85話 神の戦士
「気をつけろサシャ、アレはスライムなんかじゃない! 古代魔法すら効かぬおぞましい何かだ!」
大岩を曲がりこんだ途端に鼻をつく強烈な腐臭。
一面に凍りついた死蟲の大群の先に、未だぬめぬめと蠢く複数の塊があった。その数、三十から四十。
「くっ、なんて臭いだ! 分かるかサシャ、アレのヤバさが!」
「なんてことだ! 精霊たちが一斉に逃げていくぞ!」
「使徒殿、アレはまずい。太古の神話に出てくるような、間違いなく規格外の存在だぞ」
思わずその場で立ち止まっていた仲間たちが、追いついたサシャに口々に警戒の言葉を発していく。
「だよねえ……」
それは言われなくても、サシャの肌がまざまざと感じ取っている。
通常の魔獣などではあり得ない、全身が粟立つような猛烈な狂気がその存在群から押し寄せてきているのだ。
神経を逆撫でする乾いた鳴き声をそこかしこで漏らしながら、凍りついた谷筋の隘路を侵食するかのように、じわりじわりと下ってきているそれら。
どう見ても普通の魔獣や先兵とは次元が違う、いわば神に近い格を持った禁忌の存在。イグナーツの言うこともすんなり納得できてしまう。
ひとつひとつは仔牛ほどの大きさの、闇色のスライムを連想させる粘液質の塊にすぎない。けれども、周囲に垂れ流しているおぞましさの他にも、スライムと決定的に違う点がある。それは。
――ひと口で言えば、「無数の目と口」。
吐き気を催すようなその暗黒の塊ひとつひとつに、赤黒い燐光を放つ目と、穢らわしい涎を垂れ流している口が、それぞれ十以上も不規則に付属しているのだ。
それら多くの目と口が独自の意思で瞬き、時に耳障りな乾いた鳴き声を上げている。
目にするだけで忌まわしく、鳴き声を耳にするだけでそこに内包された狂気に汚染されそうな、そんな異次元の怪物だった。
「……化け物め」
眉間に深々と皺を刻んだシルヴィエが短く吐き捨てる。
誰もそれに異議を唱えない。まさにそのとおりだと全員がはっきり分かっているからだ。
「どうする? 我々はアレに太刀打ちできるのか? 動きが鈍そうなのが唯一の救いだが」
「シルヴィエ殿。樹人族の里に伝わる古き伝承から類推して、もしアレが神話に出てくる<罪深き黒>であったならば――」
「何だって!?」
シルヴィエに答えようとしたイグナーツの言葉を遮ったのは、精霊を繋ぎ止めるのを諦め、肩を落として灰の袋をローブの懐に戻していたエリシュカだった。
「つつつ、罪深き黒だと!?」
それは現代魔法使いがその強大な力を借り受けて魔法を行使している、新世代の亜神そのものの名。悲鳴にも似た喘ぎがエリシュカの口から溢れでていく。
「ままままさか、その本体があそこに顕現しているというのか!? なんてことだ!」
彼女からしてみれば<罪深き黒>とは、使い勝手と威力ともに現代魔法を代表する中級の無属性魔法「グレートランス」、その詠唱で呼びかける相手そのものなのだ。
――古のものによりて創造されし罪深き黒よ、その腕で敵を貫け! グレート・ランス!
