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八重鏡  作者: 藤崎悠貴
秘宝と王女と大鳥と
21/122

秘宝と王女と大鳥と 2-1

  2


 出立の朝、なるほど、さい先のよい晴天であった。

 長い旅となろうから、発つのは早朝、ようやく東から燃えるような太陽いずるころ。

 稲穂が斜めからの陽に照らされて、早朝の冷たい風にざらざらと揺れれば、まるで旅立つ一行に手を振るよう、長く伸びた影を二頭立ての馬車が踏みつけ、付き従うはもう二頭、その影も田園に異形の影を映して、ゆっくりと街道をゆく。

 兵士は馬車にひとり、付き添う馬上にひとり、それぞれ鎧を着て背筋を伸ばし、いかにも厳めしい表情。

 その後ろ、しんがりをのんびりとゆく馬上では、正行がひとりあくび混じりに乗っていて、ぱかぱかと馬が揺れるたびに身体を左右へ動かし、まだ馬上が慣れぬよう。

 木造だが、白木に上品な青い蔦の装飾が施された馬車のなか、アリスとクレアが並んで座るが、クレアもまだ眠たげな顔、馬車の揺れに合わせて頭がふらふらと揺れれば、アリスは微笑みながらその頭を肩で受け、ゆっくり寝かせてやる。

 馬車と二頭の馬が行く道、しばらくはのどかな田園風景である。

 左右は規則正しく並ぶ田畑、畦では朝露に濡れた草の葉がきらと輝き、がらがらと馬車が過ぎ行けば驚いたように雫が落ちる。

 稲畑もあれば、ほかの野菜を育てている畑もあり、一口に畑といっても見える景色は様々。

 黄金色の稲穂豊かに揺れ動く畑があれば、きらきらと光るような黒い土の上、細い蔦が縦横無尽に這い回り、そこをちいさな黒いアリがもぞもぞ、あるいは畝の上にかまきりがすくと立ち、朝日を眺めているような光景もちらり。

 アリスは馬車の窓、朝焼けと濃紺入り混じる空を見て、不安と期待を同時に覚えたものらしい、窓の外にひょいと顔を突き出せば、後ろに続く馬二頭が見えて、とくにちょうど大あくびをしていた正行の顔、じっと見ていれば目が合って、


「いや、別に眠たくはないよ」


 となにも言わぬうちから言い訳する正行が愉快である。

 馬車は焦らず、まばゆい朝焼けに向かってまっすぐ進む。

 畑の傍ら、収穫したものを保管しておく小屋のようなものがいくつか並び、小川の水を畑へ取り込む水路あり、城から離れるにつれて農家も多くなってゆく。

 とくに農家の朝は早いから、すでに畑へ出ている影もあって、このあたりでは見かけぬ豪奢な馬車がそばを通ればふいと腰を上げ、愚直なる好奇心をあらわにしてだれが乗っているのか背伸びで覗き込む。

 気づいたアリスが手を振れば、子どもならよろこんで振り返すが、大人はなんとなく決まりの悪い顔、そそくさと畑仕事に戻ったり、照れたような笑顔を浮かべたり。

 地平線の彼方に見えていた朝日は、徐々に高さを増して、日差しも白く温かく変わってゆく。

 がらがらとあぜ道を進む馬車のそば、見送るのは人間ばかりではない様子。

 叢中から昆虫の複眼じろりと覗けば、馬車の前にちいさな蛇がにょろりと這い出し、灰色の大きな蛙が不意に茂みからがさりと出てくるに至っては、さすがにアリスも驚きの声を上げ、それでクレアがはっと目覚めて。

 すかさず馬上の兵士が巧みに馬を操り、茂みへ向けてぶるるといななきひとつ、蛙が重々しく跳ねて逃げ出せば、それに驚いた飛蝗がぴょんと飛び上がり、朝露が雫となって残る葉を揺らす。

 馬蹄が軽やかに地面を鳴らし、馬車がときおり道が悪いのにがたんと揺れながら進めば、すこしずつ畑もまばらになってくる。

 まだ未開発の野原、背の低い草は様々な生命の住処となり、豊饒な土には土竜やみみず、草の根や葉には大小様々な昆虫が宿り、鈴虫が潜めば天道虫がすがりつき、強力に発達した後ろ足で飛蝗が飛べば鎌となった前足でかまきりが襲う。

 それらを狙う鳥たち、明けの空をぐるぐると回っては急降下し、嘴にしかと咥えて灌木の枝で休むものあれば、そのまま雛の待つ巣へ舞い戻るものもあり、それらが白く清新に輝く朝日のなか、鮮やかな影とともに照らし出されて、馬車の一行とて傍観者ではない。

