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極大魔法戦争マジックシューターズVR  作者: 告井 凪
第4話「強くなりたい理由」
20/45

2「強くなるために」


「どう? リーナには負けたけど、あたしがへっぽこじゃないって証明はできたと思うけど?」

「だから偉そうに言うなって! ったく……認めてはやるけどさ」


 プレイベートモードでのバトルを終えて、フードスペースで一息つく四人。

 代未は絢萌に負けて、悔しそうにテーブルを叩いていた。

 その姿を、じっと見つめる絢萌。


「なんだよ。リーナちゃんは勝ったんだから、言うこと聞くとかは無効だぞ」

「はいはい。……それより。今バトルしてみてわかったんだけど。あんた、攻めっ気が足りないわね」

「せ、攻めっ気?! 私が?」


 絢萌の言葉に、ガタンと立ち上がる代未。

 晃人とリーナも驚いた顔になった。

 代未の性格は、むしろ好戦的だと思うのだが……。


「いつも後衛か中衛やってるでしょ? 攻め方に戸惑いを感じたのよね。いつもは守る対象があって、いざとなったらそれを守れば良い。でも今みたいな一対一のバトルだと、どう攻めたらいいかわからない。違う?」

「そっ、そんなこと、あるわけ……ないだろ!」

「う~ん……言われてみれば、ヨミちゃんはそういうところあるかもねぇ」

「ちょっとリーナちゃん! どっちの味方だよぉ!」

「敵とか味方の話じゃないよ~。いつも一緒だからかな、逆に気付かなかったなぁ」

「ぐっ……! ええい、別にいいだろそんなの! 後衛やってるなら、守るの優先でなにが悪いんだよ!」

「そうね、いいかもね。……でもバトル中なにが起きるかわからない。攻めに転じることで打開できるパターンもあるけどね?」

「むぅ……」


 不満そうな声をあげて、代未はイスに座り直した。


 晃人は昨日の沙織のことを思い出す。少し違うかも知れないが、後衛だった彼女が攻めに転じたことで、晃人側はかなり混乱した。あれがもっと早ければ、逆転されていてもおかしくなかった。


「あ、あのさ。俺は……どうだったかな?」

「はぁ?」


 リーナも気付いていなかった代未の欠点を、あっさり見抜いた絢萌。

 そんな彼女が自分のことをどう思ったのか、晃人は聞いてみたくなったのだ。


「なんであんたのことなんか……。まぁいいわ。確かAランクだったわよね」

「うん、そうだけど」

「ひょっとして、Aランク歴長い?」

「うっ……どうして、それを」

「半分は勘だったけどね。あんた、動きに迷いがありすぎなのよ。自信なさげって言うか」

「自信……なさげ?」

「Aランクで行き詰まっている人にありがちなのよね。負けすぎて、自信無くしちゃうの。こっちとは別の意味で攻めっ気が足りないわ」


 代未を指さしながらそう言った。代未はじろっと睨むが、絢萌は気付かず話を続ける。


「そこで質問なんだけど。あんた、Bランクに落ちたことはある?」

「上がりたての時に、一度だけ。あとはAランクを維持できてる」

「そう。なら上出来。自分が思ってるほど、弱くはないんじゃない?」

「えっ……」

「もちろん、Sランクじゃ通用しないわよ。ただAランクなら問題ないレベルでしょ。いい? 周りはあんたと同じAランクなのよ。確かにSランク崩れのちょっと強いのもいるかもしれないけど、勝てない相手じゃない。慎重になるのは大事なことだけど、もう少し突っ込んでもやられないはずよ」

「でも、それじゃSランクには通用しないんだろ?」

「あのねぇ。そんなのランク上がってから考えなさいよ。自分の実力がSランクで通用するかどうか、Sランクになってバトルで揉まれて実感してみないと、なにが足りないかなんてわかりっこないわよ」

「……!!」


 晃人はハッとして顔を上げ、絢萌の顔を見る。

 確かに晃人は迷っていた。ずっとSランクに上がれなくて、セッティングが悪いんじゃないか、カスタム魔法を変えようかと悩んでいた。

 結果セッティングに自信を無くし、プレイングにも迷いが出ていたのかもしれない。


(でも……戦うのは同じくらいの強さの相手なんだ)