魔法使いなら駆け出しでもそらで唱えられるその詠唱を、魔法使いクランのサブマスターであるエリシュカが知らぬ訳がない。ちなみにサシャやシルヴィエは気付いていないが、以前に古代魔法が死蟲をすり抜けるかの実験をした折、オルガが検証に使ったのが奇しくもその現代魔法であった。
「……しゃ、洒落になっていないぞそれは。現代魔法で限定的に臨界させている存在、その本体があそこに顕現しているというのか? しかもあの数! イグナーツ殿、何か弱点とかは伝わってないのか!?」
「そんなもの、人の身で扱える中にはない、と言うのが普通なのだがな。が、我々には幸いなことに」
ゆっくりとながらもじわじわと迫ってくる<罪深き黒>、その姿を睨みつけながらイグナーツが手にした神剣を軽く揺らした。
「古代魔法は通用しないようだが、我々の武器はそれぞれの神の力を得たものだ。アレらは神話の存在とはいえ、神格はこちらの神々とは比べようもなく低い。死蟲や飛行蟲に我々の神剣が通用したように、アレらにも攻撃が通用する可能性はある」
「だ、だが、向こうは本体だぞ! いかに神力を宿した武器とはいえ――」
「いや、<罪深き黒>そのものではないかもしれぬ。アレらの特徴は伝承のとおりなのだが、ただひとつ、伝承だと大型のドラゴンと変わらぬ大きさなのだ」
「……つまりその<罪深き黒>の子どもとか、そんな感じってこと?」
サシャが思わず言葉を挟む。
先ほど見たばかりの、流出元と思われる小奈落が未だ成長途中だったがために。出てくるものも、成体はまだ出てこれないのではないか――そんな連想が働いたのだ。
それに。
サシャは思う。
「でも結局、アレの群れをどうにかしないと管理小屋には行けないよね。それに今行かなければ、小奈落が大奈落に成長して大人のアレが出てきちゃうかもしれない。今行くしかない――うん、行こう!」
「うむ、使徒殿の言うとおりだ。数はそこまで多くなく、動きも早くない。とにかくひと当てしてみて、どうやっても敵わない相手だったらその時はその時」
「そしたら迂回して、ダメ元で奇襲気味に突入して、小奈落が破壊できないか試してみてもいいよね。あんなのも出てきてるぐらいだし、とにかくあの奥にある小奈落は今すぐ破壊しなきゃ!」
「そのとおりだなサシャ、私もその案に乗るぞ。そして明るい材料が一点」
シルヴィエが眉間に深い皺を刻んだまま話に加わり、馬上の高みから青く輝く愛槍ですらりと前方彼方を指し示した。
「見ろ、先兵の流れは更に上からも来ている訳ではない。ここの管理小屋が起点だ。つまりあそこの小奈落さえ潰せれば」
「これ以上の流入は止められる! そういうことだねシルヴィエ!」
「そうだ。むしろ奇襲気味にでも強引に突入して、まずはこれ以上の流入を止めるべきだろう」
「よし! それで行こう!」
「承知した、私もそれに賛成だ! ならばヴィオラ姫はここで降ろし、エリシュカ殿に見てもらう方向で良いか? 少し下がれば古代魔法は使えるのだろうし、そしてエリシュカ殿、万が一の場合はヴィオラ姫を連れて逃げろ。後事は託す、いいか?」
イグナーツの言葉に含まれるその重大な内容に反論しかけたエリシュカだったが、悔しそうに口を噤んでヴィオラごとシルヴィエの馬背から飛び降りた。
動きが鈍そうとはいえ、相手は神域の化け物。その恐ろしさは魔法使いであるエリシュカ自身が一番理解している。この先の戦いは、いわば命さえ賭した大勝負なのだ。
かの存在と戦う術を持たない自分は足手まといだし、それに、もし万が一となった場合。
――奈落の先兵と戦える者がここで全滅してしまうのは、後々のザヴジェル防衛を考えれば絶対に避けるべきなのだろう。
持ち前の頭の回転の早さでそう理解できてしまったエリシュカが、泣きそうな顔でローブの隠しから何かを取り出し、サシャの手に押しつけた。
