第七回 :メタル・ビーイングについて
この物語に登場する鋼馬 “シャーフィール” は、「メタルホース」と呼ばれています。そして彼等のような存在を、「メタルビーイング」と呼びます。
この「メタルビーイング」は、アティス王国後期において、第十一都市の魔法機械技師長が製造した特殊な「ドール」に、自己修復・自己進化の機能と自由意志が確認されたことに端を発します。それらが知られる前後、多くの高位技師たちは、この存在を模した存在を多数製造しました。
その後、幾つかの紆余曲折の後に、それらの存在は知的生命体と認知され、制限されたものではありましたがアティス王国民としての諸権利を与えられました。アティス王国後期において、彼等は国を担う存在となっていきます。
「メタルビーイング」は、金属や鉱物で出来た機械仕掛けの身体を持ちながら、生物的な自己再生等の能力を持ちますが、他に特有の能力を持ちます。
一つには、魔法機械に対する支配力です。彼等は自身と同型か同種の機能を持つ魔法機械を、自身の意のままに操ることが出来ます。
更に言うと、支配した魔法機械の機能を十二分に発揮させることができます。これにより、常人が魔法機械を操作した場合の数倍の効果を発揮させることが可能になります。
もう一つが、「オーバードライブ」能力と呼ばれるものです。これは俗に “火事場の馬鹿力” と称されるものに近い能力です。彼等は自身の生命力とも言える内在魔力を大量に消費することで、身体能力や内蔵武器の威力を大幅に増加させることができます。しかし、この能力は内部機械への過度の負荷や、体内薬液の沸騰等が起こる為、彼等自身の身体にかかる負担も大きく、長時間の能力の発揮は困難です。
ちなみに、作中に登場する “シャーフィール” だと、「オーバードライブ」時の走行速度は時速300kmを超え得ます。
しかし、この物語の時代には「メタルビーイング」の存在を知る者は少なく、知っている者のほとんども、伝説やよく出来た与太話程度にしか考えていません。
彼等「メタルビーイング」の存在が一般に知られるのは、この時代から一世紀ばかり後に起こる、最初の「メタルビーイング」 “ミゼル” の覚醒まで待たなくてはならないのですが……