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極大魔法戦争マジックシューターズVR  作者: 告井 凪
第4話「強くなりたい理由」
23/45

5「やる前から諦めるな!」


「なによ、朝っぱらからこんなところに呼び出して」


 月曜日の朝。晃人たちは早めに登校して、絢萌を学校の屋上に呼び出した。

 リーナがいつの間にか絢萌と連絡先を交換していたので、昨日の夜の内にお願いしておいたのだ。

 もちろん代未も呼んである。晃人を真ん中に三人並んで、絢萌に向かい合っていた。


「単刀直入に聞くよ。……以前のチーム、フレンズ4ガール。神津原さんはまだ諦めてない。再建しようとしているんじゃないか?」

「やっぱりその話――って、なんでそうなるのよ! いきなりビックリするじゃない」


 さすがに唐突すぎたかもしれない。でも絢萌は動揺しながらも、答えてくれる。


「もう、解散……してるのよ? シホとアイは完全にマジックシューターズ辞めちゃって、やる気も無いし。また誘うなんて無理」

「だから神津原さんは、新しい(・・・)フレンズ4ガールを作ろうとしていた。……椎名さんと、一緒に」

「っ……!!」


 晃人の言葉に、狼狽してたじろぐ絢萌。

 その反応を見て、晃人は自分の考えが合っているのだと確信する。

 それはリーナも同じようで、


「やっぱり絢萌ちゃん、未練あるんだよね? 前のチームに」

「それは……」

「なんだ、そういうことかよ。だったら作ればいいじゃねーか」


 絢萌の肩が僅かに震えた。

 代未は気にせず、言葉を続ける。


「そのためにランクモードでランク上げたんだろ? 椎名にちゃんと見てもらうためにさ。新しいチーム作ろうぜって言うだけだろ」



「作ればいいって……言うだけって……。

 そんなの……。


 ……それが簡単にできるなら、とっくにそうしてるわよ!!」



 代未は絢萌の顔を見てハッとする。すぐに晃人とリーナも気が付いた。


 鋭く代未を睨む絢萌の目に、涙が浮かんでいることに。


 絢萌は涙混じりの声で続ける。


「未練? 当たり前でしょ! 諦められなかったわよ! 四人で作ったチームが、あんな風に解散しちゃって……納得できるわけないじゃない! 辞めちゃったシホとアイは仕方ないけど、まだ沙織がいる。沙織と一緒に、もう一度チームを作ろうって思った! なのに……沙織は!!」

「……研究部に、スカウトされちまった」

「そうよ! 折角Sランクに上がって、沙織にもう一度チームを組もうって言おうと思ったのに……なんで、なんでよ! なんでスカウトなんかされてんのよ!! なんであっさり引き受けてるのよ!」

「だから、諦めたのかよ。椎名とチームを組むの」

「っ……それで諦められるほど、あたしの気持ちは柔くないわよ」

「じゃあなんで椎名を誘わないんだよ。研究部のチームに入ったとか、関係ないだろ。引き抜いちまえよ」

「それは……」


 絢萌は代未からリーナに視線を移し、しかしすぐに目を逸らしてしまう。


「渡矢さん、待ってくれ。神津原さんは準備をしていたんだよ。今渡矢さんが言ったように、椎名さんを引き抜くための準備(・・)を」

「準備? なんだよそれ」


 代未は首を傾げているが、絢萌は驚いた顔で晃人をまじまじと見る。


「あんた……どこまでわかってるのよ」

「わかってるっていうか、全部繋げるにはこう考えるしかなかったんだ」

「んー? おい沖坂! とっとと話せよ! なんだよ準備って」

「わからないか? リーナのことだよ。神津原さんはリーナにランクモードをやらせて、SSランクになってもらいたかったんだ」

「はぁ? なんでリーナちゃんがっ……いや……待て。準備(・・)って、そういうことか?」


 怒鳴りかけた代未だったが、突然冷静な口調になる。さすがにわかったようだ。


「ねぇ絢萌ちゃん。もしかして、わたしをチームに勧誘しようと思ってた?」

「うっ……」

「神津原さんは、椎名さんを研究部から引き抜くのに、自分以外のメンバーも揃えておきたかった。向こうよりも魅力的なメンバーで」

「そこでリーナちゃんってわけだ。ふんっ、目の付け所はいいが、生憎リーナちゃんはランクモードもチームモードもやらないからな!」

「えーっと、渡矢さん落ち着いて。……そう、リーナはランクモードをやらないから、Cランクだ。いくらフリーモードで有名だとしても、それだと説得力に欠けるかもしれない。だから、まずはSSランクを目指してもらいたかった」

「わたしにランクモードをやれって言ってきたの、そういう理由だったの? 絢萌ちゃん」

「いや、だから、それは……えっと……」


 絢萌はしどろもどろに言葉を続けようとしたが、観念したのか、目元に残った涙を拭い、盛大なため息をついた。


「はぁ~……。そうよ。あんたの言う通りよ。リーナの戦い方がチームプレイに向いてないって言ったのは、本当だけどね」

「うん。あのアドバイスは、本物だったと思ってるよ」


 絢萌はその言葉に面食らったようだが、小さく咳払いして話を続ける。


「あたしね、動画をたくさん見た。上手い人の動画を見て、勉強して、フリーモードとランクモードで何度も試した。そんな時リーナの動画を見付けたのよ。こんなに強い人が、フリーモードにいるんだって驚いたわ。

