3話 冒険者登録と職業
冒険者登録するため近くの街を目指して森の中を歩いている途中
「なぁ、ところでなんでこっちに転移することになったんだ?」
「うん、それはね社会の授業中に帝が寝たのは覚えてるよね?」
「ああ、もちろん」
まぁ、いつも通りなんだけどな
「そのあと、社会の授業が早めに終わって休み時間まで教室から出なければ自由にしてていいよって先生が言ったからみんな自由にしてたんだけど休み時間に入る三分前くらいかな、教室の床に変な模様が出てきて」
変な模様…魔法陣か?見たかったなぁ
「それで?」
「それで、ピカッて目の前が真っ白になって、気がついたら草原で寝ててロイスたちに起こされたの」
なるほど、つまりは魔法で転移させられたんだろうな。
それにしてもクラス単位か…
「だとすると他の奴らも転移してると見るべきか?
なぁ、ロイスたちはこのこと知ってるんだよな?」
「うん、一応知ってるけど」
「ロイスさんたち、ちょっといいですか?」
仲良さそうに色々話していたロイスに声をかけると、苦笑しながら
「敬語は使わなくていい、冒険者には舐められないように最低限の礼儀以外はいらん。ただし相手は見極めろよ」
「そうか、わかった気をつけよう」
「それで、私たち質問でもあるの?」
と、ルゥメスが小首をかしげ、こちらの顔をのぞき込むようにして聞いてくる。こういう何気ない仕草がかわいいよなこの人。
「あぁ、えっと主にルゥメスに聞きたいんだけど別の世界から人を転移させることができる魔法はあるのか?逆でもいいんだが」
そう、帰る方法だ。こっちの方が楽しそうだしこのままでもいいかとは思うが、【帰れない】のと【帰らない】のでは大分違うからな。
「うーん、そうだね。私もそれなりに勉強してきたけど空間魔法とか時間魔法と空間魔法の上位併合スキルの時空魔法ならできるかも。ただ、実際に行ったって記録は私が知る限りないみたいだけどね」
「そうか」
本当にないのか隠されてんのかは知らんが手がかりがあるだけマシか
「そう、だね」
理愛も少しではあるが希望が見えて嬉しいようだ
「おっと、そろそろ見えてきたぞ」
ロイスの言葉に前を見ると森を抜けた先に日本ではあり得ないほど高い壁と門が見える
「おぉ、あれが…」
「おっきいねぇ…」
高さは最低でも3、40mはあるだろうし直径なんて100mほどあるのではないか。それほど大きな壁が円状にそびえ立っている
「あれがこれから行く街、レングァードだ」
俺たちはその大きな街、レングァードに思いを馳せ、少し緊張しながら歩みを進めた
「止まれ」
門でイメージとは違い、鎧が最低限の軽装な衛兵に止められた。普通重装備の槍持った兵士がやるんじゃないのか?ラノベから得た知識だから間違ってる可能性もあるけどね。
「身分証を提示してくれ」
「あいよ」
「はいはーい」
「はい」
「わかった」
ロイスたちが次々身分証を提示する中、俺たちは身分証を持っていないので提示できない
「どうした?」
「実はこいつらさっき盗賊に襲われててな、そいつ等から逃げるときに落としたみたいなんだ」
俺らがなにも言えず黙っているとロイスが助け舟を出してくれた
「なるほど、そいつは災難だったな。じゃあおそらくだが持ってかれてるだろうしとりあえず仮身分証の発行でいいか?」
「ああ、冒険者登録するつもりのようだからそれでいい」
「なんだ、冒険者じゃなかったのか。貴族の三男坊かなんかか?まあそこの机でこの書類を書いてくれ」
なにやら書類を書かなければならないらしい
「わかった」
書類と聞いて読み書きが心配だったが見たところ問題なく読めるし大丈夫だろう。便利だな、言語理解
。内容もそんなに難しくなかった。「公序良俗を守り、窃盗、暴行などの犯罪を起こさないこと」とか「犯行の現場の発見、および指名手配犯の発見時は速やかに衛兵に通報すること」など、正直言って当たり前のことばかりだ。
「っと、書き終えました」
「どれ…、うん?成人してたのか。まぁいい、特に問題ないな。おい、カルロス。仕事だ」
「あー、了解」
衛兵が呼ぶと奥から少し痩せ気味の男が出てきた
「じゃあこいつの目を見て【今書いたこと、ここで話したことに嘘偽りはない】と言ってくれ」
「【今書いたこと、ここで話したことに嘘偽りはない】」