 屋根の緩やかな曲線に、丸々と太ったちいさな鳥が一羽ひょいと乗れば、がたがた揺れるのも構わず矮小な足でしっかり捕まって離れない。

 しかし後ろから正行が欲を出し、馬を早めて近づけば、手の先をひらりと飛び去って、あとには羽根がひらと舞うだけ。

 残念そうな正行に、馬車のなかでアリスが笑い、経験豊富な兵士がぽつり、


「捕まえるなら、こちらから行くのではなく、向こうがくるのを待つのです。じっと動かずにいれば木かなにかだと思って易く近づいてくるでしょう」


 と助言する。

 従うように、馬上の正行、すっと背筋を伸ばして動かずにいれば、その近くを様子伺いにくすんだ色の赤い鳥、忙しく羽ばたきながら舞い踊って、さてその肩に下りるかと思いきや、


「あら――」


 馬車から身を乗り出していたアリスの肩、赤い刺繍のあしらわれた服の上にひょいと乗って、丸い身体に埋もれた首をくるくると回す。


「なんで、アリスばっかり」


 正行が馬上で拗ねた顔をすれば、アリスは指先で鳥の背を撫で、


「この子、女の子なのかもしれませんわ。男の方が怖いのかも」

「そうかなあ。虫ならすぐ捕まえてやるのにな」


 言う先、慰めるように正行の馬が首をもたげる。


「そうか、おまえはおれの味方か」


 と正行は太い首筋を撫で、ざらざらとした硬い毛を手のひらに感じれば、付き添う兵士もからからと笑う。


「すっかり馬も上手になられましたな、正行殿。一時はどうなることかと思いましたが」

「振り落とされたら怪我じゃ済まないから、そりゃうまくもなるさ」


 むんと腕組み正行の、白い頬には照れの色、朝日のせいと言い訳するには、もう陽も高い。

 野原では街道すらおぼつかず、踏みならされて硬くなった地面の下からも力強く植物が生え、道のまん中にちいさく竜胆が咲いていることもある。

 馬の足はそれを踏まぬよう進むも、馬車の脚ではどうしようもなく、花を越えてアリスは心配げに身体を乗り出して振り返ったが、ちょうど馬車の真下に入ったよう、欠損もなく花は可憐に揺れている。

 ほっと行き着くアリスの後ろ髪、クレアはじいと見つめて、なんとなく羨むような顔。

 陽が昇っても、秋のこと、あまり気温は上がりきらず、空にはちょうどよく涼しい風が吹いていて、小川のほとりで馬車を止め、青々と茂る草木に囲まれ昼食をとれば、旅というより散策のよう、馬も道端の草をはんで満足げ。

 アリスは麦わら帽子をちょこんとかぶり、ぐるりとあしらわれたリボンの飾り、裾がひらひらと風に舞って、黒髪も揺れるが、目を細めるほどの風ではない。

 クレアはかいがいしくアリスの世話をして、馬から下りた兵士はすこし離れたところ、灌木にぐいともたれかかって男同士の話をしては笑い声を上げている。

 そこに正行の姿が見えず、どこにいるのかとアリスの視線が探すよう、どうやら小川を超えた先にそんな人影が見えている。


「正行さま、なにをなさっていらっしゃるのかしら」


 敷いた布の上、アリスが問えば、クレアも川向こうを見て、


「剣の鍛錬でしょうか」


 なるほど、そう見えるような正行の影である。

 臑程度までの低い草のなかにすっと立ち、背筋をぐんと伸ばしているかと思いきや、勢いよく細長い輪郭のものを振り回してはまた直立に戻り、また振り回しては。

 しかしどうもその輪郭が、剣にしては細すぎる。

 現に灌木のそば、兵士が帯びている剣は、刃の幅も広く無骨な形状、それに対して正行の持つものはすらりと細長く、槍のようにも見えて、長さはほかの剣と同程度しかないのである。


