特別編:バレンタインデーになるとみんなうるさい
バレンタインデー、それは日本人の全学生男子が楽しみにしている行事である。好きな子からもらえるかなーとか、友達から義理チョコ、友チョコを貰い、ゼロを回避したことを自慢しあったり、逆チョコを作ってみたり、カップルはさらにチャチャ度が増えたり、紆余曲折ある日なのである。
中学3年生の2月14日、受験を控えた4人は、今日も普通に学校生活を送っていた。
「ゆーとっ!」
「なんだ?」
机に座っている俺に話しかけてきたのはひかり。
「今日ってなんの日か知ってる?」
「今日、、、ああ、ふんどしの日だろ」
「はぁ?」
俺の返事に呆れた様な表情になるひかり。決して間違ってはいない。
「知らないのか、一般社団法人日本ふんどし協会が制定したふんどしの日だぞ」
「んなん知るかー!」
いたって真面目にそう答えたわけではない。バレンタインデーということぐらい知っている。その上でからかってみたのだ。
「今日はバレンタインデーでしょ!」
「だったな」
「だったなって何、だったなって。わかってんなら最初から言ってよ!」
ひかりが頬を膨らませて少し怒った表情をした。俺は手を合わせてごめんと謝る。
「それが、どうしたんだ?」
急にその話をふっかけてきたのでどういう風の吹き回しか気になった。
「だ、か、ら、察してよそんくらい」
「察する?」
「もう!放課後渡すから、先に帰らないでねって話!」
理解した。おそらく、俺と一以外の男子には渡さないであろうひかりの貴重な手作りチョコ。しっかり受け取っておこうと思った。
「じゃあ俺からも、、」
そう言って準備していたものをカバンから取り出す。ひかりの表情は何が貰えるのかワクワクしていた。しかし、それをみた瞬間その顔は一気に崩れ落ちた。
「はい、ふんどし」
「ふん、、、」
俺が取り出したのはチョコではなく、ふんどしだ。真面目ではないと言ったが、ふんどしの日に準えてしっかりふんどしを準備してきたのだ。
「、、、」
ひかりは口をポカリと開けたまま動かない。授業のチャイムが鳴ったが、表情何一つ変えず、テクテクと自分の机に歩いて行った。
放課後、学校の玄関を出て、4人で帰り道を歩いていた。
「じゃあ、はいこれ」
そう言って翔が鞄の中から綺麗に梱包されたチョコを取り出した。ありがたく俺と一は受け取る。
「それにしても、学校にお菓子持ってくるのダメなのに結構持ってきてる人多くね?」
一が疑問を投げかける。
「やっぱバレンタインは、学校で直接渡すのに意味があるんだよ」
翔が答えるが、もっともだと思う。バレンタインの日くらいお菓子アリにしても良いだろう。
「それより!2人とも、今年はなんかもらえた?」
ひかりがウッキウキなテンションで俺と一に聞いてくる。
「俺は、近所のおばさんから2個とお母さんから1個、お前らから2個で、澪ちゃんから1個だから、合わせて6個だな」
「なーんだ、面白くないの」
「なんだと!貰えるだけありがたいんだよこっちは!」
一の内訳に、ひかりはつまらなさそうに文句を言ったので、言い合いが始まった。
「悠斗はどうなの?」
それを横目に翔が聞いてくる。
「お母さんから1個、ひかりと翔から2個、後輩から4個、先輩からも3個、同級生から5個、そして帰ってから澪が渡すって言ってたから、全部で16個かな」
「じゅうろく!?」
翔が驚くと同時に、その数字に驚いたのか後ろで言い合うっていた2人もこっちに注目した。
「悠斗、」
一が肩をポンと叩き、優しい顔で話しかけた。
「お前は全男子の敵だ」
「いや、こわいこわいこわいこわい!」
顔と言っていることが一致しないのが余計怖かった。その後もいっとき笑ったまま現実逃避していた。
「あっ、そういえば俺から2人に。ひかりにはもう渡したから」
そう言って俺がカバンから取り出したのは他でもない、ふんだしだ。
「、、、」
2人の表情が先ほどのひかりと全く酷似する。そんな2人を見ながらゲラゲラ笑っているひかり。さっきお前もこんな感じだったぞと言いたくなった。
「、、なっ、なんでふんどしなんだよ」
一がなんとか意識を取り戻して聞いてくる。
「今日一般社団法人日本ふんどし協会が制定したふんどしの日なんだぞ」
「へっ、へー」
なんともいえない表情で、改めてふんどしを見つめる。隣を見ると、翔がまだ口を開けたままだった。
「えっ、翔?」
何を思ったのか、ふんどしを履き始めた。
「さあ、帰ろう」
その一言だけ言い、ふんどしを履きながら家に向かって歩き始めた。俺たちは笑いを必死に我慢したが、限界になり、みんなでゲラゲラ笑い、ふんどしを履きながら、楽しく帰って行った。
ふんどしの日とバレンタインデーになるとうるさかった
帰宅後、
「にい、ハッピーバレンタインデーです!!」
そう言ってショコラケーキワンホールと高級チョコを用意していた澪だったが、そのお返しにいちばん苦戦した悠斗であった。