しかしなにも起こらなかった
「?」
「よし、通っていいぞ。…ん?あぁ、今のは真偽官によるチェックだ。ここで嘘をついていたらあいつの魔眼で見抜かれて、まぁ大体牢屋行きだ」
疑問に思っていたら衛兵が説明してくれた
「ありがとうございます」
俺がお礼を言ったあと、丁度書き終えた理愛が同じ宣誓をし、俺たちは街へ入った
「うわぁ、すごいねぇ」
「あぁ、こんなの見たことない」
「おい、あとでいくらでも見れるんだからまず冒険者ギルドに行くぞ」
感動していたら急かされた
「「はぁーい」」
俺たちはハモったことに笑いあいながらロイスのあとに続いて冒険者ギルドに向かった
冒険者ギルドもでかかった。大きさ的には五階建てのマンションくらいで、入口の扉にはクロスした二本の剣と槍、そして盾が描かれていた。
そして中に入ると右手に依頼がいっぱい張ってある場所があり、部屋中にある席や通路に冒険者らしき人たちが思い思いに話をしていた。
ロイスは真っ直ぐに奥の窓口に進むのでそれについて行く。
「こんにちは、ロイスさん。依頼の報告ですか?」
「ああ、依頼の報告とこいつらの登録をしてやってくれ」
「ロイスさん、相変わらず仕事が早いですね。無事でよかったです。登録は報告が終わってからでいいですか?」
こちらを見てくるので頷きを返す
「わかりました、依頼内容はゴブリンの巣の壊滅ですね」
「あぁ、ゴブリンは全部で72匹。ボスのゴブリンキングとゴブリンジェネラルはもちろん、雑魚もほとんど倒したが三匹は逃がした」
「討伐ミスは三匹、と。はい、依頼達成になります。こちらが報酬の銀貨80枚です」
「ありがとう」
「では、登録ですね。私は冒険者ギルドレングァード支部の受付嬢のルイです。よろしくお願いします」
ロイスが報酬を受け取ったあと、こちらに向いて話しかけてきた
「帝だ。よろしく頼む」
「理愛です。よろしくお願いします」
「はい、では身分証、または仮身分証の提示をお願いします」
俺たちが仮身分証を渡すと横にある黒い箱のようなものの上に羊皮紙をおき、横の投入口から仮身分証を一つずつ入れた。そして10秒ほどすると黒い箱の上の羊皮紙をとり、こちらに見せてきた。
「こちらで間違いないですか?」
「はい、大丈夫です」
「うん、間違いない」
「それではこの下にある空欄を埋めてもらえますか?」
受け取った羊皮紙には使用武器、職業、希望する戦闘配置などがあった。
コピー機…?
「使用武器は今じゃなくても良いですよ」
「あ、そうですか。あと、職業は無いんですけど…」
と、理愛が聞くと
「そうだったんですか、じゃあこちらにお願いします」
といって二人とも奥の部屋へ連れて行かれた。
奥の部屋について行くとそこには透明な球体がポツンと浮いていた。
「これは?」
「これは、ジョブクリスタルといって職業についたり、上位職に転職したりもできるんですよ」
なるほど、そういうことか
「それではこれに触れてください。触れると半透明のウィンドウにつける職業が表示されるので選択して決定してください」
ファンタジーだなぁ。そしてニートは少なそうだな
「じゃあ俺からでいいか?」
「うん、私は後でいいよ」
理愛からの了承を受け、ジョブクリスタルに近づき触れるとウィンドウが表示された。
選択可能職業
魔刀士 適性100%
一個しかなかった。
色々悩みながら選ぶのも楽しそうだが、まぁそれならそれでいいと魔刀士を選択すると体が光りを放ち、なんだか力が湧くような感覚があった。
「うん、出来たみたいだ」
ステータスにも表示されてる
「じゃ、次は私ね」
と、理愛がジョブクリスタルに触れ、10秒ほどで選択を終えて戻ってきた。
「早かったな、何にしたんだ?」
「賢者」
賢者か、色んな魔法使えそうだな
「賢者!?」
なにやらルイさんが反応した
「賢者だと何かあるんですか?」
と、理愛が聞くと
「賢者って伝説にしかいない最強で万能の魔法職ですよ!」
「「へぇ、そうなんだ」」
ハモった
「何でそんな冷静なんですか…。とりあえずギルドマスターとお話してもらってもいいですか?」
「え?、まあ良いけど」
と理愛が答えるとすぐに近くの宝石のようなものをとり、どこかと連絡し始めた。きっと魔法だろう。