「それは今日のひとつめのラビリンスで手に入れた、<天人族の契約>だ。サシャ君、何が何でも生還すると、それに誓ってくれたまえ。天人族がこれに込めた契約は必ず叶うのだろう? さあ、お願いだから約束してくれ」
すがるようにサシャを見つめるエリシュカの眼差しには、祈りにも似た強い想いが込められている。
サシャはひとつ息を吸って「……約束する」と力強く頷き、ヤーヒムズ・コアをエリシュカの手に戻した。正直なところ天人族の契約云々は初めて聞いた話だったが、案じてくれる気持ちは痛いほど伝わってきたし、サシャ自身の決意は同じだからだ。
エリシュカは無言でコアを受け取ると、無言のままヴィオラを抱き上げてクルリと踵を返した。余計な時間が経てば、それだけ余計な化け物が出てきてしまう。この地に生きる全ての者にとって、その一秒の差が明暗を分けるかもしれないのだ。
唇を噛み締めた彼女が、ヴィオラを背負って決然と後退を始めていく。すぐに撤退はしないだろうが、精霊たちが寄りつかないこの場所からひとまず離れるのであろう。
「――よし、行くよ! シルヴィエ、イグナーツさん、よろしく!」
「ああ!」
「応っ!」
エリシュカとのやり取りで更に気合いが入ったサシャが、みなぎる気迫と共に駆け出していく。
林立する死蟲の氷像群を踏みしだき、シルヴィエとイグナーツが追随するその進路は散開する<罪深き黒>の群れに正面から突入するもの。
それは最短で管理小屋まで到達し、そこで成長し続けているであろう小奈落を最速で破壊するルートだが、はたしてその選択が吉と出るか凶と出るか。
「喰らええええ!」
ずるり、ずるりと迫る<罪深き黒>の群れまでの距離は瞬く間に縮まり。
初手から全力の青の力を込めたサシャの双剣が、大きく跳躍したその勢いも乗せ、蠢く神話の化け物めがけて振りかぶられて。
「うわわっ!」
サシャの双剣が先頭の一体に迫ろうとした、その刹那。
人外の反射神経で体をひねり、サシャは紙一重で危地から逃れた。無数の黒光りする槍が、<罪深き黒>の群れから林のごとく打ち出されてきたのだ。
「ちょっ! なっ! ぐあ! がはっ!」
次々に急所を狙って迫りくるその黒い槍が、サシャの全身をみるみるうちに削り取っていく。<罪深き黒>の群れを全部で四十体とするならば、その十倍を超える数の黒槍が襲いかかってきているのだ。
その黒光りする槍は、中級無属性魔法グレートランスそのもの――エリシュカが見ていれば、そう認識できただろう。ただしその本数も射出速度も、現代魔法で呼び出されるものの比ではない。
「サシャ!」
「使徒殿ッ!」
サシャの背後でシルヴィエとイグナーツが咄嗟に救援に入ろうとするが、そんな隙は一切ない。サシャの前で蠢く多数の<罪深き黒>がその粘体質の体を変化させ、一体につき十本以上の槍として射出しているのだ。
「がっ! うあ! ちょ、これはヤバいって!」
辛うじて急所だけは守りつつも、針鼠のように黒槍に貫かれはじめるサシャ。
通常の投槍や魔法のグレートランスと違って、<罪深き黒>の本体から伸ばされたそれらは変幻自在に軌道を変えてくるのだ。
さらにその上、何が一番マズいかといって、どうやらその黒槍に受けた傷にはサシャの接近戦の肝となる高速治癒が全く働いていない。傷つけば傷つくほどサシャの動きは鈍り、加速度的に被弾が増えていって――
「ぐ! が! うああ――」
「クリエイトシールドッ!」
イグナーツが詠唱を省略して強引に展開した神盾が、辛くもサシャを死地から救いあげた。ガガガガガガガガと無数の黒槍が音を立ててその灰白色の神盾を叩くが、イグナーツの神盾は持ちこたえている。
「サシャ、大丈夫か!?」
「使徒殿!」
