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【私はあなた達の母親なのよ】
母親・・・?
この人・・・が?
私はチラッと剣を見た。
剣はびっくりして固まっている。
昔、私達が物心をもった頃。
私達の両親はいないのが不思議に思った。
育ててくれたのはおばあちゃんとおじいちゃん。
幼稚園や学校などに来てくれるのもおばあちゃんとおじいちゃん。
トモダチはみんなお母さんやお父さんが来てくれてるのに・・・。
私はある日。
「どうして私にはママとパパがいないの?」
おばあちゃんにずっと思っていたことを聞いてみた。
おばあちゃんは少し黙り、口を開いた。
「乙葉チャンのパパとママは死んじゃったんだよ?」
死んだ・・・?
「どうして・・・?」
「パパは乙葉チャンを産んだ次の日に事故で、ママは乙葉チャンを産んでそのまま・・・」
そんな・・・っ。
幼い私には刺激が強すぎたのか私はその場に倒れてしまった・・・・。
その後のことはあまり覚えてない。
剣にも教えたような気がする。
でもまさか本当はお母さんがいたなんて・・・。
「どう・・・して?お母さんは死んだって・・・」
私の声はなぜか震えていた。
お母さんと逢えたから?
「それ、誰から聞いたの?」
お母さん(?)は真剣な瞳で私を見つめる。
「え・・・おばあちゃんから・・・」
「お母さん・・・乙葉のために嘘を・・・」
「う・・・そ?」
どういうこと・・・?
おばあちゃんが嘘ついてたってこと・・・?
「ホントはね私達はあなた達を捨てたのよ」
「「え?!?!」」
私と剣の声が重なった。
「乙葉を産んだとき私はまだ若くて遊びたい時期だった。私は軽い気持ちで乙葉を産んだ・・・。でもね産んだ瞬間気づいたの。【産むのにはまだ早い】って。それで産んだ後、お母さんの家の前に乙葉を置いたの」
そんな・・・。
「そんなのおめーの勝手じゃねーかッ!!!!!」
剣は怒鳴った。
一瞬ビクッとしたお母さん。
「まだ続き、あるのよ」
でもお母さんは剣を真剣な瞳で見つめた。
そんなをお母さんを見た剣は黙り込んだ。
「乙葉を捨ててから私はホストとかクラブとかで遊びまくったわ。もちろんSEXも・・・。そのせいで今度は剣が出来てしまったの・・・」
ん?ちょっと待って。
「ということは・・・・」
「そう。あなた達は兄弟じゃないの」
「まぢかよ・・・」
剣はその場にしゃがみこんだ。
お母さんは剣に近づき、剣の前にしゃがみこむ。
「あなたのお父さんは誰か分からない。でもいちおは私の息子よ。だから少しは乙葉と血つながってるわ」
お母さんの手が剣の頭に触れようとした瞬間、剣がその手を振り払った。
「さわんじゃねーよ」
剣がお母さんを睨む。
「嫌われちゃったか・・・。無理もないわね。私は2人とも捨ててるンですもの」
お母さんは鼻でフッと笑う。
「ねえ、あなたが本当にお母さんなら聞くわ。・・・捨てたことに後悔はないの?」
「・・・乙葉を捨てたトキはしょうがないって思ってたわ。でも、剣を捨てようとお母さん家に行った時、窓にあんなに小さかったのに少し成長した乙葉が見えたの。・・・すごく愛おしくなったわ・・・」
「それなら剣だけでも育てればよかったじゃないッ!!!!」
私を愛おしく思って後悔したならそっから気持ちを切り替えて剣だけでも愛情をそそいでほしかった・・・。
「私もそう思ったわ。でも私にはそんな余裕なかったのよ」
お金がないってこと?
「ゆうふくじゃないと剣がかわいそうでしょ?だから・・・」
「ウソだろ」
今まで黙りこんでた剣が口を開いた。
「どうせ俺らのこと育てんのがめんどくせーだけだったんだろ」
なんか剣むちゃくちゃキレてるんですけど?
「ちょっと剣失礼だよッ!」
そんなわけ・・・!!!
「いいのよ。乙葉」
・・・え?
お母さんはまた剣のほうに振りむく。
「剣、あなたの言うとうりよ」
「「・・・え?」」
また私と剣の声が重なる。
「その気持ちは少しあったわ。でもね、いちおは自分の子供っていう自覚があるから育てなきゃとは思ってたのよ?」
「じゃあ育てろよ。俺はどーでもいい。でも乙葉は女だぞ?かわいそうとはおもわねーのか?」
剣・・・。
私のことそんなふうに・・・。
「ふふっ。あなた達、愛し合ってるのね」
お母さんは嬉しそうに笑った。
私は顔を赤らめる。
「でもすごい度胸ね。兄弟じゃないって自覚ないのに愛し合ってるなんて」
「兄弟とか関係ねーじゃん。気持ちの問題だし」
剣・・・。
「ふふっ。そうね。その考えは正しいわ。でもね、現実はそうあまくないわよ」
さっきまで緩んでいたお母さんの表情がまた厳しくなる。
「そんなことわかってるし」
睨みあう剣とお母さん。
「そ。ならいいわ」
にっこり笑うお母さん。
「早百合〜!」
遠くカラ人を探してる人の声が聞こえた。
「あら、私のこと探してるわ☆じゃあまた逢いましょ?」
お母さんは私達に手を振って人混みの中に吸い込まれていった。
「なんだアイツ。ホントに母親かよ」
剣はイラついてるのか舌打ちをする。
「でも、お母さんのあの性格ちょっと剣に似てるかも?」
「はー?!まぢかよー最悪」
私は笑いが込み上げてきた。
「てめ何笑ってンだよッ」
剣が私の頬をつねる。
「いふぁいふぁいッ(いたいいたい)!!!!」
「ごふぇんなふぁーい(ごめんなさーい)!!!!」
剣はつめるのをやめてくれた。
いたかったー・・・。
そう思っていたら今度は優しく剣の手が私の頬に触れた。
「つる・・・」
剣は私の言葉を無視して私にキスをした。
甘くてとろけそうなキス・・・。
剣は唇を離した。
「乙葉。好きだ」