「正行さま」


 とアリスが立ち上がり、小川へ近づけば、正行も気づいて手を止めて、


「ちょっと待って。そこ、渡ると濡れるから」


 幅が一メートルほどの小川だが、さらさらと流れる清い水、なかにはちいさな魚の姿も見えて、人影がぬっと差せばぴくんと驚いて逃げてゆく。

 川を挟んで向かい合うアリスと正行、どちらからともなく腕を伸ばして、アリスがひょいと飛べば、正行が身体ごと受け止める。

 アリスは正行の腕のなか、ちいさくなって収まれば、長い黒髪が一瞬遅れてふわりと川を越えた。

 続くクレアは、どうしたものかもじもじとうつむくのに、


「クレアはこないのか」


 と正行が片手を伸ばす。

 逡巡を足下でちいさな飛蝗が見守れば、クレアはおずおずと手を伸ばして、


「きゃっ――」


 川をぴょんと飛び越えて、正行の腕のなかにしっかりと収まる。

 正行は、ふと自分の胸に手を置いてじいと見上げてくるふたりの異性を見下ろして、


「これぞ両手に花ってやつか」


 などと独りごち、照れたようにふたりを解放した、そのふたりの指先が正行の胸を離れる瞬間の名残惜しさ。

 照れ屋のクレアがまっ赤になってうつむくのに、アリスはいくらかしっかりしていて、ずれた麦わら帽子を指先で直しながら、


「なにをしてらっしゃったのですか、正行さま」

「んー、恥ずかしいから、あんまり言いたくないんだけどな」


 と正行、頭を掻いて、


「一応、剣の練習のつもり。ロベルトには、その前に身体を鍛えろって言われたんだけど」

「まあ、そうなのですか。でも、剣の練習が、どうして恥ずかしいのかしら」

「見よう見まねで、まだまだぜんぜん使えないからさ。剣も、ほら、普通の剣とはちょっとちがうし」


 正行は腰に帯びた剣の鞘をとんとんと指先で叩く。

 見れば、たしかにそれは普通の鞘より細く作られ、形も円筒に近い。


「変わった剣なのですね」

「あんまりに腕力がないもんだからって、ロベルトがくれたんだよ。ほら、グレアム王国って武器の製造は得意だろ。いろいろ変な武器も作ってるなかに、おれにぴったりのがあったからってさ。なんかちょっと、ばかにされてるような気もするだけど――危ないから、ふたりともちょっと下がって」


 と正行が剣を抜き払えば、それはやはりごく細く、普通の剣とは形状がまったく異なる。

 刀身は指ほどの太さしかなく、長さはほかの剣よりもすこし長いが、切れ味を示すようにまばゆい光を浴びればきらと輝く。


「これだと、おれが使えるくらい軽くなるんだよ」


 正行は軽く剣を振って、その剣先がひゅんひゅんと風なりを起こすのをぼんやり見ている。

 すばやく動かせば、剣先がぐにゃりとしなって、まるで鞭のよう、草の先端に触れれば細かく切断された葉が舞った。


「変な武器だろ、これ」


 と正行は苦笑いで鞘へ戻し、


「使い方もちょっと変わってて、ちゃんと練習しないと自分も怪我するって聞いたからさ、行く先々でこうして練習しとこうと思って」

「まあ、ご立派ですわ」


 アリスはぱちりと手を合わせ、それからふと視線を下げれば、


「わたしも、なにか練習しようかしら。兵士の方に剣を借りて、その練習でも」

「ひ、姫さまが剣の練習を?」


 とクレアが驚いた顔、アリスは生真面目にこくんとうなずいて、


「だって、兵の数も心許ないわが国ですから、王族といえど戦わなければならないこともあるでしょう。そんなとき、足手まといになってばかりではいけませんもの」

「そういうことがないように、おれたちがいるんだよ」


 と正行は苦笑いして、


「王女が剣まで持つようになったら国が大変だ。王女はいちばん安全なところにいて、最後まで見守ってくれてりゃいいんだよ。それだけで兵士は戦える」

「そうかしら?」


 とアリスの目にきらりといたずらっぽい光が輝いて、


「でも、剣を使える王女って格好よくありません?」

「たしかに」


 正行もうなずいて、ふたりして笑えば、本当に剣の練習をはじめる気ではとクレアはわたわたあたりを見回す。

 そんな三人に川向こうから、


「そろそろ先へ行きましょう」


 と声がかかれば、先ほど同様、正行がひとりで川を飛び越え、アリスとクレアは思いきって川を越えた先で、正行に抱きとめられる。

 アリスはすこしくすぐったそうな顔、正行から離れてぺこりと頭を下げ、


「ありがとうございます」


 と丁寧にいえば、正行も芝居がかった仕草、深々腰を折って、


「どういたしまして、お姫さま」


 笑い合う横で、容易にはその輪に入れぬらしいクレア、もじもじと俯き、赤く可憐な色を頬に宿して、風に消え入るわずかな声。


「あ、ありがとうございました」


 と無視されてもよい声なのに、こういうときばかり耳ざとい正行、朗らかに笑いながら、


「おれのほうが役得だよ。なんならあと十回くらい川飛び越えようか?」


 嘯く正行に風も向けば、クレアとアリスの裳裾がひらと揺れる。

 ふたりは馬車へ乗り、兵士のひとりは御者台へ、もうひとりは馬にひらりと飛び乗って、それよりいくらかぎこちない仕草で正行も馬へ。

 馬車を引く二頭の馬にぴしりと鞭を入れれば、四輪がゆっくりと回りだし、おうとつも多いあぜ道をがたがたと揺れながら進み出す。

 正行も馬上ですっと背筋を伸ばし、その腹を軽く踵で蹴って合図すれば、馬は自然と馬車のあとを追った。

 のどかな野原、ときおり飛び出す兎や鼠のたぐいに注意しながら、馬車はごろごろと進む。

 やがて野原も深まって、背の高い草木が多くなり、踏みならされた道の左右はさながら草の壁、人間の胸あたりまでのびのびと育ち、このあたりではどう猛な獣が現れることも多く、兵士はいままで以上に注意を払いながら馬を操った。

