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極大魔法戦争マジックシューターズVR  作者: 告井 凪
第4話「強くなりたい理由」
21/45

3「二人の関係」


「ほら、中央抜けて敵が二人来る! ヨミ、あんた左の拠点に行って! あたし右行くから!」

「ちっ、わかったよ!」

「コート、やられたんなら後衛の代わりに魔力入れて! リーナ、右の拠点守りきるまで前線維持! あたしがコートの代わりに前に行くから、それまで踏ん張って!」

「うんっ! こっち中衛と後衛二人がかりで来られてる。中央付近で戦って、なんとか凌ぐね!」

「後衛も? じゃあ魔力注入、向こうはしてないのね? ……コート! やっぱり前に来て。中央を迂回して右拠点に!」

「わかったけど、理由は?」

「少しは自分で考えなさい!」


 翌日、土曜日。半日で学校は終わり、早速アヤメによるチームプレイの指導が始まった。

 フリーモードで四人でタッグを組み、実戦形式での指導。

 ちなみにフリーモードで四人でタッグを組んだ場合、同じく四人で組んだ他店のプレイヤーとバトルになる。相手がいない場合は二人タッグのチームとマッチングされるが、滅多にないことらしい。

 四人タッグのフリーモードは、チームモードの練習や、友だち四人で気楽に遊びたい人が主にプレイする。これならリーナも気兼ねなくプレイでき、ヨミも渋々了承してくれた。


「今の状況……相手は儀式塔への魔力注入をしていないから、こっちもしばらくは大丈夫。右拠点に駆けつけるのに、直行じゃなくて中央を迂回するのは……」


 ちらりと右拠点、アヤメのいる方を見る。光属性魔法で戦っているのが、チカチカ光っているのでわかる。


 ちなみにすでにEVSが発現している。相変わらずゲームに入ってすぐは普通の画面だったが、リーナと一緒に前線に上がる途中で発現した。


 EVSのおかげなのか、アヤメの眩しい光属性魔法がはっきりと見える。


「光がだんだんこっちに……そうかっ!」


 アヤメは拠点から中央に向けて魔法を撃っている。敵は拠点の左側にいて、アヤメの魔法に押されているようだ。

 コートがこのまま中央を迂回して拠点に向かえば――。


(敵の背後を取れるっ! アヤメの狙いはそれだ!)


 だいたいの位置はアヤメの魔法でわかる。方向転換し、右手を構えながら距離を詰める。


「う、近いっ……!」


 目測を誤ったか、思ったよりも近くに敵の魔法使いが姿を現わした。

 間違いなく、お互いの射程範囲内。

 敵は背中越しにコートの出現に気付き、こっちに腕を向けようとするのがわかる。


「これくらいっ!!」


 相手は右回転、振り向きながら右腕をこっちへ向ける。

 コートは左に跳びながら魔法を撃つ。

 敵は旋回が追いつかず、コートのいた足下に魔法が着弾。対してコートの魔法は全弾敵に命中した。



 ――くっそ、やるじゃん――



 相手の口がそう動くのが見えて、すうっと消えた。



(……あんな風に言ってくれる人もいるんだな)


