18章 新しい日常の始まり〔内川咲希と思われる人〕
「咲希、一緒に帰ろ!」
「はい!」
私達2人は昨日と同じ道を通って帰った。
「ただいま!」
「こんばんは、お邪魔します」
「あっこ、お帰りなさい!咲希ちゃん、ゆっくりしていってね!」
ダイニングキッチンから中村さんのお母さんの声がした。そして、昨日のように中村さんの部屋で過ごしているうちに呼ばれた。
「3人とも!ご飯よ!」
「はーい」
「今行きます!」
そして、食卓を見て驚いた。
今日は私の分の夕食も用意されていたのだ!
「わざわざすみません、私の分まで……」
「いいのよ。今だけはうちの子だと思わせてちょうだい」
中村さんのお母さんは、懐かしそうで、哀しそうな目をしていた。しかし、それも一瞬のことだった。
「椅子は昨日と同じような感じで使ってちょうだい」
「分かりました」
「それじゃあ食べましょうか」
「いただきます」
今日はみんなで一斉にいただきますを言った。
陸斗くんが学校でのことを楽しげに話し、中村さんは今日聞いて感じたことを話す。
「あのね、今日はサッカーをしたんだ!それでね……」
「今日の朝、教室で魂を見つけたの。何十年も前に事故で亡くなった生徒だったよ。なんでここにいるのかを尋ねたらその人は……」
私も部活の時にサックスパートの人が思い出話をしてくださったことを話した。
その時、他の3人はその話をちゃんと聞いてくださった。この家では誰かが話しているときは周りの人は聞き役に徹することがルールになっているようだった。だから、私も他の人が話しているときは聞き役に徹した。感想や質問は話が終わってからした。
その時、ふと、中村さんのお父さんがなかなか帰ってこないことに気付いた。
「そういえば、中村さんのお父さんは、今日はいつ頃帰られるんですか?」
昨日はこのぐらいの時間だったはずだが……
「ああ、今日は仕事の人との付き合いで外食だって。帰りは遅くなるみたいよ」
中村さんがそう答えてくださった。
「そうなんですか。ありがとうございます」
「……にしても、なんで?」
「いや、なんとなく気になっただけです」
「そっか。昨日はこのぐらいに帰ってきてたからね」
私はうなづいて、ご飯の続きを食べ進めた。
そして、ご飯を食べ終わった後、陸斗くんとテレビを見たりした。過ごし方はあまり昨日と変わらない。
そう気付いた時、きっとこれは、私の新しい日常になるのだと思った。
ここで中村さんの家族と過ごす、この風景が日常になるのだと。
寝る時間になり、私は昨日と同じように眠りについた。昨日より慣れてきたのか、昨日ほどの疲れは感じなかったが、それでもとても疲れていたから、すとん、と眠りについた。
そして、私は不思議な夢を見た。




