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極大魔法戦争マジックシューターズVR  作者: 告井 凪
エピローグ
43/45

「特別なパートナー」


「結局、新たにEVSが発現したのは、沖坂晃人と神津原絢萌の二人だけでしたよ。対戦したシルバーマジシャンズの中で、様子のおかしい人はいなかった」

「ふむ……そうか。もしかしたらと、思ったんだが」

「もう一つの報告の方は、もしかしたら(・・・・・・)、ですよ」

「ほう? 聞かせてもらおう」

「沖坂晃人と神津原絢萌が、それぞれ一人でマジックシューターズをプレイした時。……EVSが発現しなかったそうです」

「……それは」

「特に絢萌は、個人的に呼び出してランクモードをやらせたから間違いない。VR通話や、他のVRゲームで発現しないのも確認済みです」

「ふぅ……。本当に、もしかしたら(・・・・・・)、だったようだな」

「EVSは……」


「ああ。Evolution(エボリューション) of Virtual(バーチャル) Sense(センス)。……では、なかった(・・・・)


「……もうひとつの仮説が、正しいと?」

Enchant(エンチャント) of Virtual(バーチャル) Sense(センス)

 仮想感覚付与能力。仮想感覚の進化ではなく、リーナが自分の特殊な仮想感覚を、他者に授けているのではないか? という説だ」

「今のところ、ふたりは対戦なりタッグなり、リーナちゃんと一緒でなければEVSが発現していません。だから仮想感覚の付与だ、と」

「そういうことだ。もちろんまったく違うなにかの可能性もあるが、その説が濃厚だろう」


「はぁ…………。なぁ、この話、リーナちゃんには」

「もちろんしない。できるわけがない。そうだろう?」

「当たり前だ! リーナちゃんはやっと……やっと、EVSが発現する仲間と出会ったんだ。なのに、やっぱり自分だけが特殊だったなんて知ったらっ」

「その通りだ。……だから、これからもよろしく頼む」

「言われるまでもない。……リーナちゃんは、私が守る。盾になる(・・・・)って誓ったんだ」

「ありがとう。

 ……ん? もう帰るのか?」

「今日はアレの日だろ。リーナちゃんと約束してるんだ」

「ああ、そういえばそうだった。いってらっしゃい。気を付けてな」






「それにしても、Enchant of Virtual Sense、か。皮肉なもんだ。リーナのことを一番に思ってくれている彼女が、発現しない……授かっていないというのは」



                  *



「バインドブラスター!」

「っ……!!」


 コートの放ったバインドブラスターが破裂し、闇色の針が相手に刺さった。

 腕を振り抜こうと構えた格好で、動きが止まる。


「ウィンド!!」


 コートはそのまま、飛び退きながらウィンドを連射。一発目が命中し――


「――ミストバリア!」

「なっ……?!」


 相手の魔法使いは腕を振って二発目を払い、その回転の反動で三発目以降をすべて避けた。


「ウォーターランス!」

「あっ、しまっ――」


 その動きに思わず見惚れてしまったコートは、反応が遅れ為す術無く水の槍に貫かれるのだった。



                  *



「バインドは確かに武器使い相手には効果的なんだよね~。動きが止まるって言っても、プレイヤーの動きは止まらないから。腕をぶんって振り切ったのに、ゲームでは止まっちゃってる。ズレちゃうんだよ~。だから一瞬でも止まると、どうしても混乱しちゃう」

「こないだのバトルの前に、陸緒先輩にその話を聞いて、二本目と三本目でカスタムを変えるのを急遽思いついたんだ」

「うんうん。ギリギリでどうなることかと思ったけどねー。上手くいってよかったよね」

「新太先輩にカスタム変えたの読まれた時は焦ったけどな。さすがにバインドだとは思わなかったみたいで、助かったよ」

「でも新太先輩武器使いだから、バインドの対処法は考えてたと思うんだよ。でも不意打ちでどうしようもなかったのかな」

「……実際そのあとのバトルじゃ、当てさせてもくれなかったからなぁ。それに、リーナにはまったく効果がなかった」


 連休に入ったある日。晃人とリーナはハガーアミューズメントに来ていた。

 お互い私服で、リーナは水色のブラウスにピンクのミニスカート。カーディガンは着ていないが、春に見た時の服だ。


 今はプライベートモードで一対一のバトルをし、晃人が見事に負けたところだった。


「わたしのは武器創造系じゃないからね。ウォーターランスは一応射撃系だよ」

「いやそういう問題じゃ……。ミストバリアだよ。一瞬動きが止まったのに、動揺もなにもなく、普通にガードしたよな」

「うん? だって動きが止まるってわかってて、動き出すタイミングもわかっていれば、自分自身の動きを止めて、すぐにガードの動作に入れるでしょ?」

「……今さらっととんでもないこと言わなかったか? 動き出すタイミングって、普通わからないだろ」

「慣れるとわかってくるんだよ~。自分でディレイをかけるのが、バインド対策だからね」

「は、ははは……やっぱすごいな、リーナ」


 言うほど簡単なことではない。

 動きを止まるのがわかっていても、咄嗟にそんな判断ができるとは思えない。


(慣れ――。きっともう、身体が勝手に動くレベルの話なんだろうな)