 もっと大胆に、強気に攻めてよかったんだ。

 それがSランクでは通用しないのなら、Sランクに上がってから通用する戦い方を身に付ければいい。


「な、なによ。じっと見て」

「いや。ありがとう、ちょっと目が覚めた感じする」

「なっ……ふんっ! 言っとくけど、この中では一番弱かったからね!」

「あはは、わかってるよ」

「おぉ~。アヤメちゃんすごい! わたしより的確なアドバイスしてる!」

「あっ、リーナのアドバイスもすごく役にたってるぞ?」


 リーナのは技術的なアドバイスが主で、絢萌のは心構えの話だ。

 両方とも晃人に必要なアドバイスだったと思う。


「ねぇねぇ! わたしは? わたしはどうだった? 絢萌ちゃん!」

「えぇ? そ、そうね……あなたは、個人技は文句ないでしょ。余裕でSSランク狙えるレベルよ。少なくともSランクであなたほど強い人、見たことないわ」

「おおぉ……そっかぁ。えへへ。照れちゃうなぁ」

「でも、やっぱりそれは個人技のレベル」


 絢萌の言葉に、リーナは首を傾げる。

 晃人と代未も、絢萌がなにを言いたいのかわからなかった。


「リーナ、やっぱりあなたにチームプレイは無理よ」

「ええっ?! ど、どうしてそう思うの? 今、一対一のバトルだったのに!」

「今のバトルでわかったのは、あなたの個人技のレベルの高さ。よぉく実感できたわ……。で、チームプレイについては、フリーモードの動画を見た時から思っていた感想よ」

「動画? あ、ああぁぁ! もしかしてもしかして、フリーモードの……魔女とか言われちゃってる、あれ?」

「そうそう。フリーモードのま……じょ……よ。もちろん、フリーモードだし、チームモードとは違うってわかった上で言ってるわ。いい? あなたはね、結局いつも一人で戦ってるのよ」

「そんなことねーよ! 私はいつも一緒にやってるからわかる!」

「じゃああんた、バトル中に前衛やったことある? 途中でスイッチして前に出たことある?」

「なっ……それは」

「例えどんな状況になっても、敵陣側まで来てって、言われたことないんじゃない?」


 代未が絢萌から目を逸らす。

 その反応で察する。……無いのだ。前衛に回ったことが。


「そっ……そんなのタッグなんだし、役割分担で……っ!!」


 何とか言い返すが、その言葉に力はなかった。


 例えば先日のシンタたちとのバトル。リーナはなかなか拠点を取れないでいた。

 対して、拠点を二つとも取られていたあの状況で、もし相手が儀式塔に魔力を注入していたら。75%を越えられていたら。

 その時は、全員前に出てでも拠点を取らなければ、勝ち目がない。

 何度もプレイしていれば、きっとそういう場面だってあったはずだ。


「役割分担ね。確かに大事よ。そういう意味ではタッグだったんじゃない? でも……横に並んで戦うことはできた?」

「それは……っ!」

「ま、待ってよ絢萌ちゃん! ヨミちゃんがいつも後ろにいてくれるから、わたしが前衛で暴れられるんだよ! 確かに前衛に出てきてもらったことはないけど、でも! ずっと隣りにいてくれたのと同じだよ!」

「り、リーナちゃん……私はっ……」


 リーナがフォローをするが、代未は歯を食いしばり、強く拳を握って俯いてしまう。


「ふぅん? ……まぁいいわ。あたしがいいたいのはね、そういうことじゃないのよ。ずっと気になってた。さっきの実戦で確信したわ。リーナ」


 ビシッとリーナを指さす絢萌。


「あなた、自分の手に入れた情報、きちんと味方に伝えきってないでしょ?」

「えっ、そんなこと……」

「フリーモードの魔女の視野の広さは異常。そんな風に言われてるの知らない? 動画だけじゃわかりにくかったけど、実際にバトルしてわかった。思っていた以上に、恐ろしいくらいに視野が広い。あたしがどれだけ死角を突こうとしたことか……。

