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極大魔法戦争マジックシューターズVR  作者: 告井 凪
第1話「最強の魔法使い」
4/45

4「戦いの女神は舞う」


 結論から言おう。


 リーナは、本物だった。




 ゲームが始まると、半径1メートル強の筐体内が、木々が鬱蒼と茂る森林のフィールドに様変わりする。ヘッドマウントディスプレイに映し出される景色は360度見渡すことができ、自由に駆け回れる。


 プレイヤーは魔法使いのローブを纏う。左手に魔道書を持ち、右腕にリングを嵌める。

 空いた右手を伸ばして魔法を唱えれば、手の平から発動する。


 ヘッドマウントディスプレイ、モーションキャプチャー、ボイスコマンド。

 様々な技術を駆使してバーチャルリアリティの世界を構築し、ゲームの中に入るという夢を叶えているのだ。



 とはいえ、完璧ではない。


 駆け回ると言ったが、実際には魔法使いは地面すれすれを浮きながら移動する。いわゆるホバー移動だ。

 リング内の足下が円盤形のバランスボードになっていて、体重をかけることでその方向にキャラが移動する。ジャンプやステップはコントローラーのボタンで可能だが、飛び跳ねるのでもいい。

 手すりはその際の支えとなるが、ゲーム内にその手すりは表示されない。


 それから、プレイヤーの顔。

 リアルの顔を再現しようとしているが、なかなか難しいようだ。

 何度もプレイしていると、ゲーム側が微調整し、徐々に似てくると言われているが……。限界はある。


 本当にゲームの中にいるのではない。そう感じさせてしまうポイントだった。


 それでも。

 今現在『最もゲームの中に入ることできているゲーム』と言われている。


 結局、その程度の差異は、プレイしていれば気にならなくなるのだ。




「予定通り行くよー! ついてきてね、コートくん!」


 マッチングによりランダムで組んだ二人は、拠点防衛をメインとする中衛と、魔力注入役の後衛希望だった。あっさり役割分担が決まり、コートとリーナは作戦通り拠点を奪いに向かった。


 フィールドは森林地帯。所々に開けた場所があり、中央は円形の平地になっている。縦長のエリアで、クセの少ないオーソドックスなフィールドだ。


 チームは青、ブルーガイム王国。

 コートとリーナは青いローブをはためかせ、敵陣側にある魔石拠点へと急行する。


 いつもは、開幕ハイウィングで空を飛んでいたのだが――それはよくないと、リーナに言われてしまった。

 私は空を飛べますよと、アピールしているようなもの。最初は極力飛ぶのは控えた方がいい。飛べるとバレていたら、奇襲に使うことができないから。


 咄嗟に狙いを付けにくい上を取るのが強いと、晃人は考えていたのだが、慣れてる人にはすぐに撃ち落とされるから、高ランク相手には通用しないそうだ。


 ……実際、Aランクに上がってから落とされることが増えた気がする。


 そんなわけで、地上からリーナと併走して拠点に向かったわけだけど……。



「やったね、コートくん! あっさり魔石拠点取れたよ!」



 途中、接敵するやいなや、あっさりリーナが二人倒してしまい、楽々ひとつめの魔石を起動、儀式塔にリンクさせることができてしまった。


「拠点取ったら一旦引いて中衛のフォロー、ってところだけど、向こうのアタッカー二人倒したし、このままふたつめも行けるかも」


 リーナはそう言うと、振り返らず次の拠点に向かう。

 移動速度は同じはずなのに、コートは追うので精一杯だった。

 速い。動きやコース取りに無駄がない。


「あ、三人いるっぽい。アタッカー戻ってきちゃったかー。

 ……よっし、コートくん。飛んで! ハイウィング! いますぐ!」

「え? あ、ああ……ハイウィング!」


 カスタム魔法、ハイウィングで森から飛び上がると、リーナの言う通り、敵が三人こっちに向かってくるのが見えた。


(なんで、あの位置から(・・・・・・)三人いるってわかったんだ?)


