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極大魔法戦争マジックシューターズVR  作者: 告井 凪
第6話「VSシルバーマジシャンズ」
35/45

3「マジシュー部は運動部」


「はいっ、晃人くん23Hit~」

「っつああぁ! なかなかフルヒットできない……」

「まだまだだな、沖坂」

「最初は20も行かなかったんだから、良くなった方じゃない?」



 学校指定の青いジャージに着替えた晃人たち。

 四人はハガーアミューズメント……ではなく、学校の屋上でトレーニングをしていた。


「それにしても、意外と難しいんだな、これ」


 今やってるのは、エイムを鍛えるトレーニング。

 トレーニングをしていたのが晃人で、代未と絢萌がその手伝い。リーナがカウント役だ。


 やり方を説明しよう。まず、晃人の両サイドに二人が立つ。晃人はその状態から二歩下がり、距離を調整する。サイドの二人は手のひらを晃人に向けて構えて、準備完了。

 晃人は右手を伸ばし、二人の手のひらに交互にタッチする。ただし代未と絢萌は一回ごとに手の位置を変え、さらにリーナのカウントに合わせてタッチしなくてはならない。

 このカウントが結構速く、瞬時に狙いが付けられなくて外したり、腕を伸ばせなかったりするのだ。


 これを30回1セット、何ヒットするかスコアを付ける。

 最初は絢萌の言う通り、半分の15ヒットだったから、伸びてはいるんだが……。



「さすがだな、リーナちゃん。フルヒットだ」

「えへへ、一歩(・・)は完璧かな~。次は0歩(・・)でフルヒットしたいな」


 リーナのスコアは、30回フルヒット。それも、サイドの二人から二歩ではなく、一歩しか下がっていない。当然、左右の角度が広がり、難易度が上がる。それでも軽々とフルヒットさせていた。

 しかも今度は一歩も下がらない、180度モードでフルヒットを目指すと言っているのだから、恐ろしい。


「改めて、リーナってすごいわよね」

「あぁ……って、アヤメだって二歩はフルヒット、一歩も28ヒットしてるじゃないか」


 絢萌のスコアはリーナに迫る勢いだった。十分すごい。

 ちなみに代未は、二歩で27~フルヒット。やはり、一番鍛えなくてはいけないのは晃人だった。


「晃人くんが絢萌ちゃんのこと名前で呼んでる!」

「えっ、何日か前からだぞ?」

「あたしからコートに言ったのよ。マジックシューターズじゃ『アヤメ』って呼んでるんだし、使い分けるの面倒でしょ? それに神津原って長くて呼びにくいから」

「……まぁそういうわけだよ」

「晃人くん、わたしが同じこと言った時は、なかなかリーナって呼んでくれなかったのにぃ」

「それはだって、初対面だったろ? いきなりリーナって呼べって言われても、そんなのほら……恥ずかしいだろ」

「えー、なんで恥ずかしいの? わたしの方からそう呼んでって言ってるのに?」

「つまり沖坂がヘタレってことだよ、リーナちゃん」

「ぐむっ……」


 代未の容赦ないツッコミに、晃人は何も言い返せなかった。

 ちなみに代未のことは相変わらず『渡矢さん』だ。向こうも『沖坂』で、ゲーム中と使い分けている。


「じゃあ晃人くん。今は? 今もリーナって呼ぶの恥ずかしい?」

「いや今は……リーナって呼ぶのが自然になっちゃったな」

「そっかっ! それならいいかな」


 リーナはそう言って、嬉しそうに笑う。


(そんなに、その呼ばれ方が好きなんだな)


 晃人は一瞬首を傾げたが、すぐに納得した。


「……なんか面白くないな。おい沖坂、もう1セットやれよ! お前が一番頑張らなきゃいけないんだ、休んでる暇はないぞ!」

「あ、ああ! よろしく頼む!」


 晃人たちがもう一度トレーニングを始めようとしたところで、ガチャッと屋上のドアが開いた。


「お、やってるな。君たち」

「陸緒部長!」


 このトレーニングの発案者、陸緒部長がやって来る。ちなみに部長は制服姿だ。


「遅れてすまなかったな。練習始める前に、ちゃんと準備運動したか?」

「はい。もちろんですよ。……なんだか、運動部っぽいですね」

「むしろ、運動部だと思うべきだ。マジックシューターズは今までのゲームと違い、自分の身体を動かすゲームだからな。思い通りに身体が動くように、トレーニングしておいた方が良い」

