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自由気ままの神生活  作者: 幻影十夢
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初めての村

異世界で神として転生を果たした緋陽はナビとティリアと共に発見した村へ向かう。異世界に住む人々との交流に緊張しながらもどうやって自分の信者にしようか、と悩みながら村に訪れる。

―――その前に。

「俺、不審者扱いされないか?」

異世界にはないであろうスーツ姿。それに自分のことを神と言っても信じてくれるとは思えない。

少なくとも緋陽なら不審者か変質者扱いする自信がある。

しかし、そんな不安をナビが解消してくれた。

「問題ありません。この世界の住人は神とヒトを区別することができます。このヒトは神、このヒトは人間といった感じに見ただけで認識します」

「そ、そうなのか………………………というか、今更ながら俺、普通の人間みたいなんだけど」

「ヒヨウさんのレベルは1ですから、人間とたいして違いはありません。レベルが上がれば神威だって行使できますよ」

「レベルが上がるごとに神様になるってことか……………」

「そうです」

納得しながらも新たに疑問が出てきた。

「そういえばこの世界の人達ってどうやって信者になるんだ?」

「それはヒヨウさんのようにステイタスでどの神の信者になるか選べることができます。これを『契約(コントラク)』と申しまして契約した神様の信者となります。因みに別の神様の信者に改宗(スケイア)することもできますのでご注意を。まぁ、神様によって改宗(スケイア)には代償がありますが」

なるほど、と納得しながら緋陽はこれから村で交渉に当たる際に重要なことを尋ねる。

「この世界の人にとって信者になるメリットとデメリットはなんだ?」

無償で信者になる人などいない。なにかしらの利益を求めるのが人という生物だ。

「メリットは神が司る事物の恩恵を選択することです。日常生活、肉体、戦闘、ステイタス、魔法に至るまでその事物の恩恵が授かります。デメリットはその恩恵しか授かれないぐらいですかね」

火なら火、鍛冶なら鍛冶、戦闘なら戦闘の恩恵しか授かれず、それ以外の恩恵を授かるには別の神の信者にならないといけない。

改宗(スケイア)に一つの恩恵しか授かれないデメリット。

如何に自分の信者になった方が利益をもたらす。それをどれだけ思わせれるかが問題だ。

言ってしまえば他の神からも信者を奪えることも逆に奪われることもある。

神による信者争奪戦。

どれだけの多くの信者を集めさせることができるかが勝負所だ。

信者が多ければその分だけガチャを回せて強い従者を従えさせることだってできる。信者を集めつつ自分と従者を強くさせる必要性だってある。

万が一に神同士で戦争をすることになる、という可能性も考慮した上でだが。

ともかくとして今はそこまで考える必要はない。まず始めにすることは村に住む人達を自分の信者にすることから始めないと何も始まらない。

――――のだが。

「自由の事物ってなんだ?」

思いつくのは自由の女神像ぐらいだ。

自由はなにものにも縛られないこそ自由なのだ。

どうするか、と悩んでいる間に村の入り口に到着してしまった。見張りである村の男性二人組は緋陽達の姿を見て恐れ多く尋ねてくる。

「か、神様がどのようなご用件で……………………?」

ナビの言う通り、見ただけで神と認識しているようだ。

「突然の訪問申し訳ありません。歩いていたら偶然にこの村を見つけまして足を運んだ次第です。出来れば一泊させて頂けると助かるのですがよろしいでしょうか?」

「も、勿論でございます! おい、すぐに村長を!」

「お、おう!」

仕事の癖で思わず丁寧に話してしまったが、とりあえずは今日の宿をゲットできた。流石に野宿は勘弁だっために泊まらせてくれるだけでもありがたい。

少しして見張りの男性が村長と思われる老人を連れてきた。

「お待たせして申し訳ありません。儂がこの村の村長を務めさせているリックと申します。ささっ、汚い村ではありますがどうぞこちらに」

「ありがとうございます」

神様というだけあって随分と低姿勢。流石は神。

村長に直々に村の中を案内されてみるも村の様子がどうもおかしい。村の規模と人の人数が釣り合っていない。それに見える範囲の殆どの人の表情が暗い。

仕事で多くの人を見てきた緋陽は自慢ではないけれど人を見る目はあるつもりだ。交渉しやすい人やこの人にはこういう対応をした方がいい、とそうやって見分けて交渉していたぐらいだ。

