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アップルパイ・ナイツ  作者: O.K.Applefield
2章
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2-5


 帝都騎士学校の一日の授業が終わり、帰りのホームルームが行われている。

「・・・ええと、最後の連絡事項ですが。三年生の生徒会役員が来月には引退になりますので、生徒会選挙が有ります・・・」

 担任のリサ先生が色々と連絡事項を言っている。

 新任の教師で、私達ともそれほど年齢は離れていないので、少し頼り無い感じはする。

 何故か今年の一年C組は荒くれ者の集まりと見られていて、そのせいも有るかもしれない。

「ねえ、ウェンディ、このあと暇?」

 ホームルームが終わってすぐ、その荒くれ者筆頭と目されるアイラ・マクディアスが私に声を掛けて来る。

 初めて昼食に誘ったのが昨日だけど、もう、大分打ち解けて来ている気がする。

「特に予定は無いですけど」

 私、ウェンディ・マナドが答える。

「私の精霊甲冑の修理が終わったんだけど、見に来ない?」

 そう誘ってくる。

 入学初日にバーン・アースの暴走で破壊されたバロン・ルージュの修理が完了した様だ。

 もちろん、興味がある。


 学校付属の工房に行くと、損傷して取り外されたバロン・ルージュの胸部装甲が床に置かれていた。

「良くこれで無事だったね」

 アイラに向かって私が言う。

 装甲は完全に切り裂かれていて、裏側の映像板まで破損している。

 バーン・アースのバトルアックスの刃は操縦者の目前まで迫っていたはずだ。

「な、なんとかギリギリね・・・」

 何故か彼女は焦った感じで答える。

「装甲板一枚で済んで良かったじゃないか。僕のバーン・アースなんて頭部を完全に破壊されて、精霊のコアを新しく発注しなきゃいけなくなったんだぞ!」

 ミシェル・ワイスマンが文句を言っている。

 アイラと私の会話を聞き付けて、クラスメイトの半分くらいが野次馬に来ていた。

 みんな暇みたいだ。

「あの骨董品、まだ直して使うの?」

「安物かも知れないけど、新型の精霊甲冑があるじゃない?」

 クラスメイトのハンナ・バーグとイライザ・ミリオンベルがそう言う。

 私を通して、アイラはクラスの女子とも遅ればせながら仲良くなっている。

「暴走してたとは言え、バーン・アースの強さは証明されたじゃないか!新しいから強いとは限らないんだ。何よりかっこいいしな」

 暴走中は気絶してたくせに、ミシェルは偉そうにそう言う。

「それはそうと、今はバロン・ルージュの方じゃないか?」

 別のクラスメイトがそう言った。

 確か、ジルベール・サザーランドだったか?影の薄い男子生徒だ。

 ともかく、私達は工房の懸架台に固定された精霊甲冑の方に目を向けた。

 巨大な鉄の甲冑が起立している。

 大きく破損した精霊甲冑は格納魔法が使えなくなるので、そのままの形で出しておかなければいけない。

「バロン・ルージュ一号機。フレームと装甲はロイエンタール工廠、精霊コアと操縦席周りの艤装はヴァルター魔術工房が手掛けている。特徴は無いが、実に無駄のない質実剛健な構成の精霊甲冑だ」

 作業着を着た中年のおじさんがやって来て、私達に解説を始める。

 この人が工房主任のポール・レガードさんらしい。

「一号機?何号機まで有るの?」

 ハンナが聞く。

「最初に発注されたのは六機だ。二号機と五号機は二十年前の大戦で失われている。のちに七号機が納入されたが、それを最後にロイエンタール工廠が破産してしまってな」

「随分詳しいですわね?」

 イライザがそう言う。

 確かに、一男爵家の事情に対して詳しすぎる。

「ああ、その破産したロイエンタール工廠に勤めていたもんでな。当時、まだ技術者としてはぺーぺーで行き場の無くなった俺に、ここの職場を紹介してくれたのが彼女の養母ははさ」

 懸架台に造り付けられた梯子を上って行くアイラを指して、ポールさんがそう言う。

「ちょっと、アイラ!スカート!」

 女子制服のまま登って行く彼女に私は思わず声を掛ける。

「大丈夫、下に体操服着てるから!」

 振り返ったアイラが、そう返す。

 男子生徒の何人かが、残念そうな顔をする。

 ジルベールが一人だけ『これはこれで有りだ』みたいな顔をしているのが気持ち悪い。

「新しい胸部装甲と内側の映像板の接続は済んでいる。確認してくれ!」

 操縦席に納まったアイラにポールさんが声を掛ける。

 アイラが内側から操作して、新品の胸部装甲を閉じる。

「あれ?薔薇の紋章が変わってる?」

 私がその違いに気付いた。

 全身が地味な深緑色のバロン・ルージュの胸のワンポイントだった赤い薔薇が、赤い林檎の絵になっていた。

「お母様から好きにいじって良いって言われたからね。自分で描いたんだ」

 外部拡声器から少し嬉しそうなアイラの声が聞こえてきた。

「いいの?それ?」

「遠目で見れば同じ様に見えるから良いんじゃない?」

 ハンナとイライザが言い合う。

「別に薔薇がマクディアス家の紋章と言う訳でもないしな」

「薔薇でも林檎でも『男爵の赤』ならどちらでも良いって事ですか?随分いい加減ですね」

 振り返ると、イザーク皇子とイリア皇女がやって来ていた。

 彼等もアイラの事が気になっている様だ。

「ああ、別にかしこまらなくても良いよ」

 礼をとろうとするC組のみんなにイザーク殿下が軽く手を振る。

「無事に修理が終わったようだね。試運転の相手に僕なんかどうかな?」

 精霊甲冑の中のアイラに向かって、爽やかな笑顔でそう言う。


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