 ……そしたら入学式の日に、あなたがリーナって呼ばれているのを見かけて……マジックシューターズの話をしてたし、間違いないと思った。そこで、リーナをチームメンバーにする計画を思い付いたってわけ」


 絢萌は少しだけ悲しそうな顔で笑って、リーナを見る。



「というわけなんだけど。ねぇリーナ。ランクを上げて、あたしとチームを組んでくれない?」



「な、お前どさくさに紛れて――」


 代未が声をあげようとするのを、リーナが手で遮る。


「ごめんね。わたしはやっぱり、ランクモードも、チームモードもやらないよ。それに今は、晃人くんのチームに仮だけど入ってるから。絢萌ちゃんとは組めないよ」

「……そう。わかったわ」


 絢萌はそう言うと、晃人たちに背を向けて、出口へと歩き出す。


「待ってくれ、神津原さん。……これからどうするんだ?」


 振り返り、晃人を見る絢萌。


「リーナが無理なら、他の強い人を探さなきゃ。なかなか同じレベルの人は、いないと思うけどね」

「……そっか。やっぱりフレンズ4ガールのこと、諦めるつもりはないんだな」

「当然でしょ。今さら、諦めろという方が無理よ」


 今度こそ話は終わりと、絢萌は再び背を向ける。


 晃人はその小さな背中に向けて、叫んだ。


「だったら、そんなことをしてちゃダメだ!」

「……なんですって?」


 絢萌は振り返らず、足だけ止める。


「強いメンバーを揃えるとか、そんなの必要ないって言ってるんだ!」

「だったら! どうしろって言うのよ!」

「神津原さんが椎名さんより強くなればいいだけだろ!」

「なっ?!」


 ゆっくりと、驚いた顔で振り返る絢萌。


「あたしが、沙織よりも?」

「椎名さんと戦って、勝って、チームに入れって言えばいいんだ。自分が、隣りに立てるくらい強くなったって、証明すればいい。強くなる気があるってわからせればいいんだよ!」

「い、言ったでしょ! 沙織は研究部のチームの誘いにあっさり乗ったのよ? 未練なんて無いのよ。今さら、そんな簡単にあたしの声に耳を傾けるとは思えない。だから先にメンバーを揃えようとしたんじゃない!」

「椎名さんに直接聞いたわけじゃないんだろ? 本当に未練がないのか」

「それは……聞いてないけど、でも沙織はもう……」

「神津原さんは椎名さんと戦うべきだよ! 強くなったことを認めさせなきゃ!」

「む、無理よ。沙織は今SSランクなのよ? あたしが勝てるわけないじゃない……」

「ランクなんて関係無い。やる前から諦めるな!!」


 ビクッと震える絢萌。

 それを見て、代未が笑う。


「ははっ、こいつの言う通りだ。お前、挑む前から諦めるとか、情けないヤツだなぁ」

「な、情けない?! あ……あたしはっ」

「もっと自信持っていいんじゃねぇか? お前、強かったよ。戦った私が言うんだ、間違いない」

「……あんた」

「……まぁ、リーナちゃんほどじゃないけどな」


 少し恥ずかしいのか、鼻の頭を掻く代未。

 すると今度はリーナが笑って、


「わたしから見ても強かったと思うな~、絢萌ちゃん」

「勝ったあなたに言われても……」

「あはは……でもほんとに強いって思うよ! あそこまで跳弾コントロールできる人、なかなかいないからね~。あれは十分武器になると思うなっ! わたしが言うんだから間違いないよ!」


 最後は代未と同じことを言って胸を張る。

 絢萌は最初ぽかんとしていたが、やがて小さく笑う。


「あはは……フリーモードの魔女の、お墨付きか」

「えっ、うわ、だからその呼び方やめてよ~」

「いいじゃない、別に」


 そう言って、絢萌は空を見上げる。



「…………そうね。沙織とバトル、してみようかな」



 絢萌のその言葉を聞いて、晃人たち三人の顔がほころぶ。


「おっし、やっとやる気出したか。お前、椎名とケンカもしなかったって言ってただろ? してみろよ、本気でケンカ」

「沙織とケンカ……。そうなのよね、チーム組んでからはぜんっぜんしてなかった。あーもう、いいわ、真っ正面からぶつかってやろうじゃない!」

「う~、なんかいいな~!! マジックシューターズのことはマジックシューターズで決着をつける! 的な感じが! ねぇねぇ、プライベートモードでやるでしょ? わたしたちも見学していい?」

「け、見学? 別にいいけど……って、見世物じゃないわよ?!」

「そこはほら、わたしたちが見届け人ってことで! あ、ジャッジってことでもいいかな。とにかく、わたしたちのことは気にせず戦ってくれていいから! ね?」

「もう……しょうがないわね」


 喜ぶリーナに、少し呆れ顔の絢萌。

 最後に、晃人が絢萌に声をかける。


「神津原さん。……思いっきり戦って、その上で、椎名さんと話をしてみなよ」

「…………うん。そうするわ」


 ぎゅっと拳を握り、代未、リーナ、そして晃人の顔を順に見る。


「……ありがとね、三人とも。なんか、沙織に言いたいこといっぱい浮かんできた。あたし勝つわ。沙織に絶対、勝ってみせる!!」


 絢萌は拳を突き上げて、空に誓うのだった。


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