謎の静寂と豚
鼻を突くのは、ツンとした薬品の匂い。
遠くで規則的に響く「ピッ、ピッ」という電子音が、私の意識をゆっくりと暗闇から引きずり出した。
「……ここ、は……?」
重たいまぶたを無理やり持ち上げると、視界に入ってきたのは、ひび割れた白い天井だった。
体を起こそうとした瞬間、脇腹に焼けるような激痛が走る。
「うっ……!」
思わず傷口を押さえると、そこには手際よく包帯が巻かれていた。あの時、三手の怪物に吹き飛ばされた衝撃。死を覚悟した瞬間の、冷たい風の音。……すべては夢じゃなかったんだ。
「み、みこちゃん……? よかった、気がついたんだね」
掠れた声に横を向くと、パイプ椅子に座ったゆうま君がいた。
彼の顔や腕にも、痛々しい擦り傷がいくつも残っている。けれど、その瞳に宿っているのは自分への痛みではなく、私を心配する強い不安だった。
「ゆうま君……。和也君は? らいき君は、どこ?」
私の問いに、ゆうま君は力なく首を振った。
「わからないんだ。気づいたらここに運ばれてて……。和也のやつ、あんなに血を流して……。僕、何もできなくて……っ」
ゆうま君が膝の上で拳を握りしめ、悔しさに肩を震わせる。
沈黙が部屋を支配した。
ここは学校の保健室に似ているけれど、窓の外は真っ暗で、不気味なほど静まり返っている。
じっとしていられなかった。私は痛む体を引きずるようにしてベッドから降り、ゆうま君の手を引いて部屋の出口へと向かった。
とにかく、ここがどこなのか確かめなきゃいけない。
らいき君を探さなきゃいけない。
そう思って、震える手でスライド式のドアに手をかけた、その時だった。
「――ブゴッ」
足元から響いた、場違いなほど低くて短い音。
一瞬、心臓が跳ね上がった。
ゆっくりと視線を落とすと、そこには扉の前に陣取るようにして座り込む、奇妙な生き物がいた。
それは、手のひらに乗るほど小さな「豚」だった。
けれど、ただの動物じゃないことは一目でわかった。
その体からは、ゆらゆらと陽炎のようなオーラが立ち上っている。
あの時、私たちの前に立ちはだかった「彼」と同じ色の。
「豚……? なんで、こんなところに」
ゆうま君が呆然と呟く。
豚は、私たちを外へ出すまいとするかのように、短い足で床をドンと叩き、鋭い眼光でこちらを見上げた。
めっちゃ疲れるけど頑張って書きます
展開が早すぎる、もっと詳しく書いていきたい




