末灯(まつとう)の四葉編 第四話
企画・構成・編集 mirai(mirama)
執筆 chatGPT
村を出てから少し歩き、しばらくは森の中。
上り道が続きました。
でも前の日に泊めてもらったおかげで、足取りは軽いです。ちゃんと眠れるって、大事ですね。
森を抜けた先に、小さな小屋がありました。
屋根は無事で、周りの地面も、まだ白くなっていません。珍しいことです。
小屋の前で、誰かが座り込んでいました。
近づいてみると、若い男性でした。ぼさぼさの髪に、着崩したローブ。目の下には、はっきり分かる隈があります。寝不足の人特有の、あの感じです。
「こんにちは」
声をかけると、男性はびくっとして顔を上げました。
「あ……すみません、今、ちょっと」
ちょっと、というわりには、足元に魔法陣が描かれています。しかも、かなり複雑です。夢に関係する術式ですね。私は専門じゃありませんけど、さすがに分かります。
「研究中ですか?」
「ええ。夢に潜る魔法を」
彼はそう言って、少し照れたように笑いました。
名前はユース。夢の中に入り、人の心の奥にある傷――いわゆるトラウマを和らげる魔法を完成させたいのだそうです。
「すごいですね」
私は素直に言いました。
「いえ、全然です。まだ失敗ばかりで……」
ユースは視線を落としました。
その様子を見て、私は、ああ、と思いました。
「ユースさんも、夢、苦手なんですね」
「……え?」
「眠れていない顔です」
少し言い過ぎたかもしれません。でも、ユースは驚いたあと、苦笑しました。
「鋭いですね。実は、僕自身が、悪夢に悩まされていて」
魔法の研究中の事故で、仲間を傷つけてしまったことがあるそうです。助かったけれど、その光景が、何度も夢に出てくる。
「だから、治したいんです。人の悪夢を。できれば、自分のも」
とても、まっすぐな理由でした。
私はその場に腰を下ろしました。魔法陣の端を、うっかり踏まないように気をつけながら。
「その願い、立派だと思います」
「そう、でしょうか」
「ええ。誰かの眠りを、少しでも楽にしたいなんて」
ユースはしばらく黙っていました。それから、ぽつりと聞いてきました。
「もし……完成しなかったら、どう思いますか」
難しい質問です。
私は少し考えてから、答えました。
「完成しなくても、誰かの話を聞いた時間は、なくなりません」
ユースは、目を瞬かせました。
「夢に潜らなくても、起きている間に、話すだけで、少し楽になることもあります」
そう言うと、ユースは小さく息を吐きました。
「……それ、僕が一番忘れていました」
夕方になるまで、私たちは話しました。
夢のこと、怖かったこと、うまくいかなかった日のこと。
魔法は完成しませんでしたけど、ユースの表情は、来たときより柔らかくなっていました。
別れ際、ユースは言いました。
「願いの女神に、行くんですよね」
「はい」
「僕の願いも……持っていってもらえますか」
「もちろんです」
私は頷きました。
「夢で傷つく人が、少しでも減りますように」
ユースは、深く頭を下げました。
赤い空の下で、私はまた歩き出します。
夢は、まだ続いています。
でも、目が覚める朝も、ちゃんと来ると信じています。