 だけどその視野の広さを、あなたは味方のために使わない。得た情報を伝えず、自分のためだけにしか使ってない」

「……っ!!」


 絢萌の言葉に、リーナは明らかに動揺していた。

 そしてその理由に、晃人はすぐに思い至った。


(彼女の言う通りなんだ。リーナは持っているすべての情報を、味方に流していない。何故なら、それはEVSで得た情報だから……)


 例えば昨日の茂みの潜伏だって、EVSが発現した晃人にだからこそ、揺れたと説明ができた。

 もちろん、あそこに隠れるのが見えたと言えばいいのかもしれない。でも次々と場が動くバトル中に、EVSで見た情報と普通に得られる情報を分別し、言い換えるのは難しい。

 ましてやリーナは最初からEVSが発現してるのだ。普通のゲーム画面との比較が、一瞬ではできないのかもしれない。


「でもおかしいのよね。それならどうして、この――沖坂だっけ。彼と一緒に前衛組んだの? そもそもどうして情報を伝えようとしないの……?」

「もういいだろ、そんな話」


 絢萌の追求を、代未が遮る。


「リーナちゃんはこれからもずっと、フリーモードしかやらない。チームモードもランクモードもやらないんだ。だからそんな話、意味がない!」

「まだそんなこと言ってるの? この子にはSSランクを目指してもらわなきゃ困るのよ!」

「目指してもらわなきゃ困るー? なんだそりゃ!」

「うっ……も、もったいないでしょ! そんなに強いんだから! SSSランクだって狙えるレベルなのよ?」

「ま、まぁまぁ二人とも落ち着いて~」


 二人に割って入るリーナ。いつもの調子に戻ったように見えるが……。


「ランクモードはやらないけど、でも、チームバトルはできるようにならなきゃって思ってるよ。実際チーム登録はしないと思うけど、フリーモードでやる分には構わないから。晃人くんとも約束したしね」

「リーナ……」

「でもそっかぁ。絢萌ちゃんの言う、チームモードに向いてないって意味、やっとわかった。確かにわたし、そういうところあるかも。自分じゃ気付けなかったよ、あはは……」


 きっと本当に気付いていなかったのだ。無自覚にそうしていたのだ。

 情報をすべて伝えることができないから、隣りで戦うことができない。ひとりで戦っていた。

 その事実をはっきり突きつけられて、ショックを受けているようだ。


(でも……今は)