 時折、草むらががさごそと揺れれば、兵士はただちに剣を抜き払って馬から飛び降りる。

 鋭い視線でもってあたりを見回し、現れるものはだいたい小動物のたぐい、風に草が擦れ合って立てる音さえこのあたりでは不気味に響き、ゆっくりと傾いてゆく太陽もまた名残惜しい。


「この先に村があるはずなんだ。夜までにたどり着ければいいが」


 と御者台で兵士が地図を広げた瞬間、後ろからほとんど絶叫に近い声。


「虎だ!」


 御者は振り返って確認もせず、すかさず馬に鞭を入れて、


「王女さま、しっかり捕まってください、すこし揺れます」


 馬が甲高くいなないて足を速めれば、馬車のなかからも悲鳴、アリスとクレアは天鵞絨の布が張られた馬車のなかで必死に身体を寄せ合い、窓枠をしかと握って揺れに耐えた。

 しかしそれが、ほとんど馬車が跳ね回るような揺れなのである。

 馬は轅を力強く引き、それに伴って四輪が忙しく回るが、路傍の石などを踏めば馬車は大きく跳ね上がり、ぎしぎしと壊れそうな音を生ずる。

 御者など一度は宙に投げ出され、運良く轅にすがらなければ馬車の下敷きという危うい場面もあった。

 一方で馬車の背後、二頭の馬は、馬車の周囲をぴたりと離れぬ。

 馬上の正行、ちらと後ろを振り返れば、ちょうど叢中から黄色い毛皮がぬらりといずるところ、黒い目が炯々と光り、大きく裂けた口内は血でも含んだように赤く、黄ばんだような長い牙、尖った先端が背筋をぞくりと震わせる。

 白い足先、柔軟にひたひたと街道へ現れれば、すらりと長い胴体があらわで、黒い瞳は逃げる馬車と二頭の馬をじっと見ていた、その存外に冷静な眼差しよ。

 正行は額に汗し、黒い瞳を見返せば、虎は咆吼ひとつ、馬もびくりと震えて逃げ出す素振りに、必死に手綱をとった。


「どちらかが残ってあいつを引きつけるか」


 と正行、すばやく兵士を見やって、手綱を片手でぐいと引き、いまだ使い慣れぬ剣の柄に手をかけた。


「馬は、おれのほうが下手だ。いっしょに逃げきれるかどうかもわからない。それなら、おれが残って、そのあいだにできるだけ遠くへ」

「いや、お待ちください」


 と兵士のほうは冷静で、じっと虎を見返した。

 虎は低いうなり声、まるで地鳴りのように響かせて、ぐっと怒りに目を釣り上げている。

 前足を突っ張り、いまにもあとを追って駆け出そうという姿勢、口元の肉が地割れのように裂けて長い牙が覗き、尻尾が鞭のように激しく草を打ったかと思えば、虎はふいと顔を背けて、また叢中へ頭を突っ込み、最後には尻尾の先も見えなくなって、物音ひとつなくなった。


「いまのうちにできるだけ距離を稼ぎましょう。あれ一頭とは限らない」


 と馬は速度を緩めず走って、それでも十五分ほどか、まだ野原が続くなか、これ以上は馬も人間も耐えられぬというときになってようやく動きを緩めた。

 轅を担ぐ二頭は激しく息をつき、ぶるると鳴いて頭を振ったり、首を上下に揺らしたり、後ろから続く二頭にはまだ余裕があって、荒い鼻息をついている。


「大丈夫か、アリス、クレア」


 と正行が馬上から馬車のなかを覗き込めば、髪も乱れて帽子も床へ落ちているふたり、しかし怪我はないようで、汗ばんだ肌をゆっくりと拭っている。


「虎のほうは、どうなりましたか」

「さあ、諦めたのかなんなのか、どっかに消えたよ――すこし休めればいいんだけど、まだこのあたりも危ないらしいから、野原を抜けるまではがまんしよう」


 窓枠にしっかりと捕まったアリス、そのアリスにすがりつくクレア、ふたりはこくんとうなずいて、狭い馬車のなかで居住まいを直すのだった。

 正行も馬車の後ろへ戻って、ふうと一息、となりの兵士がちいさく笑い、


「この先は、あんなことが何度あるか知れませぬ。うまくゆけばこれが最初で最後になるでしょうが、運が悪ければ両手では足りぬ数、いちいち命をかけていてはわりに合いませぬ」

