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背反②

ひとつ、ふたつ、と、小さな雪の粒が降っている。


私は故郷に帰ってきた。


見覚えのある景色。見覚えのある風景。見覚えのある光景。


しかし、なぜ。


寒くはなく、温かくはなく、風もなく、匂いもなく。


迎えてくれる者はおらず、ただ私は歩いている。



光が見える。社の者か。


祭儀の光、見覚えのある紋。退業の布構。幽尊の奉。


巫女は祓泉を持ち、神官は八咫を携え


私を、取り囲んで、いる……?



気がつくと、私は死霊になっていた。



傍仕(そばづか)えが二人。


一人は腕組をして座っている。


一人は八咫の中から鏡を拾い、私に捧げるように差し出している。


長い髪。


真白な頬。


血の色のような紅をさした唇。


これは、私なのか。


しかし彼らは、はっきりと、私を討ち滅ぼさんとその意志を示した。


私も確かに、これは滅せられる定めと感じた。


必然であると思った。


そしてただひと時、私は願った。


それでも彼に会いたかった。


気の遠のきを感じたあの時から。


気の遠のきを感じるその前の最後の彼の瞳を思い出しつつ。


もしあなたの言う通りの事が起きたなら、どうか私を、あなたの手で、空と空の隙間に埋めてください。そうしてあの苗木を墓印に植えてください。


百年たったら

――百年たったら、きっと会いに行こう。


鏡の中の自分の姿が、ぼうっと崩れて見えなくなった。


私は宙を漂う。


いつか帰れる日を信じて。





燕の子安貝で穴を掘った。


空をえぐるたびに虹が輝いた。


うねる風を束ね、空へ放す。


雨の匂いがした。


穴はすぐに掘れた。


燕の子安貝は粉々に砕け散った。


あの苗木を植えた。


柔らかな光となったそれを、その上にそっとかけた。


自分の胸と手が少し暖くなった。



森がよく見える高台に小屋を作った。


何年も何年も、苗木を眺めていた。


そのうちに、ユタの妹の娘がやってきた。


ユタの妹の娘の妹がやってきた。


ユタの妹の娘の妹の娘がやってきた。


一人、また一人と、ユタの子供たちに接していくうちに

苗木を幾度眺めたか分からない。


数え切れぬほどには眺めた。


それでも百年がまだ来ない。


ユタにばかされたのではなかろうかと思う事もあった。


ユタの娘たちは皆一応に育ち咲いたが

ひとりはすに自分の方へ向いて伸びる娘が

見る間に自分の胸のあたりまで大きくなって

と思うと、

すらりとしなやかに

まっすぐな瞳をこちらに向けて

心持ち首を傾けつつ

いつか見た記憶を鮮明に思い出させるかのような強いかおりを突き付けて

遥か遥かの上から苗木にぽたりと落ちたので

苗木についた玉の枝はその重みでふらふらと動いた。


手を差し出した拍子に空を見たら

鷺色の天幕の中にたった一つ瞬きがあり


私は帰ってこられたのだと


この時初めて気がついた。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



神霊樹の巫女。大樹祭から帰れなかった媛巫女。失われた媛巫女は遥か時を超えてアイヒシュテットに接触する。彼の持つ特異性、共感能力に引かれて。


近くに同類がいる。位相の預言者(デュアルペネトレーター)だけが位相の預言者(デュアルペネトレーター)を見つけられるのだ。