 コートはぎゅっと拳を握る。


「コート! ぼうっとしてないで、一緒に前に出るわよ! ヨミが左の敵を倒して儀式塔に戻ったから! リーナに加勢して一気に攻めるわよ!」

「わ、わかった! ごめん!」


 我に返り、コートは慌ててリーナの元に向かうのだった。



                  *



「まだまだね」


 筐体から出て開口一番、絢萌は晃人たちに向かってそう言った。


「まずコートね。自分でもわかってるだろうけど、個人技のレベルを上げるのが優先。ま、数こなしてカスタムを最適化していくしかないから、そこは自分でなんとかしなさい」

「……はい」

「リーナは少しぎこちなかったわね。昨日あたしが言ったこと、変に気にしちゃってる?」

「え、ええ~? そんなことないんだけどな~」

「そう? ……情報はどんなに些細なことでもチーム通信に流しちゃっていいからね。なにが有用かは人によって違うから。遠慮しないこと」

「うっ、うん! わかってる、わかってるよ」


 少し慌てた感じで、こくこくと頷くリーナ。

 絢萌はそれにはなにも返さず、次に代未の方を向く。


「……あんたは、後衛としていい動きしてたわ。言うだけあって、安定感があった」

「お? おお? そうだろそうだろ? やーっと認めたか! リーナちゃんとずーっとタッグを組んでたんだからな、当然だ!」

「別に、認めてないとか言ってないじゃない。もう……。さ、細かい反省は向こうでしましょ」

「なんだよ、勝ったのに反省会するのか?」

「勝ったからって完璧だったわけじゃないでしょ? 反省するべき箇所はあるんだから」


 そう言って、二人はフードスペースの方へ歩き出す。

 コートもその後に続こうとすると、ぴょんとリーナが隣りに並んだ。


「思ったより難しいね~。情報を全部伝えるのって」

「やっぱりチーム通信だと、やりづらいか?」

「ちょっとね。本当に全部伝えるわけにはいかないし。晃人くんにだけ伝えるっていうのならできるんだけどね~」

「まさかEVSにそんな弊害があるとはなぁ」


 普通に得られる情報とEVSで得られる情報には差がある。

 EVSが発現した者同士ならなにを言っても問題ないが、事情を知らない人を含む通信ではそうもいかない。下手をすれば味方を混乱させかねない。気を遣って発言しなければならないのだ。


 そしてそれが、チームプレイを阻害する原因になっていた。


「でも、なんとかしなくっちゃね。せっかく絢萌ちゃんに教わってるんだから、これはわたしが克服しなきゃ」

「俺も、手伝うよ。ていうか他人事(ひとごと)じゃないからな」

「晃人くん……! うんっ、そうだね。ふたりでなんとかしよう!」


 リーナはそう言うと、拳を握り、肘を曲げた腕を晃人の方に向ける。

 晃人は小さく頷き、同じように拳を作り、腕を打ち合わせた。



「二人とも、仲良いんだね」



 すると突然後ろから声がかかる。驚いて振り返ると、そこには……。


「沙織ちゃん!」

「椎名さん……どうしてここに?」


 クラスメイトの椎名沙織が、二人のすぐ後ろに立っていた。

 そして相変わらず表情を動かさずに、


「どうしてって、マジックシューターズをやりに」


 と、返してきた。

 沙織もマジックシューターズをやってるんだからそりゃそうだ。晃人は変なことを聞いてしまったなと恥ずかしくなる。


「ああ、うん。そうだよな。……って」


 そういえば、と後ろの様子を窺おうとして思いとどまる。


 沙織と絢萌。


 二人の間にはなにかある。

 沙織は、絢萌と一緒にマジックシューターズをやっていたと言っていた。

 絢萌は、昨日聞こえてしまった旧友との会話の中で、椎名という名前が出ていた。


 どちらも、詳しい話は聞けていない。

 特に絢萌は、今日学校で会うといつもと変わらない調子で、放課後にチームプレイの指導をするからと言い出したため、聞くに聞けなかった。


(でも、昨日のあの話からすると、おそらく二人は……)


