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極大魔法戦争マジックシューターズVR  作者: 告井 凪
第5話「本当の気持ち」
26/45

1「マジックシューターズ研究部」


「素晴らしい。絢萌君がマジシュー部に入部してくれたおかげで、部員が五人になったぞ」


 絢萌と沙織がバトルをした翌日。火曜日の放課後。

 マジシュー部の部室には、柏沢かしわさわ陸緒りくお部長、沖坂おきさか晃人こうと早瀬はやせ理流那りるな渡矢わたや代未よみ。そして、神津原かみつはら絢萌あやめの五人が揃っていた。


 この前と同じように、五人で長テーブルを囲んで座っている。

 上座に部長、入って左側に絢萌と晃人、右側に代未とリーナ。

 代未はテーブルに肘をついて、正面の絢萌に意地悪そうな笑みをニタァと向けた。


「ま、絢萌は最初から入るつもりだったみたいだけどなー」

「ちょっと代未! いい加減なこと言わないで! 少なくとも研究部には入るつもりないって言っただけでしょ!」


 そうなのか、と晃人は驚いて、そりゃそうか、とすぐに納得する。

 沙織をスカウトしたマジックシューターズ研究部に、絢萌が入りたいと思うわけがない。


「同じようなもんだろ? 部活紹介の時も興奮してたクセに」

「あ、あれはっ、あたしじゃないわよ!」

「ほー? まだ言うか。じゃあお前のクラスにはそっくりさんがいるんだなぁ」

「ぐっ……このぉ……!」


 色々と解決したはずなのに、相変わらずケンカするんだな。

 晃人は少し呆れながら二人を見ていた。


「ふむ。どちらにしろ、僕はこうなるんじゃないかと思っていたのだ。だから勧誘も適当にやっていた」

「え……適当って、ちょっと、柏沢部長?」

「なんだ、晃人君。絢萌君が入って五人になる、それが最高の形だったろう?」

「ま、まぁそうですけど……」


 いい加減な、と思いつつも、確かにそうだから言い返すことができない。

 ただ、今が本当に最高の形かと言われると……。


 晃人はちらっと、リーナの方を見る。

 リーナは笑顔で、代未と絢萌のやり取りを見ていた。


(結局……詳しいことは、聞けなかったな)


 昨日の帰り道。

 晃人はずっと気になっていた――ランクが絡むモードを一切やらない理由について、リーナに聞いてみたのだ。


 ゲーム中に、酷いことを言われたんじゃないか? と。


 その質問にリーナは……



『うん、そうだよ』



 頷いて、肯定した。


 直後、先を歩いていた代未が「なにをやってんだ!」と怒鳴りながら戻って来たため、それ以上のことは聞けなかった。


 だけどその肯定だけで、十分だった。

 数日前、EVSのことを教えてもらった時の会話を思い出す。



「晃人くん最初の方で、相手が笑ったのを見て、わたしが相手の射程内に入ったことに気付いたって言ってたよね? 表情や口の動きは、読み取っていないはずのデータ。受け取れないはずの情報。晃人くんはそれを有効活用できたけど……でも、だいたいは余計に相手の敵意や悪意を受け取る結果になるんだよ」

「敵意や悪意……か」

「うん。普通のゲームなら、見ることはないものだよ。マジックシューターズだって、相手にも聞こえる広域通信はあるけど、滅多に使われないでしょ? 必要ないんだよ、感情の送受信は」



 敵意や悪意。

 ずっとマジックシューターズの世界がリアルに見えていたリーナは、何度も受け取ってきたはずだ。


 きっと聞くに堪えない暴言だったのだろう。

 相手はこっちに伝わっていると思っていないから、ストレートに感じたままの言葉をぶつけてくる。

 おそらくランクが絡むモードほど、酷い言葉が飛び交うに違いない。

 みんなランクを上げたくて、必死にプレイしているから。

 自然と言葉が荒くなってしまう。


(酷い言葉を浴びせられて、リーナは心が折れてしまった……。そういうことなんだろうな)


 だとすると、チームに入ってもらうのは……。



 コンコンッ!



 晃人がぼんやりとそんなことを考えていると、突然部室のドアがノックされた。


「早いな、もう来たか」

「誰か来る予定だったんですか?」


 晃人が聞くと、部長は首を横に振る。


「いいや。だが、おそらく乗り込んでくる(・・・・・・・)だろうと思ってな」

「乗り込んでくる?」


 一年生四人が揃って首を傾げると同時に、ガラッと勢いよく部室のドアが開いた。


「失礼」


 そこに立っていたのは、見覚えのあるショートヘアの女の子。

 背筋をピンと伸ばし、どこか冷たい雰囲気を持つその人は――



(――マジックシューターズ研究部の部長!)