アイヒシュテットの記憶は立ち上がろうとする。しかしそれは巨大な力によってねじ伏せられ組みしかれた。


世界が白い靄に染まる。


意識が落ちかけた時、遠くから喧騒が聞こえた。


白い世界に色が戻る。


ぼんやりと世界に形が浮かび上がる。



アイヒシュテットは――今見た記憶と引き換えに活力を得て――気力で目を覚ました。



花粉の罠に抵抗する意志が辛うじて完全なる眠りの呪縛の完成を妨げた。


だが体は金縛りの状態で動かない。頭の半分がまだ眠っているのだ。


薄目を開きかろうじて意識を維持してはいるが、気を抜けば再び眠りに落ちるだろう。



「見よ厳流。あの若造、どうやら、聖銅じゃぞ?」


遠くで死霊達の声がする。意識を失ってからどのくらい経ったのか。滅したと思っていた死霊がどうやら再び戻ってきたようだ。


「L1(エルワン)だからって、べ、別に騒ぐほどの事もないぜ。あの程度でおと、お、おとなしくして、られるかっての。本当の戦闘ってヤツを、教えてやるよ!」


アイヒシュテットは意識を目に集中し目一杯開けた。そうする事で何とか二体を視認出来た。


「こいつ!」


勇ましい声を出していた巌流がそれに気づき、物凄い勢いで後ずさる。胤舜も防御姿勢を取り小さな悲鳴を短く上げた。


「安心なさい。その者は動けません。直にまた眠るでしょう」


別人の声。高く澄んだ綺麗な声の主は、アイヒシュテットの視界ギリギリの位置にいた。


見覚えのある民族衣装。トーンは違えど聞いた事のある声だ、と遅れて認識できたのは、そのシルエットを覚えていたせいだ。


それは以前雲の中で見た人物。いつかの夢に出てきたその人物の名は確か――大和大国の媛巫女、詩織。



舞媛(ジュピトリア)! どうかお気をつけを! そいつは爽やか青年風に見えますが、あの顔で本性は(おぞ)ましいケダモノです! そいつは俺の胸を揉んだだけじゃ飽きたらず、俺を無理やり()いた上で、裸の俺を、無理やり! 蹂躙して――」


「そうです媛宮! 妾も力で強引に服を()がれ、そのイヤラシイ目の前に裸身を晒された上、道具で、うぅ、汚された。生涯一度たりとて受けた事の無い辱めを――」


死霊達が詩織の元へ走り寄りその足元にすがりつく。


――何だと!? 一体何を言って――


聞き捨てならない事実無根の虚偽を涙ながらに訴える二体に初心な青年(アイヒシュテット)は戦慄した。


――くそ、なんてことだ! なんという狡猾さ! なんという告げ口! 冤罪をかぶせに来るとは! なんて人間くさいいやらしさをしているんだあの不死族の二体(アンデッドども)は!


「それは大変でしたね。可哀想な我が子達。でも安心なさい。薔薇綱は女神すら縛る呪いの植物。放っておいても衰弱死するでしょう。捨て置きなさい」


そのようなケダモノに手を触れる事はないと言わんばかりの雰囲気で彼女は告げる。その言に死霊達は喜び、彼女に平伏して何度も礼を述べた。


多々ある言いたい事を飲み込みつつもその光景を黙ってみていたアイヒシュテット。彼はその様子から、彼女が死霊の首魁だと理解する。


――彼女を倒さなければ何度でも死霊は呼び出されるということか。


仕組みに気づいた彼だが、体は未だ動かない。どうやっても動かせない体にアイヒシュテットが焦っていると、彼女の視線が死霊達から動いた。


「あちらは――」


詩織の視線の先はアイヒシュテットではない。彼女はシホの方を見て「――大典礼を完奏するには、もう少しかかるでしょうね」と呟いた。


その声に死霊達もシホの方向を見る。


――まずい、こっちに気をひかないと!


