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極大魔法戦争マジックシューターズVR  作者: 告井 凪
第2話「魔法使いたち」
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6「魔法使いが見たものは」


「なんとか勝ったけどさ、相手やばかったよなぁ、リーナちゃん」

「そうだねぇヨミちゃん。近接の人とスナイプの人が強かったよね。勝てたのは運が良かったよ~。向こう、60%しか魔力注入できてなかったから。相手に後衛の魔力注入役がいたら、あっさり負けてたかなー」


 コートたちのチームの魔力注入量は77%だった。これは、途中から代未が魔力注入に専念してくれたのと、最後の最後でリーナが拠点を奪った結果だった。

 相手はせっかく早い内に拠点を二つ取ったのに、魔力注入が疎かだったようで、60%しか注入できていなかった。


「相手、残り二人が猪みたいに突っかかってくるタイプだったんだろ? リーナちゃん何回倒したんだよ」

「そんなに倒してないよ~。しかもおかげでなかなか拠点を奪えなかったから、悪手というわけでもないんだよね。向こうが勝ってたわけだから。時間稼ぎされちゃったよ」

「三人同時に相手にしてればそうなるって。カンタってやつは通信聞いてないし突っ込んでやられてたし」

「スナイプを惹き付けてくれてたよ? ちゃんと三対二になってたんだよ」

「あー、なるほどな。そうとも言うか。……ま、猪はもう一人いたけどな?」

「…………」


 砦の前で敵のプレイヤー……シンタにやられた後。晃人は、何度も彼に突っ込んでいった。

 完全に頭に血が上っていた。

 自分を見下した魔法使いに、一矢報いたくて――。


「晃人くん? ……今のバトルのこと、気にしてるの?」

「え? あぁ……まぁ。ごめん、俺のせいで苦戦することになって……」

「晃人くんのせいじゃないよ! 相手が強かったんだよ。わたしは結局、近接の人とぜんぜん当たらなかったけど、聞いた感じだとかなり強かったみたいだね」

「…………」


 本当に、手も足も出なかった。一矢報いるなんて、とてもじゃないけど無理だったのだ。


「なぁリーナちゃん。こいつ大丈夫か……?」

「うん……。ねぇ晃人くん。近接の、シンタって人にやられた時、なにかあったの? 中盤くらいから通信もまったく聞こえてない感じだったし、あの人とばっかり戦ってたよね?」

「それは……。あの人が俺のこと……弱い、って」

「えぇ?! まさか全体通信でそう言ってきたの?」


 通信の範囲はタッグとチーム、そして滅多に使われないが、相手にも聞こえる全体通信がある。


「んん? 私はそんなの聞こえてこなかったぞ。つーか、誰も全体通信なんて使ってなかったよな?」

「違う、全体通信じゃなくて……俺はあの人の、口の(・・)…………?」


 口の動き(・・・・)で、そう言っているのがわかった。


(……なんで俺、わかったんだ?)


 マジックシューターズのVRシステムでは、細かい口の動きまでは捉えられない。

 それなのに、何を言っているのかわかるくらい、口の動きがはっきり見えた。

 春休みのあの時と同じように――。


(いや、きっと思い込みだ。俺が勝手にそう言われたと思い込んで、頭に血が上って……それで……)


 だとしたら、とんでもなく恥ずかしいことをしていたことになる。



 ……それが、常識的な考え方だ。


(でも本当にそうなのか?)


 頭でわかっていても、さっきまでのリアルな体験が否定をする。


 そこへ……。



「もう~。どうして戻って魔力注入してくれなかったのよ~。おかげで負けちゃったじゃない~」

「しょーがねーじゃん。なんか粘着されてたんだって。相手してやんないとだろー? そんなに言うなら美月がやればよかったじゃん」


 そんな会話が、すぐ近くから聞こえてきた。

 筐体から出てきた男女の高校生。晃人たちと同じ制服なのだが、ネクタイが赤色だった。一年生は青色だから学年が違うのだ。確か三年生が緑で、赤は二年生だったはず。


「あたしは~拠点守るので精一杯だったよ~? あの子、結局捉えられなかったな~。もう一人は簡単だったのに~。私が守ってなかったら、もーっと早く拠点取られてたよ~?」

「よく言うぜ。美月、お前スナイプしたかっただけだろ? 60%の時点で、向こうは拠点一つでも勝てちまう。先にこっちが二つ奪ったんだ、あとは魔力入れてりゃリードできたんだからな」

「さっすが~。わかってるね~新太君。そうなんだよ~あのマップ、スナイプが楽しくって~。負けるとわかってても止められなかったの~」


 ミツキ、そして……シンタ。

 会話の内容的にも、コートたちの今の対戦相手だ。


「…………」


 晃人はふらっと、彼らの方に足を向ける。


「だ、だめだよ、晃人くんっ」


 リーナが晃人の手を引っ張り、小声で止める。

 次いで、代未にも肩を掴まれた。


「お前なにするつもりだよ」

「あっ……」


 晃人は我に返り、僅かに顔を伏せた。そして歩き去ろうとする二人をちらりと見る。


 男子の方、シンタ――新太は、短髪で背が高く、目は三白眼。茶色い髪や喋り方のせいか、どことなくチャラい印象だ。

 もう一人、美月と呼ばれていた女子の方は、代未と同じくらいの身長だろうか。髪型はボブカットで、パーマをかけているのかクセっ毛なのか、先の方はくるんとしている。ふんわりした口調の通り、性格ものんびりしていそうだ。