「いやあ、お恥ずかしい」


 と正行は頭を掻き、


「ああいう強そうな動物を見るのははじめてだから、びびっちゃって――冷静さを失っちゃ、意味ないのにな。反省だな、反省」

「しかし勇敢を欠いては冷静もただの臆病、いざというときは命を賭ける覚悟も必要でございます。正行殿もご立派だ」

「いや、おれなんか、まだまだ口だけだ。実際にあの場所で残ったって、いったい何分引きつけられたかわからない。それこそ命の無駄使いだ」


 正行はすこし目を伏せ、しょげるよう、兵士はすると並びかけて、


「正行殿自身のためにも、グレアム王国のためにも大切なお命、無駄にはなさらぬよう」


 ぽんと肩を叩き、しんがりから先頭へと移動して、正行はひとり残される。

 正行は馬上で手綱も手放し、ううむと腕組み、


「虎ごときであんな大慌てで、なにが国の参謀だっての。くそう、格好いい人間になりてえなあ」


 と日本語で呟きながら、馬車を追う。

 左右を背の高い草に囲まれ、視界が効かぬなか進むのはやはり緊張もあったが、日暮れ近くになってようやく目的の村が見えてきた。

 街道沿いに五、六軒の民家が並んでいるだけのちいさな村、どの家も控えめで慎ましく、おそらく農業を生業としているのだろうか、馬車の四輪が鳴る音響けば扉が一斉に開き、貧しい服を着た住民がわらわらと街道沿いに勢揃いする。

 このあたりはすでにもとグレアム王国の領地、その姫がくるという話は届いていたようで、馬車を街道沿いに止めてアリスが降り立てば、老若男女さまざまな住人たちは一様に跪き、アリスに深々と頭を下げた。

 傍らの正行、アリスの性格を知っているから、さぞかしくすぐったいような、申し訳ないような顔をしているのだろうと思いきや、アリスはごく平然とその挨拶を受け取って、優雅に歩いていく。

 その横顔はなによりも気高く、すっと通った鼻筋には気品が漂って、一目で気圧されるような王族の振るまいなのである。

 正行は馬からずるりと下りて、呆然とその横顔を見つめる。

 驚きに見開かれた目にはいったいどんな感情が映るものか、アリスはドレスの裾をさっと払って、まるで自分の家のよう、ひとつの民家へ入っていく。

 クレアがすかさずあとに続き、住民たちもわらわらと戻っていくなか、正行と兵士には別の家があてがわれて、案内を受けた。

 木造の、窓のないちいさな家である。

 屋根はぼんやりとくすんだ青色、背後にはすぐ背の高い草が控え、面積のわりにぬっと高い建物だが、なかへ入ると天井は低く、ごちゃごちゃと物も多い。

 畑仕事の道具や子どものおもちゃ、着る前か脱いだものかわからぬ服など散乱して、そろそろとあいだを縫ってゆけば奥に大きな机がひとつ、その上で白い器に入ったシチューが湯気を立てている。

 それをご馳走になっているうち、この家の子どもらしい、十になるかならぬかという少年がとことこと正行に寄ってきて、じっと顔を見上げたり、手元を見たり。


「どうかしたの?」


 と声をかければ、慌てたように逃げていく。

 それをほかの兵士ふたりがくすくすと笑うのに、正行はなんとなく拗ねた顔、しばらくするとまた少年が寄ってくるので、今度はにっこりと笑顔を作り、驚かせないように穏やかな声、


「なにか用事があるの?」


 今度は少年、びくりと身体を震わせて、半分泣いたような顔で後ずさりながらも逃げ去りはせず、


「なんにもない」


 と首を振る。


「そうか、なんにもないか」


 依然じっと見上げてくる少年の視線にいたたまれなさを感じつつ、正行はシチューを口に運んでは日に焼けた少年の顔をちらと見て、またシチューを口に運んでは。

 食事が済むころには酒も振る舞われ、正体をなくさない自身がない正行は手をつけなかったが、兵士ふたりは大いに飲み、とてもアリスやクレアには聞かせられない品のない話をつらつら、正行もそれに混じったり眺めたりとしているうち、日もとっぷり暮れてゆく。

 途中、小用に立つことが何度か、そのうち酒で赤らんだ兵士たちも目蓋が重たくなってきたらしく、寝床として案内されるのは家の二階、ぎしぎしと軋む梯子を登って顔を出せば、普段は子ども部屋として使われているにちがいない、狭い空間に三つの布団がすき間なく敷かれている。

 兵士ふたりがためらいなく横になるのに、酒も飲んでいない正行はまだ目が冴えている顔、これは例の少年相手に暇つぶしでも、と一階に顔を出してみるが、今日はどこか別の家で寝泊まりするらしく、もう姿が見えない。