 ……考えるのは後だ。とにかく攻撃だ。

 しかしコートが三人に向けて腕を伸ばすと、向こうにも気付かれてしまう。


 そうだ、さっきのアドバイスで、リーナが言ったんじゃないか。

 開幕以外でも、遮蔽物のない場所で無闇に飛べば、いい(まと)にしかならないと。

 三人に狙われたら、さすがに避けきれない。


 まずい、やられる――――と、思ったその時。


「ふっふーん、こっちだよーっと!」


 リーナが正面から突っ込む。


 敵は、空にいるコートに完全に意識が向いていた。

 リーナは反撃を食らうことなく、一瞬で二人倒してしまう。


「リーナ、俺を囮に?!」

「陽動って言うんだよ! ってコートくん、まだ終わってない!」


 一番後ろにいた三人目。

 コートに狙いを付けていた右腕が――ぶれる。

 正面のリーナと、空にいるコート。どっちを先に攻撃するか、迷ったのだ。


 コートは咄嗟に、セットしている風属性の通常魔法を叩き込む。


「ナイス! 倒したよ! やったね、コートくん!」

「あはは……そう、だな」


 きっちり三人目を倒して、コートは地面に降りる。

 やったねと言うけど、完全にリーナのおかげだ。


 ふたつめの魔石拠点も奪い、すぐさま自陣の儀式塔へと戻る。


「わたしたちが食い止めるから、儀式塔お願い~!」

「あんたらのおかげで今回は余裕だな。序盤に一人来ただけだったぜ」

「魔力注入は僕らに任せてください。防衛、よろしくお願いしますね」

「おっけー! でも油断しないでね」


 儀式塔への魔力注入を仲間の二人に任せて、コートはリーナと共に前に出る。

 リーナは油断するなと言うが……こんなに素早く拠点を奪える展開なんて、滅多に無い。

 それに……。


「相手、全然統制取れてないね~。総攻撃で来ると思ったけど、バラバラで攻めてくるから簡単に倒せちゃうよ。あ、コートくん、あっちから一人来てる。あの大きな樹の後ろから飛べば相手に見えないから、中央の空き地に出たら上からお願い。わたしはこっちから来てるの倒すから~」


 リーナが的確な指示を出してくれるから、コートはそれに従うだけで楽に敵を倒せた。

 そして例え二人同時に攻めてきても、リーナは一人で難なく倒してしまう。


 こんな状況で、後衛に油断をするなというのが無理だ。


「よし! 魔力100%になるぞ!」

「すごい、本当に誰も来なかった……。僕、今回魔力注入しかしてないよ」


 結局、防衛ラインから敵の侵入を一度も許さなかった。

 最後の最後で四人とも倒してしまうと、リーナは儀式塔の前まで戻る。


 勝利が確定する、その時――


 コートの目には、余裕の笑みを浮かべているリーナが映っていた。


 その姿は、戦場を駆ける戦乙女。仲間を勝利へと導く、戦いの女神。

 しかしリーナが携えているのは、剣ではなく魔道書だ。


 ――美しい。


 コートは認識する。


 マジックシューターズ、最強の魔法使いが、目の前にいると。

 はっきりと、くっきりと、微笑む口の動き(・・・・・・・)まで、リアルに、現実に見える。


 本物の魔法使い。コートはそう、認識(・・)した。



『儀式塔魔力100%!! 極大魔法、発射!』



 アナウンスが流れ、勝利が決まる。

 儀式塔に集まった魔力が弾け、極大魔法が放たれようとしていた。


 コートは極大魔法には目もくれず、魔法使いリーナを見つめる。


「リーナ、お願いがあるんだ」


 リーナと目が合うのがわかる。僅かに首を傾げるのもだ。

 モーションキャプチャーでは捉えきれないはずの、微かな身じろぎさえ完璧にわかった。


(ああ……どうしてだ。さっきから、どうしてこんなにリアルに見えるんだ?)


 ……だけど、そんなことを気にしている場合じゃない。

 コートは、今、言わなければいけないことがある。



「俺と一緒に、魔法使いの頂点を目指してくれないか?」



 リーナの目が、驚きに見開かれる。


 その瞬間、コートたちブルーガイム王国の勝利を告げる、極大魔法が放たれた――。


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