海を見るとうるさい
目を開けると白い天井が広がっている。体は少し汗ばんでいてすっきりはしない。これが夏の蒸し暑い朝というものだろう。
「うぅーーっ」
背伸びをしてベッドから降りても変わらず暑さを感じる。
「もう10時か、」
リビングに降りて朝ごはんを食べに行く。
「にい、おはようございます」
「おお悠斗、遅かったな」
澪と父がいた。澪は俺と同じで夏休み、父は今ニートなのでずっと休み、母は仕事だ。机の上にはご飯と味噌汁、そして卵焼きが配膳されている。
「なんか豪華だな」
「今日は早く起きたので私が作ったんですよ」
「すごいな。美味しそうだ」
褒めると澪は恥ずかしそうに顔を赤ながらモゾモゾしていた。
「さっ、早く食べちゃってください」
誤魔化すように俺を椅子に座らせた。
「いただきます」
手を合わせて箸を持ち味噌汁からすする。味噌のコクとわかめの風味が感じられた。
「うまい!」
そう言って俺は澪の方を見た。澪はさらに顔を赤くして恥ずかしそう小声で「ありがとうございます」と言っていた。
「パパはこれをどう捉えたら良いのだろうか」
父が横で険しい表情でツッコんできた。
「どうとは?」
疑問に思ったので聞いてみる。
「いや、やっぱいいや」
父は苦笑いをしてまたテレビに向かって体を向けた。俺は何のことかよくわからなかったが、恥ずかしそうにしている澪の頭をなでなでしていた。
朝ごはんを食べ終わって、俺は外出の準備をしていた。昨日の夜、澪が「明日、海行きましょう!」とワクワクしながら言ってきたからだ。もちろん澪は父は誘っていない。可哀想に
「澪、準備できたぞ」
「今行きます!」
部屋の前で澪を呼ぶ。少し待っているとガチャという音と共にドアが開いた。
「どう、、ですか?」
そう言って自分の服を見てきた。水色のワンピースに麦わら帽子をかぶっている。
「どこのかわいい人形かと思ったよ」
素直な感想を述べると、澪は嬉しそうにして、上機嫌で玄関に向かった。リビングの前を通り過ぎると父が「いってらっしゃい」と声をかけてくれたが、少し寂しそうにしていた。
「なあ、父さん連れて行かないの?」
「私はにいと2人きりがいいんです」
そう言って見向きもしなかった。父よこれが思春期の女子なのだ。今度ご飯でも奢ろうと思った。
玄関を開けた途端、夏の日差しと熱が肌に突き刺さった。夏が始まったことを改めて実感する。
近くの駅に行き、かなり遠くにある海水浴場行きの電車に乗る。空は雲ひとつない快晴で、その綺麗さに澪も窓から外を楽しそうに眺めていた。
「にい、あそこです!」
澪が指差した方向を見ると、そこにはとんでもない人の数で埋め尽くされたビーチ。茨城県の洗川ビーチだ。
「わあ、すごい!」
電車を降りた澪は一目散にビーチの方へ走っていく。俺も見失わないように駆け足で追いかける。
青い波が勢いよく押し寄せてくる、黄金の砂浜は暑いがいい味を出している、完全に夏のビーチだった。
「にい、日傘建てましょう!」
「わかったわかった」
テンションが高くなった澪は勢いよく鞄から折り畳みの日傘を取り出す。それを地面に刺し、荷物をまとめる。
「それじゃあ、早速入りましょう!」
「うぉっ」
澪に手を引っ張られて波の方へ連れて行かれた。砂浜の暑さが吹き飛ぶほど海はひんやりとしていて、心地が良かった。
「えぃっ」
「うわっ、やったなー」
澪が水をかけてきたので、俺もやり返そうと水をかける。気のせいかもしれないが、周りの視線がこっちに向かってるように感じた。
「ふうっ、疲れた」
澪も遊び疲れて、日傘の下で休ませておき、俺はとりあえずお手洗いに行っていた。
「この暑さの中、海とはいえ意外と汗かくなー」
汚れた足と手を洗い、サンダルを履き、澪のところに戻ろうとした時
「あっ」
後ろから声がした。なんだと思い振り返ると、そこにいたのは奏だった。間違いない
「おっ」
俺も声が出てこなかった。そのまま沈黙が流れる。
海水浴場での遭遇はしずかだった