 この二人を今ここで会わせるべきかどうか、晃人が悩んでいると……。


「今日も、二人でタッグを?」

「ううん! 今日はね、四人で――」

「あっ、ちょっと待ったリーナ!」

「――うん? どしたの?」

「四人で……タッグ? フリーモード?」


 遅かった。沙織は怪訝そうに首を傾げている。

 これは間違いなく、残りの二人は誰なのか、という話になるだろう。


「ちょっと、二人ともなにやってるのよ。早く来なさいよね。……ん?」

「あ……」


 そこへタイミング良く……いや、悪く? 後ろから絢萌の声がかかった。

 そもそもここで会わせないようにするなんて、無理だったのだ。



「あ、あんたっ……沙織」

「絢萌さん……」


 向かい合う二人。

 ここでようやくリーナが「あっ、そっか」小さく声を上げた。


 絢萌と沙織の二人は、晃人たちを挟んで向かい合う。


「絢萌さん。沖坂さんたちと、チームを組んだの?」

「ち、違うわよ! これは、チームプレイの指導をしてくれっていうから仕方なく……って、あんたたち知り合いなの?!」

「ク、クラスが同じなんだよ。俺たち、一組だから」

「……そういえばそうだったわね。そ、それで? こんなところでなにしてるのよ、沙織」

「マジックシューターズをやりに」

「そんなのわかってるわよ!」


 顔を赤くして怒る絢萌に対し、沙織は冷静に、表情を変えずに首を傾げる。

 なんだか、対照的な二人だった。


「あんた研究部に入ったんでしょ? 部活はどうしたのよ」


 マジックシューターズ研究部。そういえば、そっちに入ったと言っていた。


「今日は部長が用事あるからって。……自主練に」

「……あっそ。チーム、組んだんでしょ? 上手くいってるの?」

「うん。みんな強いから。……楽しい」

「ふ、ふーん。……どうせ、あたしたちは弱かったわよ」

「それは……」


 二人とも目を伏せて、黙り込んでしまう。

 晃人たちは気まずく、きょろきょろと二人の間に視線を彷徨わせていた。


 やがて、


「絢萌さん。……どうして沖坂さんたちに、チームプレイの指導を?」

「どうしてって、だから頼まれたから……」

「教えられるほど、私たち、チームプレイできていなかったのに?」


 驚いて、思わず絢萌の方を見てしまうが、絢萌はじっと沙織だけを見ていた。


(もう確定だよな。神津原さんと椎名さん、そして昨日の二人で、チームを組んでいたんだ)


 四人はチームを組み、そしてなんらかの理由で……解散した。


「……沙織。あんた、前にも同じようなこと言ったわよね。『チームプレイできるほど、みんな強くない』って」

「うん。言ったけど」

「だからあたしは、チームプレイの勉強をした。みんなが、シホとアイも、できるように!」

「でも、二人とも、辞めちゃったよ」

「そうね。実戦で試す前に……チームは解散したわ」

「……みんな、強くなる気がなかったから。シホさんも、アイさんも……絢萌さんも」

「……っ!」


 言い返そうとして、でも言葉を止めてしまう絢萌。


「絢萌さん。私は、今のチームが楽しい。みんな強いから、私の言葉なんていらない。だから、なにも考えず、ゲームができる。戦える」

「沙織……」

「絢萌さんは、マジシュー部に入るの?」

「入らない、わよ。……今のところ」

「そっか。じゃあもう、チームモードはやらないんだ」

「……っ!! あ、あたしはっ」

「もしかしたら、絢萌さんは違うかもって思った。ランクモードも、Sまで上げていたし……。でも、やっぱり二人と同じだ。強くなりたいんじゃ、なかったんだね」


 沙織はそう言うと、晃人たちの方を向く。


「今日はもう、帰るよ。邪魔してごめんね。沖坂さん。理流那さん」


 そしてそのまま背を向けて、ハガ―アミューズメントから出て行ってしまった。



 沙織の姿が見えなくなって、


「あたしは……沙織、あんたを……っ」


 俯いて、呻くように声を漏らす絢萌。

 小さな身体を震わせて、拳を握って――。



 その姿を見て、晃人とリーナは顔を見合わせて頷く。

 絢萌の後ろにはいつの間にか代未が立っていて、腕を組んで神妙な顔をしていた。


「……神津原さん。椎名さんのこと……中学の時の、チームの話。聞かせてもらえないか?」


 絢萌は少しだけ顔を上げて晃人を睨み付けたが、小さくコクリと、頷いたのだった。


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