少女、だけども魔王
平面的に円形が広がっている大陸。それがこの世界。
中心部からは、巨大な螺旋階段が天高くまで伸びており、それはさながらジャックとマメの樹かのようです。
その階段の麓、魔王城は其処に位置します。
その広さはなんと、この平面世界の十分の一を占める面積量。“壮大”の一言では片付けられません。
そんな魔王城の一角。一段と高くそびえる尖塔の頂には、たった一つだけ部屋があります。
そう、おとぎ話でお姫様が隔離されているといわれる場所ですね。
しかし実際、其処には『お姫様』は居ません。居るのはむしろ、それとは対照的な関係に位置する『お姫様のような』人物だったのです。
おや? ちょうどよく誰かが彼女の部屋へ来たようですね。
ちょっと見て見ましょうか。
コンコン
「ランプロスです。お入りしても宜しいですか?」
騎士然とした青年が扉をノック。
部屋の主にキチンと許可を取ってから入室するあたり、礼儀は成っています。
彼が入室したのは、薄桃色を基とするふんわか優しい部屋。
所々にお人形が置かれ、部屋中にはほのかに香る甘い匂い。もう何もかもが可愛らしいです。
しかし其処の部屋には、それ以上に可愛らしい少女の姿が。
「失礼します――フィーン様。先程、無所属と思われる冒険者グループが、城内第一層に侵入してきたとの連絡が届いております」
「わざわざ伝達ありがとうです、ランプロス。でも、今回は私も感知してましたから大丈夫ですよ?」
ちょっと自慢気に、軽く首を振り微笑む少女。その瞬間、腰まで伸びる艶やかな金髪が左右に揺れます。
迷信と人々の間で考えられてきた魔王様は実際に存在します。
皆様もう気付かれていると思いますが、この人間の少女のような方こそがその魔王様なのです。
「そうでしたか。流石『魔王』様です」
「もうっ。魔王は止めて下さいよ。 ……この前は私の感知じゃ気付けなかったのを知っていて、そういうコト言うんですからヒドいです」
「あれは敵メンバーに【隠密】持ちの者がいたからですよ」
むぅ、と柔らかそうなほっぺたを膨らませ、自身の部下にジト目を送る少女。実に表情豊かですね。
『魔王』という名前は、敵対関係にある人々が畏怖の念を込めて付けた俗称。彼女本来の名前ではありません。
このことは、また追々機会があると思いますので、その時にでもお話しましょう。
「それより、フィーン様。侵入者ですよ、侵入者」
「ああ、そうでした。早く撃退しないと……といっても相手は無所属でしたよね?」
ご機嫌を損ねていたのも忘れて、キチンと返事を返す幼い魔王様。単純といいますか、素直ですよね。
「はい、その通り。おおよそ腕試しで侵入したのかと思われます」
「迷惑な話ですね。此処は遊び場じゃないんですよ、まったくもう。……しょーぉがないっ、あとは私が受け持ってみせますので大丈夫ですよ」
魔王は自信満々の元気な笑みを浮かべ、ランプロスに退出を促します。
「『魔王』様が受け持ってくれるのならば私も安心ですねぇ。何か用があれば、いつでも呼んで下さい」
「むっ。……ありがとうございます。では何かあれば『問答無用』で呼びつけさせて頂きますっ」
「うっお手柔らかに……」
今度は悪戯好きな笑みを一つ、思わず苦笑いになる部下を送り出す魔王。その顔は、まさにドヤァです。
パタン、と扉が閉まる音が部屋に響きます。
「……力試しとか勝手に人の敷地内でするな、って話ですよね」
先程までの元気はどこへやら、ヤレヤレといった感じの口調で独り言。
どこから取り出したのか手元では、タブレットのようなモノを操作します。
「……まあ、いいですっ。やってやりましょう! いや、『ヤって』の方が正しいのかな? どっちでもいいや」
そして最後に画面をタッチ。
すると彼女の姿は、放たれた光と共に何処かへと消えてしまいました。
こんにちは。ブラジルの人はこんばんは。
連投です(笑)
なんだか、伏線敷いてばっかでスイマセン。もう少ししたら、ちゃんと回収センターに送りますんで……。