第四話
相馬が少し悔しそうに中村に言った。
「はは、やっぱりフォークが良かったかもな。」
「ああ。俺のフォークよりも変化があるな。」
「でも、お前の真っ直ぐは調子が良ければ誰も打てないよ。」
中村の言う通り相馬の直球は最速130kmの大変速いストレートである。
「そうだな。まあ、調子しだいは余計だけどな。」
「はは。」
こんな様子で忘年会は進んでいった。
相馬は飲み物を取りに立ち上がった。店内の飲みものがあるブースに向かう。その途中で中村の母が目に入った。相馬はその隣を見た。そこには一人の女の子がいる。
相馬はすぐに目をそらした。そして飲み物を取って自分の席に戻った。
そこには中村の妹、中村真樹がいた。
実はこの相馬は、孝の妹、中村真樹に恋心を抱いていた。初めて練習を見に来た日、初めて試合を見に来た日、見ているだけだったがだんだんと彼女にひかれていった。何度か話をしたことがある。鼓動は少し早くなる。この感覚はマウンド上でも感じられない気持ちだった。
「どうした。」
席に戻ると中村が声を掛けた。
「いいやなんでもないよ。」
オレンジジュースを飲む相馬。この席からだと彼女は見えないか。彼はそんなことを考えていた。
「相馬、お前、正月休み中はどうやって自主練習をするのか。」中村が言った。
「お前こそどうなんだよ。俺はランニングと筋肉トレーニングかな。」
「俺も同じ感じだ。地元でも地区が違えば練習もしにくいな。」
「正月なら、少し休んでもいいじゃないか。」
「そうだな。」
「2人ともだいぶ落ち着いたみたいだな。俺も安心だよ。ピリピリしたムードじゃ年を越そうにも越せないからな。」
キャッチャーの佐橋が言った。
「はは。」
1時間半に及ぶ忘年会は終わった。




