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極大魔法戦争マジックシューターズVR  作者: 告井 凪
第5話「本当の気持ち」
30/45

5「楽しくて、好きだから」


「晃人くんと、バトルをするの?」

「ああ。プライベートモードで、一対一のバトルをして欲しいんだ」


 リーナに電話をして、ハガ―アミューズメントに呼び出した晃人。

 もう夜の七時なのに、リーナはすぐに来てくれた。

 晃人は制服のままだったが、リーナは私服に着替えていた。青のデニムワンピースに、白いカーディガンを羽織っている。


「どうして? マジックシューターズのことで話がしたいって言うから、来たけど……。あ、バトルするのは全然いいよ? むしろ望むところ! って感じだよ。ただ……ね。タイミング的に、さっき話したことで、なにか聞きたいことがあるのかなって」

「もちろん、その話と関係がある」


 EVSは、不正かもしれない。ズルをしているのかもしれない。

 だから、ランクモードとチームモードができない。


「リーナ。俺も、EVSが発現する」

「……うん」

「リーナって、EVSが発現した人とバトルをしたこと、ないよな?」

「もちろんないよ。……そっか、晃人くんとバトルをするってことは、そういうことになるんだ。どうなるかちょっと楽しみかも!」


 嬉しそうな顔をするリーナを見て、晃人は頷く。


「俺とバトルすることで、リーナに答えを見付けて欲しいんだ」

「わたしに? ……答え?」

「EVSが、ズルいのかどうか。EVSが発現した者同士のバトルなら、それがわかると思うんだ」

「それはっ……! で、でも……わたしは……もう」


 戸惑うリーナ。当然だ、リーナはとっくに答えを出しているのだから。

 ランクの絡むモードはプレイしない。

 考え抜いて、苦しんで、ようやく出した答えなのだろう。


「だったら、俺が答えを見付ける手伝いをして欲しい」

「晃人くんの?」

「俺はまだ、EVSがズルいのかどうか、答えを出せていない。だからリーナとバトルをすることで、答えを見付けたいんだ」

「……そっか、そうだよね。いいよ、約束したもんね。EVSのことレクチャーするって。晃人くんが答えを出す手伝い、ちゃんとするよ」


 そう言って、リーナは真剣な顔で頷いてくれる。


(確かに、俺自身まだ完璧な答えが出せていない。だけどこのバトルで、リーナにももう一度答えを出してもらいたいんだ)


 そのためにも、本気でリーナと戦いたい。

 晃人は魔法をセッティングしたスマホを握りしめた。




                  *




『敵プレイヤー:リーナに プレイヤー:コートがやられました』



「っ……!!」

「これで二本目だねっ」


 瞬殺だった。

 開始まだ一分ちょっとなのに、コートは二回もやられてしまった。

 改めて、リーナの強さを思い知らされる。


 EVSはゲームに入ってすぐに発現した。

 ゲーム画面が見えたのは一瞬だけ。発現までの時間がものすごく短くなっている。

 これも、より適応したということなのだろうか。


 フィールドはリーナと初めてタッグを組んだ時と同じ、森林フィールド。

 中央に戻りながら、コートはリーナに話しかける。


「リーナ! ……五分間で、一本でも取れたら俺の勝ちってことでいい?」

「ええ~? そうだなぁ……わたしが勝ったらクレープ奢ってくれるなら、いいよ!」

「クレープ?! ああ~、わかった! いいぞ!」

「やったっ! よーっし、手加減しないからね!」

「お、おう! 当然、俺が勝ったらクレープ奢ってもらうからな!」


 話の流れでクレープを賭けてバトルをすることになってしまったが――勝敗はあまり関係ない。

 あくまで目的は、リーナに答えを出してもらうことだから。


 でも一ゲーム五分間の中で、一本くらいリーナから取ってみたいとも思っていた。

 情けない話だが、何本勝負をしても勝てる気はしない。それだけの力量差がある。

 だけどリーナの戦い方はこれまで見てきたし、手の内も知っている。なんとか、一本だけでも取れないだろうか?

 そう思って戦っているのだが――。



『敵プレイヤー:リーナに プレイヤー:コートがやられました』



「三本目~。ふふーん、コートくん、時間が無くなっていくよ~? コートくんの奢りのクレープ楽しみだな~」


 ダーククロウで動きを止めて、と思ったが、あっさり避けられて反撃を食らってしまった。


(カスタム魔法をフル活用しないと、勝てない!)