「確かにそうなんですよね。あんまり連戦すると、疲れて腕を動かすのが辛くなったり……」

「そうだろうそうだろう。というわけでだ、今日からトレーニングメニューに走り込みと腕立て伏せを入れるからな。そのつもりでいてくれ」

「……マジですか?」

「僕はいつでも本気だ。今、陸上部に話を付けてきた。さっそくグラウンドで走ってもらうぞ」


 マジシュー部は運動部。

 グラウンドの走り込みと腕立て伏せが、練習メニューに組み込まれた。



                  *



「さて、今日は作戦会議をしようと思うが……なんだ、へとへとだな」

「さすがに……」


 部室のテーブルに突っ伏す、晃人、リーナ、絢萌の三人。代未だけは姿勢良く座っていた。

 毎日グラウンドを10周し、腕立て10回を3セット、腹筋、スクワット、柔軟体操……と、本当に運動部の基礎練習並のことをしていれば、疲れも溜まってくる。


「まぁそろそろ疲れもピークだろうと思ってな。今日は身体を休めて頭を使うぞ」


 陸緒部長はそう言うと、背後に置いたホワイトボードの前に立ち、ペンを取る。


「まず、相手がよく使うフォーメーションを説明しよう。先日、愛海たちのカスタムを教えたと思うが、そこでなにか気付いたことはないか?」

「気付いたこと、ですか?」

「はい! あるある! 気になってました!」


 むくっと身体を起こして、勢いよく手を上げるリーナ。こういう話になると、やはりリーナは元気になる。


「研究部の人たちのセッティングって、美月先輩は中衛で、あとの三人は前衛向きですよね。それってつまり、ヨミちゃんみたいな後衛タイプがいないってことですよね?」

「あっ……そういえば」

「その通り。普通、後衛はカスタムに魔力注入効率アップを入れているが、研究部は誰も入れていない。つまり……」


 陸緒部長はホワイトボードに『美月』と名前を書いて、それを囲うように逆三角形を描く。


「これは、最近主流になりつつある戦法でな。スイッチ式というフォーメーションだ」

「スイッチ式……あ、聞いたことあります。確か、前の大会で優勝したチームが使ってた戦法で、そこから普及していったんですよね」

「うむ。スイッチ式はその名の通り、それぞれが役割を交代で行う戦法だ。

 色々なタイプがあるが、研究部の場合、美月君を中衛に置いて、他の三人が前衛と後衛をスイッチしていくというものだ。前衛がひとりやられたら、後衛が前に出てカバー。落ちたプレイヤーが後衛にスイッチし、魔力注入を行う。こうすることで、復帰までのペナルティを少なくしている」

「へ~、そういう戦法があるんだぁ……わたし、知らなかったよ」

「チームモードじゃ結構有名よ。役割固定タイプかスイッチ式か、ネットじゃよく論争になってるわね」

「役割固定の方が専用のカスタムを入れてる分、魔力注入は早えーだろうからな。一長一短あるだろ。……でも研究部のヤツら、一本目の時スイッチ式だったか?」

「あれはその発展型というところだな。開幕は前衛三人、後衛無しで、拠点を奪う。その時に誰かが落ちれば後衛に回り、そのまま行ければ二つめを狙う」

「一概に、スイッチ式だからこうだって、決まってないんですね」

「さっきはネットで論争になるって言ったけど、結局、スイッチ式と役割固定タイプ、両方のいいとこ取りをするのが一番なのよ。色んなタイプのフォーメーションが研究されているわ。一番最初は四人全員がローテーションで役割交代する戦法だったしね」

「なるほど……」


「だがもちろん、スイッチ式にも弱点がある。魔力注入の遅さもその一つだが、前衛が二人同時に落ちてしまうと、ローテーションが崩れてしまう。テンポが乱され、立て直しが難しくなるだろう。

