発狂、だけども魔王
いよいよ物語が動き出しますよー!
「――いや〜、美味しかったですー」
昼食を終え、ホクホク顔で自室に戻ってきたフィーン。
そんな時、ふいにタブレットからアラーム音が鳴り出しました。
《お父様》からの着信です。繋げますか? ――YES,NO
「おお! お父様からだなんて、何時以来でしょう〜?」
もちろんYESをタッチします。
するとタブレットの画面内にフィーンの父、神サマが表れました。所謂、テレビ電話みたいなモノですね。
「お久しぶりです。お父様」
「うむ。元気にしていたか、フィーン?」
「はい! お父様もお変わりないようで」
しばらくたわいない会話をしていましたが、やがて本題へと切り出す神。
「――今日、連絡を入れたのは他でもない。先日某国にて召喚された勇者についてだ」
「……ん? そもそも、その勇者自体が初耳なんですケド?」
む、そうか――と如何にも知らないお前が悪いといった言い草で言葉を返すフィーン父。連絡も寄越さないでよく言えたものです。
「分かりましたから、サッサと説明して下さい」
父(一応、神)より大人な対応をする少女フィーン。お父さん、思わずジト目になってしまいましたよ。
曰わく、ジリ貧な現状を打破する為、人類が異世界より召喚した才ある少年兵だそうで。 要は、埒が明かないから拉致った、というだけのことです。
「その勇者の影響で、人間達は祭り騒ぎ。士気も急激に高まっている状態だ」
「おぉ……凄まじき勇者パワーですね」
「関心している場合ではないぞ。国は連合し軍備拡張を重ねて、数ヶ月後にはそれを、お前の今いる済世庁にぶつける気だぞ?」
「Oh……恐るべし勇者パワー、、、」
勇者という存在そのものは、国内全体の希望となり、勇気となり、人々のやる気や士気を飛躍的に向上させます。
味方の場合、それはとても心強いものとなります。
しかし、敵の場合だと……
「って、うわぁぁぁぁぁあ!! 私、絶対殺されます!! だって魔王だもんっ! ラスボスだもんっ! 打ち取られるぅぅぅぅぅ……」
発狂するフィーン。
「フィーン!? お、落ち着けっ。と、とりあえず落ち着きなさい!」
いやいや、あなたも落ち着いて下さいよ?
無理もないです。
勇者が魔王を打ち取る――王道中の王道。まさにテンプレな展開なんですから。
ある意味、それは死刑宣告以外の何でもないでしょう。
次回はまた、ズラーッと説明的文章になりそうです。すいません。