大きく半球形に展開された神盾の陰で、シルヴィエとイグナーツがサシャに駆け寄った。これまでかなりの激闘を潜り抜けてきたサシャだが、ここまでの傷を負ったサシャを見るのは二人とも初めてなのだ。
「ぐ、派手にやられちゃったけど……うん、何とか大丈夫」
更に勢いを増して神盾が乱打される中、全身からもうもうと過剰治癒の蒸気を立ちのぼらせたサシャがゆっくりと立ち上がった。
「今のは本当に危なかった。イグナーツさんに救われたよ、ありがとう」
「サ、サシャ大丈夫なのか? お前が癒しを使えるのは重々承知しているし、今も自分で癒しているんだろうが、なんというか、その――」
「うん、今は青の力がたっぷりあるからね。このイグナーツさんの神盾のお陰でどんどん自分に癒しをかけれるし。それよりも、さっきのあの猛攻だけど」
彼にとっての計算違い。
それは、のっそりとした動きの<罪深き黒>から怒涛の攻撃が繰り出されてきたことはもちろん、それらの攻撃に強引な接近戦の頼みの綱、高速治癒の効きが悪かったことだ。
考えてみれば、エリシュカは<罪深き黒>が現代魔法の大元になる存在のひとつだと言っていた。現代魔法による傷は高速治癒が働かないのだから、その大元である<罪深き黒>の攻撃にも高速治癒が働かないのは当然だったのかもしれない。だが――
「ごめん、ちょっと甘く見てた。でも、攻略法は分かった……はず」
目を見開くシルヴィエに、血まみれのサシャが力強く頷いてみせた。
そう。
いわばクラールによる加護である即時の高速治癒は働かなかったが、今こうして傷は癒えていっている。サシャならではなのかもしれないが、ありあまる青の力を注いで力ずくで癒しを行えば、いくら<罪深き黒>の攻撃といっても治癒できないことはないらしいのだ。
そして、先ほどの刹那の攻防の中で。
ありあまる青の力を全力で注いでいたサシャの双剣は、何本もの黒槍を確かに斬り落としていた。そしてあの時に見た限りでは、林立する黒槍すなわち<罪深き黒>が変化させたその身体。
つまりサシャの双剣は相手を斬れるし、斬り落とした黒槍が動き出す気配はなかった以上、最悪本体まで迫れなかったとしても、槍として伸ばすものがなくなるまで斬りまくればどうにかはなる。
今、サシャに攻撃してきた<罪深き黒>の数はざっと四十ほどだったか。それならばギリギリ行けるのではないか。
ただし、その四十という数は。
初めに見た時の三十から四十という印象よりも、少しずつ確実に増えているということを意味しているのだが。
「……突破できるとしたら今だけ、もう一回行くよ」
ただしそんな力任せが通用するのは、目の前の<罪深き黒>の群れがやはり幼生だから。
それがサシャには分かったし、もしこの先もう少し成長したものが出てきたら、その時は手も足も出なくなる――それもサシャは直感的に理解してしまった。
突破できるとしたら今だけ。
今すぐ小奈落を破壊して、化け物の流出を止めなければならない。数にしろ質にしろ、今以上の化け物をこの世界に入らせる訳にはいかないのだ。
「シルヴィエはちょっとだけここで待ってて。……いや、あの黒槍にやられないギリギリの距離で、囮をしてくれると助かる。それで少しでもあの集中攻撃が散ってくれれば――お願いしちゃっていいかな?」
強い決意を滲ませたサシャの言葉に、一瞬の逡巡を経てシルヴィエが頷いた。続いて、イグナーツも。
「……サシャ、お前はそれで行けると思ってるんだな? ならば多くは聞くまい。私はこの体だ。あそこまで密度の濃い戦いに向かないのは分かっている。イグナーツ殿、サシャを頼んだぞ」
「任された。シルヴィエ殿も無理は禁物だ。いいな?」
