体育会系男子は記録にうるさい
登場キャラクター
マードレー・ギルス ドイツ出身の留学生、ラグビー部
葛城 明也 体育教諭、最近孫が甘えてくれるのが嬉しい
騒がしかった田中家では落ち着きを取り戻し、普通の1日が始まった。
「今日は男女別で体力測定があるので、一限目の前には着替えて男子は第一体育館、女子は第二体育館に集合するように!」
先生の話が終わり、みんなが着替えを手に男女共に更衣室へ向かう。そう、今日は学校での一大イベントの一つである体力測定なのである。根暗で目立たない男子がものすごい成績を叩き出したり、女子にキャッキャ言われたりと様々な男子の夢が集まるイベントである!
「男女別なんだー、悠斗と競えないじゃんー」
「しょうがないじゃんこのご時世変な目つきで見てくる男どもがたくさんいるしーーー」
と言って翔が俺たちを見つめてくるが、俺たちにそんなことをするような心当たりは全くないのでかるーく受け流しつつ2人を教室から追い払った。男子は教室での更衣だったので俺たちは着替えを始めた。
「なあ悠斗ー、知っての通りそんなに運動得意じゃないから、、、休んでいいか?」
「断固拒否!」
小さい頃からの付き合いであるが、一が運動が得意じゃないのは知っている。かなり遠回しに言ったとしてもプラスにならないくらい壊滅的だ。ちなみに俺はそこまで苦手というわけではない。
「悠斗は無駄にハイスペックだからできるよなーっててか、、、あの人どうなんだろな?」
「あの人?」
一が指を刺した先にいたのは留学生のマードレー・ギルスである。高校生とは思えないほどの体格と顔面の持ち主であり、制服から常にはち切れんばかりの筋肉がトレードマークのなんかすごいやつだ。
「ふん!」
彼はその踏ん張り一つで筋肉が増大し、服がバリバリバリとはち切れた。クラス中の男子から歓声が湧き起こったが俺が注目したのはそこじゃない。
「すげーよなあいつ」
「いや!制服破いたけど!?すごいとか以前に今日これからどうやって過ごすのあいつ!?」
マードレーに対してクラスの誰もツッコもうとしない。珍しく一も歓声の中に参加している。おそらく体格がいい人への憧れがあるのだろう。マードレーが「ふん!」と力むたびにその6いや8パックは生きているかのように動いていた。
「いや!高校一年生の筋肉じゃねー!」
俺のツッコミなんて誰も聞く気がなく、ボディービル大会が開催されてしまった。今回の体育測定が少し荒れる気がした。
この学校の体育館は無駄に広い。多くの部活が全国レベルなだけあって第一体育館、第二体育館と2つある。どちらともバレーコートが6個立てることができるほどの大きさである。
「うわーやっぱり広いなー」
「入学式の時は人が多かったりしてわかりづらかったけど、えげつないなここ」
クラスの全員が体育館の大きさに圧巻されてしまっていた。さすがのマードレーでも口をあんぐりと開けて驚きを隠せていなかった。
「お前ら、こっちに集まれ!」
そう言って俺たちを集合させたのは体育の担当の先生である葛城 明也である。野球部の顧問で、鬼の体育教員と恐れられているらしい。
「さあ!今日は待ちに待った体育測定だぞ!お前らの全力を俺に見せてみろ!」
竹刀を肩にかけている先生を見て昭和かよと思いつつ、体力測定の準備を始めた。一つ目の競技は握力。
「握力程度なら俺も!」
「ふん!」と一は握力計に力をこめた。その数字はどんどん上昇していき、最終的には33.4で止まった。近くにいた男子からはすごいななどと褒められて、少し恥ずかしそうにしていた。
「おい!マードレーが測るぞ!」
一を褒めていた男子が見に行くので一が悲しそうにしていたが、しばらくして一もマードレーを見に行った。俺も少し興味が湧いたのでちょっとだけ覗いてみることにした。
「ふん!」
とマードレーが力を込めると筋肉が盛り上がり握力計がミチミチと音を立てて数値が上昇する。みんなの歓声と共に止まった数値は70.4であった。
「えぐいな」
クラスのみんなの歓声がやまない。70というのはなかなかの数値だろう。高校一年生で出していい数値でないのは確かだ。そんなこと考えながら俺も順番になったので握力計を握る。
「悠斗はどうなるんだろうなー」
「あんま期待しない方がいいんじゃね」
マードレーの熱がまだ残っているが、別に期待はしていないらしい。そんなみんなを驚かしてやりたいという気持ちが働いた結果、全力を出して握力計に力を入れた途端、表示された数値は75.6である。
「な、ななじゅうごー!」
「お前握力すごくね!?」
俺へ変な視線を向けていたクラスメイトが駆け込んできた。
「やっぱ悠斗無駄にハイスペックだよな」
このくだりは小中入学とずっとやってきた流れだであり一のこの言葉も聞き慣れている。俺は別に運動が苦手なわけではない。自分ではそんなにできるわけでもないと思っているんだが、世間一般ではハイスペックなのらしい。
「ヘイ!ミスタータナカ!ミートショウブシロ!」
そう言って人混みをかけ分けてきたのがマードレーである。自分の記録を抜かれて対抗意識を向けてきたのだろう。とても面倒だが、これから男同士の譲らない戦いが始まろうとしていた。
体育会系男子は記録にうるさいのであった。