 晃人たちはハッとなり、すぐに部長の「乗り込んでくる」という言葉を思い出して、険しい顔になった。


 研究部の部長は、冷静沈着なイメージがある。

 沙織の冷静さとはまた違って、クールで凛々しい、格好いい印象だ。

 そしてその凛々しさの象徴とも言える、きりっとした目尻が、今はさらにつり上がっていた。


 視線の先――柏沢部長のことを睨んでいる。


 当の部長はひょうひょうと受け流し、


「どうぞ、入ってくれ。愛海(まなみ)……部長と呼ぶ方がいいか?」

「……お好きなように。陸緒部長」


 愛海部長……沙織もそう呼んでいたなと思い出す。


 愛海部長は小さく頭を下げて、部室の中に入る。

 すると、後に続いて数人の生徒が姿を現わす。

 その中には、部活紹介で愛海部長と一緒に立っていた、髪をアップにした眼鏡の三年生の姿もあった。

 そして、一番最後に入ってきたのは椎名沙織。晃人たちの方を見て、ぺこりと小さく頭を下げる。


「ふむ、部員全員で来たのか」


 柏沢部長が呟く。

 全部で五人。彼らが、マジックシューターズ研究部の部員――


「えっ……?」


 順々に顔を見て、晃人は目を見開く。

 沙織と、愛海部長と眼鏡をかけた三年生のことを知っているのは当然だった。

 だけど残る二人の男女の顔も、晃人は見たことがあったのだ。


「こ、晃人くん……?」

「……大丈夫」


 リーナも気付いたようだ。小声で返し、改めて二人を見る。


 茶色い短髪で背の高い、どこかチャラい印象の男子生徒。

 髪の先がくるんとしたクセっ毛のボブカット、ふんわりした印象の女子生徒。


 この二人の男女は……。


「うわっ、せま。うちの部室もだけどよぉ、狭すぎんだろ」

新太(しんた)君~、静かにしないと愛海ちゃんに怒られるよ~?」

「へいへい……」


 間違いない。先週、フリーモードで対戦した、二年生の二人。シンタとミツキだ。



 ――よえーなぁ……――



 晃人はテーブルの下で、固く拳を握った。



 愛海部長が前に出て、柏沢部長に切り出す。


「用件は、わかってると思うけど」

「もちろんだ。来ると思っていた。だが、早過ぎだろう。こっちはまだ説明できていないぞ?」

「遅いわね。でも関係無い」


 愛海部長はそう言うと、右手をテーブルにつき、晃人たちには目もくれず、柏沢部長だけを見ながら話を始める。



「マジックシューターズ研究部、マジシュー部。二つの部を統合するって、どういうつもり?」



「え…………と、統合?!」


 ガタガタガタンと音を立てて、マジシュー部一年生が慌てて全員立ち上がる。


「統合って、マジシュー部と研究部が? なんでそんな話になってるんだ?」

「ほんとだよー。あ、でもちょっと面白そう……」

「リーナちゃん! 話はそんな簡単じゃないぞ? ていうか部長! これはどういうことだ!」

「そうよ! 聞いてないわよそんな話! な、なんで統合なんてするのよ!」


 柏沢部長はゆっくり立ち上がり、みんなを宥めようとする。


「まぁまぁ落ち着け。ほら、混乱してしまったじゃないか」

「そっちの事情は知らない。でも安心して。統合なんてするわけない。なんのために、私たちがここを出たのか……」


 愛海部長はそう言ってスッと視線を逸らす。


「ふむ……。まずは一年生にちゃんと説明しようか。愛海部長の話だけでは足りないからな」

「お願いします。本当に、どういうことなんですか」


 晃人が先を促すと、柏沢部長が説明を始める。


「まず、正確にはこういう話だ。マジシュー部とマジックシューターズ研究部が一つになれば、広い部室をもらうことができる。生徒会長から、そんな提案があってな」

「広い部室を……」


 呟いて、晃人たちは今の部室を見渡す。

 さっき新太が言っていたように、狭い。五人でギリギリなのに、今は十人もいるもんだから、余計に狭く感じる。


「もちろん両方の部の同意が必要なのだが――」

「同意なんて、するわけないでしょ」


 バン、と愛海部長がテーブルを叩く。


「そうか。悪い話ではないと思うが?」

「これ以上ないくらい悪い話よ。……それに、私はそういう話をしに来たんじゃない」

「というと?」

「統合の拒否は、生徒会に言うだけでいい。だから私がここで聞きたいのは……。この提案、あなたの方から持ちかけたそうね?」

「うむ。まぁそうだな」

「どうして今さら、統合なんて話を持ち出したの?」

「広い部室が欲しかったからだ」


 ガタッと、長テーブルが揺れた。

 見ると、手をついていた愛海部長が、わなわなと震えている。


「あ、マズイんじゃね? コレ」

「うん~。愛海ちゃん、落ち着いて~」

「もう遅いでしょ……」


 研究部の先輩たちの様子に、沙織を含む一年生が首を傾げていると――



「ふ……ふざけないで! なによその理由! バカにしてるでしょ!? あんたはいっつもいっつもいっつもそう! いったいなに考えてるのよ! このっバカ兄!」



 突然のガチギレに、唖然となる。

 顔を真っ赤にして怒る愛海部長。そこに、先程までのクールで凛々しい雰囲気は残っていなかった。

 沙織は知らなかったようで一緒に驚いているが、先輩たちはこうなるのがわかっていたようで、肩を落としてため息をついている。


(……あれ? 今……最後、なんて言った?)


「バカとはなんだ。統合すれば隣の教室を丸々使っていいと言ってくれたんだぞ? ここの三倍はあるんだ、こんなに美味しい話はないだろう」

「バーカ! だからその統合があり得ないって言ってるでしょ! バカバカバカ!」

「聞き分けのない……。僕はお前をそんな()に育てた覚えはないぞ」

「ほんっとバカね! 育てられた覚えもないわバカ兄(・・・)!」


 今度こそはっきりと聞こえた。聞こえてしまった。


「バカ兄に妹って……。もしかして二人は」

「あれ? それも聞いてないんだ」


 晃人の呟きに、研究部の三年生が応えてくれた。

 眼鏡のフレームを少しだけ持ち上げて、小さなため息をつく。


「まったく。陸緒はこういうことちゃんと話さないから……。今聞いた通り、柏沢陸緒と、柏沢愛海は、兄妹(・・)だよ」


 柏沢陸緒と、柏沢愛海。


 頭の中で二人の名前を反芻し、ワンテンポ遅れて、



『ええええぇぇぇぇぇぇぇっ、兄妹(・・)?!』



 晃人たち四人の声が、部室にこだましたのだった。


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