖か、少ない攻撃方法を増やす槍かを迷っていたが、槍を選ぶ。

 実力を隠した上での攻撃方法が障壁で潰す以外に無いからだ。

 後は把握、回復結界を展開しておく。

 不意討ちに対応するためだ。


「ごめん」


 勇者とすれ違ったとき、そう言われた。

 圧倒的な差で俺を拷問行きにすることに対しての謝罪だろうか。


「気にするな」


 俺はそう返した。

 いざとなったら実力を隠すのを止めて、本気で倒しに行くからな。

 お前の勝率は低いだろ。

 手加減してる内に倒されたらわからないが.......


「じゃあ、そろそろ始めようかしらね」


 王女がそう言うと、俺と勇者は5mくらい離れて武器を構える。


「よーい、スタートッ!!!」


 試合が開始した瞬間、勇者が一瞬で距離を詰めてくる。

 把握結界に魔力の反応が無いから純粋な身体能力のみでこのスピードを出しているとわかる。


「僕は初戦の剣士のように躊躇して倒されたりしない」


 チッ 油断も躊躇も無しか......とりあえず俺と勇者の間に並の魔力を注いだ障壁を展開するが、剣を空中で一振りさせて発生させた衝撃波で粉々にされる。

 マジか、音速より早いとかありかよ......しかも魔力の反応無し。ヤバいな


 勇者の間合いに入ってしまった。

 勇者が剣を上から降り下ろす。

 俺は上に障壁を斜めに展開して防ぐ。

 正面から防ごうとしたら絶対に破壊されるからな。


 よし!! なんとか剣を受け流せた。

 しかし、受け流した障壁はボロボロだ。

 まともに戦ったら負けるな。


 いいことを思い付いた。

 俺は操縦を付与した障壁を勇者に突進させる。

 勇者は待ち構えて、丁度のタイミングで剣を降り下ろす。

 障壁が真っ二つになった。


 そのコンマ数秒の間に俺は自分の足元に操縦を付与した障壁を横にして展開する。そして上昇。魔法の絨毯の障壁バージョンだ。


 勇者がこっちに火の球と土の球と水の球と風の球を同時に放ってきた。

 俺は自分の乗っている障壁を横に移動させて回避する。

 俺は槍を勇者に向かって投げてみた。

 勇者が魔法で打ち落とす。


「やっぱ、無理か」


 把握結界で勇者の魔力を見てみると、まだ7割ぐらい残っている。

 このままだとどっちが先に魔力が尽きるかにの戦いになってしまって実力を隠したままの勝ち目がなくなる。早急に次の手を考えねば。


 とりあえず俺は試せるものは全部試して見ることにした。

 勇者を障壁でぐるっと囲ってみる。

 ダメだ。ジャンプで抜けられた。


 今度は二つの障壁を出して挟み撃ちにしてみた。

 やはりダメか。走って抜けられた。


 この二つを合わせて勇者をぐるっと囲んでから上と下から圧縮してみる。

 剣で全部切り裂かれた。


 うーん...

 これ以上俺の乏しい想像力じゃ攻撃の仕方が思いつかん。

 あ、これはどうだろう?いけるか?

 そんなことを考えている間も勇者はどんどん攻撃してくるが、全て避けている。


「また避けられました。しかし、いつまで続くのでしょうね」


 勇者はまだまだ余裕の表情だ。俺はせっかくだから答えてやった。


「いつまでも。いや、もしかしたら次で終わるかもしれない」


「へえ、余程の自信があるのでっ...」


 俺はさっき思い付いた事を試してみた。

 勇者の体内に障壁を生み出し、操縦して内蔵をぐちゃぐちゃにする。

 遂に勇者の体がそれに耐えきれなくなり、血やら肉片やらが飛び散る。


 成功した。さすがに内側からの攻撃は勇者だろうと防げないようだ。


「キャーーーーー」

「うわああーーーーー」


 観客席の方から悲鳴が聞こえてくる。

 ん?拷問受けるより、人を殺す方がましなのかよ。だって?


 うん、まさしくその通りだよ。

 拷問嫌だし。殺しても聖女さんが蘇生してくれるし。


 よし、把握結界から勇者の反応が消えた。

 観客席のほうを見ると、全員顔が真っ青になっていた。


「うそ...たかが障壁師が、勇者を殺した...?」


 王女が目を見開いて驚いている。

 危なかったがなんとかこっちの手札を見せずに勝てた...


「体の内側に障壁を展開するのは考えてませんでしたよ。流石です。時々放つ風の球もほとんど見えない筈なのに避けていましたし、音とかで気付いたんでしょうか?」


 ...え?


 俺は目を見開いて驚いた。

 さっき殺した筈の勇者が無傷で立っていたからだ。

 どういうことだ!?勇者のスキルを見たときに確認したが、復活するようなスキルはなかった筈だ。


 この国も信用してなかったから鑑定結界で確認もしたが、同じステータスが表示されたはずだ。


「やはり驚きますか...まあ、殺した筈の人が復活したらそうなりますよね」


 勇者が1人でしゃべっている。

 復活した方法のヒントが得られるかもしれない。

 俺は耳を傾けた。


「おっと、僕は無駄にしゃべって手札を晒したりしないよ」


 チッ 駄目か....復活にも回数制限があるかもしれない。俺

 はそう思ってさっきと同じように勇者の体内に障壁を展開して内蔵をかき混ぜる。


 しかし、数秒経つと勇者の体は元通りになった。


「無駄ですよ。私の復活能力に弱点はありません」


 クソッ あの復活能力をなんとかしないと俺に勝ち目はないぞ...

 いや、勝ってやる。拷問だけは嫌だ。

 手札を晒すことも視野に入れよう。

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