第八回 :遊民や黒き民について
アティス大陸には、諸王国に所属することの無い民族が幾つか存在しますが、その内で特に知られる「遊民」と「黒き民」について少し述べることにします。
「遊民」とは、「アティス大陸」において、どの諸王国にも属さずアティス大陸の大平原地帯を流離い続ける民たちのことです。
「遊民」の起源は「第二次大災害」に遡ります。竜族の侵攻において王都に避難し遅れた難民たちがその起源であると言われ、その中には、ユロシア帝国の魔術師やアティス王国の技術師もいたと言われています。更に、諸王国に所属できなくなった者や亜人等も取り込んでいった経緯もあり、「遊民」独自の秘術が存在すると噂されています。
ともあれ、「遊民」とは、王国の庇護を受けることがなく、吟遊詩人や旅芸人等を営みながら、一部の者たちは傭兵や国に属さぬ魔法機械技師としての腕を振るいながら、諸国を放浪して暮らしています。
そして、これは余り知られていないことですが、一部の「遊民」の集団には、「亜竜族」が庇護者として存在していると言われています。
ちなみに、物語に登場するリュッセルは、この「遊民」の出身です。
さて、「黒き民」とは、「アティス大陸」の中央を縦断する「神の背骨山脈」以東に広がる「黒竜王」の鎮座する「黒き森」に住む民族です。「黒き民」は長身で黒い肌をしており、「護神グリスドルーム」と、この地に座する護神の聖獣である三つ角の大獅子「ナーマリオム」を崇拝する民族です。
彼等は同じく聖獣「ナーマリオム」を崇める亜人ミントール族と共存し、神代の時代から固持していると言われる原始的な狩猟中心の生活形態を営んでいます。その身体的能力は、西の平原に住む人間に比べて非常に高いとされます。
その異なる肌の色や原始的な生活から、古代の「アティス機械王国」時代から蛮族と呼ばれていますが、一部の「黒き民」は西の大平原地帯で傭兵を営んでいる者がおり、その異形と、時にドールとも互角に戦う力量を見せる彼等は有名となっており、豪商や貴人の護衛や従者として時折見られることがあります。
両者とも、諸王国内において、社会的に低い位置に置かれることの多い存在であると言えるでしょう。