 もちろん役割固定でも、同時に落とされたら穴が開くのは同じなんだが、役割が決まってる分、安定していて立て直しはしやすい。

 とにかく、対スイッチ式では、いかに相手のローテーションを崩すかが鍵になる。

 なかなか難しいかもしれないが、こちらがどういうフォーメーションにするのかも含め、勝つための作戦を捻り出そうじゃないか」


「そうですね、相手の戦法がわかっているのなら、きっとなんとかなりますよ」

「よし! では僕からの作戦を提案するが、みんなも思い付いたことがあれば、どんどん言ってくれ」


 その日は結局、疲れも忘れて遅くまで議論を重ねたのだった。



                  *



「やれやれ。なんとか様になったなー」


 マジックシューターズ、実機での練習を終え、ハガーアミューズメントから出てきた晃人たち四人。

 ぼやく代未に、リーナが応える。


「ギリギリだったね~。晃人くんのカスタム、なかなか決まらなくて焦ったよ~」

「すまん。早めに解散する予定だったのに、結局日が暮れちゃったな……」

「コートが謝ることじゃないでしょ。作戦がなかなか決まらなかったから、カスタムも決まらなかったんだし。でもほんと、ギリギリよね。本番明日よ?」


 研究部とのバトル、二本目。いよいよ明日なのだ。

 作戦を考えても、いざフリーモードで試してみると上手く回らなかったりで、結局ギリギリまで考え直すことになってしまった。

 リーナたち三人はそれぞれ型にはまったカスタム魔法があるため、作戦に応じてカスタムを変えられるのは晃人だけだった。そのため直前までカスタム魔法が決まらず、試すのも今日くらいしかなかったのである。


「研究部とバトル……か」


 晃人は先日、陸緒部長から聞いた、部が分裂した経緯を思い出す。

 陸緒部長のひとつ上の先輩たちと優羽先輩が引退し、残った四人で新チームを組むものだと思っていたら、陸緒部長がチームに入るのを拒否した。

 それまで組んでいたチーム、クリスタルマジシャンズが最高のチームだったから。

 新しいチームに入る気になれなかったからだと、陸緒部長は語った。

 しかしその話を愛海部長にはしていない。


「今さらだけど、陸緒部長。正直に話して、時間を空けてから愛海部長たちとチームを組むとか……できなかったのかな」

「どうだろーなー。私だったら、リーナちゃんがいなかったら時間が経とうが組まないぞ」

「渡矢さんはまぁ……そうかもしれないけどさ。相手は実の妹なんだしって、やっぱり思うんだ」

「まぁそれはそうね。陸緒部長も頑固よね」

「なんで愛海部長に話さないんだろうね~? 去年の大会、夏休みでしょ? それからずっと兄妹ケンカしてるってことだよね」

「そりゃ疲れそうだな」

「……そうだな。だったら、やっぱり俺たちがなんとかしないとな」

「なんとかって? 話しちゃう? 愛海部長に全部話しちゃう?」

「いいや。それはやっぱり、勝手に話していいことじゃないと思う。俺たちがするのは、明日のバトルに勝つことだよ」

「バトルに?」

「このバトルが、お互いきちんと話すきっかけになると思うんだ。でも負けたら陸緒部長が退部になっちゃうから、勝って話ができるようにしないといけない」

「……なるほどな。たまにはいいこと言うじゃねーか、沖坂。よし、いっちょ兄妹ケンカ、終わらせてやっか!」

「いいわね、それ。ずっと巻き込まれた感じがしてたけど、明確な目的ができたわ」

「マジックシューターズが原因でケンカしたなら、マジックシューターズで仲直りさせる! うんうん、いいねいいね!」

「部長たちのためにも――もちろん、俺たち自身のためにも。明日のバトル、絶対に勝とう!」


『おーーーっ!!』


 毎日ハードな練習をこなし、作戦もしっかり立てた。

 あとは、それをぶつけるだけだ。


 魔法使いの頂点。その第一歩になるように。


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