「さぁ子供達、あの祭壇を破壊するのです。ヤー=シェリに背く異教の巫女を、御神ゾルヴァに捧げましょう」


死霊の標的が自分からシホ達へ移る。アイヒシュテットはなんとかそれを阻止しようと思い、体を無理矢理にでも動かそうとがむしゃらに気張るが、体にはそれが伝わらない。


「挽回するぞよ、覚悟せよ」


視界の端で、胤舜が槍を構えるのが見えた。


胤舜の投擲姿勢に反応し、【さざれ石】の穂先が紫色に輝く。


そして一息し、胤舜が槍を放った。



――その時、鳥居(ゲート)が現れた。




◆◇◆◇◆◇




天に浮かぶ赤い門。


轟音と共に、空に広がる闇をこじ開けそれは突如現れた。


位置は丁度シホの真上。シホの周囲に展開する無数の輝く円陣から、幾筋もの光が放たれ赤い門を照らしていた。地面に描かれた円陣を構成する光は、外縁にそれぞれ異なる紋様を浮かび上がらせており、個々の円陣は隣り合った円陣と連動してゆっくりと動いている。


赤い門の中心に縦の光が走ると、両開きの扉が開いて中から光が溢れ出す。押し入ってきた地吹雪のような白い光の粒子の奔流の後、そこに人影が現れた。



「祭壇とのリンケージを確認。自動(オート)干渉支援序奏(エイジング)開始しました」


「無敵バリアーだ!」


胤舜が放った槍は、術後硬直中のシホを狙っていた。


槍はまっすぐシホの左胸をめがけて直進した――が、それに反応して、シホの周りの地に伏せられていた六角形の水晶の甲羅が勢い良く何枚も飛び上がり、それらが槍の行く手を遮った。


槍が甲羅に接触すると一瞬甲羅が押し返し抵抗するも、けたたましい音を立てて甲羅は槍に粉砕された。槍は甲羅を二枚、三枚と楽に打ち砕き、全ての甲羅を易々と貫通するかに見えたが、五枚、六枚を貫通し七枚目に到達した所で、槍は甲羅を砕ききれぬまま推進力を失い、ヒビの入った甲羅と共にその場に落ちて掻き消えた。


「おー、びっくりした。無敵じゃないかもと思ったよ」


本当に驚いたのか、シホはヨロヨロとその場にへたり込んで大きく息をついた。


赤い門から現れた人影は、玄奘の衣装と形は似ているが遥かに上品な風合いの衣装を着ており、天狗と呼ばれる怪物の面をつけていた。


その者は重力を感じさせない身のこなしで地に降り立つと、右の手刀を刀に見立てて、居合と呼ばれる剣技の動きで空を一閃する真似をした。すると、空に浮いた石を吐き出す建造物が全て横一文字に寸断され、音もなく霧のように霞んで消えた。


謎の大規模な術を謎の行動で打ち消した冗談のような力を振るったその者は、腰を落とした姿勢から楽な姿勢に戻り、つけていた面を外した。


舞媛(ジュピトリア)、お下がりを。あの老人、恐るべき手練です」


厳流はいつの間にか持っていた短刀を構え詩織の右前に立った。胤舜も詩織を庇うように彼女の左前に立つ。


地に転がされたアイヒシュテットには門より降り立ったその人物を見る事は出来なかったが、それが敵でなさそうな事に彼は安堵した。


「へへっ。奥の手間に合った」


地べたに座り込んだシホが力なく笑う。


「無理をしたね、シホ。五玉(ぎょく)を並列励起するとはね」


――この声は……。


遠くからかすかに聞こえてきた声音には聞き覚えがあった。アイヒシュテットが思い浮かべた人物は、世道の宮司、歴史学者ラナードだ。


何故、彼が此処に。


いやそれよりも、彼は一体何者なのだ。あの力は一体――。彼の振るった力に度肝を抜かれたアイヒシュテットは、状況を整理出来ずただただ呆然とした。


「そうだよ。ボクのコスパはキミの働き次第なんだから頑張ってよね」


「これは期待に答えないと大変な事になるだろうね」


「もちろんだよ。保護者としての務めに期待するのだね」


かなり親密な間柄なのか。アイヒシュテットは二人のやり取りからそう推察する。


宮司と巫女。確かに考えてみれば同僚として親密であっても不思議ではない。だがあの感じはそういう風ではない。それ以上の親近感――例えるなら親戚か、それに類する間柄のやり取り。少なくとも職場の同僚という雰囲気ではない。


「いやぁ、綺麗に捕まってますね! アイヒシュテット君?」


――!?


