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妖怪『目力』の涙。  作者: つちのこの子
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妖怪『目力』の涙。 下

 次の日、天気は雨。僕は朝一番に来た。教室に入ってきたクラスメート一人一人に


「今日さ、先生に謝ろうよ」


 と伝えるためだ。きっと断られるだろうな……そう思っていた。

 だが、返ってきた反応は意外なものだった。


「うん。いいよ」


 それを全員が口をそろえて言ったのだ。

 僕は安心した。みんなが反省してくれているのだと心の底から信じた。


 そして8時30分、河崎先生が不機嫌な顔で教室に入ってきた。

 そして、


「今からみんなで謝りに行ってきて。動画を撮ってもらおうとしてた先生に迷惑が掛かってるから」


 みんな黙ってしまった。


「ほら、はやく。学級委員、どう謝りに行くか決めてよ」


 先生の目には涙が浮かんでいた。


「……では、動画の撮影を頼んでいた先生にどう謝るか決めようと思います」


 僕は、思わず

「待ってください。みんなはそれでいいの?せっかくのクラスビデオだよ?やろうよ」


 あまり目立つのが好きではないはずだったのに言ったしまった。


 学級委員は、

「では、クラスビデオをやりたいと思います」


「ねぇ、それはないでしょ?『僕』くんが言わなかったらそのままやらなかった、よね、私がみんなを、こんな風に、しちゃった、の、かな……」


 先生は涙をポロポロと流しながら、みんなにうったえかけた。


 無言の時間が続く。


 そして、そのまま朝のホームルームの終わりを告げるチャイムが鳴り響いた。


「『僕』が余計なこと言うからだよ。学級委員かわいそう。」

 そんな言葉が聞こえたような気がした。

 誰もそんなことは言っていないとわかっていても。


 僕は2年生の頃、クラスに馴染めずクラスメートを避けてばかりいた。でも、このクラスになってからクラスメートはそんな僕にも話しかけてきてくれた。そんなクラスメートに嫌われるなんてそれ以上につらいことはない。


 僕は泣いていた。教室のすみっこで。袖で涙を拭っても拭っても次々に涙が溢れてくる。


 そんなとき、急に誰かが僕の背中に手を乗っけてきた。振り向くと、小松くんだった。


「『僕』は良くやったよ、勇気出したんだよね。オレには出来ないよ」


 そう言って僕を慰めてくれた。優しくされればされるほど、涙がこぼれ落ちてくる。


「良く頑張ったよ」

 小松くんはそう言って僕の頭にポンッと手を乗せた。そして、小松くんは次の授業の準備を始めた。


 それから何時間か経った。次の授業は体育、それも長縄だった。みんなどんな風に思ってるんだろう……

 そんな気持ちもあったが、泣き疲れたのと、小松くんに声をかけてもらったこともあって、なんとか体育の授業に参加する決心がついた。


 長縄が始まると、みんな声を掛け合って飛んでいた。まるで悲しいことも飛んでいくような、そんな気持ちになった。きっとみんなもそう思っているだろう。普段、体育は嫌いだけど今日は体育に心から感謝した。


 そして昼休み、クラス全員で相談してクラスビデオを撮ることと河崎先生に謝ることに決めた。クラスの代表で言ってくれるのは川野さんと豊島さんになった。二人もとてもつらい思いをしていたはずだった。


「「河崎先生、ごめんなさい。私たちクラスビデオ撮りたいです」」


ー ー ー


 クラスの二人が学校内を走る。一人は小松くんだ。

 そして二人が帰ってきたことをクラスのみんなで喜ぶ。


「うるさーい!」


 川野先生の目力でみんなは一斉に教室に倒れた。


 みんな笑顔だった。

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