「ねぇ。晃人くんは、マジックシューターズ。楽しい?」

「当たり前だ。特にみんなとやるようになって、前よりもずっと楽しい」

「そっか。じゃあよかった。あの時晃人くんに話しかけておいて」

「春休みのか? 突然ダメ出ししてきた」

「うぅ……あの時も言ったけど、あれは晃人くんがマジックシューターズを辞めちゃうと思ったからだよ!」

「わかってるって。……でもそうだな。あのおかげで、今は本当に楽しいよ。マジックシューターズが面白くてしょうがないんだ」

「……うん。わたしも。世界中で一番マジックシューターズが大好きだって思ってたけど、まだまだ、いっぱい好きになれそう」


 リーナはくるっと、晃人の正面に立つ。


「晃人くんのおかげでね。ありがとう」


 そう言って、元気に笑うリーナ。

 本当にマジックシューターズが好きで、今が楽しくてしかたがない。そんな感情で溢れた笑顔に、晃人は思わず……ドキッとしてしまう。


 同時に、あることに気付く。


「……リーナ。こないだ話したけど、俺、幼馴染みのことがあって、なんとしてもチームモードをやりたいって思ってた。今、それが叶って、叶ったからこそ気付いたんだ」

「叶ったからこそ? なにに気付いたの?」

「リーナたちのこと……幼馴染みの代わりにしようとしていたんじゃないかって」


 あの時の関係が、友情が、そんなもんだったの一言で片付けられてしまうのが、納得できなくて。そうじゃないって証明する方法を探していた。

 去年マジックシューターズに出会って、これなら証明できると思った。

 もう一度同じくらい強い絆を結んで、チームで勝つことができれば。


 でもそれは、リーナたちを幼馴染みの代わりにすると宣言しているようなものだ。



「酷いよな。リーナも、アヤメも、渡矢さんも。代わりなんかじゃないのに。今頃そんなことに気付いちゃったんだ」

「代わりかぁ……」


 晃人の話を聞いて、リーナは腕を組み、うーんと考え込む仕草をする。

 が、すぐに、


「うん、別にいいんじゃない?」


 あっさりと、代わりにしたことを肯定するのだった。

 晃人は思わずぽかんとしてしまったが、すぐに我に返る。


「い……いやいやいや! よくないだろ」

「ん~だって、ずっと代わりにするって話じゃないんでしょ?」

「そりゃ……もちろん」

「だったら、きっかけがそうだったってだけだよね? ならなにも問題ないよ。おかげで、わたしたちは繋がることができたんだから」

「リーナ……」

「人と人との関係って、だんだん変わっていくものでしょ? 始まりは幼馴染みの代わりでも、これからは違う。晃人くんは、今、気付いてくれたんだから。変わっていくよね?」