「少ししたらギルドマスターが帰って来るので待っててもらえますか?」
「わかりました」
「ところでミカドさんの職業は…?」
急に俺に話を振られた
「?、俺は魔刀士だが」
「魔刀士…?魔剣士ではなく?」
「ああ、魔刀士だ」
「聞いたことないですね…」
「でもなんか強そうだね!」
「そうだな、まぁそもそもこれしか選べなかったけどな」
「そうなんだ、私の時はいっぱい出たよ。ただ強い順に並び替えたら一番上に賢者がきたからそれにしたけどね」
なるほど、どおりで早かったわけだな
「でも、魔刀士ってなんか、帝にぴったりだね!」
「そうか?俺はいまいちピンとこないな」
「えぇっ魔法使える侍みたいなのじゃないの?帝の家代々古流武術を受け継いでるじゃない。その中に刀もあったでしょ?」
「あるにはあったが、俺は色々やってたからな、専門にやってるやつには負けるさ」
「いえ、サムライという職業は別にありますし、サムライと魔法職の融合職もありますが魔刀士という名前ではなく魔装武士だったはずです」
ルイさんが理愛の疑問に答えてくれた
「気になるのであれば自分の職業名をタッチすると確認できますよ」
なんだ、確認できるのか
「帝、やってみて!」
「ああ、えっと、これか?」
魔刀士
魔法と刀のアーツを使うことができる。また、この職業は聖霊、および精霊と契約でき、職業Lvが上がることにより、アーツ、スキル制限が緩和される
また、アーツ、スキルのデメリットを緩和する
アーツ
抜刀術
居合い時に【抜刀】のワードを詠唱することにより、居合いの速度、精度の大幅な強化をすることができる
魔刀技[雪花 風車 狐火土竜 聖光 闇討]
各種詠唱に対応した属性を刀に纏わせて攻撃することができる【魔刀技 ○○】の詠唱で発動
「えっと、刀と魔法が使えるらしい」
「んー、大体予想通りだね」
「それだと魔装武士とあんまり変わらないですね」
「そうなのか、まぁあとはの聖霊と精霊と契約できるらしい」
「えぇ!?聖霊と契約できるんですか!?」
なんかすごい食いついてきた。あと近い
「なんかあるの?」
理愛が質問すると、ルイさんは興奮気味に聖霊は今まで勇者の職業でしか契約できなかったこと。そして、聖霊と契約した勇者が歴史上2人しか居ないことを教えてくれた。
「なるほど、なんかすごいのはわかったな」
「だねー」
「あんまりわかってないですね…」
ドタバタガシャーン!ダダダダダ…
なんだ?
「あ、ギルドマスターですね」
ダダダダガチャっ
「ルイ!件の新人はどこだ!」
身長の高い筋骨隆々のおっさんが興奮して部屋に入ってきた。
「はいはい、こちらにいらっしゃいますよ。全く、少しは落ち着いてください」
今の今までルイさんも落ち着いてなかったよな?
「これが落ち着いてられるか!」
「ええ、わかりますよ。でも、さらに驚くことがありますよ」
「なに?まさかそっちの小僧にも何かあるのか?」
「はい、そのまさかです。こちらの帝さんは魔刀士という未知の、聖霊と契約できる職業につきました。」
「マジ…?」
「マジもマジ。大マジです。」
うーん、どこに驚いてんのかいまいちわからんな。まぁ、俺たちがこの世界のことを知らないだけなんだろうけどな
「お前ら何モンだ?」
「は?」
せっかくロイスさんたちを待たせて待ってたってのにちょっとイラッと来たので殺気をぶつけてみた。
「ちょっと帝。やめてよ」
「小僧、殺気を向けてくるとはワシと闘る気か?」
理愛が制止し、おっさんはこっちに殺気をぶつけてくる。
「いや、全然。ただ、俺たちは恩人のロイスさんたちを待たせてまであんたを待ってたんだ。謝罪の言葉もなしにそりゃねぇだろ?」
「そうですよマスター!ロイスさんたちにも怒られちゃいます!」
「むっ、それもそうか。すまんな」
まぁ良いか。おっさんが殺気を収めたあと、俺も収める
「とりあえずワシは冒険者ギルドレングァード支部ギルドマスターのレイズだ。先程は失礼した。これからよろしく頼む」
「菊文字 帝だ。帝がファストネームだ。ギルドにはさっき登録、してないなうん、これから登録する」
「同じく、理愛です」
まぁ悪い人ではないようだな
とりあえず…
「「登録の続きをしてほしいんだが(ですけど)…」」
またハモったな