騒音は4人いるとうるさい
高校入学2日目、今日から普通の授業が始まる。
チャイムがなるまであと3分、教室の一角だけ明らかに音量がおかしい。
「ねえ!悠斗高校ってさ!」
「声大きい!」
唐突にひかりの喉から発せられた声量に、咄嗟に声が出てしまう。
「まだ高校っていう単語に慣れてないんだろ」
「声量が中学のままなんだよなー」
一と翔が追ってツッコミにはいる。授業開始前なのでほとんどの人が席についているなか、俺たちはそんなこと気にせず会話を続ける。
「だって中学の続きじゃーん!」
「そう思ってるのはお前だけだよ」
ひかりが言うことはいちいちアホらしい。教室のみんなの意識を集めてしまう。
「ということで、決めよう!」
「うわっ」
ひかりが急に机を叩き出すので俺たち3人はビクッとなった。
「なーんか嫌な流れきたな」
ひかりは、俺の一言にえっへんというような顔と仕草をした
「誰が高校生らしいか選手権!!」
「なんだそりゃ?」
「どうゆうことだよー」
すかさず一が疑問を問いかけるが今回は、めずらしく翔も質問した。
「誰が今高校生らしい生活を送ってるかを競うんです!」
ひかりを除いた3人の頭にハテナが浮かぶ。面白さがこれっぽっちもないようなことをよくそう簡単に思いつくなと感心する。
「じゃあ、、、まずかけっちから!」
「ええ、私?」
「かけっちはー、部活推薦!!」
翔はいきなり指名され、勝手に選手権にエントリーさせられて困った様子だった
「もう優勝でいいだろ」
「一なんでこのノリについていってるの!?」
いつもはツッコミに回る一が真剣に情報分析して結果を出していることに俺と翔は驚いていた。
「じゃあ次、一」
「俺?」
「説明係かなー」
「おかしいだろ!」
さっきまでノリノリだった一もひかり節を受けて正気に戻ったようだ。にしても説明係って、どうゆうワードセンスをしてるのやら。
「じゃあ悠斗!」
「おう!」
いつもはここで一言物申す立場なんだが、今回はなんでか俺も世界に入り込んでしまったようだ。俺たちの間に沈黙が流れる。俺のゴクリという唾を飲み込む音がよく聞こえる。
「、、、、、、ツッコミ!」
「はぁ?」
こんなに溜めておいて、出した言葉がツッコミなんていう内容薄っぺらすぎるものだったので情けない声が出てしまった。
「うんうん否定はしないな」
目の前の一が頷いた。同じように翔もうんうんと言わんばかりの頷き具合だった。そんな2人を見てひかりはこの上ない満面の笑みを浮かべた。
「お前らまで!?」
クラスでは俺たちの声しかもう聞こえない。
「授業始まるぞ、静かにしとけよ」
話に夢中になり過ぎたあまり、担当の先生がもう来ていることに気づいていなかった。俺たちは前を向き、慌てて机の中から教科書を取り出して授業の準備を始めた。変にクラスの注目を集めてしまった。
休み時間ーー
午前の授業が終わりひと段落ついた俺たちは、スマホ片手に雑談の体勢に入った。
「あ、昼練行かなきゃ」
翔はスマホを見るなり立ち上がり、鞄だなから部活用の荷物を持ってきた。
「え、もういくの?昼ごはんは?」
さすがのひかりも心配になったようだ。自分の弁当を広げながら不安そうな顔で翔の顔を覗き込んだ。
「体育館で食べる。すぐ練習しなきゃだから」
「それ、毎日なのか」
「うん」
なかなかのハードスケジュールに俺も流石に黙っていることはできなかった。やはり弁当はみんなで食べることに意味があると、感じている。
「推薦ってのはー大変だな」
一はこう言ってはいるのものの、他人事のように弁当を開き頬張り始めた。彼は自分の世界を持っている、それは誰にも邪魔することはできない。(ep3参照)
「じゃあ、また」
そういって足早に教室を後にした。その後ろ姿を見送った後、俺とひかりも用意してきた弁当を開き、何から食べようか考えた後、それを口に運び始めた。
「なんか、ボケ足りなくない?」
さすがのひかりでもこの感覚には勘づいたようだ。基本的にひかりが大ボケ、翔がボケツッコミ両方となるが、翔がいないとボケもツッコミも少々キレが悪いことに気づいた。
「それは俺も感じるけど、周りからしたら騒音レベルが下がっていいんじゃないかー」
一から的確な指摘がはいり、さらに追い打ちがかかる。
「特にひかりの騒音がな」
「騒音いうなー!」
3人の笑いが教室に響く。
その騒音は、1人減ったからといってうるさくなくなるわけではない。