「……そうだな。ありがとうリーナ。リーナたちはもう、代わりなんかじゃない。俺にとって最高のチームメイトだよ」

「えへへ、よかった。わたしも今が、最高のチームだと思うよ」


 そう言って再び笑顔になるリーナを見て、晃人は……。


「……やっぱりな。リーナ、実はもうひとつ気付いたことがあるんだ」

「もうひとつ? なになに?」

「リンクフォーシューターズの……みんなの中でも、リーナは特別な感じがする」

「……えっ? や、やだなぁ晃人くん、いきなり何を言い出すの? 冗談?」

「冗談なんかじゃない。本当にそう思うんだ。俺は、リーナのこと……」

「ま、待って! え、そ、それって、晃人くん? わたしのこと、す、すっ――」



「おーい、リーナちゃん、お待たせ。そこで絢萌に会ったぜ」

「ふたりとも早いわね。なにかしてたの?」



 入口の方から代未と絢萌の声が聞こえて、リーナは手をばたばた振り回して続きを口にする。



「すっ――――『すき焼き定食(・・・・・・)』よりも最高だってことだよね?!」



「すき焼き定食? あ、あぁー……前に作ったチームか。あれはノーカンだと思ってるし、あいつらは中学の友だちで高校違うから。最近ほとんど会ってないんだよなぁ……」


 悪友、とまではいかないが、普通の友だちだ。

 リーナたちと比べるなんてとんでもない。


 そうこうしていると、代未と絢萌が側までやってきた。

 今日はこの四人で会う約束をしていて、たまたま早く来た晃人とリーナが対戦をしていたのである。


「んん? どうした、リーナちゃん。顔真っ赤だぞ」

「えぇ?! そーかなー? いま晃人くんとバトルしてたからかなー? あはははは……」

「リーナちゃん……? いや、うん、まさかな」


 リーナが大げさに笑いながら答え、それを見て代未が腕を組んで首を傾げる。


「……どういう状況よ、コート」

「さあ……俺もよくわかんなくなってきた」


 確かに一対一でバトルをして、筐体から出て話し込んでいたが、バトルでそこまで熱くなっていたとは気付かなかった。




「ま、いいわ。それよりアレが始まるまでまだ一時間あるわよ? 集合早過ぎたんじゃない?」

「二時からだよな? マジックシューターズ新情報の発表って」

「そうよ。なかなかすごいことするわよね、この巨大観戦モニターに映すって」


 全ハガーアミューズメントのモニターを使い、新情報の発表を行う。

 そんな告知があったのは、一週間前のことだ。


「この時期の発表って、たぶん」

「間違いなく、大会開催の発表よね!」


 晃人は絢萌と頷き合う。

 夏に開催するだろうと噂されている、第二回極大魔法戦争マジックシューターズ大会。

 おそらくそれを正式発表するのだろうと、プレイヤーたちは予想していた。


「にしても、だ。一時間やるんだろ? 今日の。本当に大会開催の発表だけか?」

「確かに長いよな。もしかして、他にもなにか新情報が……?」

「あはは、なにかアップデートとかもあるのかもね~」


 こういったモニターでの発表は初めてだが、カスタム魔法やフィールド追加などのアップデートは、今までにも何度か行われている。大会開催の発表に合わせて、なにか来る可能性はある。


「……なんか、楽しみになってきたな」

「そうね。楽しみ。……って、だから始まるまでの一時間、どうするのよ? リーナ」


 今日、この時間に集まろうと提案したのはリーナだ。視線が集まる。


「ご飯でも一緒に食べようかなーって思ったんだよ。でもね」


 リーナは笑顔で、マジックシューターズの筐体を指さす。


「その前に腹ごなし。一回、チームモードやらない?」

「お、さすがリーナちゃん。飯はそこらへんでなにか買って、発表会見ながら食えばいいしな」

「いいわね。対シルバーマジシャンズの練習の時は、フリーでやることが多かったから、結局ランク上がってないのよね」

「そうなんだよー! 大会が始まるなら尚更! そろそろランク上げておかないとね! いいよね、晃人くん?」

「もちろん。……よしっ、リンクフォーシューターズ、出撃だ!」

「おーっ!」


 声をあげて、四人は筐体へと向かう。


 その途中、晃人はくいっとリーナに袖を引っ張られた。

 見るとリーナは少し頬を染め、歩きながら耳打ちをする。


「ね、ね、晃人くん。さっきなんて言おうとしたの? ほら、ヨミちゃんたちが来る前……わたしのことが、特別だとか……なんとか……」

「あぁ、あれは……」


 晃人は前方、代未と絢萌が一足先に筐体に入っていくのを確認してから、答える。

 あまり――特に、代未には聞かれたくなかった。


「俺は、リーナに惚れ込んでるんだなって」

「ほっ――ほれ?!」

「初めてタッグを組んだとき、リーナの戦いに目を奪われた。最強の魔法使いリーナに、俺は惚れ込んじゃったんだなって、気付いたんだよ」


 晃人がそう言うと、リーナは立ち止まる。

 どうしたのかと振り返ると――


「――ふふっ、あははははははっ! 惚れ込んだって、最強の魔法使いって……もう晃人くんは晃人くんだなぁ」

「え……そっ、そんな笑うなよ! 恥ずかしくなってきただろ!」

「恥ずかしがってればいいんだよ、晃人くんなんて。……それよりほら、行こっ! 最強の魔法使いの隣に並んで戦ってくれるんでしょ?」

「それは、もちろん……約束したし」

「じゃあ、晃人くんはわたしのパートナーだね! これからもよろしくっ!」


 リーナは晃人にウィンクして、肩を叩いて筐体へと駆けて行ってしまう。

 晃人はその背中を呆然と見ながら、ぽつりと、誰も聞こえない声でつぶやく。




「……リーナって、やっぱり……カワイイんだよな」



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