二話 滞在
今度はベッドの上だった
今も夢だと信じていたい気持ちが隣にいる女性の存在によって否定される
もう戻れないことだけが俺の真っ白な頭の中を廻っている
「起きたんだね、ジンさんを連れてくるから少し待ってて。」
水はそこに置いてあるからと去り際に言い放った彼女はリリィ。
華奢で日本人離れした白い肌に蒼い瞳、極めつけはアルビノ種かと言いたくなるほどの白髪、染料など使ってない純白だ。
(そりゃ異世界なんだからこんな絶対的美少女がいてもおかしくはないよな・・・)
昨日連れて来られて自己紹介されたときは、リリィの存在などほぼ認識できるはずもない精神状態だったのでここで初めて彼女のことを考えた。
(この世界にも人間がいて良かった・・・ゴブリンや鳥しか見てこなかったから人外ばかりかと)
わりとRPGによくありそうな世界背景だったので馴染めないことはないのかもしれない、ふとそんなことを考えているとリリィがジンを連れて戻ってきた。
「おはよう、一晩寝て少しは落ち着いたかの?」「鳥が喋っていること以外は受け入れられたよ」
「そんな生意気言っていられるなら大丈夫みたいじゃの、これからどうする?」「わかんねぇ」
実際わからない、今まで麻衣のために現実世界でいろんなことを積み上げてきた、生きがいと言ってもいい。
それが今では手の届かない距離に行ってしまった俺にはどうすることも・・・何か行動を起こす気にすらならない。
せめて現実世界に戻れる手掛かりさえあれば・・・!!
「・・・俺はこの世界の住民じゃない。違う世界にいて朝起きたらグリン海岸にいた」「何をおかしなことを言っておる?」
「あぁ・・・おかしいよな、俺も信じたくないよ夢ならとっとと覚めてほしいくらいだ。帰る方法も知らない」
ジンやリリィに向かってこんなことを嘆いていても仕方がないのだが今はこんな愚痴を漏らすだけしかできない、自分の無力さを実感した。
「帰る方法はワシにもわからん、今のところおぬしの世界に戻れる気配もない。しばらくはここで暮らすしかない。」
そんな俺を励ますかの如く、ジンは告げた。
「冒険者にならないか?」
@sakaya_sanWR