「どうしようかな――勝手に外へ出て、また動物に襲われても困るしな」


 と正行、しばらく寝床で座っているも、左右から聞こえてくる大いびきにどうも落ち着かず、足下をたしかめながらゆっくり梯子を下りた。

 一階にはまだシチューの濃厚な匂いが漂い、火はあるがそれもちいさく心許ない。

 扉をぎいと押し開ければ、秋の澄んだ空気のせいか、月明かりが驚くほど明るく足下を照らし、街道沿いには松明も並べられて、飢えた獣が立ち入る隙もない。

 これなら、と安心して外へ出て、正行は両腕を空に向かって掲げながら、肌寒くなった空気を肺いっぱいに吸い込んだ。

 澄明で清廉な、清い水のような空気が身体に取り込まれれば、鼻先にわだかまっていたアルコールの匂いや猥談もどこかへ消え失せ、にわかに殊勝な心持ち。

 空には上弦の月、降り注ぐような星々も、眩しいほどに瞬いて心を圧迫するほど。


「そういえば、星座は――」


 と正行は日本語でぽつりと言って、指先を空に伸ばし、星を数えるような仕草。

 ひょいひょいと上下したり左右へ動いたり、やがて口元に苦笑いで、


「もともと星座なんかわかんねえや。せめてもうちょっと星がすくなかったら、なんとかなったのにな」


 言い訳するに、人間の線引きなど関係なく輝く星々の美しさ、ふと瞳から感情を消して見上げれば、いつまでもそうしていられるように、人間の心を魅了する。

 あるいはこの美しい夜、叢中でも空を見上げる獣あるやもしれず、血と生しか宿さぬ野生の瞳にも月や星の美しさは理解し得るものであろうか。

 果たして服を着、友を作り、義と忠を理解する人間と野生の獣とではなにが異なるのか、野生の目には月がゆがんで見えるものか、あるいは人間の眼球よりも美しく鮮烈に映し出すものか。

 たとえば、いまも草の先端にちいさな身体を置いて、吹く風にゆったりと上下しているちいさな昆虫、その複眼でもって見るなら、美しさは美しさであり続けるのだろうか。

 正行は薄く唇を開き、呆けたような、それでいてなにかの真理に触れるような顔つき、瞬きもせず空を見上げている。

 空に星が流れ、風が耳元で鳴り、遠くで獣の咆吼、近くの叢中では虫の鳴く声、無数の命のざわめきと星の呼吸、あらゆるものに包まれても瞬きひとつしない正行がふとわれに返ったのは、どこかで扉がぎいと軋むほんのかすかな物音。

 視線を地上へ戻せば、白いレースの裳裾、青白い月明かりを浴びて輝くように現れ出て。


「あっ」


 と向こうも驚いた顔で立ち止まったが、それが正行とわかれば笑顔に代わり、薄闇のなか、白い寝間着をするするとなびかせて近づいてくる。

 あらわな肩に布を羽織り、その裾を両手できゅっと締め、正行のとなりに並ぶアリス、自然とその目が空へ向くように、正行は白銀に輝くような光沢のある寝間着に視線を奪われて、そこからアリスの細い首、さらりと背中へ流したこの夜よりも黒い髪や、くるりと上を向いたまつげまで月明かりにはっきりと見え、そこに地上的な欲望とは別な、ある種の畏怖を感じ取るのだった。


「きれいな空ですね」


 アリスが言えば、まるでその美しさが何倍にも跳ね上がるよう、ちいさく動いた唇を見つめていた正行ははっとわれに返って、慌てて視線を空へ逃がす。


「どうして、月や星は美しいのでしょうね」

「どうして、って?」


 だって、と囁くアリス、ほんのすこしだけ正行に寄って、


「月や星は、人間にこうして見上げられることを考えて、あんなふうに美しいわけではないのでしょう。人間を楽しませるつもりで美しく着飾っていて、人間がそれを美しいと思うのは自然のことです――たとえば、美しいひとなど、そうでしょうね。美しい布、美しい宝石、それもやっぱり、人間が人間のために美しくあしらったものでしょう。でも、月や星は、人間が美しく見えるようにと手を加えたわけでもないのに、あんなに美しい――不思議に思いませんか?」


 正行は改めて月や星を仰ぎ見て、ちいさくうなずいた。


「たしかに、不思議といえば不思議だな」

「でしょう」


 同意を得て、アリスはうれしげに笑う。


「ひとは、どうして青白く冷たいような月明かりを美しいと思うのでしょう。どうしてきらきらとまたたく星明かりを美しいと思うのでしょう。人間らしくもないし、ほかのどんなものともちがう、それなのに美しいと感じるなんて、不思議だわ」

