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極大魔法戦争マジックシューターズVR  作者: 告井 凪
第1話「最強の魔法使い」
5/45

5「曖昧な約束」


「ごめんねー、わたしチームモードやるつもりないんだ。だから、お断りするね」

「っ……!!」


 筐体から出て第一声、リーナに断られた晃人は膝から崩れ落ちた。


「わ、そんなに落ち込まないで? ごめんね、わたしチームモードだけじゃなくて、ランクモードもやってないの。ランクが絡むのは、やりたくなくて。フリーモードばっかりやってるんだよ」

「あ……だからCランクなのか」

「うん、そういうこと」


 納得した。Cランクなのにマジックシューターズに詳しく、恐ろしく強いことに。


(どうしてランクモードやらないんだ?)


 あれだけ強ければ、Sランクはもちろん、その上だって狙えるはずだ。


「ごめんね。コートくんとは、チームを組めないよ」

「そ、っか……」



 バトルの終わり際。


『俺と一緒に、魔法使いの頂点を目指してくれないか?』


 と、晃人は言ったわけだが、当然、意味が通じるはずもなく、筐体から出る前に通信で説明をしたのだ。



『魔法使いの……頂点?』

『……ハッ。ち、ちがうんだ。つまり一緒にチームを組んで、チームモードの大会に出て欲しいって意味!』

『ああー。じゃあ頂点って、優勝ってことだね?』

『そう! そういうこと!』



 マジックシューターズには、フリーモード、ランクモードの他に、チームモードがある。

 予め四人でチーム登録をし、ランクモードとは別のチームランクを競うモードだ。


 晃人はリーナに、自分とチームを組んで欲しいと言いたかっただけなのに。

 どうしてあんな言い回しをしてしまったのか。自分でもわからない――


(いや、わかってる。錯覚してしまったからだ。リアルに見えすぎて、まるで自分が本当にあの中に入ってしまったかのような――)


「――コートくん? 大丈夫?」

「あ……うん。いや大丈夫ではないけど、大丈夫」


 晃人はようやく立ち上がり、リーナと正面から向き合う。

 ……やっぱり。

 あの時見たリーナと、今見ているリーナ。まったく同じだ。


 ゲームとは思えないほどリアルに見えていた、あれは一体……。


「……? とにかくそういうわけだから。わたしはそろそろ……」

「あっ。待った! 少しだけでも、考えてくれないか? どうしても、リーナとチームを組みたいんだ!」

「おおっと、意外と食い下がるね? どうしてそこまで、わたしと?」

「俺はもともとチームモードがやりたくてマジックシューターズを……。いや、そこはいいんだ」

「え、よくないような。大事なところじゃなかった?」

「それよりも! 俺はあの時、リーナが本物の魔法使い、最強の魔法使いに視えた(・・・)んだ! だから、一緒にチームを組んで欲しいと思った。リーナが一緒なら、チームモードの頂点も夢じゃないって――」

「魔法使いに……視えた(・・・)? わたしが? それって……」


 神妙な顔になり、顎に手を当てじっと晃人の顔を見る。


「あぁ、ほら、ハイになってたっていうか、覚醒した感あったっていうか。錯覚だったとは思うんだけど、妙にリアルに見えてさ。だから……その。いや、わかってるんだ、変なこと言ってるって。でもなんて言ったらいいかわからないんだけど……」


 チームに誘う理由としては、ものすごく曖昧な話だと思う。具体性がないし、嘘くさくて、思いつきで言っているだけに見えてしまうかもしれない。


 それでも、本当にそう感じてしまったのだ。


「ぶっちゃければ、直感だ。この人とチームを組むべきだって、感じたんだ。別にリーナの強さに縋りたいんじゃない。それで勝ち抜けるほどチームバトルは甘くないと思うし、俺自身が強くなって勝ちたい。

 ……そうだ。強く、なるために。そのために、一緒にチームを組みたいんだ!

 頼む。俺とチームを組んでくれ!」


 リーナの表情は読めなかった。

 驚いているようにも、迷っているようにも、悲しんでいるようにも見えた。

 だけど、リーナは静かに言葉を紡ぐ。


「……真剣なんだね。でもね、コートくん。わたしにはわたしの事情があって……理由があって、ランクモードやチームモードをやらないんだよ。だから、ごめんね。わたしもね、直感とかさ、そういうの、あると思ってるし。コートくんがそう感じたなら、わたしも信じてあげたいんだけど……」

「……そっか」

「でも……。ねぇ、コートくん。さっき、わたしのこと魔法使いに見えたって言ったよね?」

「う、うん。今思うと錯覚だったんだろうけど……でも」


 冷静に考えればそうなのだろう。


 でも、鮮明に覚えている。

 最強の魔法使い、リーナの。美しい姿を。


「……そっか。じゃあ、少しだけ考えてみる」

「えっ……ほ、ほんと?!」

「あ、考えるだけだよ? 本当に少しだけね。それで、もしまた会うことができたら、その時はもうちょっとだけ、前向きに考えてあげる」

「な、なんかあんまり変わってない気がするけど、それでもいい! 可能性がゼロよりはいいから! ありがとう、リーナ!」

「そ、そんなに期待しないでね? さっき言った通り、わたしにも色々、ね」

「……うん。わかってるよ」


 そうだな、と思う。

 チームに入って欲しいというのは、完全に晃人の都合だ。

 それを押しつけてはいけない。



「じゃあ、リーナ。もう一つだけ約束して欲しい」

「うん? どんな約束?」

「もし、もう一度会えたら。ランクやチームモードをやらない理由、教えてくれないか?」

「それは……。うーん、それも、前向きに考えるってことで」


 ちょっとだけ苦笑いを浮かべるリーナ。

 さすがに、踏み込みすぎたようだ。


「……ごめん、会ったばかりなのに、図々しいこと言って」


 リーナは最初から親しげに話しかけてくれたが、それでも、今日が初対面なことに変わりは無い。


 だけど、いつか。

 そんな話もできるような、友だちに――仲間になれたら。


「ううん、大丈夫。それよりいいの? こんないい加減な約束。また会えるとは限らないよ?」

「うーん、なんか、会える気がするんだ」

「それも直感? コートくんって、真面目で、理詰めで考えそうなのに、結構感覚派なんだね」

「ど、どうだろ? あんまり考えたことなかったな」

「あはは、いいと思うよ。わたしも友だちに、直感で動いてるってよく言われるから……って、そうだ! ごめん、もう行かなきゃ。友だち、待ってるかも」

「おっと、待ち合わせしてたんだっけ」


 リーナが慌ただしく時間を確認する。約束の時間を過ぎてしまったのかもしれない。


「それじゃ、コートくん。ばいばい!」

「今日はありがとう、リーナ」

「どういたしまして! ……あ、そうだ!」

「ん? どうした?」

「クレープ! 今度会えたら、絶対奢ってよ!!」

「あー……。そうだった。約束だ」


 手をぶんぶんと大きく振って、駆けて行くリーナを見送る。

 そしてもう一度、マジックシューターズの筐体へと向かった。


 何戦かランクモードをやり、勝率も悪くはなかったが、Sランクには上がれず。

 リーナと一緒だった時のように、リアルに見えることも無かった。


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