24章合奏の怪〔秋葉文代〕
私は予定通り、高校に到着した。
音楽室に入ると沢山の生徒が「こんにちは!」と言った。私も「こんにちは」と言った。チューニングの最中だった。前に立っているのは学指揮のうちの1人、中村さんだ。
チューニングは何事もなく終わった。
「起立、気をつけ、礼」
「お願いします!」
「お願いします。じゃあみんな座って」
「失礼します」
「じゃあ曲は ― 」
そして、合奏が始まった。
なぜか私がバリをさすたびに、少し戸惑ったような、微妙な空気が流れた。どうしてだろう。
考えたが、わからなかった。
たまにそんな空気になったが、今回も合奏は順調に進んだ。そしてあっという間に合奏は終わった。
「気をつけ、礼」
「ありがとうございました」
その後、私はしばらくスコアと呼ばれるものをペラペラとめくっていたが、大きな声で言った。
「ねえ、バリの子こっちに来てくれる?」
その時、空気が凍りついた。
「あれ、休みだった?……やだなぁ、そんな顔しなくてもいいのに」
私は思わずは苦笑いをしながら言った。それに対して、部長である?橋さんは言った。
「……言うのが遅れてしまい、申し訳ないのですが……実は、バリを担当していた内川咲希さんが亡くなったんです……」
「……あら、そうだったの……不思議ね、私にはバリの音が聞こえたような気がしたの。でも、本当にいませんものね……」
「……ここに遊びに来たのかもしれません」
と言ったのは、西野さんだった。
「咲希が……内川さんが遊びに来て、ここで一緒に楽器を吹いてくれたって、私は思うんです。内川さんは、いつも『この部活が大好きなんだ』って言っていましたから」
しばらくの沈黙。
「……そうかもしれないね」
私は言った。
また沈黙が流れたが、今度は短い沈黙だった。なぜなら、
「……時間もないのでミーティングします!」
高橋さんがそう言って沈黙を破ったからだった。