「考えてみれば、たしかになあ――月や星は、ただきれいだとしか考えなかったけど」


 正行は腕組みし、むむとうなり声、その横顔をアリスの黒い瞳がじっと見つめていることには気づかぬ様子。


「こういうのは、どうかな」


 と正行、ちょっと恥ずかしげに咳払いをひとつで。


「夜、暗闇は、人間にとって怖いものだろ。その上、夜に出てくる月や星まで気持ち悪かったり怖かったりしたら、夜のあいだは救いがひとつもない。それじゃあ暮らしづらいだろうって、月や星の明かりはきれいに見える――とか」

「まあ、素敵」


 アリスはぱちんと手を打ち鳴らし、


「本当、そうかもしれませんわ。月や星が美しいおかげで、夜でもこうして空を見上げたくなるんですもの。それがなければ、夜のあいだは建物から出ようとは思わないかもしれません」

「ほんとに――ま、おれが外へ出てきたのは、眠れないせいだけど」


 と正行が笑えば、アリスもくすくすと口元を隠して笑い、


「実はわたしもそうなんです――ほんのすこしお酒を飲んだら、身体が熱くなってしまって。夜風に当たって冷まそうと思ったんですけど」

「おれは飲まなかったよ。飲んだらたぶん、明日は使い物にならないだろうから」

「お酒は苦手ですか?」

「強くはないな」


 と正行は顔をしかめ、なにか思い出したよう、


「城でさ、一回ベンノのじいさんとかロベルトといっしょに飲んだことがあるんだよ。そしたら、自分がなにをしたか一切覚えてないんだけど、次の日からしばらくふたりともよそよそしくなってな……」

「まあ」


 アリスは目を丸くして、


「暴れたりなさったのかしら」

「そんなこともないと思うんだけどな――でもなんか女中さんたちからも白い目で見られるし。それ以来、飲んでないんだけど」

「どうなるのかしら。すこし興味はありますけど」


 いたずらっぽい笑みがよく似合うアリスである。

 桜色の薄い唇は上品だが、きゅっと細められた眼は子どもらしい無邪気で、肩掛けを押さえる指先だけが大人らしい振る舞い、正行の視線を集めるが、胸元で暗く沈んだように光る緑の貴石がかろうじて正行の体裁を保っている。


「アリスは酒も強そうだな」

「そう見えます?」


 と婀娜に笑えば、正行もちょっと首をかしげて、


「もしかして、いまもちょっと酔ってるのか?」

「さあ、どうかしら」


 アリスはまたほんのわずか、正行に詰め寄って、ふたりの肩はいつの間にか擦れ合うような距離まで縮まって。


「わたし、酔ったらどうなると思いますか」


 つと首を伸ばし、正行を見上げる目のまわり、ほんのりと赤いのは酒のせいかどうか。


「意外と暴れたり――」


 と正行はアリスのほうをちらり、その近さに驚いて半歩後ずさる。


「いや、暴れはしないか。せいぜいよく笑ったりするくらいかな。酔っても行儀のよさは変わらない気がする」

「そんなことありませんわ。王族でもなんでも、生身の身体はひとつきり、ただの人間ですもの」

「そうは思えないところが王族のすごさだな。おれは、あんなふうにはできないよ」


 正行の脳裏には、この集落へ到着したときの振る舞いが思い出されるにちがいないが、アリスもそれを巧みに感じ取って、ほんのすこしまじめな視線、空へさっと放ち、


「お父さまから教わったことです。王族たるわたしたちを見る視線にはふたつの種類があって、ひとつはわたし自身を見る視線、もうひとつは王族を見る視線。それをしっかり感じ取って振る舞うのが王侯貴族の役割です。彼らはわたしを王女として見ていますから、わたしもそう振る舞うまで――正行さまやクレアは、わたしのことをアリスとして見てくださるわ。だからこんなふうに笑ったり夜中にこっそりと抜け出してお話したりするんです」