虚を突かれ驚くアイヒシュテットを覗き込んだのは、その顔に満面の笑みを浮かべた玄奘だった。


アイヒシュテットを見つけて駆け寄ってきたのだろう玄奘は、持っていた短刀で手際よく彼に絡みついていた蔓を切った。途端アイヒシュテットの体にたちまち力が戻り、頭にこびりついていた睡魔が吹き飛んだ。


「いったい何が――」


「書き換えが間に合わないと判断して典礼干渉先を【天戸(あまど)】に切り替えてたみたいですね。途中まで構築した祭具が投げ捨てられててびっくりしました。あんな事してたらいくらキャパがあっても全然足りなくなりますよ。私が来たから何とかなったものの私が駆けつけなかったら皆で全滅、囚われの身です。アイヒシュテット君も私に感謝してもいいですよ、ただ感謝は言葉だけではなく、高価な物品をもってお願いしますね」


「え、あ、ああ」


そういう事を聞いたのではなく――。専門用語を並べられたアイヒシュテットは、それじゃないと言いたい気持ちを飲み込む。多分この少年にそれを伝えるのは至難だ。


アイヒシュテットはとりあえず頷いて立ち上がろうとした。――が、足に力が入らない。


「いやー立つのは無理ですよー流石に。私が引きずっていってあげます」


そう言うが早いか、玄奘は背中に荷物を背負う要領でアイヒシュテットを担ぎ、小走りでシホの元へ走りだした。





「クエストキーはラナードが持ってたのか。バグだと思ってたよ」


シホは掌くらいの銅鏡を受け取ると、小刻みにその縁を指で無造作に何度も突付いた。


「お、起動した。ノミナルグライドパス――確認。おっけー行ける。じゃあ行くね。後よろしく」


「待ってくださいー! はぁ。まにあ、った!?」


やって来た玄奘の首根っこをシホが掴むと、玄奘は甲高いおかしな声を上げてその場にへたり込んだ。玄奘はアイヒシュテットを担いでいたので、丁度彼に組み敷かれる格好となり、真っ赤な顔でシホに、悲鳴に近い不明瞭な発音の意味不明な言語で抗議した。


「はいはーいあほべるちゃんわかったわかった。じゃあいっきますよー」

「ふじこ!」


シホが起動させた銅鏡は、鏡面から光の枠線を噴水のように吐き出すと、線は三人を覆う竹籠型の光の網となり、一気に収縮して三人をその場からかき消した。





「――は、ただの映像だから。通信網の立体映像キャプなんて一般人は普通見な――ら珍し――もしんないけどね、頭――うっとするのは――ちゃってるせ――と思うから、その場で足踏みすると治るかもよ」


視界は滲んでいるが、段々と景色が見えてくる。――アイヒシュテットはシホの声で意識を呼び戻された。


――今のは……。


そこは幾筋もの竹の線に囲まれたとても狭い籠の中だった。


線の外には闇が広がっている。床に張り付いている淡い光が、籠の中をうっすらと照らしている。ぼんやりした頼りない明かりの中、彼はそこでシホと玄奘を認識する。


玄奘とシホは背中合わせになり、お互い壁に向かってせわしなく手を動かし何かをしていた。その作業は多忙を極めるものなのか、二人はアイヒシュテットの立ち姿勢のままの居眠りになど全く気がついていない様子だ。二人の様子を観察しつつも、彼はずっと警戒していた風を装う。


ふわふわと身体が浮きそうになるこの感覚は、アイヒシュテットにとって不思議な体験だった。平衡感覚の狂いを感じる度、彼はシホの助言に従い足踏みをした。


この気持ちの悪さが【低重力】と言う環境のせいだと玄奘から説明を受けたが、理屈がわかったとてコレに慣れられる訳ではない。


後どのくらいコレは続くのだろう。進捗を玄奘に聞いてみたいが、役に立ってもいない自分が彼らの邪魔をするのはまずい。アイヒシュテットがそう逡巡していると、不意に玄奘の動きが止まった。

玄奘は壁に手を翳し壁の一点をじっと凝視していた。


――終わったのか?