 セッティングを変える暇はなかったから、ハイウィングとダーククロウだ。

 対するリーナも、ミストバリアとウォーターランスのはず。


「コートくん、なにか企んでるね?」

「えっ?! なんで、そう思うんだ?」

「顔見ればわかるよー。コートくん楽しんでるなって。諦めてない、勝つ気だってね!」

「なるほど、リーナには見えてるんだもんな」


 今、森林の中央広場には、最強の魔法使いリーナがいる。

 晃人がこれから挑むのは、そういう相手だ。

 普通にやっても勝つのは難しい。でも、それでも――。


「……そうだよ、勝ちたいと思ってる! いくぞ!」


 コートは中央の広場に飛び出すと同時に、通常射撃魔法を撃つ。

 リーナが避けるタイミングで、ハイウィングを使って飛び上がる。

 しかしそれは読まれていた。飛び上がった先に、通常射撃魔法が飛んでくる。


 ――が、コートは読まれることもわかっていた。

 ふわっと飛んだだけですぐに地上に降り、リーナの偏差射撃が頭上すれすれを通過していく。

 ハイウィングをフェイントに使用したのだ。

 さすがのリーナも少し驚いてくれたようだ。


 その隙にコートは通常射撃魔法を連射。

 たまらずリーナは後ろに下がり、木の後ろに身を隠してやり過ごす。


 すかさず、今度こそハイウィングで飛び上がり、木の枝に乗っかる。

 そのまま動きを止めず、枝から枝へとハイウィング飛び移った。

 葉のせいでリーナの姿は見えないが、それは向こうも同じ。木に向けて通常射撃魔法を撃ってくるが、どこに移動するのか読み切れないのか、攻撃がばらけている。


(さすがに移動しながら撃ってるか。射線で居場所がバレないようにしてる。でも、それなら)


 ドンッ!


 隣の木に移った瞬間、予測で撃っていたリーナの魔法が一発だけ命中する。


(もう当ててきた! さすが……!)


 コートは枝からわざと落ちる。

 右腕を魔法が飛んできた方に伸ばし、リーナの姿を確認しないで通常射撃魔法を撃つ。


(リーナは俺が移動しそうな方向に魔法を撃っていた。そのうちの一つが当たったのなら、一瞬だけ動きを止めて、こっちを見るはず!)


 思った通り、リーナは追撃をしよう立ち止まり、右腕をコートに向けるところだった。

 だけどコートの魔法の方が速い。

 しかもリーナは上を狙っていたため、落下しながら撃ったコートの魔法に一瞬だけ反応が遅れた。


(このタイミングなら、リーナは回避じゃなくて――)


 リーナは身をよじり、伸ばしていた右腕を肩を抱くようにして左側に引く。

 あの構え、ミストバリアで防ぐ気だ。


 リーナのミストバリアの判定は一瞬。いわゆるジャストガードだ。タイミングを併せるため、飛んでくる魔法に意識が集中するはず。


 その隙に、コートはハイウィングで飛び上がった。

 木を飛び越えて、リーナの頭上に急行、真下に腕を伸ばして――


「ダーククロウ!」


 ミストバリアを使った直後、頭上からの攻撃。

 さすがのリーナも避けられないはずだ。


 ダーククロウを使った瞬間、コートの魔力が尽きてハイウィングが強制解除、落下を始める。

 追撃はできないが、ダーククロウで動きを止めてしまえば、その間に通常射撃魔法を撃つ魔力くらいは回復する。他に敵がいないからこその作戦だが――


「……えっ?」


 ――リーナが上を向く。口の端をつり上げて、笑っていた。


 リーナは右腕を左に引いて構えたままだ。その腕を、角度を変えて、真上に振り上げる。



(そんな、あれは再使用にはインターバルが……!)



ミストバリア(・・・・・・)!」

「なっ……なんでっ!?」


 バシンッ!


 ダーククロウが防がれ、消えてしまう。

 リーナは落下するコートに向けて、腕を掲げる。



「ウォーター、ラァァァーンスッ!!」



 ズドンッ!!