「ふうん――おれもアリスのことは王女だと思ってるけど」

「一国の王女を呼び捨てにする臣下がどこにいます?」


 アリスの口元が笑えば、正行は押し黙るほかない。


「でも、正行さまやクレアがいてくれることはとても幸せなんです」


 とアリスはあごをくいと上げ、白い首をさらけ出す。


「クレアはともかく、おれはなんか貢献してるかな」

「充分、しています。でも、詳しく言っちゃうと弱音になってしまうので、言いません」


 言葉の端に悲しみが滲めば、星空を見上げるのは涙を堪えているふうにも見えてくるのだ。

 正行はアリスを振り向きもせずちいさくうなずいて、


「じゃあ、おれも聞かないようにしよう。おれはすぐ言っちゃうけどな、弱音」

「そうですか? 聞いたことありませんけど」

「すぐに聞くよ。なにしろこれから二週間、いろいろ越えていかなきゃいけないんだ。明日あたり、もう尻が痛いって嘆いてるかもな」


 冗談にアリスは笑って、


「それじゃあ、明日はわたしが馬に乗って、正行さまが馬車に乗りますか」

「おれが王女さまのふりをするのか?」

「リボンのついた麦わら帽子、被ります?」

「王女さまの命令でもごめんだよ」


 声は立てず、アリスが笑えば、背後の茂みががさりと揺れる。

 とっさにアリスは正行にすがり、正行はくるりと振り返ってアリスをかばった。

 街道を挟んだ向こう側、松明の燃える下で茂みが揺れるのは、風のせいではない。

 もぞもぞとなにかが這い出すような気配、叢中の暗闇で目がきらりと光ったかと思えば、


「まあ――」


 新雪のようにまっ白な身体、毛がふわりと逆立って草を抜ければ、赤々とした目がじっとふたりを見ていた。

 長い耳、ぴくりと動くのにアリスが目を細め、近寄ろうとするのを正行が制して、


「家に戻って、暖かくして寝ておけよ。明日もまた移動ばっかりなんだから」

「え、でも――」

「いいから、先に戻れ」


 それまでのやさしさはどこへ消えたのか、正行の冷え切った横顔を見て、アリスは無意識のうちに掴んでいた正行の腕をそっと放し、怯えたような顔で家へ戻っていく。

 その白い裳裾、扉の向こうにするとすべり込むのを見て、正行は草むらから現れた兎に近づいた。


「アリスは、気づかなかったらしいな――」


 燃ゆる松明の炎はやわらかに揺らいで、それが陰影となり、兎の上半身は鮮やかに照らし出すものの、下半身は依然ほとんど暗闇である。

 正行はその暗闇に気づき、アリスを先に帰したのだ。

 街道を横切って正行が近づいても、兎は丸い目で見つめるばかり、逃げる素振りも見せぬ。

 傍らに屈んだ正行がその背を撫でれば、手のひらにべたり、熱く濡れた感触が張りつく。

 炎にかざせば、それが深紅の血、粘つくように指を伝い、白い手首を冒していく。

 兎は獣に食いちぎられたような下半身を引きずり、前足だけで正行にひょいと近寄って、まるで身を寄せるような仕草。

 正行はゆるやかに風吹き抜ける草むらをにらみ、それから落とした視線には慈しみが宿って。


「どうしようかな――言葉が通じればいいんだけどな」


 せめて美しい上半身が血で汚れてしまわぬよう、正行は指先でくすぐるように撫でてやる。

 兎は身体をぷるると震わせ、赤い目を虚空へ向けて、まるで自分の死を予感しているように澄ました顔、ただ身体を小刻みに震わせている。

 手当をするにはあまりに傷が深すぎる――暗闇に目を凝らせば、その下半身はほとんどないに等しく、後ろ足の付け根あたりから大きく囓り取られている。

 傷口周辺の毛はじっとりと濡れて汚れ、黒く凝固をはじめているが、上半身はまるでうそのように白銀、松明に毛先がきらと輝くのも鼻先がひくひくと蠢くのも、苦しみは微塵も感じさせない。

 その姿のなんと気高く、孤独なことか。

 正行はぽつりぽつりと涙のように言葉をこぼす。


「おれが動物の言葉をしゃべれればな。星がこいつに語りかけてやればな。だれかこいつに寄り添ってやればな――おれみたいなやつじゃなくて、本当にやさしい気持ちで看取ってやれるやつがいればなあ」


 兎が叢中から這い出した跡、血のあとがずるずると続いて、それが捕食者を呼び出す道標となるかもしれぬ。

 正行もそのことには気づき、草むらを忙しく窺うが、兎のそばを離れようとはしなかった。

 空にいくつ流星現れ、長く尾を引いて消えていったか。

 いくつの風がすぎて、そのあいだに地上で失われた命も多かろうが、赤い目の兎はゆっくりと地面に横たわり、それからもしばらくは呼吸を続けていた。

 その美しい毛並みを持つ獣がどこで生まれ、どのように育ち、どうしてこの場所で死にゆくのか、空を飾る星々も知らぬ偶然の理由にめげぬよう、正行は兎の頭を指で撫で、その目蓋が閉じるまでかがみ込んでいた。

 それをアリスが扉の陰から覗いていたことも知らず、東の空が白みはじめたころ、正行は街道沿いにちいさな穴を掘った。

 手向ける花もなく、目印もないが、そんなものはなくても忘れはしないだろうと、正行は乾いた血が張りついた指を見て、くいと曲げれば乾いて凝固したものがぱりぱりと欠片になって剥がれ落ちる。

 それを傍らに流れる小川で洗い流し、兵士ふたりが高いびきを立てる家に戻れば、夜明けである。

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