反対側を向いているシホは、壁に向かってまだ両手を動かしている。


アイヒシュテットは何気に彼女の作業を注視した。


彼女の右手が右上から左下に動くと、部屋の外にその動きをなぞるよう白く淡い線が現れて、右手の中指と薬指を開くとその線が太くなる。さらにそのまま人差し指を下げると線が曲がり、今度は左手を上げると折れた線から二股に線が延びた。


左手の親指をくるくる回すと部屋自体がそれに合わせてくるくる動く――。


その線が何を意味しているのかはアイヒシュテットには判らない。だが何度かその動作を重ね、シホの左肘が曲がる動作をした時、遠くの方に光の渦を巻き込んで回る丸い漆黒の球体が現れたのには気が付いた。


彼女の右手の手首がくるっとひねられると、作ってはそのままにされていた沢山の光の線がその球体に向かって伸び、繋がった。


「ブロードキャストのタイミング任せる」


「まかされます?」


いつの間にかシホの頭の上で足を開いて座っていた木霊が立ち上がった。


木霊がやったのか、暫くすると張り巡らされた沢山の線に水銀の光沢を持った物質が滑らかに流された。それと共に、竹の枠と枠の間に見た事の無い角ばった文字や様々な模様が一斉に浮かび上がり、それらは次々と下から上へと流れ始めた。


「ゲートは……破壊され、いや、これ、解放状態でロックされてる。あれか! トラフィック異常数値」


「意図的なブロードキャストストームですか」


「いや、ループとかじゃないな。何だこれ……」


二人は流れていく文字を眺め押し黙る。文字を読めず状況を理解出来ないアイヒシュテットには、その時間がもどかしく思えた。


――私にはあの黒い球しか見て判るものはないな。漆黒の球体か。……竜でも中に住み着いていたりしてな。だとしたらこれぞまさに【黒竜石】だが。


それは無いか。と内心で呟きつつ、暇を持て余したアイヒシュテットはただただ黒い球体をじっと見つめていた。


球体の周りで枝状に分裂してる線の中には、その先端からキラキラと光る光の粒を撒き散らしているものがあった。


まるで枝を食いちぎられ、その先から樹液が流れ出ているかのように飛び散る光の粒。それらは外へ広がる事無く次々と球体に吸い寄せられ、飲み込まれているように見えた。


光の線や粒を吸い込み飲み込んでいくその様はまるで捕食だ。


アイヒシュテットにはその球体が不思議と、自然界には存在しない、しかし間違いなく孵化する能力を備えた異質な生命体の卵のように思えた。


「シホさん、あれって、何だか、何ていうか……こっちの――飲み込んでます?」


「うーん。飲み込んでる、というよりは、うん、違うね。たぶん、反転……いや、意味のわからない別の法則性に沿った信号に変換して、構成要素を、増幅? させてるんじゃないかな。だからトラックするとこんな結果が出るのかも」


少し考え込んでいたシホは、急にせわしなく動作し始めた。


「ここで降りよう。ログアウト出来ない今の状態でこんなのに接触したら、ボクらの脳みそ木っ端ミジンコだよ」


シホがそう言った途端、全ての景色が闇になり、一拍置いて部屋が割れ壁が崩れた。


外から控えめな光が差し込んでくる。崩れた壁の欠片は細かく裁断された紙くずとなり、枠となっていた竹もろともパラパラと崩れ落ちて消えてしまった。


天井があった辺りには、薄暗い夜明け間近の鷺色がかった空が見えた。





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