「にしても、なんでオレにあんな粘着してきたんだろうなー」

「新太君、通信の切り替え間違えたんじゃない~? 途中で弱いとか言ってたよね~?」

「間違えねーよ! ぽろっと『よえーなぁ(・・・・・)』って言っちまったが、あれタッグ通信だったじゃん」

「どうだろうね~」

「おまっ、美月……わかってて言ってんだろぉ?」


 そんな会話をしながら、二人は筐体から離れていった。

 晃人は呆然とその背中を見送る。


「晃人くん……?」

「…………」


 リーナの呼びかけに、晃人は反応できなかった。


 ――よえーなぁ……――


 新太はあの時本当に、晃人に向かってそう言っていたのだ。思い込みではなかった。


 しかしそれは、相手に聞こえるはずのないタッグ通信。

 実際、晃人は声が聞こえたわけではない。


 シチュエーション的に『偶然思った通りのことを言われていた』という可能性はある。

 だとしても、口調までまったく同じなんてことはないはずだ。


「ねぇ……晃人くん。さっき、なんて言いかけたの?」

「え……?」


 すぐ側に寄ってきたリーナが、耳元で囁く。


「あの人の口の……って。言いかけたよね。もしかして『口の動きでわかった(・・・・・・・・・)』とか?」

「り……リーナ? いや、そんなはず……ない、じゃないか」


 晃人には、リーナの言っていることの真意がわからなかった。

 思わず否定してしまったが……どうしてそうだと思ったんだ?

 まるで、心当たりでもあるような……。


「そっかぁ。う~ん……」

「おーいリーナちゃん? どうした? 今こいつに、なにを聞いたんだ?」


 どうやら代未には、今の話が聞こえなかったようだ。

 リーナが腕を組んで考え込むのを見て、首を傾げている。


「よしっ。決めた。わたし、決めたよっ」

「な、なにを? リーナちゃん?」

「…………?」


 ショックと困惑が抜けない晃人を他所に、リーナはなにか納得したのかぽんと手を叩き、くるんと晃人の正面に立つ。


「わたし、コートくんのチームに入るよ」

「えっ…………えええぇ??」

「な、なに言ってるんだよリーナちゃんんんん!!」


 突然のことに、晃人は思考が追いつかなかった……が。

 さっきのバトルのことを吹き飛ばすには、十分なインパクトがあった。


「ほ、ほんとか? 本当にいいのか?」

「お? 元気出てきたね? でもね、本当かどうか聞かれたら、残念ながら半分だけって答えるかな」

「半分だけって……?」

「いわゆる……仮入隊って言えばいいのかな? 他にチームメンバーが見付かるまでは、晃人くんと組むよ」

「なんでそんな……。ちゃんと組んでくれればいいじゃないか」

「だーめ。わたしはやっぱり、チームバトルやるつもりはないからねぇ。だから、仮メンバーってことで。どっちにしろ四人揃わないとチーム登録できないし、当面はフリーモードでやるよね?」

「そうなると思うけど……。でも俺は」

「嫌? 嫌ならしょうがないね。この話はなかったことに~……」

「そ、そんなことない! 嫌じゃない! リーナ、とりあえず仮でもいい。俺と組んでくれ!」


 仮メンバー。だけど、いつかは本当のチームメンバーになってくれるかもしれない。

 やらないと言っていたのを、ギリギリ繋ぎ止めることができた。そう考えるべきだ。


「ちょっと待て、私は納得してないぞ!」

「きゃ、ヨミちゃん?」


 代未が正面からリーナの両肩をがしっと掴む。


「リーナちゃんは例え仮でもチームを組むべきじゃない! わかるだろ!」

「ヨミちゃん……でも、ね?」



「そうよ! その子の言う通りよ!」



 突然割り込んだ、第三の声。


 驚いて声の方を見ると、背の低い女の子が仁王立ちしていた。同じ学校の制服、青いネクタイ。一年生だ。

 ショートカットで前髪のサイドだけ少し長い。ボーイッシュな雰囲気があり、制服を着ていなかったら男の子に見えたかもしれない。


 晃人たち三人は顔を見合わせるが、揃って首を横に振る。知らない子だ。


 少女はキリッと眉をつり上げて、リーナを睨む。


「あなたは……チームモードをやるべきじゃない。ましてやフリーモードなんてもってのほかよ」

「はぁ? なんだよ急に。お前誰だよ」

「あんたには話していないわ。あたしが話しているのは、あなた。フリーモードの魔女、リーナよ!!」

「ふ、ふりーもーどのまじょ?」


 困惑するリーナ。ぽかんとする晃人。しまったという顔の代未。

 少女はビシッとリーナを指さす。


「フリーモードの魔女! フリーモードなんてやってる場合じゃないわ! あなたはランクモードでSSS(トリプルエス)を目指すべきよ!」


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