 手のひらから現れた鋭い水の槍が、コートを貫いた。




『敵プレイヤー:リーナに プレイヤー:コートがやられました』




「嘘だろ……また、勝てなかった」

「や~、すごかったよコートくん! 今の攻防!」

「待ってくれ、最後のって……あああぁ、そっか! こっちの通常射撃魔法! あれミストバリア使わずに、食らったのか(・・・・・・)!」

「コートくんの考えと同じだよー。一発だけならやられないからね。コートくんもそうやってわたしの位置を確認したんでしょ? だからわたしも、通常射撃魔法にはミストバリアを使わないで、次の攻撃に備えたんだよ」

「ああ~……やっぱり連射しないとダメだったか。でもそうするとダーククロウの魔力足りなくてさ」

「木の中をハイウィングで飛び回ってたからねー。あれはいい使い方だったと思うよ?」

「そ、そうか?」


 コートは嬉しくなる。

 リーナと出会った時、ハイウィングの使い方が悪いと、ダメ出しをされたのだ。

 それが今、いい使い方だったと褒められたのは……素直に嬉しい。


「それにしても、ほんとドキドキしたよ~。コートくん、立ち回りだいぶ変わったよね!」


 リスタート地点に戻ったコートは、すぐに中央の広場まで戻る。

 今度はいきなり攻撃せず、お互い向き合う。


「リーナ、楽しそうだな」

「当たり前だよー。こんなに楽しいバトルは久しぶり! やっぱりマジックシューターズって最高だよね!」

「……顔を見れば、わかる。伝わってくるよ。マジックシューターズのこと、大好きだっていうリーナの気持ちが」

「コートくん……?」


 今までのことを思い出すまでもない。

 バトル中の生き生きとしたリーナの姿と、今の最高の笑顔を見れば、誰だって同じことを思うはずだ。



「リーナ。EVSはさ、ズルくなんかないよ」


「えっ……」


 リーナの顔から、スッと表情が消える。

 正直、リーナのそんな顔を見るのは辛いが、コートは真っ直ぐ見つめた。


「コートくん……どうして? どうして、そう思ったの?」

「簡単な話だよ。EVSが発現したからって、それだけで強くはなれないからだ」

「強く、なれない?」

「そう。リーナ自身が言ってたじゃないか。違う戦い方を身に付けないといけないって。……ほんと、そうなんだよな。EVSで得られる情報を生かせるかどうかは自分次第。結局、俺自身が強くならなきゃ、EVSだってなんの意味もないんだ」

「で、でも! 見えているものが違うんだよ? 一人だけ違うゲームをしてるんだよ!」

「今はもう、一人じゃないだろ。俺と神津原さんもEVSが発現した。同じ感覚を共有できるんだ。それも、リーナが言ったことのはずだ」

「そうだけど! でも……だめだよ、できないよ。フェアじゃないんだよ。こんな、わたしみたいな、おかしな人間は、ランクモードなんてやっちゃだめなんだよ!」

「おかしくなんかない!」


 コートが声を張り上げると、リーナがビクッと肩を震わせる。


「頼むから、自分のこと……おかしいとか、もう言わないでくれ」

「…………」

「マジックシューターズが大好きだって気持ちが、溢れているから。だからこそ、俺はわかったんだ。リーナが本当はどうしたいのか」

「ま……待って、コートくん。だめだよ、それは……だって、わたし」


 コートの顔になにを見たのか。リーナは目を潤ませて、イヤイヤをするように首を振る。


「リーナ。本当はランクモードもチームモードも、やりたいんだろ?」


「っ……!!」


「だったらやるべきだよ! さっき言った通り、EVSはズルくなんかない! 不正じゃない! だから……リーナ!」


 リーナは首を振るのをやめ、コートのほうを向く。その目を見て……ハッとなった。


「……違うんだよ(・・・・・)、コートくん。わたしはコートくんや絢萌ちゃんとは違うの……だから、わたしは、わたしはっ」


「リーナ……?」


 一筋の涙が、リーナの頬を伝う。


「ごめんっ!」



『プレイヤー:リーナが リタイアしました。ゲームを終了します』



「なっ、リーナ!?」


 フィールドが消えて、リザルト画面が表示される。晃人は急いでHMDを外し、スマホを掴んで筐体の外に出た。



「リーナっ!!」


 見ると、一足先に筐体を出たリーナが、ハガ―アミューズメントの出口へと駆けていく。


「待ってくれリーナ!」


 周囲の客がなにごとかと晃人を見るが、気にしている場合ではなかった。


(リーナ……あれは、苦しくて泣いている顔だ)


 晃人も走り出し、リーナを追いかけた。


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