一話 受け入れがたいこの世界
なにやらファンタジーっぽくなります
第一章
身体がふわりと浮いた気がした
背中を支えていたベッドの感覚がなくなり違和感で目を覚ます
「・・・ひぇ?!」
情けない声が漏れた、そんなのはどうでもいい。
「酔ったせいでこんなとこに放置された・・・わけないよな!」
昨晩はサークルの飲み会で毎度の如く潰れてしまった
だが家に帰って眠りに就いたのは微かに覚えている
「俺のベッドは砂ではないし、部屋に潮の香りがする芳香剤なんて置いてない。ていうかここは・・・」
海 だった。
「海だった・・・じゃねぇよ?!朝起きたら海ってあり得ないわ!!てかこの隣にいるカモメみたいな鳥なんだよ?!」
カモメみたいな鳥「朝からうるさいガキじゃの」
「・・・・・・・・・・・・・・?????」
夢だ、ていうか、もう寝よう。
「おやすみ」
「二度寝もいいがワシはもうここから去るぞ。こんな潮臭いところでガキの子守なんぞ嫌じゃからな」
「カモメのくせにワシとか言うな、カモメは鷲にはなれない」
「ワシの名前はカモメじゃなくてジンだ、寝るのもいいがヤツには気をつけろよ。見た様子何も所持していないようじゃが丸腰じゃ喰われるぞ」
「・・・ヤツ?・・・喰われる?なんだよ濁さないで折角だから教えてくれよ」
「・・・まぁそれもいいが見るほうが早いじゃろ、立ち上がって後ろを見てみよ」
言われるがままに立ち上がってみる
(感覚がリアル過ぎて夢じゃない・・・けど鳥が喋るって信じられるわけが・・ぁぁあああああ!?!?!!!!!!!!)
全身が硬直した、脳が震えた、鳥肌が治まらない。
俺の視界に入ったのは人影、だが人ではない。
まず特徴的なのが酷く肥大した頭、低くへしまがった鼻、半身を覆う歪な鎧。
木陰に座り込んでいるようなので確かではないが恐らく三頭身程度
「グゴォ・・・・」
ゴブリン
「ワシが通りかかってなかったら既にお主はあの無駄にデカい腹の中じゃろうのぉ・・・感謝せい。しかしお主の慌てぶりを見ると本物のゴブリンを見るのは初めてなんか?」
「本物も何も存在自体しないものだと思ってたよ・・・目の前で実際に見るとかなりキモいな」
「お主はこれからどうするんじゃ?こんな場所でただ寝てただけではなかろう、行く宛はあるんかの?」
「ここでただ寝てたんじゃなくて、ただ寝てて気づいたらここにいたんだよ・・・」
「なんじゃそら」「いや俺だって受け入れられねえよ・・・どこだよここガラパゴス島か?」
「はて、そんな島は聞いたことがないがのぉ、ここはリミ国ヘスト領の端にあるグリン海岸じゃ。そういえば今更ながらお主の名は?」
「あぁ、助けてもらったのに紹介が遅れて悪かった。俺は白鳥淳。淳って呼んでくれ」
「シラトリ・ジュン、お主ここらの者ではないだろう?どこの者だ?」
「日本って・・・知ってるか?」「ニホン・・・どこの国だ?この世界飛び回って何十年も経つが初めて聞く名じゃぞ?」
あぁ、俺はやっと確信した。
やたら図体がデカく喋る鳥、ゲームや漫画でしか見たことがないゴブリン、恐怖や鳥肌などのリアル過ぎる感覚。
夢ではない、そして俺の知っている世界ではない。
ここは 異世界 だ
薄々わかってはいたが、いざ受け入れると色んな感情が溢れ出る。
「ジュン!しっかりしろ!」
膝から崩れ落ちた、砂浜のおかげで痛くない。
今まで積み上げてきたものが全て手から離れていく
友情、金、車、大学・・・
そんなのはどうでもいい、それらは全てはただ一つのものを手にするために積み上げてきた。
彼女、黒峰麻衣。麻衣とはもう会えない。手を伸ばしても届かない距離にいる。
そこからの記憶はほぼない、ジンのおっさんに連れていかれてたどり着いたのが、ヘスト領最南端の街であるグヌートだった。
プロローグにおける現実世界のリアリティー溢れる背景がここでサラッと流されました
ようやく登場人物の名前が紹介されましたね!ジュン、マイ、ジンだよ覚えてってね!
ジンは昨日飲んだジンというお酒から貰いました、みんなも知ってますよね?
このおっさん鳥、わりとガタイはいいんですよ??
次回の投稿も早いペースを維持していくつもりなので続きもお願いします!
twitter→@sakaya_sanWR
以前投稿された分にでもいいので意見や感想待ってます;;