第十一回:「影の騎士」伝説について
今回は、フォーサイト王国やその周辺諸国に流布する「影の騎士」伝説について少し話をすることにしましょう。
この伝説は、遊民の吟遊詩人リュッセルの手によって編纂され、ショーネルがヴァルター家の家督を継いだ時期に完成したと言われます。そして、そこから幾つかのヴァリエーションを生みながら、大平原地帯の中央域から東方域を中心に広まっていきました。
この伝説は次のようなものになります。
センタサイトの間者に唆された副官によって、騎士シェユラス=ロフトは千尋の谷に墜とされ暗殺されてしまいます。
しかし、彼は死をある意味で克服し、亡者の姿となって甦ります。
亡者となった彼は、副官への復讐を胸に、王国に仇なす者たちを討ちながら各地を彷徨い続けます。
やがて、副官を倒した彼は、目的を失いながらもさらに各地を彷徨い続けます。
そして、「陰の騎士」と対決を通じて我に返った彼は、冥界への旅路に着こうとします。
しかし、そこにセンタサイトの間者が彼の贋者を操り、フォーサイトの人々を殺害するようになります。
これを看過することが出来ず、彼は再びこの地に舞い戻り、彼の贋者を討ち滅ぼし、国王の再叙勲を受けてフォーサイトの守護者となった……といった内容です。
「フォーサイト王国」の「影の騎士」は、国内においては国の守護神として崇められる存在であり、国外においては不気味な幽鬼として畏れられています。




