だけどギガース、されどギガース
「0が12個って……つまり千兆?! フィーン様、1TEも頂いたんですか……!?」
Tとは『テラ』を記号で表したもので、10の十二乗倍分の量を示します。
「実際は3TEみたいですけどね」
「“みたい”って、、、よくこんなに頂けましたね……」
「えへへ〜」
「……褒めていません」
こんな額、お小遣い帳に書かれるレベルじゃないですよね……。
具体的に分かり易く喩えると――
一生遊び尽くして、更にもう一生遊び尽くしてを数十回繰り返しても、まだ底が見えてこないほど。
そんな途方もない量なのです。
「これならギガースもバンバン召還出来ますね〜」
「それでもギガースにこだわるんですね……。どうせならもっと違うものにしたらどうです?」
「えっ。ギガースだめなんですか?」
ギガース好きですね……。
「フィーン様は知らないかもしれませんが。ギガースは案外、燃費が悪いんですよ?」
「なっ、なんですとー!?」
そうです。ギガースはその巨体の割に、燃費が結構悪いんです。
ギガースの特徴の一つである馬鹿力は、彼自身の体躯が重いためか、動作が遅くあまり生かしきれてはいません。たいてい街を壊滅しきる前に倒されてしまうのがオチなところです。
これは彼を含めた巨人兵皆にいえることですね。
まあ、そういう訳で……
「あまりダメージは与えられないか、と」
「むー。じゃあどうしたらいいと思うんですか?」
……若干拗ねてますね。どこまでギガースラブなんでしょう……?
「取り敢えず、まずは兵を充実させた方がいいかと……」
「やはり、そうなっちゃいますか〜」
「はい。そうなっちゃうんですよ」
というより、そもそも兵の充実が軍資金の目的ではなかったのでは?
それと、ランプロス。別にノらなくていいですから……。
「うーん、分かりました。明日にでも派遣兵買いに行ってきますよ(通販で)」
「そういえばフィーン様。アペレースが数日中に帰還するそうですよ」
会話が一段落し、ランプロスが執務室から出ようとドアの前に立ち。
そして急に思い出したかように、届きたてホッカホカの情報をフィーンへ告げました。
「え! マギナちゃんが帰ってくるんですか!?」
その顔は何処か嬉しそう。
「はい。なんでも勇者降臨の影響が戦局が小康状態になったとかで……」
マギナ・アペレース。魔王軍(天界軍)の幹部の一人で、フィーンの親友でもあります。
彼女は数ヶ月間に及ぶ遠征で、しばらくの間、城を出払っていました。しかしこの度の勇者サマの影響で、一時帰還するんだそうです。……後で大きいのがドカーンと来そうですね。
「そうですか、マギナちゃん帰ってくるんですね〜」
「まあ、何時帰って来るかは定かではありませんが」
その途端、顔をほころばせるフィーン。
「一緒にお茶したいなー」とか「お散歩もしたいなー」と楽しい楽しいプランを練っているようです。
が。あなた忘れてますよ、フィーン?
マギナ・アペレースという人物が、かなりのトラブル体質だということを……。
三兆円……サスガ神サマといったところです。
あ、マギナちゃんの登場はもうちょっと後になりそうです。