自由の恩恵
神様となってようやく一人目の信者を得られた緋陽はシャンにあることをして貰う。
それは神の信者になった者のみが得られる恩恵。その神が司る事物を恩恵として授かることで何かしらの能力を使うことができるのだが、自由の事物から得られる恩恵がわからない緋陽はシャンにステイタスを見て貰った。
その成り行きを後ろの方で見守るシャンと同じ元奴隷達の彼女達とティリアとナビ。
シャンは自分のステイタスを見てみると目を見開いた。
「これは………………」
「どうだった? まさか何も授かれなかったってオチ?」
まさかの不発。恩恵という名ばかりの無能力かと思ったらシャンは首を横に振った。
「いえ、正直驚いています。貴方の恩恵から授かった能力は『隷属無効』、『阻害系統魔法無効化』、『広域認識把握』、『系統魔法選択』、『ステイタス改良』の五つです」
シャンが話した能力に後ろからおおっ! と驚愕の声をあげているが緋陽は首を傾げた。
「それは……………凄いのか?」
「えっと、私も信者になるのは初めてなので詳しくは……………………」
「凄いですよ! 数もそうですが授かる恩恵の能力も!」
怪訝する緋陽達に変わって驚愕を見せるナビは説明する。
「従来では神がヒトに授ける恩恵の能力は多くても三つです。それを超えて五つは前代未聞です。そしてなによりその能力。まず『隷属無効』は文字通り隷属に関わる全てを無効にする能力。つまり、ヒヨウさんの信者には隷属系統魔法は勿論のことそれに連なる全ての能力を無効化します。簡単に言えばヒヨウさんの信者は奴隷にされることはありません」
ナビの説明に村中が人達が驚愕に包まれるもナビの説明は続く。
「続いて『阻害系統魔法無効化』。これは認識を阻害させる幻術や魔法の類はその効果を発揮させません。他にも魔法攻撃を阻害させるようとする反魔法も効果を発揮しませんし、転送阻害魔法なんかも効きません。『広域認識把握』は文字通り自分を中心とした一定範囲内を自分の意思で認識できます」
「はい。誰がどこにいるか、目を閉じてもわかります」
「そして『系統魔法選択』。魔法は種族によって獲得できる魔法が決まっています。しかし、この能力ではその常識を簡単に覆してしまいますし、『ステイタス改良』も底上げはできないでしょうがステイタスを好きなように割り振れることができると推測できます」
「自由は当たりだったってことか?」
「これだけの能力を見ればそうでしょうね。私も正直驚いています」
自由の事物から授かれる恩恵の能力について聞いてようやくどれほどのものか理解できた。村人達もその能力に騒めきが強くなる。
「………………………………ところで思ったんだけど、神が信者を増やすメリットでSPだけなのか?」
「いえ、信者は仕える立場として神に奉仕をしなければなりません。奉仕する内容はなんでもいいのですが、いい加減にしたり、手抜きで奉仕すると授けられた恩恵の能力も消失していきます。自分が祟拝する神にどれだけ身命を捧げられるかで授けられた恩恵の能力にも変化が生じますので。信者は真面目に神に奉仕をするのが慣例ですね」
神として人々に恩恵という施しを授けて人々はそんな神に感謝して奉仕する。
互いの利害関係で成り立ったものか、と納得する。
改めて神と信者の関係に色々と納得すると、元奴隷達である彼女達が一斉に緋陽のもとへ駆け出した。
「神様! 私も神様の信者にしてください!」
「私もお願いします!」
「万が一にももう奴隷になんてなりたくありません!」
「精一杯奉仕しますから!」
種族問わずの美女美少女に詰め寄られる緋陽は困惑するも前世ではありえないハーレム状態に思わず鼻の下を伸ばしてしまう。だが、悪寒が走る。
後ろに振り返って見ると笑顔をこちらに向けながら薪をバキバキと折っていくティリアの姿に恐怖に震える。あの薪は俺の骨のつもりか? 折るつもりか? と戦慄しながら空気を一変させる為に咳払い。
「わかった。全員俺の信者になってくれ。だけどやめたくなったり、改宗したいときは遠慮なくそう言ってくれ」
『はい!』
「あの、神様。我々もよろしいでしょうか………………?」
リックを始めとする村人達も信者になろうと声をかけてきた。
「勿論。信者になるのもならないのも自由です。なんだって俺は自由の神ですからね」
こうして緋陽は村人全員を自分の信者にした。
名前:東海林緋陽。
種族:自由の神
性別:男
年齢:29歳(肉体年齢16歳)
Lv:2
HP:1700/1700
MP:2100/2100
SP:87/∞
筋力:500
耐久:920
敏捷:800
器用:750
魔力:510
〈アビリティ〉
神威(創造)
村人達を信者にしたことでレベルが上がった。そしてアビリティも出てきた。
「お、レベルが上がった。それにアビリティも出てきた………………」
「これでヒヨウさんはレベル1から脱却したことによって神威を行使することができました。そのなかで創造は神にとって基礎中の基礎の能力。自分の想像したものを世界に創造させる力。まだ大したことができませんが、レベルが上がれば一国も創造することができます」
「そりゃ凄い」
一国も創造する気はないけれど一軒家ぐらいは自分が創造した家に住んでみたい、と淡い夢を抱く。
「神様、それで私達は何をすれば………………?」
「ん? ああ、いつもどおりでいいよ。村の仕事が終わったら自由に行動してよし。下手に拘束する気はないから」
「で、ですが………………………」
「いいのいいの。何かして欲しいことがあれば俺から言うから、無理に何かしようと思わなくて大丈夫」
信者になったからといっても別段何かさせようとする気はない。自由気ままに行動すればいいのに何か指示して欲しいみたいな眼で見てくる。
「まぁ、せっかく信者も増えてレベルも上がったことだし、祝い事ぐらいはしたいかな」
「わかりました! 直ちに準備します」
緋陽の一言から全員が宴の準備に取り掛かり、女性二人が緋陽を椅子に座らせて奉仕する。
あ、ちょっと神様っぽい。と慌ただしく働いている村人達を見てそう思った。
「神様、飲み物をどうぞ」
「おお、悪い」
急に贅沢できるようになった緋陽はティリアを呼ぶとすぐにやってきた。
「どうなされましたか? マスター」
「せっかく天気がいいから昼寝がしたくてな、膝枕お願いできないか?」
「喜んで」
ティリアのご機嫌どりの為に膝枕を要求すると快く受け入れて緋陽の頭を膝の上へ誘導する。
「~~~♪」
鼻歌を歌うほど上機嫌なティリアにほっと一息つく。すると、ティリアは緋陽の耳元で囁く。
「あまり他の女の子に現を抜かしていますと断罪という天罰が降ってきますよ?」
その言葉は冗談か、本気か。とにかく緋陽は心地良い昼寝を取ることができなかったのは確かだ。