表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/6

末灯(まつとう)の四葉編 第五話

企画・構成・編集 mirai(mirama)

執筆 chatGPT

山を越えた先に、その町はありました。


町、と呼ぶには少し広くて、でも人の気配は少なめです。道の両脇には、壊れた家の残骸や、使われなくなった道具が積み上がっていて、ところどころ白く固まり始めていました。風が吹くたびに、細かい粉が舞います。くしゃみが出そうです。


「これは……大変ですね」


思わず、声に出してしまいました。


「でしょう?」


返事をしたのは、町の中央で腕まくりをしている女性でした。

短く整えた髪に、実用一点張りの服装。手袋は煤で黒く、でも目だけは、とてもはっきりしています。


名前は、セラ。

この町に残って、後片付けをしている人だそうです。


「後片付け、ですか?」


「ええ。もう使わないものばかりですから」


そう言って、彼女は足元のゴミ山を見ました。壊れた家具、割れた陶器、錆びた金属。どれも、かつては誰かの生活の一部だったものです。


「魔法を使えば、少量なら塵にできます」


セラはそう言って、手のひらをかざしました。

次の瞬間、小さな木片が、ふっと消えて、白い粉になりました。


「すごいですね」


「地味でしょう?」


彼女は肩をすくめました。


「でも、これがあれば、町をきれいにできます。誰も住まなくなっても、せめて、最後は」


最後、という言葉が、静かに響きました。


私は、しばらく黙って、ゴミの山を見ました。

これを全部、塵にするには、どれくらい時間がかかるんでしょう。


「願い、なんです」


セラは、ぽつりと言いました。


「世界が終わる前に、この町をきれいにしたい。それだけ」


英雄的でも、感動的でもありません。

でも、とても誠実な願いだと思いました。


「誰かに感謝されなくても?」


「ええ。誰も見ていなくても」


そう言い切る声は、揺れていませんでした。


私は、少し考えてから、言いました。


「それ、とても大事だと思います」


「そうですか?」


「ええ。だって、見られなくてもやることって、本気じゃないとできませんから」


セラは、少しだけ目を細めました。

笑った、というほどではありません。でも、硬さが和らいだ気がします。


その日、私はセラの手伝いをしました。

といっても、魔法は使えませんから、軽いものを運ぶだけです。正直、腰が痛くなりました。


「僧侶さん、向いてないですね」


「ええ。祈るほうが得意です」


そんなやりとりをしながら、少しずつ、山は低くなっていきました。


夕方、赤い空の下で、セラは手を止めました。


「……ありがとう」


短い言葉でしたけど、ちゃんと届きました。


「願いの女神に、行くんですよね」


「はい」


「じゃあ……この願いも」


「もちろんです」


私は頷きました。


「町が、きれいなまま終わりますように」


それは、誰かを救う願いではありません。

でも、世界に対する、ささやかな礼儀のように思えました。


その夜、私は町の端で眠りました。

風は相変わらず白い粉を運んでいましたけど、町は少しだけ、静かになった気がします。


全部は、片付きません。

それでも、やる意味は、きっとありました。


だって、終わるからこそ、整えることも、祈りになるんですから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