村で一番大きい家に案内されてリックの奥さんと思われる老婆にも歓迎されて飲み物を淹れて貰った。

「神様のお口に合うかはわかりませんが……………」

「いえ、お気遣いなく」

社交辞令で返して一口飲んでみる。…………………………飲めなくもない。

「さて、単刀直入にお尋ねします。この村に何かありましたか?」

自分が抱いた疑問を率直に口にする。すると、老夫妻は一瞬驚きながらも観念したように俯く。

「…………………全てお見通しでしたか。貴方様の仰る通り、つい先日のことであります。この村にゴブリンの大群が襲ってきたのです」

「ゴブリンですか……………………」

ゲームでも定番のモンスター。この世界のゴブリンもゲームと似たようなものなのかと思っているとナビが耳打ちする。

「携帯の検索機能でゴブリンのことがわかりますよ」

「なるほど」

そう言われて早速ゴブリンについて調べてみた。


〈ゴブリン〉

緑色の体皮を持つ人型のモンスター。背丈も知能も人間の子供並みだが、その性格は残忍で狡猾。集団で行動し、他種族の女性を攫い、子供を孕ませる。個体によっては魔法も使える。


魔法が使えるゴブリンってなんだよ。と思いながら話の続きを聞く。

「よくご無事でしたね」

「いえ、村の男衆とたまたまこの村にやってきた冒険者達のおかげで撃退できただけです。ゴブリンのことですからまたこの村を襲ってくるでしょう。そうなってしまえば我々は………………………………」

「………………………………」

その男衆と冒険者がどうなったのかはリックの表情を見れば尋ねるまでもない。そして、次にゴブリンがこの村を襲えば間違いなく終わる。

男は殺され、女はゴブリンを増やす孕み袋。最悪の展開を想像すればそうなる。

悪いタイミングにやってきた、と内心で愚痴る。すると老夫妻が揃って緋陽に頭を下げた。

「神様、どうかこの村をお救いくださいませ! 我々にできることならなんでも致しますので! どうか、どうか……………………!」

必死に懇願しているのはわかる。だけど、感情で身を任せて肯定を取るわけにはいかない。

交渉と同じだ。相手がどうであれ、そこに同情や悲観めいた感情はこちらの不利益に繋がるだけ。酷なことかもしれないが取引、交渉となるのなら相手が誰であろうと冷静に対応する。

「ティリア」

「ゴブリン相手に遅れなど取りません」

戦闘に関しては予想通り問題はなさそうだ。流石にレベル78の天使がゴブリンに負けるわけがない。

あちらの要求は『村の救済』。ゴブリンから村を助けて欲しい。

それに対してこちらの要求を何にするか………………………。

「では、そちらの要求に対いてこちらはこの村の全権を頂きます」

「そ、それは………………………」

「神とて慈善事業はしません。こちらの要求を呑み込めないのでしたら話はここまでです」

言葉を濁らせるリックの追い打ちをかけるように言葉を挟む。

ここで信者になれ、と言うのは簡単だ。だが、それではゴブリンを退治したらいつまでも信者でいる理由がなくなってしまう。辞めたり、改宗(スケイア)でもされたら意味がない。

だから村の全権を選んだ。この村を拠点にできるし、そこから信頼関係を築いて行ける。信者にするのはその後からでも遅くはない。

「…………………わ、わかりました。この村の全権を貴方様にお譲りしましょう」

「では交渉成立ということで」

差し伸ばすその手をリックは手に取った。




その夜、村長の読み通りゴブリン共は村を襲おうと動いていた。

略奪した武器や防具を装備して再び村にやってきたゴブリンの集団は醜悪な笑みを浮かばせながら村をどう蹂躙しようか、女をどのように嬲り犯してやろうかと考えていた。

だが―――

一体のゴブリンが夜空を指して何か叫んでいる事に気付いたゴブリン達は夜空を見上げる。そこには純白の翼を広げている天使がいた。

その天使は微笑んでいた。慈愛に満ちた笑みを浮かばせながらその手に光を集結させて極大の光の柱を作り出す。

断罪(パージ)

その光は罪人の首を斬り落とすギロチンのように落ちた。

死を悟ったゴブリン達は悲鳴を上げ、逃走を試みるも無意味に終わる。ゴブリン達は一体も残らず完全消滅した。

「さて、マスターに報告に行きましょう♪」

アビリティにある〈天眼〉で残党がいないかを確認し終えると天使は愛するマスターである緋陽がいる村に翼を羽ばたかせる。


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