シルヴィエからしてみれば、それが自分に出来る限界だと納得してしまった部分もある。サシャと共に討ち入りたいのはやまやまだが、背中に目があるのかと思うぐらいに乱戦に長じた機敏なサシャならともかく、下半身が巨大な馬である自分があの濃密な猛攻に長く対処できる筈がない。
無理に同行して敵中で足手まといになるぐらいなら、外縁で囮として、ケンタウロスの機動力を活かしてより長く敵を撹乱し続けた方がいいのだ。それに。
「サシャ、お前ならこの難敵もどうにかできる。信じているぞ」
そう言ってシルヴィエは右肘を胸の高さに上げ、拳で力強く左胸を叩いた。万感の思いが込められた、ザヴジェル式の敬礼だ。
「では、吉報を待っている」
そう言ってやにわに後ろ脚で棹立ちになり、一瞬で馬体の向きを変えてシルヴィエは神盾の外へ駆け出していった。即座にそれを追撃する無数の黒槍。サシャとしてはもう少し距離を置いた撹乱をイメージしていたのだが、それがシルヴィエなりの意思表示なのだろう。
危険を冒すのならば自分も。
少しでも多くを引きつけ、サシャたちの負担を減らす、と。
荒れ狂う奔馬のように<罪深き黒>の群れの外縁を疾駆していくシルヴィエを視界の端に、サシャはイグナーツと短い頷きを交わした。
ヴィオラとエリシュカが抜け、ここでシルヴィエも別行動となった。それぞれがそれぞれの為すべき戦いに向かい、残るはサシャとイグナーツの二人だけだ。
「行こう」
「行くぞ」
次の瞬間、半球状に展開されていたイグナーツの神盾が解除される。やはりというべきか、待っていたかのように襲いくる無数の黒槍。
だが、心なしかその密度は低い。
シルヴィエが自分の方へと引きつけている、その成果が充分な形となっているのだ。
「これならっ!」
サシャはたぎる闘志のままに青の力を全身にみなぎらせ、とっくに展開済の【ゾーン】に全神経を傾ける。
先行して伸びてきているのは十二、そのすぐ後ろから十七、一歩遅れて三十四。
世界が音をなくしたかのような極度の集中の中、サシャは先行の黒槍を五、右手の一閃で斬り落とす。そして流れるように左手で四。残る三はイグナーツが再展開しつつある神盾が防いでくれる軌道だ。
一旦その神盾の背後に飛びのき、勢いを殺さず反対側からするりと討って出るサシャ。
<罪深き黒>と繋がっている黒槍は予想どおり軌道を変えて向かってくるが、遅い。今のサシャならば充分に――
雷のごとく前へと踏み込んだサシャが、一番手前の黒い化け物を二つに叩き斬る。
一拍遅れて殺到してくる黒槍群を左手の剣でなぎ払い、もう一歩踏み込んで更に一閃。
立て続けに両断された二体からまばゆいほどの蒼焔がほとばしり、この世のものとも思えない咆哮が世界を揺らす。が、サシャはそれらを気にも止めず、勢いのままに体を回転させてもう一体を上下に斬り裂く。
そして深追いはせずに軽やかに後退し、火のついたように怒り狂いはじめた追加の黒槍群を、イグナーツの神盾で一度受け止めてもらい。
「よしっ! こんな感じでもっと速さを上げていくよっ!」
「承知した!」
屠った三体からサシャの体に驚くほどの青の力が流れ込んできている。今の一戦で何ヶ所も深手を負ってしまっているが、これだけ青の力があれば癒すことは容易だ。
「出来るだけそっちに行かないようにするから! ついてきてイグナーツさん!」
「使徒殿の背中は私が護る! 任せろ!」
強引な過治癒の蒸気を聖なるオーラのようにまとったサシャが、イグナーツの頼もしい言葉を受け、更なる高速戦闘を開始する。
イグナーツから見れば、その姿はまさに天空神が遣わした神の戦士そのもの。いよいよこの世界に直接侵入してきた邪神の第一陣を、光り輝く天空神の化身が迎え撃っているのだ。
けれども。
『………………』
限界ギリギリの戦いをがむしゃらに続けるサシャの脳裏の遠いところで、老いたヴラヌスの満足げな含み笑いが聞こえた気がした。




