12章 中村一家〔中村美穂〕
私は夕飯を作りながらあっこの帰りを待っていた。
そのとき、これから不思議な事が起こる、そんな気がした。根拠はない。勘だ。だけど、私の勘は外れることがない。
私が生まれつき持つ第六感というものは、普通の人と比べるととても強い。普段は嫌なことまで勘が働いて分かってしまうからその力を抑えている。最近は、無意識でもその強い第六感を抑え込むことができている。でも、勘が働いたということは……
この予感は、外れることはないだろう。
「ただいま!」
「お帰りなさい、お姉ちゃん!……」
あっこが帰って来た。陸斗が出迎えたようだ。
「初めまして!……?」
「わ、私は……」
「陸斗、あのね……昨日の夜……記憶も全て……」
「あ、そうなの?……!」
……全ての会話が聞き取れたわけではないけれど、どうやら訳ありのお客さまがいるみたいなので、今作っている大学いもの量を増やそうと思った。
お客さんがいらっしゃったのなら、何か食べ物をお出ししないと。
しばらくして、あっことお客さんがここにやって来た。お客さんはあっこと同じか年下ぐらい。いろんな意味で、訳ありの女の子だった。
「お母さん、ただいま」
「お帰りなさい。あら?珍しいお客さんね」
「うちの部活の後輩なの。内川咲希って言うんだ。咲希は昨日の夜、人身事故で亡くなってしまったんだけど、記憶がなくて、死の国への帰り道が分からないみたいなの。行くあてもないみたいだから、連れて来たんだ」
……それは、内川さんにとっては困ったことだ、ということは簡単に想像出来た。
「あら、そうだったの。内川さん、うちの子がお世話になりました。ゆっくりしていってね」
「ありがとうございます」
あっこは彼女の名を呼んで、部屋を出た。自分の部屋にでも行くのだろうか。
しばらくすると、ピアノの音が聞こえて来た。あっこが弾いているようだった。
あっこがピアノを弾き終わった頃、ご飯ができた。
私は2人を呼んだ。
「あっこー、ご飯よー!内川さんもいらっしゃい!」
「はーい!」
そして、テレビを見ている陸斗にも声をかける。
「ほら、陸斗も!テレビばっかり見てないで!ご飯よ!」
「はーい!ねえお母さん、今日はもしかして大学いも?いい匂いがするもん!」
「そうよ」
「わーい!やった!」
そんな陸斗の顔を見て、私はにっこりと笑って食卓についた。