「リーナ。今の、本当か?」

「え? 今のって? どれ?」

「チームバトル、できるようにならなきゃって」

「うん。それは本当にそう思ってるよ。仮メンバーだからって、まったくチームプレイができなかったら意味ないからね」

「そうか。じゃあ……」


 晃人は立ち上がり、絢萌の方を向く。


「な、なによ?」

「神津原さん、頼みがある! 俺たちに、チームプレイの指導をしてくれないか!」

「は、はぁ?! なんであたしが!」

「そうだぞ沖坂! 俺たちってリーナちゃんも入ってるんだろ? そんなの必要ない!」

「必要あるんだよ! ……リーナ、聞いてくれ」


 今度はリーナの方を向き、じっと見つめる。


「俺が、リーナの隣りで戦うよ」

「晃人くん……」


 自分なら、リーナが得た情報を一緒に受け取ることができる。

 隣りに並ぶことができるんだ。


「だからチームプレイを教わろう。俺たちのことをこんなに分析してくれたんだ、絶対強くなれるよ」

「ふ、ふざけんな! そんなの絶対ダメに決まってんだろ!」

「待って待って、ヨミちゃん。……そっか。うん! ナイスアイデアだと思う! 絢萌ちゃんに教わろう! 教わりたい!」

「う、うそ、だろ……?! リーナちゃん……」

「待ちなさいよ! ていうかそんなの、あのマジシュー部の部長に頼みなさいよ!」

「それがそうもいかないんだ。部長、チームメンバーが揃わないと教えても意味がないって言ってさ。それに今は部員集めに奔走してて、忙しいみたいだし」


 どうも、今月中に部員が五人にならなければ、廃部もあり得ると言うのだ。

 現時点で晃人たち以外の入部希望者は来ていない。


「で、でも、だからって! なんでっ」

「頼む! 神津原さん!」

「わたしからもお願い! 絢萌ちゃん!」


 たじろぐ絢萌。ゆっくりと頬が赤く染まっていく。

 ……やがて、がたっと椅子から立ち上がり、


「どうして? どうしてあたしなのよ。だいたい、あたしはランクモードをやれって言ってるのよ?」

「そうだけど……。でも神津原さん、チームプレイについて詳しそうだし」

「うんうん! 詳しくなかったら、あんなに分析できないよね? わたし、絢萌ちゃんにもっと教わりたいな。あんな指摘してくれた人、初めてだったから!」

「っ……! で、でもいいの? もし指導するとなったら、もっとズバズバ言うわよ。ボロクソに言うわよ。特に沖坂、あんたなんて、弱いのには変わりないんだからね! さっきはAランクだから今のままでいいみたいな話したけど、チームバトルをやるならそうも言ってられないのよ? リーナと一緒にやるなら、それなりの強さが必要! ダメ出しいっぱいするわよ?」

「望むところだ!」

「なっ……なんでよ! なんでそこまで!」

「強くなりたいからだ! そのためなら、どんなにきついこと言われたって、受け入れられる! ちゃんと聞く! そんなの当たり前のことだ!」

「あんた……」


 絢萌は驚いた顔で晃人を見つめ、やがて小さくため息をつく。



「……しょうがないわね。わかったわよ」


 晃人とリーナが顔を見合わせて笑顔になる。絢萌も小さく笑って続けた。


「引き受けてあげる――」



「あれー? あそこにいるの、絢萌じゃない?」



 ――絢萌の後方から聞こえたその声に、絢萌はゆっくりと振り返る。


「やっぱりー。絢萌だよ!」

「……ほんとだ。そっか、絢萌って真ヶ峰(しんがみね)だったっけ」


 そこには、二人の女子高生。電車で何駅か行った先の、女子校の制服だ。


「シホ……。アイも……」


 絢萌は名前を呟いて、二人の方へと歩いて行く。



「久しぶりー。……絢萌、まだマジックシューターズ続けてるんだね」

「うん。……当たり前でしょ」

「……椎名は? あの子も、真ヶ峰だったよね」

「やってるわよ。一緒には、やってないけど」

「……そっか。そうなんだ」

「あ、あのさー、絢萌……」



 そこから声が小さくなってしまって、晃人たちの場所からでは話が聞こえなくなってしまった。

 ただ二人の女子高生はなんだか申し訳なさそうな様子で、絢萌は背中しか見えないが驚いている風だった。


 ひとまずその話は終わったのか、女子高生の声のトーンが元に戻る。


「あ、ねぇ絢萌。向こうの三人、もしかして新しいチームとかー?」

「ち、違うわよっ」

「そうなのー? なんだぁ」

「……絢萌。私たちのことは、もう気にしないでいいよ?」

「そうだよー。こっちはもう、チーム解散したんだからさ」


 そんな会話が聞こえ、晃人たち三人は顔を見合わせる。


「い、今、チーム解散って言ったよな。俺の聞き間違いじゃないよな?」

「うんうん! 言ってたよ! 間違いなく!」

「ってことはあいつ、中学ん時チーム組んでたのか」


 再び視線を向けると、絢萌は二人に手を振って、こちらに戻ってくるところだった。


「な、なぁ神津原さん……今」


 晃人が今のことを聞こうと声をかけるが、絢萌は三人の誰とも目を合わせず、自分の鞄を手に取る。


「……さっきの続きだけど。指導の件は引き受けるわ。でも明日からでいいでしょ? 今日はこれで。さよなら」


 一方的にそう言うと、絢萌は早足でハガ―アミューズメントを出て行くのだった。


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